各分野政策(2013年)

2013年参議院選挙各分野政策

41、いのち・人権の保障

20136


 日本共産党は、社会のあらゆる面で憲法に保障された基本的人権が保障され、一人ひとりが大切にされる社会をめざします。とりわけ、社会的マイノリティとされる人びとの人権が尊重される社会をめざします。

 憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される」と明記し、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めています。これはどんな人でも人間らしく、安心して、幸福にくらす権利があることを宣言したものです。

 しかし、現状は、憲法が定めたこの規定からほど遠い状況にあります。とくに2012年総選挙の結果誕生した第2次安倍政権は、「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指します」(2013年2月28日の市政方針演説)などとして、大企業や財界、富裕層の利益・所得向上に躍起になっている一方で、国民のくらしと営業は「そのうち良くなる」という無責任ぶりです。しかも、福祉、医療などの社会保障は切り縮めるだけ削ろうという方針です。こうした国民生活切り捨ての政治のもとで、各層各分野で貧困がいっそう広がり、リストラによる雇用破壊も深刻化しようとしています。日本は、先進国のなかでも貧富の差が拡大し、経済的な格差が、そのまま学力の格差や医療格差につながり、それが命の格差にまでつながる社会になっています。

 一方で、いまだに思想、信条による差別もなくなっていません。マンションや団地に共産党のビラや戦争反対のビラを配布したというだけで、不当に逮捕・拘留されるだけでなく、有罪とされる事件もあとを絶たない状況です。法律を制定する際には国歌・国旗は国民に強制しないと答弁しておきながら、全国各地の自治体と学校で「日の丸」「君が代」への強制がまかり通っています。

 憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と宣言し、国がそのための責任を果たすことをもとめています。ところが、この十数年のあいだに貧困と格差が広がり、「市場原理主義」と「自己責任」の名のもとに、国民にたいする国の責任が投げ捨てられてきました。とくに、生活保護制度への攻撃がいっそう激しくなり、貧困や格差が広がり逆行して、人間らしい生活が根底から脅かされています。競争主義の導入と「自己責任」論の広がりが、それに拍車をかけています。

 こんな状況は、憲法で「すべて人間は、個人として尊重される」と明記された社会に百八十度逆行するものです。いま必要なのは、憲法で定められた人権の規定を、社会のすみずみに根づかせるとともに、国民が主権者にふさわしく政治に参加できるように制度を整備・改善することです。いまこそ、人間らしい生活を保障させる政治の責任を明確にするとともに、東日本大震災でも大きな力を発揮した、社会的連帯を強めるとりくみを全国津々浦々に広げるときです。

 性的人権を守り社会的地位向上をはかります……一人ひとりの人間の性的指向や性自認(心の性)は、実に多種多様です。社会のなかには、「異性愛者」のほかにも、「同性愛者」や「両性愛者」もいれば、心と体の性が一致しない人(性同一性障害)、性分化疾患(インターセックス)の人もいます。これらの人びとは、「性的マイノリティ」と総称されます。性的マイノリティの占める割合は、イギリス政府の調べでは英国人の6%(最新の人口で推計すると470万人)が、日本人の場合は4%とも5%とも言われています。日本共産党は、性的マイノリティの人権保障につとめます。

 欧米などでは性的マイノリティを保護し、その人びとの性的人権を守り、社会的地位を向上させるための施策の整備がすすんでいます。たとえば、同性同士の共同生活を事実上、夫婦同様のものとして公認し、権利を保証する「登録パートナーシップ法」や「パートナーシップ契約」(市民契約法)を制定している国は、ドイツ、フィンランド、英国、フランスなど世界各国に広がっています。

 また、2013年5月現在で、同性婚を合法化した国は、オランダ(合法化は01年、以下同じ)、ベルギー(03年)、スペイン、カナダ(ともに05年)、南アフリカ(06年)、ノルウェー、スウェーデン(ともに09年)、ポルトガル、アイスランド、アルゼンチン(10年)、デンマーク(12年)、フランス(13年)の12カ国にのぼります。さらに、今後、ウルグアイ、ニュージーランドでも合法化される見通しです。

 性的マイノリティにたいする社会的な理解の広がりのもとで、ベルギーやアイスランドなど、同性愛を公言している人が首相になった国もあります。(『週刊東洋経済』2012年7月14日号)

