2014年総選挙政策

2014年 総選挙各分野政策

26、難病

難病法の制定を力に新たな総合的な対策の実現を

2014年11月


 難病とは、医学的には治りにくく、研究や新薬開発の光が当たりづらい希少・難治性疾患で、国内では現在わかっているだけでも500~600の疾患があるといわれています。社会的には、生活面の制約や経済的・精神的負担が大きく、社会の理解不足や施策の不備などからくる、社会的障壁による「障害」の概念も含む言葉です。

 難病・慢性疾患のある人とその家族は、「構造改革」路線によってもたらされた過重な医療費負担に苦しめられてきました。地域での環境整備が整わないままに、療養施設が極度に減少し、受け入れ施設のないまま在宅療養に移され、重介護が家族にのしかかっているケースも少なくありません。

 

1972年の難病対策要綱からの始まり

 難病対策は、原因不明の疾患に苦しむ患者を救うために医療費補助を行うことによって患者を病院に集めて研究を促進する対策として、1972年から「難病対策要綱」にもとづいておこなわれてきました。当時8疾患の研究事業のうち4疾患への医療費助成から始まった対策は、徐々に対象を広げて、臨床調査研究事業対象疾患は130疾患に増え、「特定疾患治療研究事業」による医療費助成対象は56疾患にまで広がりました。1997年1月からは、福祉対策として、介護保険、身障福祉の対象にならない難病患者等に対して、ホームヘルプサービスや日常生活用具などが提供される「難病患者等居宅生活支援事業」なども実施されてきました。

 一方で、日本の障害概念は「固定・永続」という狭いとらえ方から、疾患という状態での障害を認めておらず、難病・慢性疾患をもつ人は長い間、「福祉の谷間」におかれ、福祉サービスから除外されてきました。難病患者の1人あたりの年間医療費は、同年齢で比較すると、18・4倍(20歳から24歳)、9・7倍(30歳から34歳)など、特に若年層ではその差が顕著です。病気が治る展望も生活の見通しもなく、働くこともできずに自ら命を絶つ人もいます。

 法的な根拠をもつ総合的な対策と障害福祉利用を

 こうした現状を打開するには、法的な根拠をもたず、医療費助成も研究協力に対する謝金という性格であるかぎり対象疾患は限定的にならざるを得ず、社会保障として総合的な対策とするためにも法律の制定が望まれてきました。当事者団体の代表も参加して法制定を視野に入れた検討の結果、今月5月にようやく「難病患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が全会一致で成立しました。

 障害福祉分野では、2011年に障害者基本法が改正され、難病のある人も障害者として法的にも位置づけられることになりました。そして2013年に施行された障害者総合支援法の障害の範囲に「難病等」が加わり、身体障害者手帳がない難病等患者も障害者福祉の利用に道が開かれました。難病・慢性疾患患者も「治りづらい疾患を有する障害者」として、総合的に障害者施策に含めるべきです。

 日本共産党は、難病・長期慢性疾患患者や家族・関係者のみなさんと連帯して、難病法の基本理念や基本方針をふまえて、医療制度や障害福祉施策をはじめ関連する諸施策を総合的に整備、改善し、すべての患者が安心して暮らせる総合的な対策づくりをすすめます。

 

(1)医療費助成は難病患者すべてを対象とするものに

 これまでの難病対策は、根拠法がないことから、「難病対策要綱」にもとづく予算措置としてシーリングの対象とされ、毎年不安定な立場におかれてきました。新しい医療費助成制度が法律に位置づけられたことは、患者や国民の運動の成果です。医療費助成の対象になる「指定難病」は56から約300疾病に広がる予定(来年1月から110疾病を第1次で実施し、夏以降に第2次分を施行)であり、新たに87万人が対象になる予定です。

 医療費は3割から2割に引き下げられ、外来・入院それぞれから両方を合わせた負担になりますが、所得階層別に月額2500円~3万円までの負担上限額(既認定者は3年間の経過措置あり)になります。現在、非課税世帯は無料ですが、新制度では2500円と5000円の月額負担上限額に変わり、年収約160万円~370万円の世帯にも1万円の負担上限が課せられます。

