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日本共産党

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赤旗

16.教育

すべての子どもの成長発達を支える教育に転換します

2010年6月19日 日本共産党

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 どの子どもにも、十分な教育を受けて成長発達する権利があります。そうした教育の保障こそ平和で豊かな社会を築くカギです。ところが日本では、「世界一高い学費」のもとで貧富の差による教育格差が広がり、過度の「競争」や非人間的な「管理」が子どもの成長を歪めています。この異常さは国際機関も厳しく指摘しており、その転換は国民的な課題です。

ところが民主党政権は、全国いっせい学力テストの実質存続、「日の丸・君が代」強制続行など、これまでの教育政策を基本的に引き継いでいます。今春の「高校学費無償化」などの前向きな施策でも、増税による低所得層の負担増、私立高校の重い負担などの新たな格差や矛盾をつくりだしました。これらの大本には、憲法や子どもの権利条約の精神に反した「日本国教育基本法案」を「教育政策の集大成」とする同党の姿勢があります。

私たちは憲法と子どもの権利条約の立場にたって、教育格差、「競争」や「管理」などの歪みをただし、子どもたちが「わかった!」と目を輝かす授業、子どもの声をじっくり聞いてあたたかく接する先生――そんな教育が全国どこでも行なわれるようにします。

教育費負担の軽減・無償化をすすめます

 子どもを持つ上での不安のトップはどの世代も、「経済的負担の増加」です(内閣府調査)。なかでも教育費の負担は重く、高校入学から大学卒業にまでかかる費用は子ども一人当たり平均1007万円、教育費は年収の34%にのぼり、年収200〜400万円の世帯では48.3%に達します(日本政策金融公庫調査)。高校も大学も無償化していくことは、国際人権規約で定められている世界のルールであり、ヨーロッパでは教育費負担がほとんどかからない国が少なくありません。わが国の憲法も国民に「ひとしく教育を受ける権利」(第26条)を保障し、教育基本法は「すべて国民は...経済的地位...によって、教育上差別されない」(第4条)としています。こうした立場から、全ての段階で教育費の軽減・無償化をすすめます。

 乳幼児教育の負担軽減を進めます......乳幼児は人格の土台をつくる大切な時期です。ところが、日本の乳幼児教育の予算はOECDの半分しかなく、足りない保育園、保育園の民営化など量質ともに貧弱で、負担の重さに若い保護者は改善をつよく求めています。すべての乳幼児が豊かな保育がうけられる体制を整えるとともに、無償化をめざして、保育料、幼稚園授業料の軽減を進めます。

 義務教育段階の家計負担の解消を進めます......義務教育無償の原則にも関わらず、無償の対象は授業料や教科書代などに限られ、制服代、ドリル代、修学旅行積み立てなど義務教育段階の家計負担はあまりに重すぎます。義務教育にふさわしく家計負担の解消をめざし、段階的に負担の引き下げを進めます。

 就学援助を拡充します......就学援助は義務教育に通う子どもの命綱です。ところが、「子どもの貧困」が広がり就学援助を強めなければならない時に、自公政権が就学援助の国庫負担制度を廃止し、各地で就学援助の縮小がはじまっています。国庫負担制度をもとに戻し、対象を少なくとも生活保護基準×1.5倍となるように引き上げ、支給額も実態にみあってひきあげ、利用しやすい制度にします。教育扶助の額も同様に引き上げます。学校給食費の未払いをすべて保護者の責任にするのではなく、無償化の方向を検討するとともに、生活の実態に応じて、必要な免除措置をすすめるようにします。

