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日本共産党

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赤旗


働くみなさんへのアピール

賃上げと安定した雇用の拡大で、暮らしと経済を立て直そう

2013年2月14日 日本共産党


試算表・グラフのPDF書類(PDF形式)

働くみなさんへのアピール(PDF)

世界でも異常な賃下げと雇用不安――賃上げと雇用の安定は切実で当然の要求です

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(図)上(グラフ1)  下(グラフ2)

 働く人の賃金の低下と労働条件の悪化に歯止めがかかりません。昨年の勤労者の平均賃金は、1990年以降で最低となり、ピーク時の1997年より年収で約70万円も減っています。非正規雇用が、労働者の3人に1人、若者と女性では2人に1人にまで広がり、年収200万円にも満たない労働者が1000万人を超えています。低賃金で不安定な働き方の非正規雇用の拡大は、正規雇用の労働者の賃金と労働条件の低下、長時間労働に拍車をかけています。

 この10年余の間に、平均でも月給の2カ月分程度の収入がなくなったのですから、ローンや教育費をはじめ、労働者とその家族の暮らしの悪化は深刻で、賃上げと安定した雇用への願いは、いよいよ切実です。同時に、賃下げと雇用不安が広がり続ける日本社会の現状は、世界の流れから見ても異常さを際立たせています。

 賃金が長期にわたって、連続的に減り続けている――こんな国は先進国の中でも日本だけです……日本は、1997年からの14年間に、働く人の所得(雇用者報酬)が88%に減少しました。同時期に、欧米諸国では、アメリカ―178%、イギリス―190%、フランス―163%、ドイツ―129%となっています(グラフ 1)

 最低賃金は先進国で最低水準です……日本の最低賃金は、全国平均時給749円にすぎず、フランス1084円、イギリス928円、オランダ1021円、アメリカ753円(2012年OECD購買力平価)など、先進国で最低水準です。最低賃金で年間2000時間働いても年収は150万円以下ですから、低賃金労働者を生み出しやすく、それが全体の賃金を引き下げる構造になっています。

 非正規雇用の急増も日本の異常さの表れです……日本の非正規雇用は、1980年代から1990年代の前半までは労働者全体の1~2割程度でしたが、いまや35・5%までになっています。これもドイツ―14・5%、フランス―13・5%、イギリス―5・7%と比しても異常な多さです。EUでは、「ヨーロッパは、低賃金と低技能を利用して国際競争力を維持することはできない」(2007年3月 ヨーロッパ議会雇用・社会問題委員会の文書)としています。

 無法な解雇が横行しています……10回にもおよぶ「面談」での「退職強要」、退職に追い込む対象者を「追い出し部屋」に閉じ込める、終業時間間際に「成績不良」と決めつけた「解雇通告」を読み上げ、「私物をまとめてすぐ出て行け、二度と会社に来るな」というロックアウト解雇――こんな無法がまかり通っているのも日本でだけです。

 ILO(国際労働機関)は、1999年の総会で「ディーセント・ワーク」――人間らしい生活を営める、働きがいのある労働――をかかげ、その実現に向けて国際的な取り組みがすすんできました。ところが日本では、これに逆行して、1990年代後半から「使い捨て」の非正規雇用が広がり、賃金も下がり続け、無法なリストラ・解雇が横行するという、“人間らしく働き生活する”という、世界では当たり前の労働者の権利がないがしろにされてきました。

 2013年春闘では、全労連は「月額1万円以上の賃上げ」、連合は「1%の賃上げ」と、それぞれが賃上げを要求しています。賃上げと安定した雇用の拡大は、労働者とその家族の生活の実態からも当然であるとともに、世界の流れからみても、きわめて当然の要求です。日本共産党は、この要求を強く支持するとともに、ともにその実現のためにたたかうものです。

働く人の所得を増やして、デフレ不況打開へ

 同時に、賃上げと雇用の安定は、デフレ不況の打開のためにも待ったなしの課題です。働く人の所得が増えてこそ、民間消費と国内需要を活性化させることができるからです。全労連も、連合も、賃上げと安定した雇用の拡大を、労働者の要求としてかかげるだけでなく、デフレ不況打開のためとしても位置づけています。

