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日本共産党

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赤旗

2012年総選挙政策各分野政策

14、障害者・障害児・難病患者

骨格提言にもとづいた障害者総合福祉法の制定をめざし、障害者権利条約を実効性ある批准にする法の整備をすすめます

2012年11月


1、骨格提言にもとづいた障害者総合福祉法の制定を

 障害者団体の大きな運動と自立支援法違憲訴訟のたたかいが全国に広がる中、民主党は政権誕生とともに、自立支援法の廃止を表明しました。訴訟の和解を受け、国は応益負担により障害者の尊厳を深く傷つけたことをこころから反省し、障害者参画のもとに、新たな総合的福祉制度を制定するとの「基本合意」を結びました。障害者権利条約の批准を求めて、国内法の整備の審議をすすめる障害者制度改革が、過半数の当事者参加による「障害者制度改革推進会議(現在は障害者政策委員会に変更)」や、そのもとにある総合福祉部会や差別禁止部会などを中心にすすめられてきました。

 この間、2010年12月には、障害者制度改革のスケジュールにもない自立支援法「つなぎ」法が、民主、自民、公明などの賛成によって成立してしまいました。2011年には障害者虐待防止法の制定、障害者基本法の改正などもおこなわれています。

 障害者総合福祉法の制定に向けて総合福祉部会の話し合いをまとめたものが「骨格提言」です。「骨格提言」は、障害者権利条約と「基本合意」にもとづき、障害者が障害のない人と地域で平等に生活するために必要な支援を確実に保障することを示しました。それぞれの立場の違いを乗り越えて、約1年半という膨大な労力と時間をかけて練り上げられた当事者の総意であり、とても重い意味をもちます。

 それにもかかわらず、今年6月、民主・自民・公明などの賛成で、自立支援法を事実上恒久化する、「障害者総合支援法」を成立させてしまいました。民主党が、障害者分野でも「自立支援法は廃止し、…障害者総合福祉法を制定する」という公約を反故にし、国民の期待を裏切った事実は許されません。衆参わずか3時間ずつの審議で通してしまうやり方は、障害者制度改革に真剣にとりくんできた人たちや運動をすすめてきた当事者や市民をあまりにも軽んじる暴挙です。

 日本共産党は、自立支援法の実質上の延命を許さず、抜本的に見直しを求め、骨格提言にそった総合福祉法の制定に向けて、これからも力をつくします。

(1)すべての難病患者を障害福祉の対象に

 2011年の障害者基本法の改正の審議((6)を参照)も受けて、総合支援法では難病等を障害の範囲としました。それによって、難病のある人も2013年4月から障害福祉サービスが使えることになりました。長年の患者・障害者団体の運動を反映したものですが、具体的な対象は2013年1月に政令で示すとされています。

 障害福祉サービスの対象は、必要とする難病患者が受けられるようなものにすべきです。その基準は現在と同様に疾患名によるものだけでなく、その疾患でなくても難病であって医師が必要と判断した場合はサービスを受けられるようにすべきです。また、支給決定のしくみを抜本的に見直すとともに、当面、難病の特性を十分に反映したしくみにするよう求めます。

応益負担はすみやかに廃止し、利用料は無料に

 憲法25条の生存権理念に照らせば、本来、障害福祉や医療の利用者に対して負担を求めるべきではありません。世界の障害福祉にも例のない制度は廃止し、すみやかな無料化を求めます。2010年に強引に「改正」した自立支援法「つなぎ」法によって、「応能負担」に変えたとし、総合支援法でのわが党の追及でも、応益負担の問題は解決済という態度に政府は終始しました。1割の定率負担は残され、負担上限額も変わりません。国は約束にしたがって、「検討」で毎年引き延ばしにしている自立支援医療の低所得者無料化をすみやかに 実施すべきです。

 配偶者の収入認定はやめて、本人所得のみの収入認定とします。障害者の親・兄弟などの扶養義務はなくします。給食費やホテルコストの実費負担はなくします。

 障害者の高齢化がすすんでおり、介護保険の抜本的な見直しは障害者にとっても切実な問題です。それまで同じサービス内容で無料でも、介護保険優先原則で、65歳になった途端に1割負担が強いられる矛盾が年々大きくなっています。介護保険の低所得者の利用料無料化などを早急にすすめます。

