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日本共産党

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赤旗

2012年総選挙各分野政策

1、労働・雇用

退職強要などの違法な人減らし・リストラをやめさせ、人間らしく働けるルールを確立します――内部留保の社会的還元を

2012年11月


  大企業による人減らし・リストラの嵐、派遣や有期雇用などの非正規の働かせ方の広がり、貧困と格差の拡大、長時間過密労働による過労死やうつ病などの増大、10年間下がり続けてきたうえに、経済危機を口実にさらに切り下げられている賃金――。

 失業者が増え、雇用不安が高まり、賃金が下がった結果、個人消費と内需は落ち込む一方で、経済危機から抜け出す道は見えません。結婚ができない、子どもを産めないなど、少子化への影響も深刻です。自殺や犯罪の増大との関連も指摘されています。日本共産党は、人間らしく生き、働けるルールの確立へ力をそそぎます。

 大企業の巨額の内部留保を社会的に還元し、雇用と賃金、労働条件を守り、国民の所得を増やし、家計を温め、日本経済を内需主導の健全な発展の軌道にのせることが可能になり、労働条件改善と経済発展の好循環につながります。

 国家公務員の賃金・退職金の大幅切り下げや社会保険庁の大量首切りによって、「官民賃下げ」や「首切り自由社会」への道を政府が主導するなどもってのほかです。政治の責任で雇用を守り拡大し、賃金・労働条件を改善します。

●大企業の横暴な人減らし・リストラを許さず、解雇、退職・転勤強要を許さない解雇規制を法制化します。

人減らし・合理化では、産業と企業の発展もない

 大手の電機・情報産業を中心に、工場閉鎖や事業縮小などによる13万人規模の人減らし「リストラ計画」(2011~2014年にかけての計画)が発表され、全国各地ですすめられています。計画発表の時点ではすでに派遣や請負、期間工などの非正規雇用の労働者たちは、“切られ”ており計画数にはほとんど含まれていません。厚生労働省への「大量雇用変動届け」は、2011年以降、全産業ですでに20万人(正規が13万、派遣などの非正規が7万人)となっています。

 各地で「希望退職」や「遠隔地転勤」という形式をとっての事実上の退職強要、人権侵害のいじめやパワーハラスメントが横行しています。夫婦や婚約者にわざと別々の遠隔地事業所への転勤命令をだす、「君の仕事はここにはない」など精神的にも追い詰め退職強要を繰り返す、子会社への事業譲渡を偽装し、試験合格者のみ賃金を大幅カットして雇用継続し、あとは希望退職か県外遠隔地転勤、などの手口が取られています。労働者を一方的に「業績不良、能力不足」などと決めつけ、具体的な理由の明示もなく有無をいわさず職場から締め出す不当な「ロックアウト」解雇なども行われています。これらは、労働者だけでなく、家族の暮らしも圧迫し、また下請け・関連中小企業に打撃を与え、地域経済にも税収減、人口流失、失業者の増大、消費減退など大きな影響を与え、社会問題となっています。

 大企業が溜めこんでいる260兆円もの内部留保を雇用と賃金保障のため社会的に還元して、労働者の状態を改善することは、個人消費と内需にしっかりと基盤をおいた日本経済の安定的発展のためにも、技術開発の発展、技能の継承や労働者の「士気-モチベーション」など企業と産業の健全な発展にとっても、さらには日本社会の将来展望にとっても、決定的な意義をもっています。いま、電機情報産業の“リストラ企業”は、短期の決算が赤字になることを大宣伝していますが、そもそも電機産業は、地デジ化などで税金を投入した「ポイント」助成制度などで売りに売り、儲けに儲けてきました。その内部留保は主な電機産業だけでも26兆円にのぼります。4万人以上のリストラを行うとしているパナソニックも、約3兆円の内部留保をもっています(2011年3月末決算)。海外への委託製造をひろげて、自ら技術を流出させ、円高を背景に、「技術は開発するより、買え」と海外M&A(企業買収)に走るなど、技術や研究開発をないがしろにする風潮が闊歩してきました。目先の利益を追いかける短期的・投機的視野の経営の“つけ”を一方的に労働者に押し付けることは許されません。そもそも、人と技術を大事にできなければ、日本の産業・企業の発展もありません。電機大企業にせよ、日本航空にせよ、人減らし頼みのリストラ・再生計画では真の再生は見込めません。