賃下げ、非正規拡大がデフレ不況の悪循環をつくりだしています

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(図)(グラフ3)

 1997年度比で、日本企業全体の経常利益は、2011年度には1・6倍に増えていますが、働く人の所得(雇用者報酬)は9割以下に減少しました(グラフ 3)。同時期に、輸出は1・25倍になりましたが、国内需要は約1割減少しました。「国際競争力のため」といって乱暴なコスト削減で輸出は増やしたけれど、働く人の所得を大幅に引き下げたために、国内需要が減少し、デフレ不況の悪循環に陥っているのです。

 それぞれの企業だけをみれば、売り上げの減少をコスト削減で乗り切る、人員削減や非正規雇用への置き換えで当面の利益を確保することは、合理的に見えます。しかし、日本中の大企業が同じことをすれば、国民の所得が減り、消費と内需を冷え込ませ、さらに売り上げが落ち込み、所得が減っていくという悪循環に陥ります。一つ一つの企業にとっては「合理的」に見えても、みんながやれば大きな間違いになる――いわゆる「合成の誤謬(ごびゅう)」に陥っているのです。

 働く人間の「使い捨て」は、産業の競争力さえも脅かしています。目先の利益優先で、人減らしや非正規化に走れば、それと引き換えに、企業や産業にとっていちばん大切な働く人間の力を失うことになります。「優秀な若い人は展望が開けず辞めていく。技術者がたくさん韓国のサムスン電子に移っていった。……それでも会社は引き留めない。当面、人件費を下げる方が大事だからね。寂しいですわ」――パナソニックの元幹部の話です(東京新聞2012年12月21日付)。働く人間をモノのように「使い捨てる」やり方は、仕事へのモチベーションも、技術力も喪失させ、競争力さえも減退させています。

内部留保の一部を賃金と雇用に還元する――経済の好循環をつくる突破口です

 内部留保の1%程度でも大きな賃上げが実施できます……働く人の所得を増やす方向に転じるにはどうしたらいいでしょうか。カギは、巨額の内部留保を、社員の給与として、それぞれの企業が使う方向に動きだすことです。

 自社の内部留保のほんの一部を給与に回せば、ほとんどの大企業で賃上げが実現します。例えば、500億円以上の内部留保をもっている約700の大企業グループについてみると、1%程度を取り崩せば、8割の企業で月額1万円の賃上げが実施でき、月額5000円以上であれば9割以上の企業で可能です。(試算は表1

 大企業は、人件費とともに、下請け・納入単価の強引な切り下げも行ってきました。これも、消費と内需の減少による売り上げ減とあいまって中小企業での賃下げにつながっています。乱暴な「単価たたき」をやめ、適正な単価にする、そのためにも各企業が内部留保を活用するべきです。

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(図)(グラフ4)

 余剰資金を動かし経済を活性化させる最良の道が賃上げと雇用です……大企業の内部留保は、この10年間で100兆円も積み増しされ、260兆円にも達しています(グラフ 4)。人件費削減で目先の利益は増やしたものの、国民の所得が減り、市場が収縮したために、企業経営としての有効な「使い道」もなくしてしまいました。その結果、企業の内部に余剰資金として滞留する資金が急増していったのです。

 財界などは、「内部留保は工場や機械になっているから取り崩せない」と言います。しかし、内部留保が増えた時期は、設備投資も減っており、工場や機械にはなっていません。内部留保が増えても、それが設備投資として工場や機械になっていけば、そこから新しい雇用も生まれ、関連企業の仕事も増え、経済に還流していきますが、そうなってはいないのです。日本経済の全体として、企業内部に滞留する余剰資金が増え続けることは正常ではありません。企業経営にとっても、将来性がある姿とは言えないでしょう。少なくないエコノミストや企業経営者からも、「企業内部の余剰資金を動かすべきだ」という指摘もされています。

 デフレ不況で市場―内需が冷え切っているなかで、余剰資金を新たな設備投資に振り向けることは期待できません。賃上げと安定した雇用の拡大によって、内需を活発にすることこそ余剰資金を生かせる道であり、そのほんの一部を充てれば、日本経済の好循環を作り出す突破口になります。

