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日本共産党

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赤旗

2012年総選挙政策各分野政策

9、公共事業

新規建設から、防災・老朽化に備えた維持・更新へ、

大型開発より雇用に役立つ小規模事業、住民生活密着・地域循環型へ

――国民の命・暮らし守り、地域経済再生に役立つ公共事業政策に転換します

2012年11月


復活した新規の大型公共事業

 09年政権交代をはたした民主党政権のマニフェストは、「コンクリートから人へ」を掲げ「時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直す」というものでした。

 ところが、野田内閣になって、大型事業を「全面的に見直す」どころか、八ッ場ダム建設継続、東京外郭環状道路(関越~東名)の事業認可、新名神の凍結2区間の解除、整備新幹線の3区間着工認可など、凍結された大型事業が相次いで復活しています。

 ダム事業では、八ッ場ダムのほか、「できるだけダムにたよらない治水」へ再検証するとしていた83ダムも、建設継続が大勢になっています。

 高速道路事業では、「原則、新規事業は行わない」として、予算執行を停止していた東京外環道や新名神2区間解除など大都市圏環状道路や全国高速道路網14000キロの建設に重点投資しています。

 整備新幹線では、着工方針を「白紙」凍結していた整備新幹線3区間を、並行在来線の存廃や経営継続形態もはっきりしないまま、着工を認可してしまいました。また、JR東海が独自に建設するリニア中央新幹線建設(事業費約9兆円)も認可しています。

 これら新規の建設事業費は、12年度以降、ダムの建設で3兆8300億円、高速道路は33兆1500億円、整備新幹線は4兆400億円、国際コンテナ戦略港湾に5000億円、合計41兆5200億円にもなります。

財界の意向を最優先

 大型事業が復活した背景にあるのは、ひとつは、財界・大手ゼネコンなどの国際競争力強化を軸にした産業政策にとらわれ、脱却できていないこと、もうひとつは、自民党流の大型開発依存型の地方活性化策から抜け出せていないという民主党の公共事業政策の弱点です。

 かたや、自民党は「国土強靭化」を掲げ10年で200兆円、公明党も「防災・減災ニューディール」と称した100兆円の公共投資を公約しています。いずれも、将来国民の借金となる国債発行を財源として、新規の大型開発事業を続けることを前提にしています。まるで、自民党政権時代に“総額先にありき”と批判された米国要望にもとづく「公共投資基本計画」・全国総合開発計画(全総)を彷彿させる状況です。

新規を抑制し、維持・更新を 大型から小規模生活密着型へ

 日本共産党は「公共事業=悪」という立場はとりません。公共事業政策で大事なのは、国民のいのち・安全、暮らしに必要な事業は何か、何を優先すべきかを見定めることです。民主党が復活させた新規の高速道路や新幹線建設は、優先度は高くありません。いま最優先しなければいけないのは、耐震化対策や老朽化対策など既存社会資本の維持管理・更新です。

 1960年代に建設された首都高速や東海道新幹線などの老朽化が注目されています。道路橋や学校施設など公共施設の老朽化対策も遅れ、市町村では10%にも満たない状況です。

 維持管理・更新費は、今後50年間を見ても、数100兆円は必要になってきます。耐用年数が迫ったコンクリート構造物などが急増し、施設の維持・更新費用がかさむからです。国交省所管の施設の更新費だけでも190兆円、維持管理費を含めると360兆円にのぼると試算されています。他に水道施設は今後40年間におよそ39兆円、公立小中学校は、今後30年間に約30兆円~38兆円の更新費がかかると試算されています。

 こうした維持・更新費用を低減する長寿命化対策など急ぐ必要がありますが、それでも膨大な額にのぼることは避けられません。

そのため、公共事業政策は、財界・大手ゼネコンなどの国際競争力強化を軸にした産業政策や大型開発依存型の地方活性化策から、国民の命・安全、暮らしを守り、地域経済再生に役立つ方向へ根本的転換をはかる必要があります。

 

(1)ダム・高速道路など新規建設を抑制し、防災・老朽化に備えた維持・更新事業を優先します。

○“建設さきにありき”の建設計画を根本から見直し、新規建設を抑制します。

 事業中を含む新規に建設されるダムや高速道路は、多くが20~30年前の4全総計画をもとに計画されています。高速道路網の高規格幹線道路14000km、地域高規格道路約7000kmなど、いまだに全総計画を改定した国土形成計画に盛り込まれています。社会経済情勢の変化に関係なく、建設計画だけを推進するやり方を改めます。