 ファンドによる企業買収、会社資産の売却が野放しにされており、その結果、労働者が安易に解雇されるなど、深刻な事態が生まれています。ファンドが被買収企業の労働条件を実質的に決定している場合、労働者・労働組合との協議を義務づけるなど、法的規制を行います。

あたりまえの解雇規制を法律で明記し、退職強要許さず、転勤・出向も本人同意を

 労働者の人権を無視した強制配転や退職強要が横行しています。繰り返しの呼び出しなど、本人の自由な意思を阻害するような“退職勧奨”はゆきすぎた退職強要として裁判で違法とされています。有期契約の労働者であっても契約期間中の解雇は無効であり、雇用契約を繰り返している場合は、通常の労働者と同様に扱われなくてはなりません。労働者の被る不利益の大きい配転命令も無効です。労働者の「業績不良」を理由とする場合には、それが企業経営や運営に支障・損害を生じるなど、企業から排除しなくてはならないほどの必要性がなければ違法です。

 労働契約法では、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。これは、自民党政府が2003年に労働基準法を改悪して「解雇自由条項」を盛り込もうとしたときに、日本共産党や、労働者・労働組合が協力してこれをやめさせ、逆に解雇を規制する条項をはじめて盛り込ませたものを、2007年の労働契約法制定の際に移されたものです。労働契約法は、あくまでも民法上の効力であり、労働者は最終的には裁判などで争わなければならず、行政は「啓発」指導しかできないとされています。大企業の身勝手な首切りをやめさせ、雇用の責任を果たさせるためには、雇用対策法にもとづく大量雇用変動、再就職援助計画の届出の厳格化などに現行法を活用するとともに、解雇規制を強化することが必要です。日本共産党は、労使の契約や合意の如何(いかん)にかかわらず、適用される「強行規定」をもった「解雇規制・雇用人権法」を提案して、労働者の人権をまもり、ヨーロッパ並みの働くルールの確立をめざしています。

 これまで労働者、労働組合の裁判闘争の判例でうちたてられてきた「整理解雇4要件」(経営上の差し迫った必要性、一時帰休などの回避努力義務、客観的で合理的で公正な選定基準・人選、労働者・労働組合との協議・合意)を法律として明文化し、すべてを満たさない解雇は無効とし、労働基準局が強い行政権限を持って違法な事業主に踏み込んだ指導のできるものにします。この数年、前述の判例「4要件」について、すべての要件をクリアできていなくても総合的に判断すればよい、との主張が事業主側弁護士から行われるようになり、後退した判決が出されるケースが増加しており、法律に明記することが求められています。また、パートや派遣、期間工など有期雇用の非正規労働者についても、契約期間中の契約解除は無効であると同時に雇用契約を何度か繰り返していれば、通常の労働者と同様に扱うものとして明記して、正規雇用社員に先駆けての非正規切りが行われないようにします。55歳一律転籍など、年齢による雇用契約の不利益変更や採用制限を禁止します。

 繰り返しの面談など労働者本人の自由な意思決定が妨げることなどあらゆる退職の強要について、厳しくこれを禁止します。面談をおこなう場合、労働者が要求した場合は立会人の同席を認めるようにします。また、会社の圧力で不本意ながら「退職する」とした場合でも、一定期間内にそれを取り消すことができることとします。転籍や出向は、本人同意がなければ強制できないこととします。労働者の「業績不良」などで解雇する場合も、「真実かつ重大な理由」(参考:フランス法)に基づく具体的な理由や会社側の改善の努力などが行われなければ無効とします。また、「企業再編」を口実とした企業分割・合併・営業譲渡などを理由とした解雇や労働条件の切り下げは無効とし、いずれの企業に所属するかについては本人同意を原則とします。

 解雇をめぐる係争中については、使用者は賃金だけでなく就労を保障しなければならないものとします。解雇予告期間については、現行法では一律に30日となっていますが、ドイツでは勤続期間によって延長されています。日本でも勤続5年以上は4カ月、10年以上は5カ月などとします。

 事業所の閉鎖、移転、縮小の際の自治体との協議の仕組みをつくります。

●雇用の原則は正社員、無期雇用とし、非正規の不利益扱いを禁止し、正社員化と均等待遇をすすめます。すべての労働者が人間らしく働けるようにします。

 労働者の3人に1人、若者や女性では2人に1人が非正規労働者で、そのほとんどが年収200万円以下の「ワーキング・プア」(働く貧困層)です。正社員の長時間過密労働も深刻です。