企業の社会的責任をどのように果たすのかが、いま問われています

 ところが日本経団連は、賃上げを拒否するだけでなく、定期昇給の見直しなどと、いっそうの賃下げに走ろうとしています。さらに、電機・情報産業での13万人リストラ計画をはじめ、退職強要や解雇、雇い止めなど、雇用を喪失させ、地域経済にも打撃となる大リストラが行われています。

 企業の経営者には、自分の企業の目先の利益や株主への配当だけでなく、「日本経済の成長の中で業績の回復をはかる」視点が必要ではないでしょうか。デフレ不況から抜け出すために、企業の社会的責任をどのように果たすのかが、いま問われています。

 日本共産党は、大企業の経営がどうなってもいいという立場ではありません。日本経済への巨大な影響力にふさわしく社会的責任を果たす必要があると考えているのです。大企業・財界が、企業の社会的責任を自覚し、内部留保の一部を、賃上げと安定した雇用を増やすために充てることを、強く求めるものです。

政府が賃上げ目標をもち、それを実現する政策を実行する――「企業まかせ」でなく、政治の責任を果たすときです

 国民の暮らしと、その最大の基盤である雇用を守ることは、政治のもっとも基本的な仕事であり責任です。ところが安倍内閣には、自公政権時代に自らがすすめた労働法制の規制緩和、非正規雇用の拡大など、働く人の所得を減らし続けた経済政策の分析も、反省もありません。

 安倍内閣には、物価を2%上げるというインフレ目標はあっても、賃上げ目標はありません。「企業の業績が回復すればいずれ賃金は上がる」というだけです。しかし、「失われた20年」と言われる中でも、企業の業績が回復し、史上最高の利益を上げた時期もありましたが、その間も、賃金は下がりました。金融緩和などで一時的に円安や株高が起きても、働く人の所得増に結び付ける努力がなければ、本格的な景気回復に向かうことはできず、「ミニバブル」で泡と消えてしまいます。

 働く人の所得を増やすために何をすべきか――この日本経済が直面している問題に、政治が真正面から取り組まなければ、デフレ不況から抜け出すことはできません。日本共産党は、政府として、賃金を上げる目標をしっかりもち、賃上げ政策をすすめることを求めるものです。

財界の「賃下げ・デフレ不況加速」への間違った行動をただす

 日本経団連は、「定期昇給の延期・凍結」による新しい賃下げを提起し、派遣法や労働時間制度など、労働法制のいっそうの規制緩和を要求しています。「実質的な賃金は上昇している」、物価が下がっているのだから「生活水準が低下しているとの主張は適切ではない」とまで言っています(『2013年版 経営労働政策委員会報告』)。“物価が下がっているから、働く人の所得をもっと下げてもいい”というのでは、デフレ不況促進策です。

 安倍内閣は、国会で「経営者に“収益が上がれば賃上げを要請する”という形で協力していただきたい」(安倍晋三総理)「(賃上げ)できる条件に企業側があることはたしかだ」(麻生太郎副総理)と答弁しました(2月8日衆院予算委員会 日本共産党の笠井亮議員の質問)。形式的な「要請」で終わらせるのではなく、財界の賃下げ・デフレ不況への暴走を止め、賃上げを実現するための、実効ある行動をとり続けることを求めます。

政府の責任で、違法・脱法の退職強要・解雇・雇い止めの根絶を

 いくら営利企業であっても、人権を無視し、一生懸命働いてきた人間を邪魔者あつかいし、モノのように「使い捨てる」ことは許されません。政府に、違法・脱法の退職強要や雇い止めを根絶するために、労働行政をはじめあらゆる手だてをつくすことを求めます。

賃上げを促進する政策をすすめる

 ――非正規で働く労働者の賃金と労働条件を改善し、正社員化を促進する

 労働法制の規制緩和で、派遣や契約社員などの非正規雇用を急増させたことが、低賃金社会にした大きな要因です。派遣法の抜本改正をはじめ、非正規雇用への不当な差別や格差をなくし、均等待遇をはかるとともに、非正規から正規雇用への流れをつくることは、「賃下げ」社会を克服するうえで不可欠です。