 また、米連邦最高裁は2013年6月26日、結婚を男女間のものと規定する連邦法(結婚保護法)の条項を「違憲」とする判決を下しました。米国ではすでに12の州と首都ワシントンで同性婚が認められていますが、同性婚のカップルには、男女の夫婦に適用される税制や社会保障の9優遇措置は例外扱いとされてきました。最高裁判決によって、同性カップルも男女夫婦と同等の優遇措置を受けられる道が開かれたことになります。

 一方、日本をはじめとして、社会のなかにはいまだに性的マイノリティへの誤解や偏見が根強く存在します。そのもとで、自分の自然な性的指向や性自認を否定的にとらえ、強い疎外感や社会不信、自己否定の気持ちにかられる人もいます。こうした人たちも、同じ一人の人間として、堂々と「自分らしさ」を主張でき、個性豊かに暮らせる社会をつくることが求められています。

 性別や性自認、性的指向を理由とした、就労や住宅入居などのあらゆる差別をなくし、生き方の多様性を認め合える社会をつくります。公的書類における不必要な性別欄を撤廃するよう求めます。未成年の子どもがいても性別の変更が可能となるよう、「性同一性障害特例法」を見直します。また、性同一性障害の適合手術には数百万円がかかるなど、当事者の負担は深刻です。保険適用に性同一性障害をくわえ、治療のできるクリニックの拡充を求めます。

 公営住宅、民間賃貸住宅の入居や継続、看護・面接、医療決定の問題など、同性のカップルがいっしょに暮らすにあたっての不利益を解消するため力をつくします。欧米各国のパートナーシップ法などを参考に、日本でも性的マイノリティの人権と生活向上、社会的地位の向上のために力をつくします。

アイヌ民族の生活向上と権利の擁護のために……08年の通常国会では「アイヌ民族を先住民族とする国会決議」が全会一致で採択されました。これは、国連総会での決議「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007年9月13日)を踏まえたものです。従来、アイヌを「先住民族」と認めてこなかった日本政府も、国会決議をうけ、「政府として先住民族として考えている」(町村官房長官談話)と表明しました。これまでの政府によるアイヌ政策は、文化振興にたいして一定の焦点があてられてきただけで、アイヌの人々の生活向上には正面からとりくんできませんでした。しかし、09年7月29日に政府の「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」は、アイヌの生活向上と権利を回復するための新法制定を求める報告書を提出しました。日本共産党は、アイヌ民族の生活と権利を擁護するために、こうした新法を含め、施策の抜本的拡充を要求します。

 (※ 「日本共産党北海道委員会の総選挙政策」の「10アイヌ民族の生活と権利を守ります―先住民族権利宣言の全面的実効と46カ条の諸権利の確立を―」をご覧ください)

在日外国人の生活と権利向上……厚生労働省の調査によれば、わが国で合法的に就労する外国人労働者(派遣、請負含む)は、119,731カ所の事業所に682,450人います(2012年10月末現在)。日本共産党は、外国人労働者が人間らしい生活を営めるよう、労働条件の改善をはかることを要求します。永住外国人(特別永住資格を含む)に地方参政権を保障する立法の実現に全力をつくします。地方自治体の運営は、本来、すべての住民の参加によってすすめるのが憲法の保障する地方自治の根本精神です。永住外国人を地方自治の担い手としてむかえ、日本国民と等しく参加する政治を実現することは、わが国の民主主義の成熟と発展につながります。

日本軍「慰安婦」への謝罪と名誉回復……旧日本軍による「慰安婦」問題は、日本がおこした侵略戦争のさなか、植民地にしていた台湾、朝鮮や、軍事侵略していた中国、東南アジア諸国などで女性たちを強制的に集め、組織的継続的に性行為を強要したという非人道的行為です。日本軍「慰安婦」の実態は、日本軍将兵の性欲処理のために、10代前半の未婚・未成年も含む女性を性的奴隷状態においたものでした。その数は8万人から20万人以上ともいわれます。「慰安施設」を軍組織の一部として設置・運営・管理した日本軍と日本政府の責任はきびしく問われなければなりません。