 高校教育費の無償化をすすめます......高校は進学率97%を超えた「準義務教育」ともいうべきもので、その無償化は世界の流れです。今春始まった「高校実質無償化」の不十分点をあらため、制度をさらに前に進めます。私立高校の無償化をめざし、当面、私立高校は入学金、施設整備費の重い負担があることに鑑み、(1)全員の授業料部分の実質無償化(おおむね平均額36万円支給)、(2)入学金や施設整備費については、年収500万円未満世帯の全額無償化800万円未満世帯の半額支援をおこないます。国公私立の「無償措置」のなかにある、年限制限など不合理な制度を是正します。家計がたいへんな生徒への通学、教科書、教材、制服、修学旅行、部活動等への支援制度をつくります(給付制奨学金制度)。国際条約に基づき朝鮮学校など外国人学校に無償化措置を適用します。不登校の子どもについても、高校と同等をめざし、学習への公的支援を強めます。義務教育の学齢も同様の措置をとります。

大学の「世界一の高学費」を軽減します......国公立大学の授業料標準額を段階的に引き下げ、私立大学には国立との差額を補てんするための国庫助成や私立大学生への直接助成をおこないます。国公私立の区別なく、年収400万円以下の世帯への学費免除を実施する制度をつくります。国際人権規約第13条(社会権規約)の高校と大学の「学費の段階的無償化」を定めた条項の「留保」を直ちに撤回します。高等専門学校については、高校相当部分、高等教育相当部分それぞれの時期に即して無償化・負担軽減をおこないます。

各種学校・専門学校の負担軽減に着手します......高卒後なんらかの教育機関に進学する割合は70%に達しています。そのなかでも各種学校・専門学校の学費は年間100万円、200万円とかかるのに公的助成がありません。北欧などでは専門学校も無償です。国の責任で公的助成に着手します。

給付制奨学金の創設など奨学金制度の改革で支援を強めます......国の奨学金はすべて無利子に戻すとともに、卒業後の年収が300万円以下の場合に返済を猶予する制度を確立します。滞納者を個人信用情報機関に通報する「ブラックリスト化」を中止します。就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の「給付制奨学金」を創設します。

 「学費の段階的無償化」を定めた国際人権規約(社会権規約)への留保を撤回します......日本政府は、国際人権規約に加わりながら、無償化条項を留保したままです。そういう国は今や日本、マダガスカルの2ヶ国のみです。留保を撤回し、国の姿勢を転換し、「世界一高い学費」を計画的に引き下げるようにします。

OECD最下位クラスの教育予算を大幅に引き上げ、国の責任で30人学級の実現、私学助成の拡充をはじめとする条件整備をすすめます

 日本の教育予算の水準はGDP比3.4%でOECDのなかで最下位クラスで、諸国平均の7割にも達していません。そのため日本はヨーロッパとくらべて教育条件が大きく立ち遅れています。財界が「もっと教育予算を削れ」と圧力をかけ、歴代の政権がその言いなりになってきた結果です。いま圧倒的多数の教育関係者は一致して教育予算の増額を求めています。財界の妨害をはねのけて、教育予算をOECD平均をめざして計画的に引き上げ、日本の教育条件をひきあげます。

 国として「30人以下学級」を実施します......少人数学級は子どもをていねいに育てるために必要な条件であり、国民のつよい要求です。ところが国の制度は30年間「1学級=40人」のままで、世界に大きく立ち遅れています。地方における少人数学級の試みも、国の制度が40人学級であるため、不十分なものとならざるをえません。国として「30人学級」を実施させます。

公立学校の非正規教員の正規化をはかります......教育予算削減のもとで、非正規教員の割合は2000年の約6%(推計)から2009年には11.1%にまで急増し、教育条件を不安定にしています。教職員定数をふやし正規化をすすめます。夏休みなどの間は賃金保障もないなどの非正規教員の劣悪な処遇の改善をすすめます。

 私学助成を増額します......私学教育は公教育の大切な一翼を担っています。公私間格差を是正し、私学の教育条件をきちんと保障するため、当面、経常費2分の1助成の早期実現、授業料直接補助、施設助成の拡充をすすめます。

 私学の自主性を守ります......「私学の自由」は、国民の教育の自由を保障する上できわめて大切なものです。2007年に自公政権が強行した「教育三法」改悪は、私学にたいする権力統制に道をひらく危険があります。日本共産党の国会質問にたいして、政府は「私学の建学の精神尊重」を認めるとともに、教員評価・学校評価を私学助成の交付要件にすることを「考えていない」と答弁しました。こうしたことをふまえ、私学の自主性を守るために全力をあげます。

