各分野政策(2013年)

2013年参議院選挙各分野政策

27、難病

難病・慢性疾患のある人の新たな段階にふさわしい医療・福祉を

20136


 難病には5000から7000の疾患名があるといわれています。難病とは、医学的には治りにくく、研究や新薬開発の光が当たりづらい疾患です。社会的には、生活面の制約や経済的・精神的負担が大きく、社会の理解不足や施策の不備などからくる、社会的障壁による「障害」の概念も含む言葉です。

 難病対策は、1972年に始まった「難病対策要綱」にもとづいておこなわれてきました。臨床調査研究をおこなう130疾患が対象の「難治性疾患克服研究事業」や、徐々に対象を広げて130疾患中の56疾患を対象にした「特定疾患治療研究事業」による医療費助成がおこなわれてきました。1997年1月からは、介護保険、身障福祉の対象にならない難病患者等に対して、ホームヘルプサービスや日常生活用具などが提供される「難病患者等居宅生活支援事業」なども実施されてきました。

 難病・慢性疾患のある人とその家族は、「構造改革」路線によってもたらされた過重な医療費負担に苦しめられています。療養施設が極度に減少し、受け入れ施設のないまま在宅療養に移され、重介護が家族にのしかかっているケースも少なくありません。

 疾患という状態での障害を認めない、狭い障害概念のとらえ方から、難病・慢性疾患をもつ人は長い間、「福祉の谷間」におかれ、福祉サービスから除外されてきました。難病患者の1人あたりの年間医療費は、同年齢で比較すると、18・4倍(20歳から24歳)、9・7倍(30歳から34歳)など、特に若年層ではその差が顕著です。病気が治る展望も生活の見通しもなく、働くこともできずに自ら命を絶つ人もいます。

 当事者団体はこうした現状に声をあげ、医療費助成の対象疾患の拡大や、研究予算の拡大などに道を開いてきました。そうした必死の運動の積み重ねによって、難病対策は40年を経て、今年から新たな段階に入ろうとしています。ひとつは、医療費助成制度を法的に位置づけることが予定されていることです。もうひとつは、障害者総合支援法の「障害」の範囲に難病等が位置づけられ、難病患者も障害福祉サービスの利用ができるようになったことです。

 政府が、「社会保障と税の一体改革」の「充実」部分のなかに、難病対策の見直しを位置づけた背景にも、当事者の要求や世論の高まりがあります。同時に、「一体改革」には、難病患者にも大打撃となる消費税増税とともに、「より公平・安定的な支援のしくみをめざす」という名目で、新たな医療費の自己負担増を押しつけるねらいも打ちだされています。

日本共産党は、すべての必要な人が、医療も福祉も当然対象になる最善の制度を求めて、難病患者や家族・関係者のみなさんと連帯してたたかいます。

 

(1)新しい難病医療制度は難病患者すべてを対象とするものに

 この間、厚生労働省のもとにある審議会である難病対策委員会などによって、当事者も参加して話し合いがすすめられ、今年1月に難病対策委員会による「提言」がとりまとめられました。難病の定義と医療費助成制度を位置づける内容です。

 これまでの難病対策は、根拠法がないことから、「難病対策要綱」にもとづく予算措置としてシーリングの対象とされ、毎年不安定な立場におかれてきました。新しい医療費助成制度が法律に位置づけられることは、患者や国民の運動の成果です。

 一方で「提言」では、予算の制約から、一部の患者を助成対象から外す、重度者にも負担を求めるなど現在の水準を後退させることももりこまれました。

 新たな医療費助成制度は、①患者数が少ない、②病気の原因が不明、③効果的な治療法がない、④生活への支障が長期・生涯にわたる、⑤診断基準か客観的な指標があるという基準を全て満たす疾患を対象にしようとしています。患者数の基準については、患者数が全人口の0・1%程度という考え方も示されています。これまで国の研究事業や医療費助成の対象になった482疾患を患者数と診断基準を有するか否かで分類すると、60疾患程度が基準を満たさないという研究班の中間報告も示されています。

 生涯にわたって治療が必要な難病患者にとって、患者人口で線引きされてしまうことは到底受け入れられません。診断基準がなく、疾患概念が確立されていない疾患でも、他の難病と同様、自分の病気の今後や医療費への不安を抱える患者は数多くいます。