報酬を引き上げ月額払いへ戻す

 日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心とした雇用形態ができるよう、報酬の底上げをおこないます。福祉労働者の賃金を、全額国庫負担により、月4万円の引き上げをはかります。給食・事務・施設長など削減された職員配置基準を復活させるとともに、グループホームの夜勤体制の改善をすすめます。

事業体系を再検討し、くらしを支える多様な選択肢の保障を

 総合支援法でも、事業体系の大枠はそのままです。自立支援法のもとで強調されてきた就労も、障害者の就職を受け入れる企業は依然として少なく、不況下では真っ先に障害者が解雇されているのが現実です。障害者が働く意義は多様で豊かです。「骨格提言」が示した、就労保障とともに日常生活の支援も拡充する新たな事業体系の検討を、強く求めます。

 相次いでいる障害者や障害児のいる世帯の孤立死は、あらためて地域の支援のあり方を浮き彫りにしました。地域で障害者がいきいき暮らし、家族の休息を保障するためにも、ショートステイができる入所型の小規模施設の増設や「医療的ケア」を必要とする人たちへの支援策を拡充します。相談支援体制を、ソーシャルワーカーなどの力の発揮で、公的責任を中心としたネットワークですすめます。

 政府は、2014年4月からグループホームにケアホームを一元化するとしています。そもそも性格の違う施設を一本化することに無理があります。報酬の引き下げや職員配置の切り下げなどの不安が出されており、拙速なグループホーム化は中止すべきです。暮らしを支える多様な選択肢を整えます。

 低水準にある小規模作業所と地域活動支援センターにたいする補助金を、実態に見合った水準に引き上げます。

(2)障害のある子どもたちの療育・生活の保障を

 障害のある子どもの福祉は、だれもが気軽に療育を受けられる環境のもと、障害が確定していない子どもたちも含めて、発達を保障されることは当然です。それにもかかわらず、自立支援法によって契約制度が持ち込まれ、保護者に自己責任が負わせられる過酷なしくみとなっています。契約制度をやめ、公的責任で適切な福祉サービスが利用できるように改めます。

 今年4月から障害児の通所支援は児童発達支援センター、医療型児童発達支援センター、放課後等デイサービスなどに再編されました。放課後等デイサービスは、専門性のある正規の指導員の配置が可能になるようにするとともに、事業規模による報酬単価の格差をあらためます。被虐待児の入所の増加などから、入所施設の子どもたちの障害の幅が広がっています。施設空間や生活集団の編成の困難を解決する職員配置などを求めます。

 今年度から新設された保育所等訪問支援事業は、保護者が事業者と契約するもので、保育料と訪問支援の利用料両方の費用がかかること自体が問題です。保護者負担をなくし、これまでおこなわれてきた自治体ごとの巡回指導も保障します。

(3)自立支援医療を無料の公費負担医療制度に

 日本では医療費の重い自己負担があるために、負担軽減のためのさまざまな公費負担医療制度が実施されてきました。自立支援医療の「応益負担」のしくみを撤廃し、無料の公費負担医療制度とします。

 日本共産党は、自立支援医療の低所得者の無料化をただちにおこなうよう求めてきました。厚生労働省は「今年も検討中」を繰り返す、あいまいな態度をとっています。低所得世帯のすみやかな無料化を実施し、低所得世帯以外についてもさらなる負担軽減をはかります。障害者基本法による障害の定義が難病や慢性疾患によるものも含むものに拡充されたことも踏まえ、自立支援医療の対象拡充をすすめます。

 更生医療制度はリハビリテーション医療の観点から身体障害者手帳所持を条件からはずし、障害の除去・軽減のみでなく悪化を防ぐための治療や予防も含めた治療にも適用できるよう対象を拡大します。

 「重度かつ継続」の対象範囲を拡大し、断続的であっても高額の医療費がかかる場合にも適用を求めます。また、「重度かつ継続」者の入院時食事療養費の負担をなくします。

 育成医療制度は「児童の健全育成」の観点から本来の児童福祉法に戻し、障害のある子どもとともに、「放置すれば将来障害が残ると予想される子ども」を今後とも対象に含むようにします。「経過措置」とされている中間所得層の負担軽減措置を恒常化した制度にします。