 非正規の正社員化や均等待遇、最低賃金の引き上げ、「サービス残業」の根絶、長時間労働の是正、過密労働の規制と労働災害の防止・認定基準の緩和など、人間らしく働けるルールを確立することは、緊急で最重要の課題です。

 人間らしく働けるルールの確立のためにも、ILO(国際労働機関)の一連の労働時間・休暇関係の条約(日本は一つも批准していません)をはじめ、111号(雇用における差別禁止)、158号(解雇規制)、175号(パートタイム)などの条約を批准します。

 (なお、労働基本権回復など、公務員労働者については「公務員制度改革」の項を参照してください)。

労働者派遣法の抜本的改正を実現させ、使い捨て労働をなくします

 大量の派遣労働者が、違法に長期間働かされつづけたあげく、経済危機を口実として仕事を奪われてきました。派遣労働者は、リーマン・ショック後に減ったとはいえ、271万人となっています。日本は、他国に例を見ない「派遣労働者使い捨て」の国となっています。そのおおもとには、労働者派遣法を再三にわたって改悪し、対象業務を原則自由化し、専門業務での派遣期間の撤廃などの規制緩和をすすめ、正社員を大量に派遣労働者に置き換えてきたことがあります。

 日本共産党は、違法な派遣・非正規切りとたたかう労働者・労働組合のみなさんと力を合わせて、大企業の派遣法違反の実態を告発し、国会で繰り返し取り上げ、労働者保護のための労働者派遣法の抜本改正を求め、規制強化の流れをつくってきました。07年には、派遣法の抜本改正に向けて立法提案をしています。派遣労働を一時的臨時的業務に限定し、製造業派遣や日雇い派遣の禁止、登録型派遣は真に専門的な業務にきびしく限定すること、派遣期間については一年を上限とし、違反した場合は正規雇用とみなすなど正社員化をすすめること、派遣先正社員との均等待遇、グループ内派遣の制限を行い、常用代替を規制すること、有期労働の規制などをすすめます。

 民主党も、製造業派遣の禁止などをマニフェストにかかげてきました。しかし、財界の圧力などを背景に、民主、自民、公明の談合により、2012年3月に成立した労働者派遣法は、不十分な民主党案からも大幅に後退「修正」されてしまいました。「製造業派遣の原則禁止」は見送られ、日雇い派遣の禁止も雇用契約「30日以内」を禁止するとさせ、しかも「主婦」などは日々雇用も可能としたのです。直接雇用「みなし」も施行を3年後に見送るなどされました。派遣費は、人件費として扱われず、物品費扱いとされるなどしています。日本共産党は、引き続き、雇用の原則は、直接雇用・無期雇用として、真に労働者保護の立場にたった派遣法の抜本改正に力をつくします。

不安定な働かせ方の有期雇用への規制をおこない、パート法の抜本改正をすすめます

 契約社員やパート、期間社員などの非正規労働者は、細切れの雇用契約の更新を繰り返し、つねに雇用不安のなかで働いています。派遣先企業が、直接雇用に切り替えても、数カ月の契約をくりかえし、いつでも「雇い止め」「首切り」自由の「期間工」とされるケースが後をたちません。労働基準法では3年を越える雇用契約ができないことになっていることから、「最長2年11カ月契約」と称して、それまではいつでも「雇い止め」できると「曲解」「誤解」し、違法・脱法を繰り返しているケースもあとをたちません。

 日本共産党は、有期労働は一時的・臨時的業務に限り、期間も一年を上限とすること、一年を超えて働いている場合は期間の定めのないものとみなし、賃金などの待遇も通常の労働者と均等待遇とすることなどを提案してきました。民主党政権は、何の規制もされてこなかった有期契約の労働について、規制をするとして、労働契約法改正をすすめました。しかし、「規制」とは名ばかりで、無制限に有期労働を認め、更新をくりかえして5年を超えた場合は、労働者が要望すれば無期雇用とみなすが、労働条件は有期契約時のものでもよく、クーリング(空白)期間を置けば契約期間はクリアされるというものです。法改正を利用した脱法行為で、上限4年11ケ月の雇用契約を結ぶ事業主も出現しています。

 現行法でも、契約途中の解雇は厳しく規制されており、また、契約更新の「ある」「なし」や、更新する際の基準について明示しなければならず、反復更新を重ねていれば、「解雇権濫用法理」が類推適用されます。現行法を厳しく守らせ、労働者の泣き寝入りを許しません。

