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日本共産党

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赤旗

4.農林漁業・食料

農林漁業の再生を国づくりの柱にすえ、安全・安心の食と豊かな環境を守ります

2010年6月19日 日本共産党

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 国民の命を支える農林漁業の衰退が続き、食料自給率は先進国で最低水準に落ち込んだままです。農山村の崩壊がすすみ、国土の保全が危ぶまれる事態も広がっています。

 「このままでは農業も、農村も、地域経済もだめになってしまう」―――昨年の総選挙で示された国民の審判は、こうした深刻な状況の転換を期待したものでした。

 ところが、民主党政権は、農政の面でも期待を次々に裏切ってきました。農政の目玉とした戸別所得補償は、今年度、水田だけを対象とするモデル事業をスタートさせましたが、(1)所得補償の水準が低すぎ、米価暴落を放置している、(2)転作作物への助成金を全国一律にし、多くの作物で引き下げた、(3)輸入自由化と一体になっている、(4)農林水産予算の総額を削減し、農業振興に必要な予算をバッサリ削った、などの問題点が噴出し、農家の怒りや不信感を広げています。

 農業・農村の今日の危機的事態は、大企業製品の輸出を最優先し、食料は輸入すればいいという、自民党政権が長年すすめてきた国づくりに根本原因があります。とりわけ、WTO農業協定を受け入れて、農産物輸入のいっそうの自由化、価格保障の投げ捨て、農林予算の削減などを進めてきたことが、農業と農村の崩壊に拍車をかけました。

民主党政権は、今日の危機をもたらした要の政策=輸入自由化や農業予算の削減、価格保障の否定などは一切転換しようとしていません。「成長戦略」で、輸出大企業の競争力強化を最重点に、アメリカやオーストラリア、中国などを含むアジア・太平洋自由貿易協定の締結を掲げているのも、農産物輸入の完全自由化に道を開き、日本農業を壊滅させるといわなければなりません。

 21世紀の世界は、「食料は金さえ出せばいつでも輸入できる」時代ではなくなっています。地球環境の保全も人類死活の課題となり、各国の国土を生かした循環型の社会への転換が求められる時代です。大企業製品の貿易拡大を第一にし、農業や食料政策をそれに従わせるという旧態依然たる考え方は、もはや許されません。

 農漁業を再生し、食料自給率を回復することは、国民の生存の根本にかかわる「待ったなし」の課題です。人類社会の持続的な発展にたいする日本の責任でもあります。農林漁業と農山漁村の再生は、輸出偏重で内需が冷え込み、脆弱な体質にされてきた日本経済を内需主導、持続可能な方向へ転換するうえでも不可欠です。

 日本共産党は、農漁業つぶしの政治を大もとから転換し、食料自給率の50%台への引き上げを国づくりの柱に位置づけ、あらゆる手立てをつくします。その達成のために一昨年3月に発表した「日本共産党の農業再生プラン」や、今年4月に発表した「価格保障と所得補償の充実、輸入自由化ストップで、農業の再生を」の実現めざします。

安心して農業に励めるよう、価格保障・所得補償を抜本的に充実します

 わが国の農業再生にもっとも必要なのは、農家が安心して生産にはげめる条件を保障することです。その最大の柱は、農産物の価格保障を中心に、所得補償を組み合わせ、生産コストをカバーする施策をしっかり行うことです。

 農産物の価格(農家手取り価格を含む)を一定水準に維持する価格保障は、農家の意欲と誇りを高め、営農を保障するうえで決定的です。農畜産物の特性を踏まえて品目別の価格制度を導入あるいは現行制度の充実・改善に取り組みます。加えて、国土や環境の保全など農業の多面的な機能を評価して、農地面積などを対象にした各種の所得補償を抜本的に充実します。

 米価に「不足払い」制度を導入し、1俵1万8000円を保障する――95年には2万円(1俵あたり全国平均)を超えていた生産者米価は、いまや1万3000円前後。全国平均の米生産費(08年、農水省調査)1万6497円を大幅に下回っています。これでは、後継者が生まれるはずがありません。米価に「不足払い制度」を創設して、過去3年の生産コストの平均を基準として、販売価格がそれを下回った場合、差額を補てんします。

水田のもつ国土・環境保全の役割を評価し、当面10アールあたり1~2万円の所得補償を実施します。価格保障とあわせれば、当面、全国平均で1俵1万8000円前後の米生産による収入を確保します。これらの実施にあたっては、全国一律ではなく、地方の条件を踏まえて行います。