 すべての自治体で実施している重度心身障害者(児)医療費助成制度を、国の制度として確立し、難病以外の治療に難病患者も使えるようにします。

 入院時の介護支援について、医療と福祉の垣根をはずし、実態的な支援がおこなえるよう求めます。

(4)地域での生活のゆたかな保障を

 総合支援法では、2014年に障害程度区分認定から障害区分認定に変えるとしていますが、当事者参加で協議されておらず、名前を変えても支給量を制限する財政抑制装置の役割は変わりません。さらに附則では施行3年後に障害支援区分を見直すといいますが、生活状況や障害者の希望を立体的に反映させられるしくみが必要です。当面、知的障害や精神障害はもちろん、難病や発達障害なども含めた、障害特性の反映する支給決定を求めます。

 日本共産党国会議員団の調査(08年)では、障害者の外出などに必要な移動支援事業に対し、利用制限をおこなっている自治体が6割を超えていることが明らかになりました。自治体の姿勢も問われますが、もともと国が補助金を抑制していることが原因です。国の補助金を大幅に増やすとともに、移動支援事業、コミュニケーション事業などの利用料を無料化し、国の制度として位置付けて地域間格差を解消します。

 在宅や施設サービスを大幅にふやすなど、地域生活の基盤整備を集中的にすすめるため、「障害福祉基盤の緊急整備5カ年計画」を策定し、特別立法を制定します。

精神疾患・障害者の支援を拡充する

 自立支援医療の応益負担のしくみを撤廃し、無料の公費負担医療制度にします。精神障害者の相談支援活動や住まいの確保をすすめます。

 障害者雇用促進法において、来年度、精神障害者の雇用義務化の法改正の検討に入ったとされています。障害者基本法、障害者差別禁止法の観点からも、確実な義務化を求めます。働き続けられる支援を確実に実施するようにします。精神障害者の交通運賃割引制度を適用拡大します。薬物依存症者の治療体制や社会復帰の支援を強めます。

 精神疾患の患者数は323万人(2008年「患者調査」)と日本の中でもっとも多い疾患となっています。貧困問題や労働環境の悪化がうつ病などに大きく影響し、自殺予防対策も喫緊の課題です。子どもから高齢者まで全世代の問題としてメンタルヘルスにとりくみ、精神疾患・障害の理解と対応が必要です。「こころの健康を守り推進する基本法」を制定し、精神医療福祉の向上をはかります。

発達障害者の支援の拡充を

 発達障害は成人になって診断されるケースも増え、全世代の問題としてのとりくみが欠かせません。2010年に成立した「改正」自立支援法により、障害福祉サービスの対象になることが明確に位置づけられました。障害程度区分認定制度を改め、医療、雇用、教育などすべてにわたって障害特性をふまえた支援を拡充します。

視覚障害者の地域間格差の解消を

 2011年10月から、重度の視覚障害者の移動支援事業が「同行援護」として自立支援給付に位置づけられました。「地域間格差をなくすため」に国の事業になったはずが、依然として利用時間に地域間格差があります。視覚障害者に対応できるヘルパーの養成を拡充し、十分な支給量を保障するよう求めます。

聴覚障害者のコミュニケーション支援の保障を

 総合支援法において、「意思疎通支援事業」が含まれることになりましたが、自治体主体である地域生活支援事業に位置づけられているために、地域間格差や不十分な予算の問題が残されたままです。国の事業になるよう求めます。

 身体障害者手帳をもたない聴覚障害者など、どの自治体に住んでいても誰もが手話通訳者や要約筆記者の派遣を受けられるように求めます。盲ろう者への通訳・介助者の養成・派遣の必須化を都道府県に求めます。

 手話通訳者などの派遣事業のコーディネーターの設置が義務付けられておらず、手話通訳者やコーディネーターの報酬が保障されていません。高い専門性に見合った身分保障を求めます。

(5)財源は消費税増税ではなく応能負担の税制で

 諸外国に比べてGDP比できわめて低い(ドイツの3分の1、スウェーデンの5分の1…平成22年度版「社会保障給付費」)障害者予算を抜本的に増額します。

 日本共産党は 2月に「消費税増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」を発表し、消費税増税に頼らない別の道をさし示しています。①能力に応じた負担の原則にたった税・財政の改革――不要不急の大型公共事業、軍事費、政党助成金など歳出のムダを一掃し、富裕層や大企業に応分の負担を求める、②国民の所得を増やす経済の民主的改革――大企業がためこんだ260兆円もの内部留保を国民経済に還元させ、国民の所得を増やして経済を健全な成長にのせる、この2つの改革を同時にすすめ、社会保障の充実と財政危機打開をはかる道を具体的に提案しています。「先進水準の社会保障」への転換をはかっていく中に、障害者福祉・医療は無料化し、総合支援法を許さず総合福祉法を実現することを位置づけています。消費税増税は所得の低い人ほど負担が大きく、障害者にもっともふさわしくない税金です。障害者予算の抜本的増額は、こうした改革に本気で足を踏み出せば実現できます。