 パート労働者について、現行法では、通常の労働者と均等待遇とされるのは、業務の内容や責任が同じ、人材活用の仕組みが同一である、無期労働契約であるという3つの要件が課せられており、その対象となるのはパート労働者のたったの1%にすぎません。同じような仕事をしていても「責任がちがう」、「人事管理がちがう」などという理由で圧倒的に女性であるパートには、正社員との大きな賃金格差が押し付けられています。

 日本共産党は、賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件の均等待遇と正社員への道の拡大をめざし、「パート・有期労働者均等待遇法」を提案しています。賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について、労働者がパート・有期労働者であることを理由として、正社員と差別的取扱いをすることを禁止します。正社員を募集するときは、パート・有期労働者に応募の機会を優先的に与えるようにします。短期の雇用契約のくり返しを、期間の定めのない雇用契約とみなした判例を法制化します。合理的理由のない「短期・反復雇用」「契約社員」は不公正な契約として規制し、正社員に移行させます。正社員が、育児・介護などの理由のために、一定期間、パートタイム労働者として働き、また正社員にもどれるようにします。「均等待遇」に違反している企業に対して、罰則を設けることも含めきびしく取り締まります。

 日本最大の非正規雇用をかかえる日本郵政グループは、ワーキング・プアを大量につくりだし、同様の事業を行う宅配事業者のなかに非正規化を広げる牽引車ともなってきました。日本共産党は、国会でこの問題をとりあげ、正社員化への流れをつくりだしてきました。希望する人全員を正社員化するよう、ひきつづき力を注ぎます。

 本来、労働者として企業の指揮・命令を受けて仕事をしているのに「個人請負」契約として、社会保険など労働者としての権利を奪う脱法行為も増えています。こうした違法行為もきびしく取り締まり、ILOの「雇用関係に関する勧告」(198号)を活用し、請負や委託で働く労働者を保護します。「多様な働き方」の名で、非正規雇用の拡大をすすめる政府・財界の政策に反対します。

●異常な長時間・過密労働を是正し、男女ともに仕事と家庭を両立できる社会の実現とともに、安定した雇用の創出をすすめます。

 大企業をはじめ、長時間・過密労働による過労死やうつ病などのメンタルヘルスが後を絶ちません。「サービス残業」を当たり前と公言する「ブラック企業」が横行し、「名ばかり店長」「名ばかり正社員」と言われる使い捨て労働、無権利で過酷な労働条件もまかり通っています。

 日本では、ヨーロッパと違い、労働基準法で残業の上限が定められていないため、長時間労働が蔓延しています。その労基法さえふみにじる不払い労働である「サービス残業」も横行しています。過労死との因果関係がつよくなる月60時間以上の残業をしている男性は、30歳代を中心に4人に1人、女性も10人に1人(20歳代では6人に1人)となっています。長時間・過密労働のなかで、育児休業どころか、結婚や出産しても働きつづけられる女性は2割にすぎず、職場復帰してもパートなどの低賃金不安定な非正規雇用となっており、そのことが男女賃金格差をいっそうひろげることにもなっています。男性も女性も、仕事も家庭も両立できる人間らしい働き方のできる社会の実現のために、労働時間規制を強化し、日本の異常な長時間労働をなくしていきます。

 当面、「残業は年間360時間以内」という大臣告示をただちに法定化し、残業割増率を現行25%増から50%増に、深夜・休日は100%増に引き上げます。さらに、労働基準法を抜本的に改正して拘束8時間労働制とし、残業時間を1日2時間、月20時間、年120時間に制限します。恒常的な長時間残業や有休をとれないことを前提にした生産・要員計画をなくします。深夜労働・交代制労働、過密労働をきびしく規制します。EU(欧州連合)のように、連続休息時間を最低11時間は確保します(深夜12時まで働いたら翌日の出勤は11時以降)。こうして労働時間を抜本的に短縮し、安定した雇用の拡大につなげます。

 日本共産党は、1976年以来36年間、300回を優に超える国会質問で「サービス残業」は企業犯罪だと追及し、2001年には、厚生労働省に根絶のため企業が責任をもって時間管理を強化するなどを内容とする「サービス残業」根絶通達をださせました。過去9年間だけでも1778億円以上の未払い残業代を支払わせています。

 通達を活用し、職場からのとりくみを強化するとともに、「サービス残業根絶法」を制定し、悪質な企業には、企業名を公表するとともに、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせるようにします。中間管理職や裁量労働制の労働者の時間管理をきちんとさせます。