 特別支援教育・障害児教育を拡充します......特別支援学校や特別支援学級などに在籍する子どもたちが急増しているにもかかわらず、それに必要な条件整備が図られていないため、各地で「教室をカーテンで仕切って二学級が使う」など小中学校では考えられないような事態がおきています。こうした劣悪な条件を改善するために全力をあげます。特別支援学校は特別支援教育体制への移行により、小中学校での教育にも一定の役割をはたすことになりました。ところがそれに伴う増員がなく、多くの矛盾がうまれています。教員定数を増やすとともに、小規模分散の地域密着型をめざします。特別支援学級は子どもたちの障害の複雑化に対応するため、教員を増員します。通級指導教室の編制基準をもうけ、必要な教員を配置します。通学の保障をすすめます。医療・福祉など専門機関とのネットワーク、巡回相談など地域全体の支援体制をつよめます。「子どもの最大限の発達」や「社会への完全かつ効果的な参加」を目標とするインクルーシブ教育(国連の障害者権利条約)の立場から、日本の教育制度がインクルーシブ教育にふさわしいものとなるよう、国民的な合意形成をはかり、改善を進めます。

(詳しくは、「障害のある子どもたちの教育条件を改善するための緊急提案」http://www.jcp.or.jp/seisaku/2010/20100402_syougaiji_kyouiku_teian.htmlをご参照ください)

 学校耐震化をすすめます......2008年6月、日本共産党をはじめ5会派共同の「学校耐震化促進法」が成立し、市町村が行なう耐震補強工事への国庫補助率を現行の二分の一から三分の二に引き上げるなどが決まりました。長年の国民運動の成果です。しかし、自公政権による「三位一体」改革で財政が疲弊し、地方自治体によっては診断調査さえ手がつかない状況にあります。さらに、現在の補助事業は耐震性のない建物4万1000棟のうちで倒壊の危険性が高いとされる7300棟が対象のため、残りの建物の耐震化が後回しになる危険もあります。予算をさらに増額して、全ての耐震調査・耐震化工事への補助率と補助単価をひきあげ、保育園や幼稚園も含めて遅れた耐震化を確実に進めるようにします。

 学校の一方的統廃合に反対します......政府は、教育予算削減のために学校統廃合の推進を打ちだしました。しかし、小規模な学校は子ども一人ひとりに目が行き届くなどの優れた面があります。そうした条件をこわし、子どもの通学を困難にし、地域の教育力を弱めるなど子どもの学習権を後退させ、地域の文化、コミュニティーの拠点を奪う、学校の一方的統廃合に反対します。

 公立図書館、学校図書館を拡充します......公立図書館、学校図書館の整備を図るため、国の財政措置を充実させます。日常の生活圏域に図書館を設置し、司書の配置、資料費の増額を図り、住民の知る権利の保障と地域の振興に資する公立図書館を整備します。学校図書館に専任の学校司書を配置し、蔵書と機能を充実させます。子どもの読書推進計画は、公立図書館や学校図書館などの整備推進をはかる目的で策定し、「読書冊数」を競わせることがないようにします。図書館サービスと機能の変質につながる、公立図書館への指定管理者制度導入、図書館運営の民間企業への委託に反対します。

 学校給食を拡充します......安全で豊かな学校給食のために、地産地消、自校方式、直営方式などをすすめます。中学校給食、高校給食をひろげます。学校給食費の未払いをすべて保護者の責任にするのではなく、無償化の方向を検討するとともに、生活の実態に応じて、必要な免除措置をすすめるようにします。

 保健室を充実させます......学校の保健室は、医師、カウンセラーなどの専門家と連携して、子どもの心身を支える、多様でかけがえのない役割を果たしています。養護教諭の複数配置をすすめるなど拡充をすすめます。