 介護保険と障害者福祉の「統合」は障害者の実態を無視したものであるとともに、介護保険料の徴収年齢を引き下げて、国民に負担増を求めることにねらいがあり、反対です。

(6)国内関連法を徹底的に見直し、障害者権利条約の批准を

 国連の障害者権利条約は、08年5月に発効しました。日本でも批准を求めて、国内関連法の見直しをすすめる「障害者制度改革」がすすめられています。条約を批准するためにも、障害のない人との平等と参加をうたった障害者権利条約の趣旨にてらして、総合支援法の抜本的な見直して「骨格提言」にそった総合福祉法を実現し、「差別禁止部会」の意見書がまとめられた障害者差別禁止法を実効性のある法にすることが求められています。

障害者基本法を3年後の改正で見直す

 2011年に改正された障害者基本法は、障害者権利条約の水準からは不十分でしたが、「障害のあるなしにかかわらず基本的人権が尊重される」「共生社会の実現」などが法の目的に盛り込まれたことや、史上初めて法律に、言語に手話を盛り込んだことなど、一定の前進がありました。障害の範囲については、「継続的な」状態ばかりでなく、「周期的または断続的」を追加することで難病などより広い障害を含むということを明確にするために共産党は修正案を出し、修正はされなかったものの、国会の質疑で明確に難病を含むことを明らかにさせることができました。附則にもとずいて施行3年後には見直しがされることから、今回反映されなかった権利条約の大事な柱の1つである「合理的配慮を行わないことは差別である」などを盛り込むことを求めます。

意見書にそった障害者差別禁止法制定を

 障害者政策委員会「差別禁止部会」は、今年9月に意見書をまとめました。

 障害のある人が雇用や乗り物利用などあらゆる場面で障害のない人と異なる取り扱いを受ける場面は枚挙にいとまがありません。さまざまな施策、法律ができても、それだけでは差別的な取り扱いがなくなりません。何が差別かを定義し、差別を受けた際に当事者同士の話し合いによる解決を基本とする司法による救済の規範となる法制度が、差別禁止法です。決して相手方を処罰したり非難することを目的とするのでなく、障害者権利条約第1条「障害のあるすべての人によるすべての人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し…固有の尊厳の尊重を促進すること」という当たり前の目的を実現するためのものです。

 「合理的な配慮の不提供」や、「不均等待遇」を差別とすることも求めており、こうした意見書の趣旨をふまえた差別禁止法の実現を求めます。

 2011年6月に「障害者虐待防止法」が制定されました。実効性をもつためには、体制整備が必要です。市町村障害者虐待防止センターの設置などを促進し、公的責任を重視します。

障害基礎年金を引き上げ無年金障害者問題の解決を

 障害基礎年金を1・2級とも大幅に引き上げ、あわせて最低保障年金制度の実現で底上げをはかります。(最低保障年金制度については社会保障の年金の項目をご覧ください)。

 無年金障害者への特別給付制度が05年4月から開始されていますが、障害基礎年金と同額に引き上げるとともに、国籍要件のために加入できなかった在日外国人など、支給対象をさらに広げるよう改善をすすめます。特別給付金制度はあくまでも福祉的措置であり、年金制度の枠内での根本的な解決が必要です。国の不作為や年金制度の不備を認めて、障害基礎年金の支給を行うべきです。

 初診日認定についても、精神障害や内部障害のように発病時期が特定困難な場合、現在の状態が基準に十分該当するにもかかわらず、初診日が証明できないために障害年金が受けられない場合、実態に即して支給すべきです。

すべての障害者のはたらく権利をまもる

 「障害者雇用促進法」において難病・慢性疾患をもつ人など、すべての障害者を施策の対象にするとともに、法定雇用率の対象とします。法定雇用率の厳守を徹底し、さらに法定雇用率を引き上げます。