 ところが、橋下徹・大阪市長は、「銃弾が飛び交う中、精神的に高ぶっている猛者集団に休息を与えようとすると、慰安婦制度が必要なのは誰だって分かる」(2013年5月13日)などと、日本軍「慰安婦」制度が必要だったなどと主張、一方で「沖縄に行った時(米軍の)司令官に会い『もっと風俗業を活用してほしい』と言った」などと言い放ち、世界中から激しい抗議が巻き起こりました。橋下氏はその後、米軍への「風俗業活用」発言については「撤回」と「謝罪」をしたものの、「慰安婦が必要だった」などとした暴言については、「メディアの誤報」とか「国民の読解力不足」などと居直ってまともに謝罪しようとしていません。

 橋下市長の暴言のあと、日本維新の会の関係者からは橋下氏の発言を擁護し合理化するような主張が相次ぎました。もはやこうした勢力に、国政はもちろん、地方政治も語る資格もありません。

 一方、橋下暴言について、安倍首相は「立場は違う」とは主張できても、発言内容そのものにたいする正面切っての批判はしていません。それはとりもなおさず、橋下発言が、安倍首相自身がたびたびのべてきた「従軍慰安婦は強制連行されたものではない」などという主張と同根だからです。

 日本がアジアと世界から信頼され、国際社会で名誉ある地位を占める国になるためには、過去の侵略戦争と植民地支配の誤りをきっぱりと認め、その負の遺産を清算する立場にたつことが不可欠です。そのためにも、首相、閣僚の靖国神社参拝をはじめ、日本政府の責任ある立場の政治家が、侵略戦争を肯定・美化するような行動、言動をとらないようにしなければなりません。

 また、日本の侵略戦争と植民地支配の歴史を子どもたちに正しく伝え、アジアと世界の国ぐにと平和・友好の交流を積極的におしすすめることが必要です。公教育に侵略戦争の美化・肯定を持ち込むことは許されません。政府や自民党などの教科書検定や教科書出版社への不当な介入、圧力をやめさせるために、日本共産党は、良識ある国民のみなさんとともに力を尽くします。

 日本軍「慰安婦」問題では、日本政府として公式に謝罪し、個人補償を行うことが不可欠です。韓国政府は、「慰安婦」被害者の賠償問題について、日韓請求権協定にもとづく政府間協議を繰り返し日本政府に求めています。政府は「解決ずみ」などとして協議を拒否する態度をあらため、「この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする」(同協定3条1項)にもとづき、韓国政府との協議に、早急かつ誠実に対応することが求められています。政府に「慰安婦」問題の真の解決と、国による謝罪・賠償、教科書への記載をおこなうことをもとめます。国会の責任として、これを促す「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律」の成立のために力をつくします。

児童ポルノ禁止法改定問題について……子どもを性的対象とする児童ポルノは、子どもにたいする最悪の虐待行為であり、その非人間的な行為を日本共産党は絶対に容認することはできません。1人の被害者も出さない社会をつくりだすことは、大人社会の重大な責任です。

  同時に、児童ポルノそのものの作成・流通・販売をきびしく禁止し、取り締まることと、「単純所持」を法的に禁止することは厳密に区別する必要があると考えます。

 自民党、公明党、日本維新の会の3党は、2013年5月29日、児童ポルノ禁止法の「改正」案を衆議院に提出しました。「改正」案によれば、写真やデジタル画像など児童ポルノの所持を禁止する「単純所持の禁止」を導入し、「自己の性的好奇心を満たす目的」の所持には刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)を科しています。また漫画やアニメ、CG(コンピュータ・グラフィック)などと性犯罪などとの関連性を「調査研究」するよう政府に求め、施行から3年後に「必要な措置」をとるとしています。

 これは、従来の自公案に、維新の会も乗ったもので、これまでの「単純所持」規制案となんら変わるところはありません。

 現在、インターネット上などで流布されている児童ポルノは、そのほとんどが現行法によって取り締まることが可能です。児童ポルノ法第7条では、「児童ポルノを提供し」、それを目的として「製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者」にたいして、「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」がかけられることになっています。これを厳格に運用するなら、ネット上に流れているほぼすべての児童ポルノを一掃することが可能となります。

 一方、児童ポルノ法で単純所持を一律に規制したり、漫画・アニメーションなどの創作物も規制対象に加えたりすることは、児童ポルノ問題の解決に役に立たないだけでなく、逆に、人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねません。