学童保育などの拡充をすすめます......共働き家庭やひとり親家庭が増えるなかで、小学生の放課後の生活と安全を保障する学童保育の役割はいっそう大きくなっています。学童保育はまだまだ不足しており、希望する子どもが全員入所できるようにします。子どもたちに負担を強いる大規模化を解消し、新・増設をすすめます。「遊びと生活の場」にふさわしく、適正な規模、施設の広さや設備など、安心して生活できる設置・運営基準を定めます。指導員の半数は、年収150万円未満であり、非正規が多く、不安定で働き続けられない劣悪な条件におかれています。指導員の専任・常勤・複数配置と労働条件の改善、研修の充実をはかります。これらにふさわしく国の予算の抜本的な増額・拡充を図ります。「放課後子どもプラン」は、学童保育、放課後子ども教室をそれぞれ拡充します。

 外国人教育、夜間中学開設を推進します......日本に居住する外国人登録者は200万人を超え、新たに結婚する20組のうち1組は外国籍の人との結婚といわれています。内外人平等を保障した国際人権規約、子どもの権利条約にもとづき、日本語教室設置、公立学校への入学資格の改善など在日外国人の子どもの教育を保障します。夜間中学は、戦争の混乱や経済的な理由により教育を受けられなかった多くの人、不登校の子ども、障害者、中国帰国者・在日外国人らにとってかけがえのない義務教育の場となっています。ところが全国にわずか35校しかなく、06年には日弁連からも夜間中学増設の意見書が提出されました。今ある中学校の二部授業として夜間中学の開設を全国ですすめます。外国人の賃金未払いや劣悪な労働条件の改善、福祉・医療を受けやすくするとともに、地域での共生をすすめます。

 社会教育、文化、スポーツ施策を拡充します......2007年、改悪教育基本法の具体化として、社会教育関連法の改悪がおこなわれました。とりわけ、社会教育の自由、自律性が損なわれる危険は重大です。私たちは、そうしたことのないようとりくみをつよめます。同時に、公民館の増設や専門家の増員など社会教育施設の拡充をはかります。児童館、公園、スポーツ施設などの増設、拡充をすすめます。子どもの安全や文化環境を貧しくする民間委託に反対します。スポーツ・文化活動への公的援助をつよめます。学校などでの文化芸術鑑賞などの予算を拡充します。青少年に有害なサッカーくじの廃止を求めます。

競争教育、ふるいわけ教育を是正します

 子どもに過度の競争をかすことは、子どもの人間性や学力をゆがめ、ひいては社会全体をゆがめることになります。ところが、わが国では財界の圧力によって世界で例がないような競争的な教育制度が押し付けられてきました。国連・子どもの権利委員会も日本政府に「高度に競争的な教育制度」が、子どもたちにストレスを与え発達に障害をもたらしていることを厳しく指摘し、その改善をもとめています。過度な競争をとりのぞくために次の施策にとりくみます。

 全国いっせい学力テストの廃止......各地で「点を上げるため先生が正解を教える」「ドリルばかりでほんらいの知育がおろそかになる」など深刻な問題が噴出しています。民主党政権は抽出方式に切り替えるといいましたが、実際には7割の学校が参加し、学力テスト体制は基本的に変わっていません。学力形成に有害ないっせい学力テストを廃止します。学力の全国的調査は、抽出調査で十分です。

学区自由化の見直し......子どもと教員を不毛な形で競い合わせ、地域の教育力を弱め、入学者ゼロの学校をつくりだすなど教育を歪める学区自由化の強制に反対します。

 学校予算の差別化に反対します......この間の「一貫校」構想の多くは、一部の「エリート」のための教育に公立学校予算を重点的につぎこむもので、教育格差を助長しかねません。学校評価による予算の格差配分に反対し、すべての学校の教育条件の向上を重視します。

 競争的教育制度の見直しに着手します......高校学区の拡大などにより、偏差値による高校の輪切りなど「選別の教育」はますます強まっています。そのことが子どもや青年をどれほど傷つけているか知れません。ヨーロッパでは基本的に高校入試を課さないなど、過度な競争から子どもの成長を守るしくみがあります。高校、大学の入試制度を抜本的に改革するための専門家、国民の検討の場をもうけ、改革に着手します。