 病状や障害が進行しても働き続けられるよう、通院や病気休暇を保障します。ジョブコーチ制度などを充実させ、職業訓練や資格取得の支援制度を拡充します。障害者、難病患者の移動支援において、通勤のためのヘルパー利用をすみやかに認めるべきです。

 障害や疾患を理由にした職場での差別は、話し合われている障害者差別禁止法の対象になることは当然です。労働条件の切り下げやパワーハラスメントなどを防止するためのしくみを構築し、障害者のはたらく権利をまもります。

 一般就労が困難な人のために、ヨーロッパ諸国で実施されているような保護雇用制度を創設し、所得保障をおこないます。

インクルーシブ教育の真の実現を

 「インクルーシブ(だれも排除されることのない)教育」を真に実現するために、小・中・高等学校において特別のニーズ教育をすすめます。学校のバリアフリー化、通学できない子どもたちの在宅学習の保障、臨床心理士をはじめとしたメンタルサポートの実施、教職員の配置の充実など十分な教育予算をとり、教育環境をととのえます。とくに、特別支援学校の異常な過大・過密が深刻な問題になっています。特別支援学校に「学校設置基準」を早急に策定し、教育条件を整えることを求めます。(詳しくは教育の障害児施策をご覧ください)。

(7)交通、参政権、情報の保障を

 鉄道駅の安全確保のためのホームドア、可動式ホーム柵の普及や、ノンステップバスの導入をすすめ、交通や建物などのいっそうのバリアフリー化をすすめます。障害者用・オストメイト対応のトイレをいっそう普及し、ユニバーサルシートをあわせて設置します。JR・航空運賃や高速道路の通行料金の割引制度の改善・拡充にとりくみます。

制度から排除されているてんかん・難病などの患者・障害者を運賃割引の対象にすることを求めます。

 全国の視覚障害者の就業率はわずか21%です。自治体の雇用試験に点字試験を位置づけます。今年、視覚障害者が提訴したことできりひらかれた判決の点字訳など、裁判制度の前進を全国に広げます。

 障害者や高齢者にも使いやすい金融機関にするために、障害者対応のATMの普及や、窓口対応の改善をすすめます。視覚障害者が判断しやすいよう、紙幣のサイズの差別化を求めます。

 読書や文字の読み書きに困難がある高齢者や障害者の「読書権」を保障し、公的機関などに読み書き(代読・代筆)情報支援員の配置ができるよう求めます。

 障害者の参政権を保障するため、手話や字幕をすべての政見放送に義務づけるとともに、点字による選挙広報などの改善、在宅投票制度の拡充、投票所の整備などをすすめます。障害者などに成年後見人がつくと失われてしまう投票の権利などを見直します。

地デジ完全移行に伴い、FMラジオのテレビ音声が受信できなくなりました。災害時にも有用なテレビとラジオが聴取できる携帯用の製品の開発・普及をすすめます。テレビの解説放送の拡充を実施します。

 

2、難病・慢性疾患のある人の新たな段階にふさわしい医療・福祉を

 難病には5000から7000の疾患名があるといわれています。難病とは医学的には治りにくく、研究や新薬開発の光が当たりづらい疾患です。社会的には生活面の制約や経済的、精神的に負担が大きく、社会の理解不足や施策の不備などからくる社会的障壁による「障害」のある概念も含む言葉です。

 難病対策は、1972年に始まった難病対策要綱にもとづいておこなわれてきました。臨床調査研究をおこなう130疾患が対象の難治性疾患克服研究事業や、徐々に対象を広げて56疾患を対象にした特定疾患治療研究事業による医療費助成がおこなわれてきました。ホームヘルプサービスなどが提供される難病患者等居宅生活支援事業などもあります。

 難病・慢性疾患のある人とその家族は医療構造改革によってもたらされた過重な医療費負担に苦しめられており、療養施設が極度に減少し受け入れ施設のないまま在宅療養に移され、重介護が家族にのしかかっているケースも少なくありません。

 疾患という状態での障害を認めない狭い障害概念のとらえ方から、難病・慢性疾患をもつ人は長い間福祉の谷間におかれ、福祉サービスから除外されてきました。難病患者の1人あたりの年間医療費は、同年齢で比較すると、18・4倍(20歳から24歳)、9・7倍(30歳から34歳)など、特に若年層ではその差が顕著です。病気が治る展望も生活の見通しもなく、働くこともできずに自ら命を絶つ人もいます。