 現在医療費助成の対象となっている疾患はもちろん、今後「難病」とされる疾患はすべて新たな医療費助成制度の対象にするとともに、新たに発見された難病が、順次すみやかに医療費助成の対象になるしくみになるよう求めます。

軽症者も引き続き医療費助成の対象に

 さらに、対象疾患の中でも患者を区別して、「重症度が一定程度以上等あり、日常生活又は社会生活に支障がある者」以外の軽度者を医療費助成から外そうとしていることも重大です。「軽度」の患者であっても、高額な医薬品治療によって状態が維持されている場合もあり、医療費助成の必要性と重症か否かは必ずしも一致しません。また、治療によって良好な状態が維持されている患者が「軽度」とされ、結果として受診抑制による重度化を招くなど、患者の健康や財政の観点からも本末転倒な事態が生じかねません。

 治療研究を目的とするなら、軽症患者を研究データから外すことになり、今後の研究成果にも影響を与えかねません。軽症者も助成の対象とすべきです。

患者をさらなる苦境に追い込む“重症者への負担導入”はやめるべき

 厚生労働省は、新制度での医療費助成の基本的な考えを、「高齢者や障害者等などの他制度の給付との均衡をはか」り、「所得等に応じて月額限度額を設定する」としています。これまで無料だった重症認定(身体機能障害が長期間継続し介護を日常的に必要とする状態など)の患者にも、新たな負担を導入しようとしています。

 重症の難病患者は医療費負担の他に生活や介護など精神的にも経済的にも深刻な状況にある人がほとんどです。重症患者に自己負担を導入すれば、治療の継続が困難になるだけでなく、ただでさえ深刻な患者や家族の生活をさらに追い込むことになります。

 厚生労働省が比較の対象のひとつとしている、障害者総合支援法による自立支援医療は、原則1割の応益負担です。しかし、この負担水準は障害者の生活実態に照らして高すぎるとして政府自らが、低所得者の無料化を含む負担引き下げの検討を約束しているのです。この約束を放置したまま、難病医療費助成における自己負担を、自立支援医療水準にまで引き上げることは許されません。少なくとも現在の自己負担水準を維持すべきです。また自立支援医療の給付対象は「改善が見込まれる治療」に限られています。難病のように治療法がなく長期にわたり治療を続けなければならない患者との負担額の単純な比較はできません。

 

(2)小児期から成人期への移行期の疾患問題を緊急に解決する

 先天性心疾患や胆道閉鎖症、小児がんなど、先天性や小児期に発症する慢性疾患児は、医学の進歩により成人期を迎える人たちが多くなりました。その一方で、「小児慢性特定疾患治療研究事業」が20歳で打ち切りとなるため、成人期を過ぎた患者には医療費助成をはじめとする社会的支援策がなくなってしまうことが大きな問題となってきました。移行期の医療体制の整備も大きな課題です。支援の必要な人が成人期になっても切れ目なく医療費助成を継続し、成人後の医療・福祉・雇用など総合的な支援のしくみの構築をすすめます。また、学校生活における病児への配慮や親の役割などの検討、小児期に培うべき生きる力を病児にいかに保障するかなど、児童の発達と健全育成を病児にも保障するための対策などに取り組みます。

 現在の「小児慢性特定疾患治療研究事業」は、児童福祉法に基づく児童の健全発達に資する制度として、さらに拡充をはかります。

 新生児の代謝病などを発見する新生児マス・スクリーニング検査、さらに多くの疾患が発見できるタンデムマス方式の検査を、自治体まかせでなく、国の責任で実施できるよう財源を保障します。

 

(3)生存権にもとづいた医療費無料化を

 そもそも医療保険の原則3割の自己負担が患者を経済的に苦しめてきました。公的医療制度のある国では、窓口負担は無料もしくは少額の定額制が主流であり、外来でも入院でも原則3割の窓口負担という日本は、世界でも異常です。また、ヨーロッパの多くの国では、長期療養が必要な患者に、疾病の別なく、手厚い給付と負担軽減をはかる仕組みが整備されています。

 すべての国民は貧富の差にかかわりなく医療を受ける権利があり、医療の保障をする責務は国が負うというのが、憲法25条の精神です。日本共産党は、疾患・障害の区別なく、“窓口負担ゼロ”で医療を受けられる日本をめざしています。日本共産党は、2012年2月、「社会保障充実、財政危機打開の提言」を発表し、消費税増税とは「別の道」で財源を確保しながら、社会保障を再生・充実させていく道筋をしめしました。