 こうした負担上限額は、当初厚労省が出した負担案があまりにも高すぎるために、「せめて自立支援医療並みに」変更されたものです。しかし、自立支援医療の負担水準は障害者の生活実態に照らして高すぎるとして、政府自らが、低所得者の無料化を含む負担引き下げの検討を約束しているものです。この約束を実行するなら、難病の非課税世帯も無料にするのが当然であり、低所得世帯の負担軽減を求めます。

 これまで入院給食費は負担上限額の中に含まれてきましたが、新制度では一般世帯で一食260円の負担が課せられることから、元に戻すべきです。

患者数による線引きは中止を

 難病法では、難病を①発病の機構が明らかでなく、②治療方法が未確立、③希少疾患であって、④長期の療養を必要とするもの、と定義しています。その中で指定難病になる要件として、①患者数が人口の0・1%程度で、②客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立されていること、をあげています。

 生涯にわたって治療が必要な難病患者にとって、患者数で機械的に線引きされてしまうことは到底受け入れられません。患者数が多くなっても、医療費や介護等の負担が他の施策で軽減されない以上は、対象からはずすべきではありません。患者数の多い疾病でも、今後難病とされる疾病はすべて医療費助成の対象にするとともに、新たに発見された難病が、順次すみやかに医療費助成の対象になるしくみになるよう求めます。

治療継続中の患者は引き続き医療費助成の対象に

 すべての疾病に重症度基準を導入し、指定難病の中でも患者を区別して、「症状の程度が一定程度以上等あり、日常生活又は社会生活に支障がある者」以外を「軽症」として、原則、医療費助成からはずしてしまうことは大きな問題です。

 難病の場合は軽症と判断することは難しく、医療費助成の必要性と医学的な重症度とは必ずしも一致しません。治療によって症状がコントロールされている場合、「軽症」と判断されて医療費助成がなくなれば、高額な負担に耐えきれずに治療を中断せざるをえなくなります。その結果、重症化して状態が悪くなることになります。

 患者団体の声におされ、医療費の自己負担が1万円をこえる月が年3回以上ある高負担をしいられている患者は、「軽症者」でも医療費助成の対象になることは一定の成果です。しかし、最初から助成されなければ経済的な理由で治療に入れなくなり、患者の健康や財政の観点からも本末転倒な事態が生じかねません。投薬も含めて、治療が継続中の患者は、すべて助成の対象とすべきです。

患者をさらなる苦境に追い込む“重症者への負担導入”はやめるべき

 これまで無料だった重症認定(身体機能障害が長期間継続し介護を日常的に必要とする状態など)の患者にも負担が求められます。ALSなどで人工呼吸器をつけないと生命維持ができない、きわめて重症な患者にさえ、月額1000円(所得区分はなし)の負担が発生します。しかも同じ人工呼吸器利用者でも、気管切開と、鼻マスクを装着する人の負担を区別することさえおこなおうとしています。

 重症の難病患者は医療費負担の他に生活や介護など精神的にも経済的にも深刻な状況にある人がほとんどです。重症患者に自己負担を導入すれば、治療の継続が困難になるだけでなく、ただでさえ深刻な患者や家族の生活をさらに追い込むことになります。「負担の公平性」を理由に、もっとも困難な人に負担を課す厚労省の姿勢は許されません。重症者への負担は中止すべきです。

 難病指定医、指定医療機関の指定等、万全な施行準備を

 1月1日からの施行に向けて、都道府県では施行準備が急ピッチですすめられていますが、新規疾病の診断を行う難病指定医と、医療費助成が受けられる指定医療機関は都道府県知事が指定することになっています。これらの指定が年内にすべての都道府県で完了し、必要な患者が医療費助成を受けられないようなことのないようにします。行政側の理由で指定が間に合わない場合には、償還払いとするなどの経過措置をとり患者の権利を守ります。