 第一に、たとえ単純所持を法律で一律に規制したとしても、児童ポルノの流出の効果的な歯止めにならないことは、単純所持を禁止しているはずの欧米各国の実態からも明りょうです。よく、「主要8カ国のなかで児童ポルノの単純所持を規制していないのは、日本とロシアだけだ」と指摘されます。しかし、現にインターネット上に流出している児童ポルノ(児童虐待)の動画像は、単純所持を禁止している欧米諸国からのものが圧倒的に多数です。たとえば、イタリアに本拠をおく児童保護団体の「虹の電話」による調査(2010年1月発表)では、2009年に確認された児童ポルノのサイトは4万9393件とされ、そのうち日本は、0.1%の54件となっています。一方、上位5位はドイツ(1万9488件、39.5%)、オランダ(1万277件、20.8%)アメリカ(8411件、17.0%)、ロシア(7118件、14.4%)、キプロス(1688件、3.4%))となっており、この5カ国だけで全体の95%を占めます。このうち、上位3カ国はいずれも児童ポルノの単純所持が禁止されています。このことをとっても単純所持の禁止や規制が、児童ポルノ流出の歯止めにならないことは明らかです。

 第二に、ネット上に流出していないにもかかわらず、単純所持を規制し、それを処罰するという場合、どのようにして単純所持を証明・把握するのかという問題があります。このことは、「憶測」や「疑惑」の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険があります。また、表現の自由や、家庭生活上の写真などと児童ポルノとの関係なども考慮しなければなりません。

 なお、本来あってはならないことですが、万一被害にあった子どもがいる場合、そのプライバシーを最大限に尊重しながら、その後、社会生活を安心して送り健やかに成長できるよう、万全の保証をする必要があります。

 日本漫画家協会や日本雑誌協会からは、自公維の「改正」案にたいして、きびしい反対の意見が上がっています。たとえば、漫画家協会の「児童ポルノ規制法案に向けての意見書」(2013年5月29日)は、「他国に類を見ない独自のマンガ文化を育んできた日本の貴重な文化的土壌が、危機的に変質させられる可能性が非常に高い今回の規制法案について、創作者の立場から見過ごせない問題がある」「今回の法案では、単純所持まで規制の対象としており、仮にマンガ・アニメなども規制の対象になると、諸外国のような文化的除外規定のない我が国では、多くの漫画家が新たに描き起こす、未来の作品全般に対する重大な悪影響はもちろん、過去作品の原稿までが新しい規制に抵触してしまいます」と重大な懸念を表明しています。

 また、日本雑誌協会の「『児童ポルノ禁止法』改正法案への反対声明」(2013年5月29日)も、「『児童ポルノ』の定義が曖昧なままでの「単純所持禁止」は不当な処罰を招く」としたうえで、マンガ・アニメにまで規制を及ぼそうとしていることについて、「児童保護の名を借りて不要な表現規制をかけ、読者から漫画を読む権利を奪うものといえる。そうした過剰規制は表現の萎縮を招き、漫画という日本の誇る表現形態の破壊につながりかねない」と批判しています。この声明には、日本出版書籍協会も名前を連ねています。

 このほかにも日本マンガ学会、日本アニメーター・演出協会、全国同人誌即売会連絡会などの関連団体から、いっせいに批判の声があがっています。

 安倍首相は、2013年2月28日の施政方針演説で、マンガやアニメなどを、世界に誇る文化として発信していこうと、次のように演説しました。

 「日本のコンテンツやファッション、文化・伝統の強みも、世界から注目されています。アニメなどのブームを一過性のものに終わらせることなく、世界の人たちを惹(ひ)きつける観光立国を推進することに加え、『クール・ジャパン』を世界に誇るビジネスにしていきましょう」

 それぞれの国民や業界団体などがそれぞれの立場で開拓し蓄積し、根づかせてきた文化や芸術について、海外に売り込むために政府が音頭をとったり主導したりする点については、さまざまな意見や疑問があります。しかし、前述した諸団体の反対声明にあるように、自公維3党の児童ポルノ禁止法の「改正」案は、みずからの戦略に照らしても、日本発祥の世界に誇るアニメ・マンガ文化を振興するどころか、逆に水をさしたり冷水を浴びせたりする結果にしかならないことは明白です。

個人情報とプライバシーの保護のために……個人情報保護法に、自己情報の取り扱いに本人が関与し選択できる「自己情報コントロール権」を明記するよう要求します。思想・信条や病歴・犯罪歴などの収集・取り扱いは、原則禁止すべきです。個人情報の漏えいが心配される住民基本台帳ネットワークの中止を要求します。個人情報保護措置の策定や、漏えいの恐れがある場合のネットからの切断措置など、自治体として可能な対策をとらせます。