 米の需給や流通の安定に政府が責任をはたす――備蓄米は最低150万トンを確保し、不足時以外の売渡しを中止して、3年以上経過した古米を主食用以外に振り向ける「棚上げ方式」を導入します。それに見合って、米の生産計画は需要見込みより50万トン程度のゆとりをもたせます。米の生産調整に政府が一定の役割をはたすとともに、豊作や消費減などで余剰米が発生した場合、政府買い入れを増やすことで需給調整をはかります。

 政府米の保管・販売業務の民間委託は、主食にたいする国の管理責任を後退させ、米需給・流通などに混乱を生じかねないもので、反対です。 

 09年産米30万トン以上を緊急に買い入れる――当面、09年産米の暴落を回避するため、だぶついている米30万トン以上を適正な価格で緊急に買い入れます。

 大手流通企業による買いたたきなどを規制し、産地・品種・品質の偽装表示など無秩序な流通を規制するルールを確立します。年間を通じて計画的に出荷・販売する業者・団体にたいして、金利・倉庫料など必要な助成をおこないます。

 水田における主食用以外の増産に力を入れる――米の生産調整は、水田における麦・大豆・飼料作物などの増産と一体で取り組みます。そのために、転作作物の条件を思い切って有利にし、農家が安心して増産できる条件を整えることを優先します。当面、麦・大豆・飼料作物などの助成金を10aあたり平均で5万円(現行3万5千円)に増額し、地域農業の実態をふまえて配分できるようにします。米粉・飼料用米には、10アール8万円の助成、原料として受け入れる地場の加工企業などへの支援を強め、増産に見合って輸入を抑制するなど、安定した販路・需要先を確保します。

 畑作、畜産、野菜、果樹などに価格・所得対策を充実する――日本は地域の条件に応じて畑作、畜産、果樹、野菜など多様な農業が発展してきました。それぞれの品目の生産や流通、加工などの実態に即した価格保障(価格安定・支持制度)と所得補償の拡充で、農家経営が安定して持続できる条件を整えます。

 ●麦・大豆――自給率の極端に低い麦・大豆の増産は急務です。土地条件の改良や栽培技術・品種の改善、加工・流通への支援などとあわせて、麦・大豆に生産費と販売価格の差額を補てんする交付金制度を復活し、充実させます。水田での作付け・増産をはかるため、手厚い所得補償を実施します。国産を活用したパンや加工品の学校給食での普及・拡大を支援し、国産麦や大豆の需要拡大にとりくみます。

 ●酪農・畜産物など――輸入飼料に依存して大規模化に偏重した畜産政策を見直し、日本の大地に根ざした循環型の畜産経営を支援します。加工原料乳は、生産費を基準とする不足払い制度を復活し、需要増大の見込めるチーズや生クリームまで対象を拡大します。肉用子牛補給金や牛・豚肉の価格・経営安定対策は、単価や補てん水準を引き上げ、再生産が可能になるよう改善・充実します。飼料作物の増産を支援するため、水田・畑・採草地への所得補償を拡充するとともに、飼料の広域流通体制を整備します。生産の国内需給に影響を与えないよう乳製品のカレントアクセスの輸入を規制します。消費不況を口実とした牛乳・乳製品、肉類・鶏卵の買いたたきを防止できるよう、監視を強めます。

 ●野菜・果樹、甘味資源など――野菜や果樹は、作柄変動に伴う値動きが大きいうえに、増大する輸入品に圧迫され、国内生産が減少を続けています。最近は、景気悪化による消費減もあいまって物財費さえ下回る低価格が横行しています。現行の野菜価格安定制度を、対象品目や産地を拡大し、保証基準価格を引き上げる、大規模経営の多少による産地差別を廃止する、加入や支払いの事務を簡素化するなどの改善・充実をはかります。自治体が行う特産物の価格安定対策に国が支援を強めます。

 ミカンやリンゴなど果実生産は、豊作時に加工に向けることで生果の需給調整が可能になるよう、輸入原料の規制とあわせて、加工向け果実価格安定対策を創設します。北海道や南九州・沖縄の基幹作物であり、国内で貴重な甘味資源作物であるてんさい・ばれいしょ、さとうきび・かんしょなどは、生産・製造コストと販売価格の差額を補てんする現行の経営安定対策を充実・強化し、農家の再生産が可能となるよう支援を強めます。