・八ツ場ダム、東京外環道(関越道~東名)、新名神高速の凍結2区間、整備新幹線の未着工3区間の凍結解除・建設継続方針を撤回し、中止・凍結を含めて見直します。

○公共事業の徹底した見直しをすすめるため、「公共事業改革基本法案(仮称)」を制定します。

 情報公開の保障、双方向性の市民参加の保障、環境保全優先性、国と地方公共団体の役割分担、審議会改革、独立・中立の「第三者機関」によるチェック、不正行為の禁止、費用便益分析算定データの公表などを内容とし、既存の公共事業を徹底検証できるようにします。

○既存公共施設の老朽化対策、防災・耐震化を急いですすめます。

 全国の自治体で、道路橋、上下水道、学校施設など既存施設の老朽化が深刻になっています。また、南海トラフ地震の被害が想定される地域の既存の海岸・河川堤防の4割~6割が耐震化されていません。

 既存施設の老朽化実態把握、修繕・更新費用の試算、長寿命化計画を急いで策定し、老朽化対策を実施します。堤防など既存施設の耐震化計画を早急に策定し、対策を実施します。

○地方自治体管理の公共施設の維持管理にも補助できるようにします。

 公共施設の維持管理は、地方自治体の単独事業とされています。社会資本整備総合交付金など国の補助金の対象とするには大型工事に括るなど制約されています。地方自治体が管理する公共施設の維持管理にも、直接補助できるようにします。

 

(2)大型開発事業より雇用に役立つ小規模事業、住民生活密着・地域循環型へ切り替え、住民の命と暮らしを守り、地域経済再生に役立つ公共事業政策をすすめます。

 生活に身近な小規模事業を優先してこそ、地域経済・雇用も守ることができます。公共工事の規模と雇用数の関係について「規模が上がるにつれ、労働者の数は減るという相関関係がございます」(2009年2月24日衆院予算委員会、国土交通省総合政策局長答弁)と政府も認めているように大規模工事より小規模工事の方が労働者の雇用効果が大きいのです。維持補修など身近な小規模工事というのは地域の中小企業が受注し、仕事起こしにもなり、地域の雇用拡大につながります。小規模事業への手厚い支援こそ、雇用対策、地域経済活性化に役立つのです。

 

(3)国民のいのち・安全を守るための身近な防災・減災対策事業を優先します。

 東日本大震災後、被災地の復興や防災対策、道路や鉄道幹線の代替網などインフラ整備が注目されています。三陸の高速道路が津波を防いだことや東北新幹線の復旧が早かったことなどから、これを“錦の御旗”に高速道路網や整備新幹線の整備などを正当化しようとしています。

 防災や減災に向けたインフラ整備は必要ですが、それは、より生活に身近なところから整備をすすめるべきです。巨額の費用を投じて、防災に本当に役立つかどうか疑問もある高速道路や新幹線整備を優先する必要はありません。

 たとえば、大深度に建設される特殊な構造の東京外環道は、大震災発生時に避難路とはなりえず、救援活動にも過度の期待を寄せることはできません。入出路が限られてしまう高速道路の整備よりは、避難所へアクセスする一般道路の沿道建築物の耐震強化、不燃化対策を優先させる方がより重要です。

 防災・減災対策を理由にすれば、なんでもいいとものではありません。国民のいのち・安全を守るための身近な防災・減災対策事業を優先すべきです。

○  防災・減災対策は、生活道路、上下水道、学校など、より住民に密着した事業を優先します。

 

(4)ダム・河川事業

○ 脱ダム依存=「ダムに頼らない治水」の立場で、すべての事業中ダムを見直します。

 民主党政権のもとで再検証を始めた83ダムのうち、もともと必要性のない15ダムを中止しましたが、八ツ場ダム、サンルダム(北海道)、石木ダム(長崎県)など27ダム建設を継続としました(12年11月現在)。国交省や県など管理・建設主体を事務局に据え、検証メンバーは都道府県など建設推進派だけで実施する再検証のやり方では、まともな検証はできません。また、小豆島の内海ダム(香川)など本体工事段階のダムや天ヶ瀬ダム(京都)など再開発事業のダムを再検証からも除外しました。集中豪雨など近年の水害・洪水対策は、貯水して洪水調整するダムに頼るのでなく、河川堤防や河道を修繕・改修する流域治水こそ重視すべきことを示しています。

