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日本共産党

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赤旗

2012年総選挙政策各分野政策

12、金融

破たんしたアメリカ型の金融自由化路線を転換し、国民のくらしと営業に役立つ金融を応援します

2012年11月


1.金融自由化路線を改め、「地域金融活性化法」など金融機関に社会的責任を果たさせるためのルールをつくります

 日本が"お手本"としてきたアメリカ型の金融自由化路線は、08年秋のアメリカ発の世界金融危機で劇的な破たんを見せ、さらにギリシア、イタリア、スペインの財政危機をも深化させました。アメリカでは選挙を終えたオバマ大統領が、商業銀行によるヘッジファンドなどへの投資や自己勘定取引の禁止、銀行の一定規模以上への拡大の規制を盛り込んだ「ボルカー・ルール」など、本格的な金融規制の強化をすすめようとしています。また、EUでも、10月のEU首脳会議で、ユーロ圏の銀行監督を一元化し、財務相会議では、あらゆる金融取引に課税する共通ルールの金融取引税を、導入済みのフランスをはじめドイツ、オーストリア、ベルギー、ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシアなど10カ国で導入することが確認されました。金融業への依存の強いイギリスは抵抗していますが、金融自由化路線の見直しは、世界の流れです。

 国際的なルールづくりの舞台が、先進国だけで構成するG7ではなく、新興国も含めたG20に移った点も前向きな変化です。今後、G20にとどまらず、G192すなわち国連を中心にして、国際的なルールづくりをすすめることが求められます。日本政府も、この間の積極的な変化をさらに促進する立場で、国際社会に貢献する必要があります。

世界を揺るがすLIBOR不正事件

 その一方で、この7月にイギリスで発覚したLIBOR(ライボー=ロンドン銀行間取引金利)に関する金利不正操作事件は、ヨーロッパだけでなく、アメリカや、日本を含む東アジアにも影響が波及し、国際金融全体を揺るがす問題となっています。LIBORは、英国銀行協会(BBA)が毎日、主要通貨ごとにロンドン市場の金融機関どうしの融資で貸し手側が提示する金利を聞き取り、集計して発表するもので、国際金融の取引における金利の基準となるものです。イギリスのバークレイズ銀行は、自己勘定取引でもうけやすくするために、また金融危機下でも経営を不安視されないようするために、実態と違う金利水準を報告していました。バークレイズ銀行だけでなく、多くの主要国の大手金融機関が組んでLIBORやTIBOR(タイボー=東京銀行間取引金利)を操作した疑いが持たれています。すでに日本の金融庁は、シティグループ証券やUBS証券などを、TIBORを不正に誘導したとして処分しています。

インサイダーに揺らぐ日本の証券市場

 日本証券業協会は10月、野村証券に対し、公募増資(不特定多数に新株を発行して資金調達すること)に絡むインサイダー取引(未公表内部情報を利用した不正取引)に関与するなどしたとして罰金3億円を科しました。野村は3件の公募増資で未公表情報を顧客に漏らしたことが発覚しました。ほかにもSMBC日興証券やJPモルガン証券、大和証券など、公表前の増資情報漏えいが相次いでいます。さらに、米大手ヘッジファンド傘下の投資顧問会社が増資インサイダー取引を行ったとして、証券取引等監視委員会が金融商品取引法に基づいて課徴金納付を金融庁に勧告していた件で、10月に公開審判が開催されました。

 企業が直接、株式や社債などを発行して市場で投資資金を調達する直接金融では、インサイダー取引規制はきわめて重要です。内部情報の取得によって証券の売買を行って利益を得るか、または損失を回避する投資家を取り締まるものです。そうでないと、ほかの投資家が損失を被ることにもなります。証券売買価格を左右する情報は投資家に平等に開示されなければなりません。増資インサイダー取引は、証券会社などが金もうけのために証券市場を私物化しているということにほかなりません。証券会社は利益しか考えておらず、企業倫理を完全に喪失しています。証券市場は直接金融の主要市場であり、公平・公正・透明性を厳格に追求します。
 インサイダー取引を規制する金融商品取引法は取引を実行した投資家は処罰対象にしていますが、欧米諸国と違ってインサイダー情報を漏らす「伝達行為」は規制の対象外で、業界の自主規制に任せています。課徴金も低すぎます。これらの是正はもちろん、証券会社で増資などを取り扱う法人部門と株式の営業部門の兼営の禁止など、徹底的な規制強化が必要です。