 農業の多面的機能に着目した所得補償を拡充する――農業生産の4割を担う中山間地など条件不利地域での農業を維持するためには、特別の援助が必要です。中山間地域等直接支払い制度を恒久制度として立法化し、高齢化が進む実態を踏まえて、集落協定の要件の緩和、対象地域の拡大、協定期間の弾力化、事務手続きの簡素化などを進めます。高齢者率の高い集落への支援や樹園地などには補償水準を手厚くします。

 農業のもつ国土や環境を保全するなどの多面的な機能は、農産物の価格には反映されず、無償で国民に提供されてきたものです。これを正当に評価して、水田・畑地・樹園地など地目に応じた所得補償を実施します。食の安全や環境に配慮した有機農業などの育成にも、一定の基準で所得補償を実施します。

 農家の経営規模に見合った機械や施設の導入への支援――農業機械や施設の大型化の推進はコストを高め、農家の所得を減らす場合が少なくありません。農家の経営規模に見合った機械の導入、共同利用の機械更新への支援、肥料の価格安定などで生産コストの低下、農家所得の増大、消費者価格の安定をはかります。

 品種・栽培技術の改良など増産に向けた試験研究を強化する――作物の増産と生産コストの削減には、品種改良・栽培技術など基礎的な研究と援助が不可欠です。効率優先で基礎研究を切り捨てるのでなく、食料の増産、農業経営の改善に役立てる方向で強めます。

輸入自由化・拡大に反対し、「食料主権」を保障する貿易ルールをめざします

輸入自由化を進めては、あれこれの国内対策をとっても農業への打撃を防げないことは、これまでの経験であきらかです。戸別所得補償の導入を輸入自由化への受け皿にしようとする民主党政権の企ては断じて認められません。

 WTO農業交渉を中止し、「食料主権」を保障する貿易ルールを求める――いま進行中のWTO農業交渉は、わが国にいっそうの輸入自由化を迫り、農業を壊滅させるものです。自由化一辺倒のWTO体制のもとで、世界各国の農業が荒廃し、環境や食の安全も脅かされ、貧困と格差が拡大するなど矛盾が広がりました。21世紀に入り、食料や環境問題の解決が人類社会の課題になるなかで、日本にとっても、国際社会にとっても、必要なのは、各国の国土資源を最大限に生かした食料の増産であり、それを可能にする貿易ルールです。もはや、時代にあわなくなったWTO農業交渉は中止を求め、関税など国境措置の維持強化、価格保障などの農業政策を自主的に決定する権利=「食料主権」を保障する貿易ルールをめざします。

 農業に打撃を与えるFTA・EPAに反対する――「成長戦略」の名で、工業製品の輸出増を最優先し、農産物を含めた輸入自由化を拡大するFTAやEPAは、農業つぶしに拍車をかけるものです。とりわけ、日米FTA、日豪EPA、アジア・太平洋FTAでは、農業を除外することはありえず、日本農業に壊滅的な打撃を与えるのは必至です。日豪EPA交渉はただちに中止し、日米FTA、アジア・太平洋FTAには断固反対します。二国間・多国間の農業貿易は、各国の農業の維持・拡大、食料自給率の向上を最優先すべきです。

 ミニマム・アクセスの廃止を求める――世界で米が不足している時に、輸入の必要のないわが国に77万トンもの米輸入を強要、そのうえ、現在の農業交渉では110万トン以上への輸入拡大を迫る――こんな不条理きわまるミニマム・アクセス制度はきっぱり廃止を求めます。ミニマム・アクセスは、WTO協定上は最低輸入機会の提供にすぎず、全量輸入は義務ではありません。当面、「義務」輸入は中止します。

家族経営を基本に農業の担い手の育成に国をあげて取り組みます

 戦後日本の農業を中心に支えてきた70歳代の「引退」が始まる中で、だれが農地を管理し、だれが食料生産と農村を担うかは、日本社会が真剣にむきあうべきまったなしの課題です。安心して農業にはげめる条件を抜本的に整備しながら、担い手の確保・育成に長期の計画をたて、国や自治体が特別な力を注ぐことも、求められています。

 多様な家族経営をできるだけ多く維持する――食料自給率の向上や農業の多面的機能は、一部の大規模経営だけでは担えず、兼業・高齢者世帯を含む多くの農家が農村に定住し、営農を続けることが不可欠です。「非効率」の名で中小農家を切り捨ててきた農業「構造改革」は、農業と農村を衰退させただけでした。今後の農業の担い手は、なによりも、価格保障・所得補償の充実などで安心して農業にはげめる農政の実現を通じて、いま、農業に従事している多様な農家をできるだけ多く維持することを重視します。