消費税10%先送りでも300疾患の完全施行を確実に

 指定難病による医療費助成は、消費税増税をその財源にあてるとされていることから、消費税の10%への増税が先送りになったことで、来年夏とされている対象疾病の300疾患程度への指定を危ぶむ声も出ています。しかし、本来、税収のあり方と、その使い途については切り離して考えるべきであり、医療など命に関わる社会保障給付の財源は、政治の責任で優先的に確保すべきです。消費税の増税ができなくなったからといって、国民に約束した難病法完全施行の先送りは許されません。

 日本共産党は、指定難病の完全施行を来年夏に確実に施行させるとともに、法成立以後、一度も開かれていない難病対策委員会を早期に再開させ、総合的対策につながる基本方針の策定に努力します。

 消費税とは別の道で社会保障財源の確保を

 日本共産党は、社会保障財源は、消費税にたよらない別の道――、①富裕層や大企業への優遇をあらため、「応能負担」の原則を貫く税制改革をすすめる、②大企業の内部留保の一部を活用し、国民の所得を増やす経済改革で税収を増やすこと、を提案しています。こうした道に踏み出していくことこそ、安定した社会保障財源を確保することができます。

 

 (2)小児期特有の問題解決のための総合的な施策の展開を

 難病法制定にあわせて、児童福祉法の一部が改定され、子どもの難病や慢性疾患の医療費助成も社会保障の義務的経費として位置づけられました。その対象も514疾病から705疾病に拡大される予定であり、約11万人から15万人程度に対象が広まるとされています。医療費負担は2割ですが、上限額も所得階層別に1250円~15000円と引き上げられ、これまで無料だった入院給食費も半額負担になり、重症患者や低所得層にも一定の負担が課せられるようになります。

 重症な病児ほど治療できる専門医療機関は限られているために、遠くの病院まで行かなければならず、身近なところで治療が行えるような専門医療機関の整備・拡充を求めます。

 介護者も含めた通院費用への助成、通院・入院のための患者と家族のための滞在施設の整備などをすすめ、残されたきょうだいへの支援や、長期入院による学習の遅れなどをサポートする体制を整えます。

 小児期は病状の変化が大きく、身体障害者手帳の取得も難しいのが現状で、制度の谷間におかれた病児と家族への社会的な支援を求めます。

 新たな事業として「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」が始まります。相談支援や自立支援員による各種支援の利用計画の作成、慢性疾病児童地域支援協議会の立ち上げなどが主な内容です。都道府県・指定都市・中核市が事業の主体となり、慢性疾病児童への福祉的施策を展開していくこととなっていますが、それぞれの地域の特性に応じて、充分な支援策を行えるよう、予算の確保と国の支援を求めます。

 学校生活における病児への配慮や親の役割などの検討、小児期に培うべき生きる力を病児にいかに保障するかなど、児童の発達と健全育成を病児にも保障するための対策などに取り組みます。

小児期から成人期への移行期の疾患問題を緊急に解決する

 難病法の制定による対象疾病の拡大により、指定難病につながる疾病も一定数増えることになりますが、期待されていた成人期移行に関する“トランジション”問題は、多くが未解決のままとなっています。

 医学の進歩より、先天性疾患をはじめとする小児期に罹患した難病・慢性疾患児の多くが、成人期を迎える時代になりました。その一方で、「小児慢性特定疾患治療研究事業」が20歳になった途端に打ち切りとなるため、成人期を過ぎた患者には社会的支援策がなくなってしまうことが制度上の課題となっていました。医療費助成が無くなってしまうこと、治療研究が小児期から成人期まで継続されないこと、また、成人期に達した患者を診ることができる医療機関が限られているため大人になっても小児科にかからざるをえない診療体制などの問題が社会的問題となっています。

 支援の必要な小児期発症の患者が成人期になっても切れ目なく医療費助成を継続できるような制度構築を行い、治療研究についても小児から成人まで継続して行われるような体制をつくっていきます。成人期をむかえた小児慢性疾病患者の治療を行える診療体制の整備をします。