教育の自主性を保障します

 教育の営みは、子どもの学習権にこたえるための社会全体の責務であり、国家の支配的権能ではありません。教育は直接の人格的な接触を通じ個性的におこなわれる文化的な営みですから、一定の範囲で教員の自由、自主性が保障される必要があります。ところが日本ではつよい国家統制が押し付けられ、教育がゆがめられてきました。私たちはそのゆがみを是正し、教育の自主性を保障します。

 学校の自主的な運営を保障します......職員会議の形骸化をあらため、教育方針についての合意形成の場として位置づけるとともに、教職員、子ども、保護者らの参加と共同による子どもの成長を中心にすえた学校運営を奨励します。学校評議員制度や地域運営学校は教員や生徒の参加を保障し、改善します。学校の教育活動を、行政の決めた数値目標に従属させてゆがめる「PDCAサイクル」などの押しつけに反対します。

「多忙化」解消など、教員を専門家として尊重し、支援します......教職員は、残業月平均81時間・国の過労死ラインを上回る労働時間で働き、かつ、授業準備や子どもと触れ合う時間が取れずに悩んでいます。こうした「多忙化」を解消するために、教職員の増員をはかるとともに、行政が作り出した不要不急の業務を整理・解消します。「ILOユネスコ・教員の地位に関する勧告」をふまえ、教員を教育の専門家として尊重し、学校運営のみならず教育政策の決定でも重要な役割を果たせるようにします。教員の自主的研修を保障します。新任の先生を長時間子どもから引き離す、官製の「初任者研修」を抜本的に見直します。教員の専門職性を弱め、教員組織を上意下達のピラミッド型組織に変質させる主幹制、主幹教諭制度を見直します。管理職によるパワーハラスメントの予防、対策をつよめます。

 「教員免許更新制」を廃止します......「教員免許更新制」のねらいは、教員の身分を不安定にして、政府言いなりの「物言わぬ教師」づくりをすすめることです。しかも、その講習は教員の研修として役立つもの、役立たないものなど様々で、とうてい免許状をあらためて保障するものではありません。大量の教員の「講習」が義務づけられるのに講習の開設義務が誰にもない、講習中の代替要員もないなど制度的にも破綻しています。同制度はきっぱり廃止すべきです。

 恣意的な「教員評価」「不適格教員」制度や「教員給与の格差付け」に反対します......現在の「教員評価」制度は、教員の目を子どもから管理職や行政に向けさせ、教育を歪める有害なものです。教員評価というなら、子ども、保護者、同僚、専門家などの関与のもとで、教員が納得し、教員の努力を励ます、教育活動へのていねいな評価であるべきです。「不適格教員」のレッテル貼りや「草むしり」「密室に座らせ続ける」などの「指導力改善研修」も、教員を追いつめるだけです。子どもを傷つける教員には、子どもの成長する権利を保障する立場から毅然と対処するとともに、問題をかかえる教員の人間的な立ち直りを促す支援を重視し、そのための人員配置などの支援策をとります。行政が教員の優劣をきめて、給与に格差をつけることは、教員のあり方を歪めるもので、教員どうしの協力や連携を困難にし、子どもの教育に悪影響をおよぼすものです。つよく反対し、専門職にふさわしい処遇の改善をもとめます。

 権力的で硬直した教育行政を抜本的に改革します......自民党政治が長年つづけた教育統制の結果、多くの教育委員会は、学校現場の意見や住民の声をまともに聞かず、国などの意向を学校に押しつける、権力的で硬直した組織になっています。文部科学省による教育統制をやめ、教育委員会については、教育条件を整備し、教育の自主性を守るための民主主義的な機関へと抜本的に改革します。そのために、教育委員会の会議公開の実質化、子ども・保護者・教職員らの意見反映、事務局職員の専門性向上などをすすめます。国による教育委員会への「指示」「是正」など、地方分権にも逆行した国家統制に反対します。かつて自民党政権が廃止した教育委員の公選制や予算の編成権を復活させます。