金融規制の緩和路線に執着する日本政府

 日本政府は、この金融規制強化の流れに逆行する路線を続けています。もともと、日本では、長年にわたって、アメリカ型の金融モデルを"お手本"にした金融自由化、規制緩和路線がすすめられてきました。90年代後半の「日本版金融ビックバン」以降は、民主党も自民党も一緒になって、金融自由化、規制緩和を競いあってきました。

 野田首相のもとで7月に閣議決定した『日本再生戦略』(2012年7月31日)でも成長戦略の3番目として「金融戦略」をかかげ、「規制緩和等により我が国金融機関の競争力の向上を図る」として、「アジアにおける金融センターとしての地位を確立する」とのべています。この方向は、民主党政権が前に「新成長戦略」で掲げた「新金融立国」と同様、自民党時代の「金融立国」の"焼き直し"にほかなりません。

 これは、金融規制の強化をめざし、自由化路線の見直しを進めている世界の流れに逆行するものです。日本共産党は、金融の公共性を投げ捨てる金融自由化路線の転換を一貫して訴えてきました。今こそ、この立場に立って転換をすすめることが求められています。

―――金融機関のもうけを最優先する金融自由化万能路線・規制緩和万能路線をきっぱり転換します。日本共産党が提案している「地域金融活性化法」をはじめとして、金融機関に社会的責任を果たさせ、中小企業の経営を支える金融のルールをつくります。「貯蓄から投資へ」などといって、国民の大切な財産をマネーゲームに誘導する政策を転換します。

―――国連やG20などですすめられている国際的なルールづくりにおいて、積極的なイニシアチブを発揮します。原油や穀物などの価格が投機でつり上げられることを許さないために、国際社会と共同して投機マネーを規制します。ヘッジファンドなどの情報開示をすすめます。国際連帯税など、投機マネーの暴走を制限するための適切な課税を本格的に検討します。

2、災害被害者の「二重ローン」問題の解決を急ぐ

 東日本大震災で被災した住民や事業者にとって、くらしと生業の再建のためには「二重ローン」解消は急務です。支援の具体的改善策を提案し、再生の意思あるすべての事業者を支援することが必要です。中小企業庁の産業復興機構は昨年11月に発足し、5県(岩手、宮城、福島、茨城、千葉)で設立しています。東日本大震災で被災した事業者が抱える「二重ローン」解消のため、金融機関から債権を買い取り、再建を支援しています。

 また復興庁の事業者再生支援機構は今年3月から業務を開始していますが、両機構の買い取りの実施は遅れており、できるだけたくさんの中小事業者を救済するために、買い取り基準の改善、金融機関への指導を強化するように求めます。

 事業再生資金を補助する「中小企業グループ補助金」は、そもそも予算が少なくて採択がされず、さらにグループ化の要件のために小零細企業が残されてしまいます。事業継続をのぞむすべての人たちの力で地域経済の復興を図るために、予算を抜本的に増やし、小零細企業へのグループ化の促進や、直接・個別の補助を導入すべきです。復興基金を活用し県や市町村が実態にあった支援ができるようにします。

 個人事業者・個人の銀行からの負債については「私的整理ガイドライン」により、今後5年間に返済可能な見通しの金額を明らかにし、手元に500万円を上限に残して、それ以外の債務は免除とすることとなっています。被災者の生活再建のために、残せる金額を実態に合わせて引き上げることも検討すべきです。

3.中小企業と地域経済を応援する金融行政に転換します

 民間金融機関による中小企業向け貸出残高は、2001年3月の約293兆円から、2011年12月には223兆円へと70兆円も減少しています(『中小企業白書2012年版』)。信用金庫、信用組合など地域金融機関が中小企業への融資規模を維持しているなかで、大銀行の中小企業向け貸し出しが減少を続けています。