 成人後の福祉・雇用など総合的な支援のしくみの構築をすすめます。

 

 (3)生存権にもとづいた医療費無料化を

 疾患の別なく、医療費の患者負担を軽減するためには、医療保険制度の抜本改革を行うことが必要です。そもそも医療保険の原則3割の自己負担が患者を経済的に苦しめてきました。公的医療制度のある国では、窓口負担は無料もしくは少額の定額制が主流であり、外来でも入院でも原則3割の窓口負担という日本は、世界でも異常です。また、ヨーロッパの多くの国では、長期療養が必要な患者に、疾病の別なく、手厚い給付と負担軽減をはかる仕組みが整備されています。

 すべての国民は貧富の差にかかわりなく医療を受ける権利があり、医療の保障をする責務は国が負うというのが、憲法25条の精神です。

 日本共産党は、疾患・障害の区別なく、“窓口負担ゼロ”で医療を受けられる日本をめざしています。当面、医療費の窓口負担を「子ども〈就学前〉=無料、現役世代=2割、高齢者=1割」に引き下げます。そのなかでも、難病患者や障害者の医療費は優先して、すみやかに無料にすることが当然です。

 高額な自己負担、不必要な医療費の膨脹を招く原因のひとつである、高すぎる薬価にもメスを入れます。全国保険医団体連合会の調査によると、欧州諸国にくらべ、日本の薬価は平均で1・5倍から2倍になっており、後発品のない先発品の薬価を2割引き下げるだけで0・94兆円、医療費財政を節減できます。これによって生み出される財源を、医療の充実にふりむけます。

混合診療の拡大ではなく必要な医療は保険で

 安倍政権は「成長戦略」で「患者申出療養制度(仮称)」をはじめ、保険外治療を大幅に拡大する方向を打ち出しました。自費負担が大幅に増え、安全性が確保できない治療法をせまられるなど、難病患者の命と健康をおびやかしかねません。保険外併用療養費は縮小の方向に転換し、必要な医療は速やかに保険適用とすることを基本に、混合診療の原則禁止や国民皆保険制度の堅持をつらぬくよう求めます。

高額療養費制度を応能負担に

 慢性疾患、重い病気、低所得者の人などに過酷な負担となっている高額療養費制度の負担上限額に対して、所得区分を増やし、負担上限額を大幅に引き下げて、応能負担を徹底します。重い病気の患者ほど患者負担を自動的に引き上げる「1%」応益加算は廃止します。月ごとでなく治療ごとの限度額とするなど、同一治療でも、受けた時期によって負担額が違うという患者間の不公平を是正します。

 血友病、HIV、人工透析を受ける慢性腎不全の患者におこなわれている「長期高額疾病にかかわる特例措置」(負担上限額:1~2万円)の対象を拡充し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養給付制度(仮称)」を創設します。世帯の所得区分ごとに年間を通じた負担上限額を設けるなど、安心して治療を続けられる環境整備をはかります。

障害者自立支援医療の対象の拡充と負担軽減を

 日本共産党は、自立支援医療の低所得者の無料化をただちに行うよう求めてきました。厚生労働省は、「今年も検討中」を繰り返す、あいまいな態度をとっています。低所得世帯のすみやかな無料化を実施し、低所得世帯以外についてもさらなる負担軽減をはかります。

 障害者基本法による障害の定義が難病や慢性疾患によるものも含むものに拡充されたことも踏まえ、自立支援医療の対象拡充をすすめます。

 自治体ごとにおこなわれている重度心身障害者医療費助成制度を国の制度に変えて、すべての障害者を対象にし、難病患者も、当該難病の治療以外の医療に、障害者として使えるようにします。

 