 住民基本台帳の閲覧制度を改善し、個人情報は原則非公開とすることを求めます。

 公共サービスの窓口業務の民間委託化に反対し、住民のプライバシーを守らせるようにします。

自殺防止に全力を尽くし、自殺者をつくりださない社会をめざします……2012年の日本の自殺者は2万7,858人にのぼります。3万人を下回ったのは1997年以来、15年ぶりとなりました。自殺者数が減ったこと自体は歓迎すべきことですが、いまだに3万人近い人びとが自殺に追い込まれる社会は、やはり異常といわなければなりません。

 自殺者のなかでもとくに重大なのは、20代を中心とする若い世代の自殺率が高い水準にあることです。年齢別でみた場合、人口10万人あたりの自殺率は、20代が22.5人で、年間2万4,391人だった1997年より9.2人も増加しています。また、30代は21.9人(97年比4.7人増)、40代26.1人(同4.0人)と、いずれも全体の21.8人(同2.5人)を上回っています。

 自殺問題は、なによりも本人にとっても家族にとっても絶対にあってはならないことであり、社会にとっても重大な問題です。減少傾向を示しているとはいえ、現状のまま放置することは、絶対に許されません。

 日本の自殺は、世界的にみても突出して異常な高さとなっており、「自殺大国ニッポン」という不名誉な言葉さえ生みだされています。しかも、日本の自殺者は働き盛りとされる40代、50代で突出して高いことが問題視されてきましたが、とりわけ、この間の大きな特徴は、20代、30代の自殺者が増加してきたことです。

 個々の自殺の背景と事情には、さまざまな理由があり、一つにはくくれないとされています。しかし、最近、自殺について社会的問題として解決しようとするなかで、日本社会のあり方――とくに憲法第25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」――との関係がクローズアップされています。とりわけ、自殺の原因としてもっとも多かったのは「健康問題」であり、つづいて「経済・生活問題」とされていることで、このことがいっそう注目されています。

 自殺を誘発しかねない「社会的要因」をとりのぞくためにも、「人間に温かい社会」に変え、それに必要な施策をすすめることが重要です。そのために政治と行政ができることは無数にあります。なによりも、まず、この間の「貧困と格差」を拡大してきた路線を根本的に転換し、社会保障や医療制度を改悪してきた政策を改め、すべての国民が、憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営める」生活を送れるような施策を講じる必要があります。消費税の税率を2014年4月から8%に、15年10月から10%に現行の2倍に引き上げるような増税は、中小零細業者に打撃をあたえ自殺問題をさらに深刻にすることにもなりかねません。民主党政権のもとでも自公政権同様に社会保障改悪が強行されてきましたが、2013年度以降は、民自公3党が、社会保障制度の改悪にさらにつきすすもうとしています。ただでさえ生活苦にあえぐ低所得者層にたいして、消費税増税をおしつけ、さらに命綱ともいえる社会保障制度の切り捨ては、絶対にあってはなりません。日本共産党は、消費税増税を中止させるために全力をあげます。

 自殺問題の解決にむけて、日本共産党は当面、以下のような施策をただちに実行に移していくことを求めます。

 ――不安定雇用の急速な拡大に歯止めをかけ、非正社員の権利を守る。長時間・過密労働やサービス残業を根絶する。

 ――大企業による下請けいじめや身勝手を規制し、中小企業の経営を守るルールを確立する。

 ――各自治体や、自殺・貧困問題にとりくむNPO(非営利法人)などを中心に自殺対策の努力が広がっており、こうした機関・組織などと連携しながら、自殺の未然防止、問題の改善と解決に向け努力する。

 ――年金・介護・医療など社会保障の負担増、サービス切り捨てをやめ、社会保障を予算の主役にすえる。生活保護が必要な人を切り捨てるような行政を改める。

 ――競争と管理の教育から、子どもの発達と成長を中心にすえた教育に転換する。

 警察が収集し、内閣府が保有している地域別、職種別などの詳細な自殺をめぐるデータが非公表とされています。自殺対策をすすめるために、プライバシーに配慮しつつ、データの公表を求めます。

 こうした施策の充実、拡充とともに、うつ病対策などのメンタルヘルス(心の健康)の問題にも、政府や行政が積極的に対応するようにしなければなりません。心の病を患っている人にたいし、適切なケアを施す体制を、職場や地域に確立することが求められています。