 アメリカを"お手本"にした金融自由化路線のもとで、金融機関は、短期的な利益を最優先しています。直近決算期の売上など、限られた数値だけをモノサシにして機械的に融資の可否を決定するようになっています。金融機関が本来発揮すべき「目利き」能力、審査能力の喪失は深刻です。

 「頼みの綱」となるべき政府系金融機関も、「構造改革」路線のもとで、短期的な「効率化」を迫られて審査基準を厳格化しています。信用保証制度では、部分保証(責任共有制度)導入によって「一般保証」が激減しています。保証料率も、中小企業の経営状況に応じて格差がつけられました。

 いま必要なことは、民間金融、公的金融ともに、その本来の役割を発揮できるように金融行政をおおもとから転換することです。日本共産党は、企業の99%、雇用の7割を支える中小企業を支え、地域経済に円滑に資金が供給されるよう金融行政を転換します。

―――中小企業をめぐる経営環境の急速な悪化が予測されており、金融円滑化法の2013年3月の打ち切りは中小企業の資金繰りの破綻を招きかねません。金融円滑化法は当面延長します。同制度の改善をすすめ、さらに使い勝手を良くするよう図ります。中小企業の機械設備のリース代の支払猶予についても、経産省の通達(2010年4月16日以来、最近では12年11月1日まで累次出されている)の趣旨をいかして活用をすすめるとともに、遅延損害金を求めないこと、遅延があってもリース物件を引きあげないこと、金融機関と同様にリース会社にも情報開示を求めることなどの改善をすすめます。

―――金融機関、とりわけメガバンクによる貸し渋り・貸しはがしをやめさせます。

―――金融の公共性と金融機関の「目利き」能力を回復し、社会的責任を果たすことのできる仕組みをつくります。「地域金融活性化法」を制定し、金融の公共性の発揮と円滑な資金供給に関する国、自治体、金融機関の責務を明らかにします。中小企業向け融資について、独自の検査マニュアルや監督行政のしくみをつくります。国による地域金融機関への合併押しつけをやめさせます。信金・信組などの協同組織性を変質させる動きを許さず、協同組織金融機関が本来の役割を発揮できるよう支援を強めます。協同組織金融機関については、BIS規制の画一的な適用を見直すことを検討すべきです。

―――商工中金の完全民営化をやめさせるなど、政策金融全体のあり方を総合的に見直します。公的金融にふさわしい融資基準をつくるとともに、予算、人材を含め、中小企業向け政策金融を抜本的に充実させます。貸し付け条件の変更や、さらなる融資相談などに対する冷たい窓口対応を改めさせます。

―――「緊急保証」制度については、この10月から対象業種が限定されました。来年3月末の制度打ち切りをやめ、全業種を対象とするよう戻し、対象要件を緩和します。また、「一般保証」制度に導入された「部分保証」制度を廃止し、全額保証に戻します。小規模企業への保証料の差別的な引上げをやめさせます。信用保証協会への財政援助をおこなうなど、信用保証制度を抜本的に強化します。保証協会による「保証しぶり」をやめさせます。

―――不況の中で中小業者の自殺が続いています。この痛ましい事態の要因の1つが、中小企業融資における個人保証制度です。現在、金融機関が中小企業融資を行う際に、経営者自身や知人に対して保証・連帯保証を求めるケースがほとんどです。この制度のもとでは、会社だけでなく経営者自身も保証人も全財産を失うことになり、家族や保証人に迷惑をかけないようにと生命保険をあてにした自殺が多発しています。欧米では、数十年前に金融機関の個人保証制度は廃止されています。中小企業融資に対する個人保証制度の廃止をめざし、当面、政府系金融機関の融資について、個人保証を廃止します。

―――病気や事故などに備える「自主共済」は、2006年施行の保険業法により、保険会社に委託するか少額短期保険業者に移行するか選択が迫られました。しかし、多くの自主共済が、準備金の積み立てや外部監査導入などの負担ができず、制度廃止に追い込まれる事態も生まれています。社会保障の改悪などで国民の不安が増しているいまこそ、自主共済を守り発展させることが必要です。助け合いのためにつくられた自主共済については、保険業法の適用除外とします。