 民主党の「教育委員会廃止」「学校理事会制度」構想に反対します......民主党の「教育委員会廃止」構想は、自治体の首長が教育を直接支配するものです。「学校理事会制度」は首長が任命する理事が学校運営の中心に座るもので、教職員や子ども等が学校運営から排除されてしまいます。こうした教育の自主性に反する民主党の構想に反対します。

 教員採用、管理職昇任を公正なものにします......教員人事の不正を根絶するため徹底してメスをいれ、公正な採用・昇任がおこなわれるようにします。採点者、選考者に受験者が特定できないようするなどの公正性、透明性の確保とともに、採点基準や解答、試験結果を公表し、採用を受験者の側からもチェックできるようにします。採用時の思想チェックはあってはならないことです。管理職試験への「推薦制」などもやめさせます。

子どもの豊かな成長を保障します

 学力保障をすすめます......すべての子どもに基礎的な学力を保障することを学校教育の基本的な任務として重視します。暗記ではない自然や社会のしくみがわかる知育、市民道徳の教育、体育、情操教育などバランスのとれた教育をめざします。学習が遅れがちな子どもへの支援を手厚くします。「授業時数確保」の名のもとで、夏休み短縮などゆとりのない学校生活にしては、知育をふくむ人間的成長全体にマイナスです。学力保障に一番有効な施策である少人数学級こそ実現すべきです。学習指導要領は、研究者や教職員、保護者など国民参加で抜本的に見直すとともに、その強制性をあらため、戦後直後のように「試案」と明示し、子どもの状況や学校・地域の実情に即した教育課程を自主的につくれるようにします。子どもをふるいわけ、人間として傷つける危険のつよい習熟度別学習の強制に反対します。

 市民道徳の教育を重視します......市民道徳の教育を、憲法にもとづき、基本的人権の尊重を中心にすえ、子どもたちが自らモラルを形成できるようにします。改悪教育基本法にそって、特定の愛国心などの「徳目」を上から与え、それを子どもたちに植え付けるようなやり方は、憲法が保障する「思想・良心の自由」を侵害するもので、許されるものではありません。子どもの納得を無視して、「規範意識」を叩き込むような「ゼロトレランス」(許容度ゼロ政策)は、反人間的・反道徳的なものであり、その強制をやめさせます。「心のノート」などの官製教材の強制、「伝統文化」に名をかりた「靖国参拝」の押しつけ、「道徳の教科化」に反対します。

 いじめ問題の解決にとりくみます......「いじめの数値目標化」などのもとで、いじめやその訴えが握りつぶされる例があとをたちません。そうしたことをやめさせ、安全配慮義務を徹底し子どもの生命最優先の学校をつくります。いじめられて学校に来ることができない子どもの学習権の保障を重視します。いじめを多発・深刻化させている要因である過度の競争と管理の教育をあらため、子どもの声をききとり、子どもを人間として大切にする学校をつくることを重視します。子どもの権利条約の普及、いじめ問題についての理解促進、教員の「多忙化」の解消、保健室やカウンセラーの充実などにとりくみます。いじめ問題の解決のためにも、いじめ被害者と家族の「知る権利」を尊重します。

 不登校の子どもの学習と自立を温かく支援します......「不登校ゼロ作戦」など学校復帰を前提とした、子どもや親をおいつめる施策をやめさせます。子どもの「最善の利益」の立場から、一人ひとりの子どもの学びと人間的自立の方を優先させ、そのための様々な場での教育への公的支援をつよめます。相談しやすい窓口を拡充するとともに、親の会、フリースクールなどの支援団体や家庭への公的支援をつよめます。子どもたちを追いつめ、不登校の原因にもなっている、過度の競争と管理の教育をやめさせます。