 当事者団体はこうした現状に声をあげ、医療費助成の対象疾患の拡大や、研究予算の拡大などに道を開いてきました。そうした必死の運動の積み重ねによって、難病対策は40年を経て、来年度から新たな段階に入ろうとしています。その1つは、医療費助成制度を法的に位置づける予定であり、もう1つは障害者総合支援法の障害の範囲に難病等が位置づけられ、難病患者も障害福祉サービスの利用ができることが明確になったことです。

 消費税増税と一体の「社会保障と税の一体改革」にも、難病対策の見直しが位置づけられました。「より公平・安定的な支援のしくみをめざす」としており、難病患者への新たな負担増もねらわれています。日本共産党は、すべての必要な人が医療も福祉も当然対象になる最善の制度を求めて、みなさんと連帯してたたかいます。

(1)新しい難病医療制度は難病患者すべてを対象とするものに

 この間、厚生労働省のもとにある審議会である難病対策委員会などによって、当事者も参加して話し合いがすすめられてきました。難病の定義と医療費助成制度を位置づける難病対策の新たな法案が検討されています。

 これまでの難病対策は、根拠法がないことから、「難病対策要綱」にもとづく予算措置として、シーリングの対象とされ毎年不安定な立場におかれてきました。新しい医療費助成制度が法律に位置づけられることは患者や国民の運動の成果です。

 一方で、予算の制約から、一部の患者を助成対象から外す、重度者にも負担を求めるなど現在の水準を後退させることも検討されています。

 検討されている新たな医療費助成制度は、①患者数が少ない、②病気の原因が不明、③効果的な治療法がない、④生活への支障が長期・生涯にわたる、⑤診断基準か客観的な指標があるという基準を全て満たす疾患を対象としようとしています。患者数の基準については、患者数が全人口の0.1%程度という考え方も示されています。これまで国の研究事業や医療費助成の対象になった482疾患を患者数と診断基準を有するか否かで分類すると、60疾患程度が基準を満たさないという研究班の中間報告も示されています。

 生涯にわたって治療が必要な難病患者にとって、患者人口で線引きされてしまうことは到底受け入れられません。診断基準がなく疾患概念が確立されていない疾患も他の難病と同様に、自分の病気の今後や医療費への不安も大きいはずです。

 現在医療費助成の対象となっている疾患はもちろん、今後「難病」とされる疾患はすべて新たな医療費助成制度の対象にするとともに、新たに発見された難病が、順次すみやかに医療費助成の対象になるしくみになるよう求めます。

軽症者も引き続き医療費助成の対象に

 さらに、対象疾患の中でも患者を区別して、「重症度が一定程度以上等あり、日常生活又は社会生活に支障がある者」以外の軽度者を医療費助成から外そうとしていることも重大です。軽度の患者であっても高額な医薬品治療によって状態が維持されている場合もあり、医療費助成の必要性と重症か否かは必ずしも一致しません。また、治療によって良好な状態が維持されている患者が軽度とされ、結果として受診抑制による重度化を招くなど、患者の健康や財政の観点からも本末転倒な事態が生じかねません。

 治療研究を目的とするなら、軽症患者を研究データから外すことになり、今後の研究成果にも影響を与えかねません。

 軽症者も助成の対象とすべきです。

重症者への負担導入は患者をさらに苦境に追い込む

 厚生労働省は、新制度での医療費助成の基本的な考えを、「高齢者や障害者等などの他制度の給付との均衡をはか」り、「所得等に応じて月額限度額を設定する」としています。これまで無料の重症認定(身体機能障害が長期間継続し介護を日常的に必要とする状態など)患者にも、新たな負担を導入しようとしています。

 重症患者に自己負担を導入すれば、治療の継続が困難になるだけでなく、ただでさえ深刻な患者や家族の深刻な生活をさらに追い込むことになります。

 厚生労働省が比較の対象の1つとしている障害者自立支援法による自立支援医療は原則1割の応益負担です。しかし、この負担水準は障害者の生活実態に照らして高すぎるとして政府自らが、低所得者の無料化を含む負担引き下げの検討を約束しているのです。この約束を放置したまま、難病医療費助成における自己負担を、自立支援医療水準にまで引き上げることは許されません。少なくとも現在の自己負担水準を維持すべきです。