4.貧困をなくすセーフティーネット貸出を抜本的に拡充します。「貯蓄から投資へ」路線を転換し、金融被害をなくします。

 リストラや急な事故・病気など、誰の身にも起こりうる要因による生活苦や、売上不振や物価高騰などによる経営難などを理由に、高金利のサラ金に手を出す人が後をたちません。高金利と過剰融資を是正した貸金業法の改正を受けて、政府も各種の対策を打ち出していますが、未だに多くの人々が多重債務と貧困問題で苦しんでいます。本当に資金を必要とする人が、安心してお金を借りることのできるセーフティーネット貸出制度を緊急に拡充・強化することが必要です。

 民主党も、自民党も、「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げ、国民の大切な財産をマネーゲームに誘導する政策を続けています。このもとで、個人年金保険や外国為替証拠金取引(FX)などの金融商品で被害を受ける人が続出しています。郵便局での投資信託などのリスク商品による被害も増えています。FX業者による証拠金の流用や詐欺的勧誘も相次いでいます。高齢者などをねらった「振り込め詐欺」や「振り込め恐喝」による被害も、史上最悪の件数にのぼっています。こうした金融被害もただちに根絶すべきです。

―――2010年6月18日から完全施行された貸金業法の円滑な施行をすすめるとともに、ヤミ金に対する取締りを抜本的に強化します。「振り込め詐欺」などの犯罪をなくすために、警察、金融庁、金融機関などによる総合的なとりくみをすすめます。

―――だれでも利用できる身近な金融相談窓口を整備します。低利の生活福祉資金貸付制度や緊急小口資金貸付制度を抜本的に拡充するなど、個人向け、離職者向け、個人事業者向けのセーフティーネット貸出制度を拡充・強化します。その際、生活再建のためのカウンセリングと組み合わせるなど、制度の運用改善をすすめます。

―――「貯蓄から投資へ」などといって、国民の大切な財産をマネーゲームに誘導する政策を転換します。銀行、証券、保険などすべての金融商品について、「不招請勧誘」(望まない人への勧誘)の禁止と「適合性原則」(消費者の財産、知識や目的などに合わない取引の禁止)の徹底など、国民が不当な金融被害を受けないような仕組みをつくります。金融被害の温床となっている金融商品販売担当者に対する過大なノルマのおしつけをやめさせます。

―――FXや商品先物を組み合わせた投資信託など、個人の資産運用に適さないハイリスクな金融商品について、総合的・抜本的に規制を強化します。

―――裁判外の苦情・紛争解決支援制度(金融ADR)の更なる充実や、被害回復給付金支給法の改善など、金融被害を受けた方への救済制度を拡充します。

5.大資産家優遇の証券税制を改めます

 2003年度に導入された「証券優遇税制」は、1500兆円にのぼる国民の大切な資産をマネーゲームに誘導するものです。これは、庶民の預貯金(税率20%)よりも、マネーゲームでの利益(同10%)を税制上優遇するものです。

 この間、世界では、金持ち優遇の税制を見直す動きが進んでいます。イギリスでは、所得税の最高税率が40%から50%に引き上げられ、株式配当などの最高税率も32.5%から42.5%に引き上げられました。アメリカでも、オバマ政権は所得税の最高税率を35%から39.6%に、株のもうけの所得税率を15%から20%(これに住民税が上乗せされる)に引き上げることを提案しています。

 株式配当や譲渡所得の税率は、ドイツでは26.375%、フランスでは31.3%となっています。わずか10%しか課税しない日本の証券税制は世界でも異常な優遇税制になっているのです。

 こうした金持ち優遇税制を改めることが、経済危機の中で必要な財源を確保するためにも、格差と貧困の是正に向けて税制による所得再分配機能を再建・強化するためにも、不可欠です。

――世界に例を見ない大資産家優遇の配当や株式譲渡所得の税率軽減措置を、ただちに廃止し、税率を20%に引き上げます。将来的には、配当や譲渡所得などは、勤労所得とあわせた総合課税を原則とし、大資産家には応分の負担を求めますが、それまでの間も、欧米諸国の水準にあわせた税率の引上げをはかります。庶民の少額の投資には、大資産家とは区別して税負担の軽減をはかります。

 

 

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