○ 「ダム建設ありき」を改め、住民参加を徹底し、「流域住民が主人公」の河川行政への転換を求める」(2008年10月22日 日本共産党国会議員団)

http://www.jcp.or.jp/web_policy/2008/10/post-55.html

○スーパー堤防は事業の廃止を含め根本的に見直します。

○河川・海岸堤防など耐震化・老朽化対策を優先してすすめます。

 

(5)高速道路

○ 大都市圏環状道路・国土ミッシングリンクの解消への予算の重点化をやめ、計画の見直しをします。

○ 高速道路網は、計画の白紙を含め抜本的に見直します。

 高規格幹線道路計画14000kmのうち約10000km、地域高規格道路(「計画路線」186路線)6950kmのうち約2100kmが供用されています。(2012年3月末時点)。残延長は約8800km。高規格幹線道路だけでも残事業費は33兆円を超えます。地域高規格道路を加えれば、さらに膨らみます。不必要なもの、急がないものなど情報公開、住民参加の徹底を前提にして見直すことが必要です。

○ 6大海峡横断道路計画など地域高規格道路の候補路線(110路線)を直ちに廃止します。

 海峡横断道路計画は、国土形成計画(全国計画)(2008年7月)に、「湾口部、海峡部等を連絡するプロジェクトについては、長期的視点から取り組む」と記載されていいます。これを含む地域高規格道路の候補路線(110路線)は廃止すべきです。

○ 首都高速や阪神高速など都市高速道路の新規・新設は行わず、老朽化対策を優先させます。

  その際、大深度地下化など新規事業と変わらない更新は、道路路線の存廃を含め検証します。

 

(6)新幹線・空港・港湾  

29、交通(2012年総選挙各分野政策)

 

(7)住宅・建築

○住宅

28、住宅・マンション(2012年総選挙各分野政策)

○建築行政

・耐震偽装再発防止のために 建築基準法等改正案の審議にあたっての提案(2006年4月13日 日本共産党国会議員団)

http://www.jcp.or.jp/seisaku/2006/taisingisou_01_02.html

・エレベーター事故の再発防止対策に関する申し入れ(2006年6月28日 日本共産党国会議員団 国土交通部会)

 http://www.jcp.or.jp/diet/text/20060628_elevator.html

 

(8)都市再生・まちづくり

 政府は、東京一極集中を加速させ、住民追い出しなど大都市住民の暮らしを破壊した小泉内閣時代の「都市再生」政策を、何の反省もなく、押しすすめようとしています。大都市の国際競争力の強化のため、国際的ビジネスの拠点をつくる国際競争拠点都市整備事業などに重点的かつ集中的に支援するなどとしています。

 住民不在の都市再生政策を抜本的に見直し、都市計画法、土地区画整理法など住民参加を徹底させる法改正をすすめます。流通施設建設ラッシュなど都市のスプロール化を加速する高速道路建設など見直します。

 

(9)各地で成立している公契約条例の法制化=公契約法を制定します。

 公共事業をめぐっては、この間、単価が切り下げられたために、地元業者が仕事を受注をしてもまともに営業としてなりたたなくなる公共事業が各地で報告されています。そうしたなかで、中小零細企業と営業と地元経済を維持・繁栄させるため、公契約条例をつくっているところも生まれています。

 たとえば、東京の国分寺市議会が2012年6月25日に全会一致で採択した公契約条例があります。この条例は、予定価格9,000万円以上の公共工事、その他の1,000万円以上の委託事業については、市が決めた最低基準の単価を下回らないことを定めています。このほか、公共事業に従事する労働者の賃金を保証するための公契約条例も、全国各地で制定されています。

 日本共産党は、こうした条例を全国に広げるために奮闘するとともに、公契約法の制定をめざします。

 