(4)治療研究や医療体制の抜本的拡充をすすめる

 「研究奨励分野」の柔軟な運用の継続を求め、予算の抜本的拡充で臨床研究、研究奨励分野ともに研究対象疾患を広げ、原因究明や治療法の確立を求めます。

 来年度から難病研究は、独立行政法人日本医療研究開発機構による実用化研究と、厚生労働省が所管する政策的基礎研究に分かれます。これらの研究が、今後の難病治療に効果的かつ迅速に結びつくよう、十分な予算確保を求めていきます。

  有効な医薬品の開発を迅速に……未承認薬や適応外薬問題の早期解決をはかるため、製薬企業に強く承認申請を促すとともに、医師主導治験の推進のための予算を抜本的に拡充するなど、医薬品の開発体制を強化します。先進医薬品を「保険外併用療養」に組み入れるのでなく、有効・安全な薬はすみやかに保険適用としていくべきです。

 一方で、治験や承認申請の遅れなど、さまざまな事情により、未承認薬の使用や医薬品の適応外使用が患者の自己責任で行われています。国はこうした事態に何ら責任を持たず、実態把握もしていません。安全管理や患者保護、医療保険による薬剤費負担を含めた負担軽減の措置、患者の医薬品へのアクセス確保、臨床研究を妨げない等、欧州やアメリカのコンパッショネートユース(人道的な観点から未承認・適応外医薬品の使用を認める制度)の制度も参考にしながら制度化をすすめます。

 希少疾病の研究事業の更なる充実と継続的な支援をおこない、ウルトラオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の開発を円滑にすすめます。

 地域の難病治療体制の確立を……新制度では、新たに指定を受ける難病指定医が最初の診断と治療方針を決定することで、適切な治療を確保することが求められています。難病の地域医療の水準の引き上げのため専門医、看護師などの医療従事者の体制を計画的に、抜本的に拡充します。療養・介護施設が医療機関と連携できるよう、療養環境を整えます。24時間支援が必要な重篤患者の家族を支える体制を整えます。

 新制度のもとでは地域の支援で保健所が重要な役割を果たします。しかし、地方の財政難から広域化が進められ、著しく仕事が増加している現状を放置したまままでは、十分な役割を果たすことが困難です。国による財政支援の強化とあわせて広域化に歯止めをかけるなど保健所のあり方を見直し、保健師が地域の住民を訪問できる体制づくりを再構築し、すべての難病や慢性疾患をもつ人の窓口となるとともに、患者とその家族の支援に能動的に動けるような改革にとりくみます。

 各都道府県にある難病相談・支援センターを安定した事業運営にできるよう、予算の増額をはかり、人員体制の強化、拡充をすすめます。自治体のセンターの拠り所となる全国難病相談支援センターを設置するよう求めます。

 

(5)福祉サービスをさらに拡大へ

 昨年4月から障害者総合支援法において、「難病患者等居宅生活支援事業」の対象であった130疾患+関節リウマチが福祉サービスの対象に加わりました。現在、難病法の制定を受けて、さらなる福祉サービスの対象疾病の拡大が話し合われています。

 難病法の附帯決議では、福祉サービスについて指定難病の範囲よりも幅広にとらえることとされており、必要とするすべての難病患者が受けられるようなものにすべきです。対象疾患は「難病等」の「等」に着目し、「難病」の範囲に限らず、確定診断がなくとも、疾患による障害で福祉サービスが必要と医師が判断した場合はサービスを受けられるようにすべきです。また、当事者団体の意見をふまえて支給決定のしくみを抜本的に見直すとともに、当面、難病の特性を十分に反映したしくみにするよう求めます。

 来年4月から、障害福祉サービスを利用するための支給決定にあたって、相談支援専門員によるサービス等利用計画(ケアプラン)の策定が義務付けられます。身体障害者手帳を持たない難病等のある人たちの対象が増えることに伴って、これらの患者の特性を視野に入れた相談・支援が進むよう、相談支援専門員の研修や、報酬単価の増額を行うとともに、都道府県難病相談支援センターや当事者団体との連携を地域ですすめます。

 