 「店長」「マネージャー」といいながら、管理職としての権限、実態もない「名ばかり管理職」にたいする残業代不払いを許しません。

 01年に5割を切った有給休暇の取得率は、2011年も48%と10年たっても5割をきったままです。ヨーロッパでは、有給休暇の完全取得は常識になっています。年次有給休暇を最低20日とし、一定日数の連続取得と完全消化を保障します。

 「サービス残業」をなくすだけでも、新たに310万人分の雇用が生まれます(民間のシンクタンク労働総研の試算)。有給休暇の完全取得による経済効果は16兆円、188万人分の雇用が生まれます(財界系のシンクタンク日本生産性本部の試算)。

●男女がともに、人間らしく生き、働ける労働条件を確立します

 女性の2人に1人が、パートや契約、派遣などの非正規雇用のもとに置かれています。日本の長時間労働は、結婚や妊娠、出産を理由として、家庭的責任を担わされている女性が、働き続けたくても働き続けられない社会となっています。働こうとすると、職場復帰の受け皿は、差別的処遇のパートなどの非正規にしかありません。

 「転勤できない」「業務がちがう」などを表向きの理由とした男女間の昇給・昇格差別、賃金差別の結果、男性の正社員に比べて、女性の正社員の賃金は7割、女性の非正規では4割という格差があります。派遣労働者でも、女性の時給は男性の9割です。実態は一般業務であるのに専門業務派遣だと偽装されて、長期に細切れ契約で働かされ、30歳代で事実上の「定年」という実態もあります。雇用形態差別がそのまま男女間格差に直結し、退職金や年金支給の低さなどにも大きな影響を与えています。

 労働時間を短縮し、男女賃金格差を是正することは、男女ともに仕事も家庭生活も両立できる社会にする上でも重要です。わが国も批准しているILO100号条約(同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬:その事業所の同様・類似労働をしている男女労働者の報酬を同一とする)にもとづき格差を是正します。

 1985年に男女雇用機会均等法が制定されて四半世紀。しかし、日本の男女賃金格差は世界でも最も大きい部類に甘んじています。雇用機会均等法では、「間接差別の禁止」について、「募集・採用で身長・体重・体力を要件にすること」「転勤を採用・昇進の要件にすること」などの3例の限定的な列挙にとどめるとともに、例外もみとめています。条件をつけずに「間接差別」の禁止を明記すべきです。雇用形態差別や低賃金の業務に女性の比率が高くなっていることなどについて、実効性ある措置をとることが求められています。

 (詳しくは「女性」の項を参照してください)。

●最低賃金の抜本的引き上げなど、政治の責任で賃金の大幅底上げを実現します

 年収200万円以下の労働者が、1000万人を超えるようになっています。労働者がまともな生活ができるようにするためにも、労働者全体の賃金を底支えするためにも、最低賃金の引き上げが必要です。職場・地域の運動と世論の広がり、日本共産党の国会論戦が相まって、最低賃金法が40年ぶりに改定され、最賃決定基準として、生計費とかかわって憲法25条の生存権規定が盛り込まれました。この改定にふさわしい最賃の大幅引き上げを実現します。最低賃金の決定基準は、生計費のみとし、改定最賃法にも残されている企業の「支払い能力」を削除します。政府の最賃引き上げ先延ばしをゆるさず、中小企業への適切な支援をはかりながら、すみやかに時給1000円以上への引き上げをめざすとともに、全国一律の最低賃金制度を確立します。

 中小零細企業が最低賃金を支払えるように、大企業の下請けいじめや規制緩和による過当競争をきびしく規制するとともに、助成措置を講じます。「官製ワーキング・プア」を許さないためにも、国や自治体の非常勤職員の賃金を引き上げます。国や自治体と受注する事業者との間で結ばれる契約に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件(ディーセントワーク)を定める法律や条例(公契約法・条例)を定めます。また、自治体が誘致する企業について、正社員化の度合いや均等待遇の状況を重要な判断基準とさせます。

●失業者の生活と職業訓練を保障し、安定した仕事、公的仕事への道を開きます

 労働者は、失業すればとたんに収入が途絶え、貯蓄だけが頼りです。派遣や期間工の労働者は、貯蓄もできないような劣悪な労働条件で働かされ、首を切られると同時に寮から追い出されてホームレスになっています。ILOは、日本は失業手当を受給できない失業者の割合が77%にものぼり、先進国中最悪の水準にあります。失業者が安心して仕事を探せるようにするためにも、雇用のセーフティネットの拡充が不可欠です。