シベリア・モンゴル抑留者の実態調査、遺骨収集等の取り組みをすすめます……2010年6月に成立した「戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法(シベリア特措法)」にもとづき、2012年3月までに、終戦直後、旧ソ連、シベリアやモンゴルに抑留され、強制労働に従事させられた元抑留者に、特別給付金(25万円~150万円)が支給されました。

しかし、シベリア抑留をめぐる課題はこれからです。ひとつは、シベリア特措法は、特別給付金受給者について日本国籍を有する生存者としたために、日本軍の軍人・軍属だった台湾・朝鮮半島出身等の強制抑留者が対象から外されていることです。こうした日本国籍以外の強制抑留者に応える方策の検討が求められています。

また、シベリア特措法第13条は、政府に対し強制抑留の実態調査等についての基本方針を策定することを義務づけました。これは、特別給付金の支給だけで終わらせるのではなく、強制抑留下での死亡確認や遺骨、遺品の収集、シベリア抑留問題に関する真実の究明、過酷な抑留体験の次世代への継承をはじめとした総合的な取り組みを、国が責任をもって実施することを法定化したもので、元抑留者の強い願いが込められたものです。政府は、2011年8月、「強制抑留の実態調査等に関する基本的な方針」を閣議決定し、予算も措置されてきましたが、その取組はまだまだ十分なものではありません。

元強制抑留者をはじめ、シベリア抑留問題を研究する国内外の識者・専門家等の力の幅広い結集、情報開示の徹底などを通じて、取り組みを大きくすすめていくことが必要です。

民族差別を助長するヘイトスピーチを許さない社会の建設を……在日韓国・朝鮮人が多く居住する東京や大阪などの一部地域で、民族差別を助長する、とんでもない集会やデモが頻繁に開かれています。これらの勢力は、「韓国人を射殺しろ」「ソウルを火の海にしろ」「いい朝鮮人も悪い朝鮮人もいない、皆殺しにしろ」など、およそ聞くに堪えない罵詈雑言(ばりぞうごん)を叫びたて、関係者と周辺住民の不安と恐怖心をあおっています。特定の人種や民族、国民にたいする常軌を逸した攻撃は、ヘイトスピーチ(憎悪表現)と呼ばれます。これらの主張は、民族差別を助長するものであり、たとえ憲法上、「集会・結社の自由」や「表現の自由」が保障されているからといって、絶対に許されることではありません。

 1948年の第3回国連総会で採択された世界人権宣言は、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」(第1条)、「すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる」(第2条)とし、第3条では、「すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する」と明記されています。

 日本でヘイトスピーチが公然化している背景に、それを許す政治的土壌が存在しています。その重要な温床となっているのが、安倍首相や橋下徹・大阪市長など政治指導者、公人による侵略戦争美化・合理化の歴史認識です。日本の侵略戦争への根本的反省のもとに生み出され、基本的人権と民主主義の原則を高らかにうたった現行憲法を軽視・無視する政治も、そうした風潮に拍車をかけています。

 また、日本の高校授業料は無償化しながら、朝鮮学校の高校については無償化を除外していることも、日本政府による外国人差別にほかなりません。文部科学省は2013年2月20日に省令を改定し、外国人学校のなかで唯一、朝鮮学校を無償化(就学支援金制度)の対象からはずしました。日本政府が先頭に立って外国人差別を助長するようなやり方は、絶対に許すことはできません。こうした対応に、国連をはじめとする国際社会から厳しい批判があがるのも当然です。

 日本もふくめ世界の176カ国が加盟する国連人種差別撤廃条約は、加盟国にたいし、「人種的憎悪及び人種差別を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し」、「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」を求めています。(第4条)

 この条約では、ヘイトスピーチにたいする法的な規制を各締約国に求めていますが、日本国内では、表現の自由をはじめとする憲法上の規定から、法規制については賛否分かれてのさまざまな意見があります。しかし、少なくとも日本政府や行政府としては、現行法の枠内でも、そうした言動を許さず、生み出さないために必要なことは少なからずあるのであり、厳格な対応が求められています。

 いまのような状況を放置するなら、日本は世界の国ぐにから「人権後進国」の烙印を押され、国際社会で生きていく足場を失うことになってしまいます。

 

 

 (c)日本共産党中央委員会