(10)復興予算の流用問題

 「防災」や「減災」とつけば、あたかも正当・必要な公共工事のように映ります。しかし、この間、東日本大震災の「復興予算」が、復興とはまったく無縁の事業や費目に支出されていたことが、次つぎと明らかになってきました。メディア各紙の報道などからまとめると、この間、問題となった主な流用には次のようなものがあります。

 ➣国内立地推進事業補助金(経産省)2,950億円

 ➣自衛隊輸送機の購入(防衛省)440億円

 ➣アジア太平洋北米地域との青少年交流(外務省)72億円

 ➣核融合炉実験炉の研究支援(文科省)42億円

 ➣地域自殺対策緊急強化基金(内閣府)37億円

 ➣沖縄の国道整備(内閣府)34億円

 ➣反捕鯨団体「シーシェパード」対策(農水省)23億円

 ➣中央合同庁舎4号館の耐震改修(国交省)14億円

 ➣税務署の耐震改修工事(財務省)12億円

 ➣国営諫早干拓事業開門調査用事業費(農水省)9.6億円

 ➣ベトナムへの原発輸出調査委託費(経産省)5億円

 ➣国立競技場災害復旧事業(文科省)3.3億円

 ➣自衛隊情報保全隊活動経費(防衛省)0.8億円

 ➣刑務所受刑者の職業訓練(法務省)0.3億円

 ➣被災地治安確保のための車両購入(法務省)0.3億円

 なぜ、本来、被災地の復興に使われるべき予算が、とんでもない費用に支出されるようになったのか――。それは、民主党と自民、公明両党の密室談合によって、「流用」できる仕組みをつくったからにほかなりません。

 菅内閣が当時提出した原案では、目的として「被災地の復興についての基本理念を明らかにする」となっていました。それが民主党、自民党、公明党の3党合意によって、「東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図る」と変えられてしまいました。この方針にそって、5年間で国と地方合わせて19兆円の復興予算が計上されることになったのです。この予算化のために、25年間の所得税増税と10年間の住民税増税などが実施されることになりました。

 この予算に目をつけたのが、財界・大企業でした。〝復興の目的が「活力ある日本の再生」にもあるのなら、経済活動を担う企業にも配分を〟という理屈と要求でつくられたのが、「流用」の最大の費目となった「国内立地推進事業補助金」でした。

 公明党などは、「通常予算で認められないからと復興予算枠に〝便乗〟したとするならば、許し難い」と指摘したうえで、「流用問題の第一義的責任は、実際に予算の具体的内容を決めて執行する政府にある」(公明新聞10月23日付)などと頬かむりを決め込んでいます。

 しかし、復興予算の「流用」を批判する自民党議員にたいし、枝野幸男・経産相が「御党も合意されて進めてきた話だ」「一緒に〔復興基本法の修正を〕進めてきて、そういう話をするのは、あまりにアンフェアだ(公正でない)」(10月19日、参院行政監視委員会)とのべたように、「流用」問題の根本に、民自公3党の密室合意があるのであり、3党にそろって責任があることは明白です。

 この問題で重大なのは、復興予算の「流用」の一方で、被災地の復旧・復興がまったくといっていいほど遅れているところにあります。「東京」2012年10月14日付には「復興予算バラマキ 色濃く 河川整備7割被災地外 執行477億円 岩手、福島はゼロ」という記事が掲載されました。記事は次のように伝えています。

 「本年度の河川整備費の七割が被災地外に投じられたことが分かった。事業は北海道から九州まで全国で行なわれている一方で、岩手、福島両県はゼロ。復興に名を借りたバラマキ型公共事業復活の構図が、色濃く浮かぶ」「復興予算が充てられた本年度の河川事業費は、復興庁からの計上分も含め四百七十七億円。このうち被災地で使われるのは、青森、宮城、茨城、千葉各県分の計百三十七億円。全体の七割に当る残り三百四十億円は、徳島県の那賀川、熊本県の緑川、新潟県の信濃川等、その他の地域に支出された」

 こうした実態は、河川事業費だけではありません。崩壊したまま再建されない市町村庁舎や各学校、整備されていない国道、県道、鉄道、上下水道など、被災地のインフラは依然として壊滅や半壊状態のままです。こうした被災地の現状を放置したままで、復興予算を被災地とは無縁の費目に使うのは、文字通り被災地と被災者を〝食い物〟にすることと同義だと指摘しても過言ではありません。



 

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