 雇用保険から排除されている失業者は約1000万人に上っています。「失業保険が切れる」から劣悪な労働条件でも就職せざるをえないという状況を改善し、「ワーキング・プア」をなくしていくうえでも、雇用保険の拡充が重要です。失業給付期間を、現在の90−330日から180−540日程度までに延長します。給付水準の引き上げ、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくし、受給開始時の3カ月の待機期間をなくすなど抜本的に拡充します。

 安定した仕事につく機会を広げるために、専門学校なども活用して職業訓練制度を抜本的に充実させます。フランスでは、職業訓練への資金提供を企業に義務づけています。ドイツには、企業が職業訓練生を一定の報酬を支払って受け入れ、終了後は正社員として採用するという制度があります。政府は、雇用保険を受給していない労働者や、給付を受けても再就職できなかった労働者を対象に、職業訓練とセットで訓練期間中の生活を保障することを柱とした「緊急人材育成・就職支援基金」(雇用保険に未加入または受給期間が終わった求職者が、原則無料で職業訓練を受けられ、要件をみたすと月10万円の支給も受けられる)を創設し、恒久化させましたが、就職率は7割前後に留まり、就職できても不安定な非正規雇用であるなどしています。「大手事業者優先になり、中小事業者が参入できない」「一回の遅刻証明をださなかったために生活費不支給になった」など運用をめぐってはさまざまな問題もあります。必要な訓練と支給が受けられるものとして改善を図るようにします。

 低賃金で貯えもなく、企業内での教育訓練の機会もなかったワーキング・プアやフリーターの職業訓練を重視し、有給の職業訓練制度や訓練貸付制度を創設し、訓練期間中の生活援助を抜本的に強化します。

 民主党政権が「事業仕分け」で打ち出した全国83カ所の地域職業訓練センターの全廃方針を撤回し、希望するすべての失業者に職業訓練の機会を提供します。

 「ネットカフェ難民」などともいわれてきたホームレスの状況は深刻です。公園の青テントから出勤している人もいます。ワーキング・プアや失業者に、公共・公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度、必要な医療が受けられるようにするなど、生活支援を強め、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設します。

 「ふるさと雇用再生特別交付金制度」など、政府の不十分な雇用創出制度を抜本的に拡充するとともに、国と自治体の責任で、効果のある公的就労事業を確立します。国と自治体の協力による臨時のつなぎ就労の場を確保させます。また、福祉、医療、環境、防災、教育など、国民のくらしに必要な分野が慢性的に人手不足状態にあります。この分野での雇用を、職業訓練と結びつけ、人間らしい賃金・労働条件を確保して拡大することは、国と自治体の重要な責任です。

 働く者が連帯してみずから受け皿をつくり、仕事をつくりだす「協同労働の協同組合」(「労働者協同組合」)について、労働者性を担保した根拠法を制定します。

 高年齢者雇用安定法が改定され、年金の支給開始年齢引き上げにあわせて、65歳までの希望者全員への雇用延長が事業主に義務づけられました。雇用延長措置をとる企業は9割を越えていますが、雇用延長しても賃金が定年前の半分以下という企業が多数になっています。アメリカやヨーロッパのように、年齢を理由にして雇用や賃金など労働条件について差別することを禁じます。高齢者雇用延長制度については、年齢による賃金などの労働条件差別をやめさせます。

 退職金の後払いである企業年金の一方的な切り下げを許さず、受給権を守ります。

●新卒者の就職難を打開します

 日本共産党は、2010年4月21日、「新卒者の就職難打開へ――社会への第一歩を応援する政治に いまこそ、国、自治体、教育者、そして企業と経済界が真摯な取り組みを」という新卒者の就職難に関する政策を発表しています。くわしくはこちらをご覧ください。

●国と地方の労働行政を強化します

 人間らしく働けるルールを確立するために、国の労働行政の強化は不可欠です。労働基準監督署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。ILO理事会の決定にそって、労働基準監督官を2倍にします。職業訓練の充実や再就職支援、労働者の権利と雇用主の義務を知らせる広報・啓蒙活動を強化します。そのために、ハローワークの体制を抜本的に拡充します。中央と地方の労働委員会の民主化と機能の強化、パワハラ・セクハラをはじめ個別労働紛争の処理制度の充実をすすめます。学校教育で労働者の権利をしっかり教えるようにします。

 

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