(2)小児期から成人期への移行期の疾患問題を緊急に解決する

 先天性心疾患や胆道閉鎖症、小児がんなど、先天性や小児期に発症する慢性疾患児は、医学の進歩により成人期を迎える人たちが多くなった一方で、「小児慢性特定疾患治療研究事業」は20歳で打ち切りとなるため、成人期を過ぎた患者への医療費助成をはじめとする社会的支援策がなくなってしまうことが大きな問題になってきました。移行期の医療体制の整備も大きな課題です。支援の必要な人が成人期になっても切れ目なく医療費助成を継続し、成人後の医療・福祉・雇用など総合的な支援のしくみの構築をすすめます。また、学校生活における病児への配慮や親の役割などの検討、小児期に培うべき生きる力を病児にいかに保障するかなど、児童の発達と健全育成を病児にも保障するための対策などに取り組みます。

 新生児の代謝病などを発見する新生児マス・スクリーニング検査、さらに多くの疾患が発見できるタンデムマス方式の検査を、自治体まかせでなく、国の責任で実施できるよう財源を保障します。

(3)生存権にもとづいた医療費無料化を

 そもそも医療保険の原則3割の自己負担が患者を経済的に苦しめてきました。公的医療保険制度のある国で、外来でも入院でも原則3割もの負担という国は日本だけであり、外国では無料もしくは少額の定額制が主流です。ヨーロッパの多くの国では、長期療養が必要な患者に、疾病の別なく、手厚い給付と負担軽減をはかる仕組みが整備されています。

 日本共産党は、すべての国民は貧富の差にかかわりなく医療を受ける権利があり、国が医療の保障をする義務を負うという憲法25条の精神にたち、疾患・障害の区別なく医療費が無料の日本をめざしています。今年2月には、「社会保障と税の一体改革」の対案でもある、消費税増税に頼らない、別の道があることを示す「消費税大増税ストップ 社会保障充実、財政危機打開の提言」を発表し、財政の見通しも述べています。

 当面、医療費の窓口負担を引き下げ(子ども<就学前>は無料、現役世代は2割に引き下げ、高齢者は1割にすえおき)などにとりくみ、医療崩壊を立て直します。その中でも、難病患者や障害者の医療費は、優先して、すみやかに無料にすることが当然です。

 高額な自己負担、医療財政の膨脹をまねいている原因の一つである欧米に比べて高い薬価を欧米並みに引き下げます。全国保険医団体連合会の調査によると欧州に比べ日本の薬価は平均で1.5倍から2倍になっており、後発品のない先発品を2割引き下げるだけで医療費を0.94兆円引き下げることができ、これによって生み出される財源によって医療を充実させることができます。

高額療養費制度を応能負担に

 慢性疾患、重い病気、低所得者の人などに過酷な負担となっている高額療養費制度の所得区分を増やして負担上限額を大幅に引き下げ、応能負担を徹底します。重い病気の患者ほど患者負担を自動的に引き上げる「1%」応益加算は廃止します。月ごとでなく治療ごとの限度額とするなど、同一治療でも負担額が違うという患者間の不公平を是正します。

 血友病、HIV、人工透析を受ける慢性腎不全の患者におこなわれている「長期高額疾病にかかわる特例措置」の対象(負担上限額1万円、2万円)を拡充し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養給付制度(仮称)」を創設します。世帯の所得区分毎に年間を通じた負担上限額を設ける等安心して治療を続けられる環境整備をはかります。

障害者自立支援医療の対象の拡充と負担軽減を

 日本では医療費の重い自己負担があるために、負担軽減のために様々な公費負担医療制度が実施されてきました。

 当面、障害者向けの公費負担医療を難病患者にも拡充させ、高額療養費制度のさらなる負担軽減を求めます。

 日本共産党は、自立支援医療の低所得者の無料化をただちに行うよう求めてきました。厚生労働省は、「今年も検討中」を繰り返す、あいまいな態度をとっています。低所得世帯のすみやかな無料化を実施し、低所得世帯以外についてもさらなる負担軽減をはかります。障害者基本法による障害の定義が難病や慢性疾患によるものも含むものに拡充されたことも踏まえ、自立支援医療の対象拡充をすすめます。

 自治体ごとにおこなわれている重度心身障害者医療費助成制度を国の制度に変えて、すべての障害者を対象にし、難病患者も難病治療以外の医療に、障害者として使えるようにします。