(6)雇用、所得保障、教育の保障を

 障害者施策を、雇用・所得保障・教育などあらゆる分野で、難病・慢性疾患の特性を反映させたものに拡充します

 障害者施策の中に難病・慢性疾患患者を位置づける

今後、難病のある人は雇用、教育などあらゆる場面で、行政においては障害者施策の対象としての対応を行うことが問われてきます。

<雇用>

 病状や障害が進行しても働き続けられるよう、通院や病気休暇を保障します。

 ジョブコーチ制度などを充実させ、病状や障害が進行しても働き続けられるよう、通院や病気休暇を保障します。産業医療職に対して障害の特性の理解と具体的援助をすすめるための研修等を義務付けます。職業訓練や資格取得の支援制度を拡充します。

 障害者、難病患者の移動支援において、通勤のためのヘルパー利用をすみやかに認めるべきです。

 労働条件の切り下げやパワーハラスメントなどを防止するためのしくみを構築し、難病患者・障害者のはたらく権利をまもります。

法定雇用率に含め雇用の義務化を

 障害者雇用促進法「改正」法において、事業主が求人・採用や賃金の決定、待遇など障害者であることを理由に不当な差別的扱いをしてはいけないという規定に、断続的、周期的に障害が出て職業生活上相当制限がある難病患者などが含まれることが明確になりました。引き続き難病患者などが法定雇用率や雇用の義務化の対象になるよう求め、働き続けるためのさまざまな支援をすすめます。

 企業に賃金助成をおこなう発達障害・難治性疾患雇用開発助成金制度を、難病や慢性疾患をもつ人が使いやすいように緊急に制度改善をすすめ、制度の周知徹底を強力におこなうとともに、対象枠を広げ、企業への助成期間の延長、柔軟な雇用形態の実施などを求めます。この制度における難病の対象疾病は、障害福祉サービスと異なり、「130疾病+筋ジストロフィー」となったままです。難病法の施行に伴い、早急に改善を行い、障害者雇用制度における対象範囲は指定難病や障害福祉サービスの対象疾病よりも広くとらえて対象とします。

 2013年度から始まったハローワークに配置されている「難病患者就職サポーター」は全国でわずか15人です。その実績を検証するとともに、サポーターの役割と位置づけを明確化し、サポーターの人数を増やし、難病相談・支援センターとの連携を強めます。

<年金・障害認定>

 障害基礎年金を1・2級とも大幅に引き上げ、あわせて最低保障年金制度の実現で底上げをはかります。(最低保障年金制度については、各分野政策の「年金」の項目をご覧ください)。

 初診日認定は、精神障害や内部障害のように発病時期が特定困難な場合、現在の状態が基準に十分該当するにもかかわらず、初診日が証明できないために障害年金が受けられない場合、実態に即して支給すべきです。

 障害認定基準の抜本的な見直しを行います。とくに内部障害・疾病に共通した「一般状態区分」は障害の特性を見ず実態から大きく乖離する基準であり、これを唯一の日常生活、社会生活上のものさしとして一律に判定されている現状から、必要とする多くの障害者が障害年金を受けられずにいます。この基準を早急に見直し、医学系の専門家のみで構成されている現在の専門家会議の構成メンバーに当事者団体や社会的観点から実態を把握している専門家を入れるなどの認定審査体制の抜本改正をすすめます。

<教育>

 教職員の増員や施設設備のバリアフリー化など、十分な教育予算をとり、子どもに最適・最善の教育がなされるよう教育環境をととのえます。

 病児の状態に応じた柔軟な学習プログラムや制度の運用などを求めます。院内学級での教育を保障します。

 通常学級における特別支援教育の充実を図るため、学級定数を引き下げるとともに、障害のある子どもたちへの「合理的配慮」を保障する教職員の配置や施設設備の充実を図ります。また、特別支援学校の行き届いた教育保障のために、定数基準を引き下げます。

 特別支援学校の異常な過大・過密を解決し、「学校設置基準」を策定します。

 

 

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