 ――最低賃金を引き上げる

 全国平均時給749円の最低賃金を、せめて時給1000円以上への引き上げを目指すべきです。そのためには、賃金助成や税・社会保険料の減免など、しっかりとした中小企業への支援が決定的です。最低賃金を引き上げるための中小企業支援は、米国は5年間で8800億円(減税)、フランスは3年間で2兆2800億円(社会保険料の事業主負担分の軽減)ですが、日本は年間約50億円にすぎません。ここにこそ、抜本的予算増をはかるべきです。

 ――中小企業と大企業の公正な取引を実現する

 大企業による単価の買いたたき、一方的な発注中止をやめさせ、大企業と中小企業が公正に商売できるルールを、独占禁止法の強化などによってつくることは、中小企業の経営を安定させ、労働者の賃上げにつながる重要な施策になります。

 ――政府による賃下げ促進策を中止する

 いま政府自身が、賃下げを促進し、デフレ不況を加速させるような政策は絶対にとるべきではありません。公務員賃金の引き下げは、それだけで1兆2000億円ものマイナスの経済効果となりますが、何よりも、民間賃金の引き下げに連動します。また、生活保護基準の切り下げは、最低賃金の抑制・引き下げに連動します。

人間らしい暮らしを保障するルールをつくってこそ、ほんとうに強い経済に

 欧米の経済も大きな危機に直面し、アメリカもEUも低成長で、厳しい状況が続いています。しかし、長期にわたって国民の所得が減り続け、経済が停滞・後退する――こんなことが起きているのは、先進国の中でも日本だけです。

 日本は、働く人の所得(雇用者報酬)とともに、国内総生産(名目GDP)も1997年と比べて約9割に減りましたが、同じ時期に、欧米諸国は、雇用者報酬だけでなく名目GDPも1・3~1・8倍に伸びています(グラフ 2)

 アメリカやEUと比べても異常ともいえる日本経済の長期にわたる低迷・後退と国民の所得減少の根底にあるのは、国民の暮らしを守るルールがないか、あっても弱い、「ルールなき資本主義」という問題です。

 例えば、日本には、ヨーロッパ諸国では当たり前となっている解雇規制法がなく、残業時間の上限がないなど長時間労働の規制も弱く、違法・脱法の「退職強要」やサービス残業が横行しています。均等待遇のルールも弱く、正規と非正規、男女間などでの理不尽な差別と格差が広がり、それが低賃金構造となっています。最低賃金も先進国で最低水準で、低賃金労働者を生み出しやすい構造となっています。

 人間らしい暮らしと働き方を保障するルールをつくる――「ルールある経済社会」へとすすんでこそ、経済を土台から強いものにしていくことができます。

労働者と国民の連帯の力で、暮らしと経済を立て直す国民的な共同を

 賃上げと安定した雇用の拡大こそ、デフレ不況を打開し、経済も産業も立て直す道です。財界の賃下げ圧力をはねのける大きな国民的な世論と運動、政治を動かす国会内外のたたかいを広げようではありませんか。

 大企業の労働者も中小企業の労働者も、正規も非正規も、民間も公務も、そして、企業や産業の違いものりこえた共同を広げ、誰であれ、どんな企業であっても、“賃下げには怒り、賃上げには共感する”――労働者と国民の連帯の力をつくりだそうではありませんか。

 日本共産党は、働く人の所得を増やすという大きな一致点で、労働組合やナショナルセンターの違いも、政治的立場の違いものりこえ、幅広い国民各層のなかで、対話と共同をすすめることをよびかけるとともに、その先頭にたって奮闘します。


表1
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試算方法
 (1)大企業グループの連結決算から2011年度末の連結内部留保を計算(内部留保=資本剰余金+利益剰余金+負債性引当金として計算)。
 (2)各企業グループの国内従業員数を推計し、内部留保の1%の取り崩しで可能な賃上げ額を試算(賃上げ額は最大で“月1万円”) ※国内従業員数は、有価証券報告書記載の従業員数から海外従業員を除いて推計。海外従業員数未公表の企業は国内従業員数が過大に推計されている可能性がある。
 試算対象
 連結内部留保500億円以上の企業グループ741
 企業グループ全体の正規従業員1181万人+同臨時従業員260万人(正規換算)=1441万人A
 海外従業員(推計)331万人B
 A―B=国内従業員1110万人

 

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