(4)治療研究や医療体制の抜本的拡充をすすめる

 「研究奨励分野」の柔軟な運用の継続を求め、予算の抜本的拡充で臨床研究、研究奨励分野ともに研究対象疾患を広げ、原因究明や治療法の確立を求めます。

有効な医薬品の開発を迅速に……未承認薬や適応外薬問題の早期解決をはかるため、製薬企業に強く承認申請を促すとともに、医師主導治験の推進のための予算を抜本的に拡充するなど、医薬品の開発体制を強化します。保険外併用療養(混合診療)の拡大ではなく、有効で安全な薬は医療保険の枠内で使えるようにします。

 一方で治験や承認申請の遅れなどにさまざまな事情によって生じている未承認薬の使用や医薬品の適応外使用については現在、国は実態さえ把握せずなんら責任を負わない中で、患者の自己責任でおこなわれています。安全管理・患者保護や医療保険による薬剤費の負担を含めた負担軽減の措置、患者の医薬品へのアクセス確保、臨床研究の妨げにならない等、欧州やアメリカのコンパッショネートユース(人道的な観点から未承認・適応外医薬品の使用を認める制度)の制度も参考にしながら制度化をすすめます。

 希少疾病の研究事業の更なる充実と継続的な支援をおこない、ウルトラオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の開発を円滑にすすめます。

地域の難病治療体制の確立を……難病対策をすすめる上で、専門医など医療提供体制の不足は深刻です。「改革の全体像」では、多分野の難病指定医(仮称)が配置される「新・難病医療拠点病院(仮称)」を都道府県に原則1ケ所以上指定することなどが構想されています。

 制度の創設によって現に治療を受けている医療機関で治療が継続できないという事態が起こらないような制度設計にするとともに、難病の地域医療の水準の引き上げのため専門医、看護師などの医療従事者の体制を計画的に、抜本的に拡充します。療養・介護施設が医療機関と連携できるよう、療養環境を整えます。24時間支援が必要な重篤患者の家族を支える体制を整えます。

 今回の構想は、地域の支援で保健所が重要な役割を果たすこととされています。しかし、地方の財政難から広域化が進められ、著しく仕事が増加している現状を放置したまままでは十分な役割を果たすことが困難です。国による財政支援の強化とあわせて広域化に歯止めをかけるなど保健所のあり方を見直し、保健師が地域の住民を訪問できる体制づくりを再構築し、すべての難病や慢性疾患をもつ人の窓口となるとともに、患者とその家族の支援に能動的に動けるような改革にとりくみます。

 各都道府県にある難病相談・支援センターを安定した事業運営にできるよう、人員体制の強化、拡充をはかります。自治体のセンターの拠り所となる全国難病相談支援センターを設置します。

(5)新たな障害の谷間を作らず難病患者等に必要な福祉サービスを

 2011年の障害者基本法の改正審議で、障害の範囲に難病も含むことが答弁で明確にされました。それを受けて障害者総合支援法でも、障害の範囲に新たに難病等が含まれることになりました。2013年4月からは、難病のある人も障害者総合支援法による福祉サービスの対象になります。具体的な対象は2013年1月に政令で定められることになっています。

 障害福祉サービスの対象は、必要とする難病患者が受けられるようなものにすべきです。その基準は現在と同様に疾患名によるものだけでなく、その疾患でなくても難病であって医師が必要と判断した場合はサービスを受けられるようにすべきです。また、支給決定のしくみを抜本的に見直すとともに、当面、難病の特性を十分に反映したしくみにするよう求めます。

障害者施策を、雇用・所得保障・教育などあらゆる分野で、難病・慢性疾患の特性を反映させたものに拡充します

 今後、難病のある人は雇用、教育などあらゆる場面で、行政においては障害者施策の対象としての対応を行うことが問われてきます。障害者雇用促進法の対象に難病等のある人も含めます。そのため法定雇用率および雇用義務の対象にするための検討を早急にすすめます。企業に賃金助成をおこなう難治性疾患雇用開発助成金制度を利用したのは、昨年度239人でした。難病や慢性疾患をもつ人が使いやすいように緊急に制度改善をすすめ、制度の周知徹底を強力におこなうとともに、対象枠を広げ、企業への助成期間の延長、柔軟な雇用形態の実施などを求めます。

(雇用、所得保障、教育などについては上記の障害者・障害児の項をご覧ください)

 

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