 当面、医療費の窓口負担を「子ども〈就学前〉=無料、現役世代=2割、高齢者=1割」に引き下げます。そのなかでも、難病患者や障害者の医療費は優先して、すみやかに無料にすることが当然です。

 高額な自己負担、不必要な医療費の膨脹を招く原因のひとつである、高すぎる薬価にもメスを入れます。全国保険医団体連合会の調査によると、欧州諸国にくらべ、日本の薬価は平均で1・5倍から2倍になっており、後発品のない先発品の薬価を2割引き下げるだけで0・94兆円、医療費財政を節減できます。これによって生み出される財源を、医療の充実にふりむけます。

高額療養費制度を応能負担に

 慢性疾患、重い病気、低所得者の人などに過酷な負担となっている高額療養費制度の所得区分を増やし、負担上限額を大幅に引き下げて、応能負担を徹底します。重い病気の患者ほど患者負担を自動的に引き上げる「1%」応益加算は廃止します。月ごとでなく治療ごとの限度額とするなど、同一治療でも、受けた時期によって負担額が違うという患者間の不公平を是正します。

 血友病、HIV、人工透析を受ける慢性腎不全の患者におこなわれている「長期高額疾病にかかわる特例措置」(負担上限額:1~2万円)の対象を拡充し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養給付制度(仮称)」を創設します。世帯の所得区分ごとに年間を通じた負担上限額を設けるなど、安心して治療を続けられる環境整備をはかります。

障害者自立支援医療の対象の拡充と負担軽減を

 日本では、医療費の重い自己負担があるために、負担軽減のための様々な公費負担医療制度が実施されてきました。

 当面、障害者向けの公費負担医療を難病患者にも拡充させ、高額療養費制度のさらなる負担軽減を求めます。

 日本共産党は、自立支援医療の低所得者の無料化をただちに行うよう求めてきました。厚生労働省は、「今年も検討中」を繰り返す、あいまいな態度をとっています。低所得世帯のすみやかな無料化を実施し、低所得世帯以外についてもさらなる負担軽減をはかります。障害者基本法による障害の定義が難病や慢性疾患によるものも含むものに拡充されたことも踏まえ、自立支援医療の対象拡充をすすめます。

 自治体ごとにおこなわれている重度心身障害者医療費助成制度を国の制度に変えて、すべての障害者を対象にし、難病患者も、当該難病の治療以外の医療に、障害者として使えるようにします。

 

(4)治療研究や医療体制の抜本的拡充をすすめる

 「研究奨励分野」の柔軟な運用の継続を求め、予算の抜本的拡充で臨床研究、研究奨励分野ともに研究対象疾患を広げ、原因究明や治療法の確立を求めます。

有効な医薬品の開発を迅速に……未承認薬や適応外薬問題の早期解決をはかるため、製薬企業に強く承認申請を促すとともに、医師主導治験の推進のための予算を抜本的に拡充するなど、医薬品の開発体制を強化します。先進医薬品を「保険外併用療養」に組み入れるなど、自費診療・混合診療を拡大するのではなく、有効・安全な薬はすみやかに保険適用としていくべきです。

 一方で、治験や承認申請の遅れなど、さまざまな事情により、未承認薬の使用や医薬品の適応外使用が患者の自己責任で行われています。国はこうした事態に何ら責任を持たず、実態把握もしていません。安全管理や患者保護、医療保険による薬剤費負担を含めた負担軽減の措置、患者の医薬品へのアクセス確保、臨床研究を妨げない等、欧州やアメリカのコンパッショネートユース(人道的な観点から未承認・適応外医薬品の使用を認める制度)の制度も参考にしながら制度化をすすめます。

 希少疾病の研究事業の更なる充実と継続的な支援をおこない、ウルトラオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の開発を円滑にすすめます。

地域の難病治療体制の確立を……難病対策をすすめる上で、専門医など医療提供体制の不足は深刻です。厚生労働省・難病対策委員会の「提言」は、多分野の難病指定医(仮称)を配置する「新・難病医療拠点病院(仮称)」を、都道府県に原則1ケ所以上指定することなどを構想しています。

 制度の創設によって現に治療を受けている医療機関で治療が継続できないという事態が起こらないような制度設計にするとともに、難病の地域医療の水準の引き上げのため専門医、看護師などの医療従事者の体制を計画的に、抜本的に拡充します。療養・介護施設が医療機関と連携できるよう、療養環境を整えます。24時間支援が必要な重篤患者の家族を支える体制を整えます。