 学校の安全対策をすすめます......「学校災害給付」件数は年間200万件に増加し、学校での事故や犯罪から子ども、教職員らの生命を守る仕事は急務です。ところが国の施策は、通達を出すだけの「通達行政」「手引き行政」の枠をでず、学校安全対策はきわめて不十分です。子どもの「安全に教育を受ける権利」を保障する立場にたった「学校安全法」「学校安全条例」の制定を支持するとともに、不審者対応を含めた安全対策のための専門職員配置や施設の改善をすすめ、住民の自主的なとりくみを支援します。

 性教育への政治介入に反対します......性教育は、子どもを人間として大切にしようと、専門家や保護者らの努力ですすめられてきました。ところが、自民党や民主党などの国会・地方議員が、性教育の実践をゆがめて描き、一方的な攻撃をおこない、行政が教材を奪う、処分するなどの事態がひきおこされています。東京地裁は昨年、自民党、民主党の都議会議員による介入を違法な「教育への不当な支配」だとする判決を下しました。こうした政治的介入に反対し、子どもたちに体や心の仕組みや発達、性の多様性などを伝え、自己肯定感情をはぐくむ、自主的な性教育を尊重します。

「ひきこもり」の青年の相談・支援をつよめます......ひきこもりが今日のように数十万人にも広がった背景には、競争的な教育や不安定雇用の拡大など「弱肉強食の社会」が、人々に挫折感を与え、かつそこからの快復を支える人と人とのつながりを希薄にしてきたことがあります。ユニセフの調査によれば、「自分は孤独だ」とこたえた日本の15歳は諸外国の4倍です。ひきこもりとその家族を支える児童相談所、保健所、医療機関などの専門機関を拡充するとともに、支援団体への助成を拡充し、経験・知識を生かします。

憲法の平和・人権・民主の原理にそった教育をすすめます

 2006年、教育基本法が改悪されました。しかし、国会審議を通じて、特定の愛国心の強制などは憲法の「思想、良心の自由」に違反すること、憲法の立場から教育への権力的介入は可能な限り抑制的でなければならないことが明らかにされました。こうした憲法の立場と教育の条理を、教育政策の根底として大切にします。「教育振興基本計画」は、政府のおこなうべき条件整備に限定し、教育内容・方法に介入したり、教育の自主性をおかすことのないようにします。

 子どもの権利条約を教育に生かします......子どもの権利条約は、日本政府も批准しており、その精神と各条項を、政府、自治体ともに遵守することは当然のことです。「意見表明権」「余暇・休息、遊び、文化の権利」など子どもの権利を学校などあらゆる教育の場で生かし、それに反する制度や法令を見直します。子どもと教育関係者をはじめとするおとなへの権利条約の普及、子どもに関する施策への子どもの意見反映をすすめます。

 「内心の自由」を守ります......憲法19条(思想、良心、内心の自由)に違反する、「日の丸・君が代」の強制に反対します。入学式・卒業式は、子どもにとって最善のものにするため、教職員、子ども、保護者で話し合って行なえるようにします。

 教科書制度を改善します......教科書の検閲的な検定は、教科書を魅力のないものにしています。そうした検定をやめさせます。教科書をよりよいものにするため、専門家や教員、保護者らが教科書を検討、認証するための、第三者機関を設置します。教科書採択は、当該の教員や父母の意向を反映させます。

侵略戦争の美化・肯定の公教育へのもち込みを許しません......侵略戦争への反省は日本社会が国際社会に復帰する際の条件であり、日本社会に民主主義を定着させ、その日本社会への誇りを培う上で不可欠のものです。公教育が侵略戦争の美化・肯定をおこなうことは許されません。その立場から、歴史教科諸問題などにとりくみます。

憲法と子どもの権利条約に基づいて、教育基本法を改めます......教育への国家的統制を進める改悪教育基本法(2006年)を、憲法と子どもの権利条約に基づいて再改正するための国民的討論を進める場を設けます。そのなかで、戦前の教育を反省し、教育の目的を「人格の完成」にすえた、戦後初期の教育基本法(1947年)の精神を受け継ぎ、発展させることを重視します。

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