 今回の構想は、地域の支援で保健所が重要な役割を果たすこととされています。しかし、地方の財政難から広域化が進められ、著しく仕事が増加している現状を放置したまままでは、十分な役割を果たすことが困難です。国による財政支援の強化とあわせて広域化に歯止めをかけるなど保健所のあり方を見直し、保健師が地域の住民を訪問できる体制づくりを再構築し、すべての難病や慢性疾患をもつ人の窓口となるとともに、患者とその家族の支援に能動的に動けるような改革にとりくみます。

 各都道府県にある難病相談・支援センターを安定した事業運営にできるよう、人員体制の強化、拡充をはかります。自治体のセンターの拠り所となる全国難病相談支援センターを設置します。

 

(5)新たな障害の谷間を作らず難病患者等に必要な福祉サービスを

 2011年の障害者基本法の改正審議で、障害の範囲に難病等も含むことが答弁で明確にされました。それを受けて障害者総合支援法でも、障害の範囲に新たに難病等が含まれることになりました。これまで「難病患者等居宅生活支援事業」の対象であった130疾患+関節リウマチからのスタートです。

 障害福祉に難病も対象になったことを自治体が周知徹底するとりくみが遅れていることが、「しんぶん赤旗(13年5月5日付)」の調査からも明らかになりました。ホームページや広報紙での告知、パンフレットなど、さまざまな手段で受けられるサービスの内容も含めて丁寧に知らせることが必要です。

 障害福祉サービスの対象は、必要とするすべての難病患者が受けられるようなものにすべきです。対象疾患は「難病等」の「等」に着目し、「難病」の範囲に限らず、確定診断がなくとも、疾患による障害で福祉サービスが必要と医師が判断した場合はサービスを受けられるようにすべきです。また、当事者団体の意見をふまえて支給決定のしくみを抜本的に見直すとともに、当面、難病の特性を十分に反映したしくみにするよう求めます。

 

(6)雇用、所得保障、教育の保障を

障害者施策を、雇用・所得保障・教育などあらゆる分野で、難病・慢性疾患の特性を反映させたものに拡充します

 今後、難病のある人は雇用、教育などあらゆる場面で、行政においては障害者施策の対象としての対応を行うことが問われてきます。

病状や障害が進行しても働き続けられるよう、通院や病気休暇を保障します。

ジョブコーチ制度などを充実させ、職業訓練や資格取得の支援制度を拡充します。

障害者、難病患者の移動支援において、通勤のためのヘルパー利用をすみやかに認めるべきです。

 労働条件の切り下げやパワーハラスメントなどを防止するためのしくみを構築し、障害者のはたらく権利をまもります。

障害者雇用促進法「改正」法において、事業主が求人・採用や賃金の決定、待遇など障害者であることを理由に不当な差別的扱いをしてはいけないという規定に、断続的、周期的に障害が出て職業生活上相当制限がある難病患者などが含まれることが明確になりました。引き続き難病患者などが法定雇用率や雇用の義務化の対象になるよう求め、働き続けるためのさまざまな支援をすすめます。

企業に賃金助成をおこなう難治性疾患雇用開発助成金制度を利用したのは、11年度239人でした。難病や慢性疾患をもつ人が使いやすいように緊急に制度改善をすすめ、制度の周知徹底を強力におこなうとともに、対象枠を広げ、企業への助成期間の延長、柔軟な雇用形態の実施などを求めます。

障害基礎年金を1・2級とも大幅に引き上げ、あわせて最低保障年金制度の実現で底上げをはかります。(最低保障年金制度については、各分野政策の「(3)年金」の項目をご覧ください)。

 初診日認定は、精神障害や内部障害のように発病時期が特定困難な場合、現在の状態が基準に十分該当するにもかかわらず、初診日が証明できないために障害年金が受けられない場合、実態に即して支給すべきです。

学校のバリアフリー化、通学できない子どもたちの在宅学習の保障、臨床心理士をはじめとしたメンタルサポートの実施、医療サポートの充実をはかります。

特別支援学校の異常な過大・過密を解決し、「学校設置基準」を策定します。

それぞれの子どもに最適・最善の教育がなされるよう、どの子も排除されないインクルーシブ教育を実現します。

 

 

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