 集落営農や大規模農家も応援する――引退する高齢農家の農地や作業を引き受ける集落営農、大規模経営の役割も、地域農業を支える担い手として重要です。集落営農などが機械・施設を導入・更新する際、助成や低利融資を行います。地域の自主性を尊重しながら、行政や農協などが一体で支援を強め、実務や資金管理、販路確保の負担を軽減します。

 新規就農者支援の特別法をつくり、国の機関あげて取り組む――定年を契機に帰農する人が増え、若者の間でも就農希望がふえ、農業への関心がこれまでになく高まっています。新規就農者の確保・育成・定着には、長い時間と国や関係機関、地域社会が一体となった支援が不可欠です。フランスでは、国の事業として「青年農業者育成支援制度」をつくり、山岳地域に夫婦で就農する場合、最高700万円を補助するなどで成果をあげています。国内でも、新規就農者に月十数万円を助成する自治体など、さまざまな試みが広がっています。こうした取り組みを抜本的に強めるため、国が主体となる「新規就農者支援法」を制定し、就農希望者の研修・教育機関の整備、農地の確保、資金、販路や住宅など総合的な支援体制を整備します。その一つとして、政府が、40代までの新規就農者に月15万円、3年間支給する制度を創設します。新規就農者の研修や技術指導を引き受ける農業生産法人や農家への支援も強化します。

 農協や農業関係団体の役割を重視する――今日、農協や各種の共同組織は、集落営農や担い手への支援、農産物の販路の確保、加工施設の運営など地域農業の振興と農村社会の維持に欠かせません。自主性を尊重しつつ、その役割がはたせるよう、国や自治体も協力し、支援します。協同組合の事業を独禁法の適用除外とするのは、諸外国でも認められた原則であり、堅持します。

 株式会社一般の農地利用を厳しく監視する――昨年の農地法「改悪」で農外企業の農地利用に道が開かれました。もうけ第一の株式会社が進出するのは、優良農地であり、そこで成り立っている農家や集落営農と競合し、追い出すことになりかねません。農地の利用は、農家とその共同組織を優先し、株式会社一般の農地進出に厳しい監視と規制を強めます。そのために、農業委員会の体制を強化し、必要な予算を増額します。

口蹄疫の拡大を阻止し、被害の補償、経営再建の支援に万全をつくします

 宮崎県で未曽有の被害を広げている家畜伝染病・口蹄(こうてい)疫は、わが国の畜産全体の存続を脅かす深刻な事態です。口蹄疫を封じ込めるために、「特別措置法」の実施を急ぎ、家畜伝染病予防法の抜本的改正に取り組みます。感染拡大防止に国が全面的に責任をもち、獣医師など人的資源の集中、殺処分した家畜の埋却(土地の選定・確保を含め)を迅速におこないます。口蹄疫による打撃で、税収が落ち込んでいる県市町村に、畜産業の再建、地域経済の立て直しなど使途を定めない交付金を交付します。被害農家には、殺処分した家畜の評価額を再生産可能な価格とし、埋却までの間のエサ代の補償、新たに導入する家畜が販売できるまでの3年程度の所得などの直接支援をおこないます。家畜市場の閉鎖、移動制限などで畜産農家だけでなく関連産業、地域経済が甚大な打撃を受けており、これまでの家畜伝染病予防法の範囲を超えて、国として全般的な補償・支援ができるようにします。

都市づくりに農業を位置づけ、農地税制を抜本的に改めます

 都市内の農業と農地の存続を否定する現行の都市計画制度を見直し、農業を都市づくりの大事な柱に位置づけます。「都市農業振興法」(仮称)を制定し、直売所、地産地消、学童農園、体験農園などの取り組みを支援します。現に農業が営まれている農地は農地課税・農地評価を基本にし、作業場なども農地に準じた課税にします。当面、生産緑地の要件を緩和し、相続税納税猶予の制度を維持し、市民農園や屋敷林などにも適用します。(詳細は2010年5月7日発表の「日本共産党の都市農業振興政策」を参照)。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-05-08/2010050806_01_0.html 

農業予算を1兆円増額して、食料自給率50%を実現します

 日本農業を再生には、農業つぶしの政治が長く続き、その傷が深いだけに、長期の見通しによる計画的な取り組みと関連予算の思い切った増額が必要です。とりわけ、 長年"猫の目農政"に苦しんできた農家が、将来にわたって農業に安心して励めると確信を持てるようにするためにも、政策の一貫性、持続性が不可欠です。

 日本共産党は、食料自給率の早期50%達成を目標に掲げていますが、そのために、価格保障や所得補償の充実など農林水産予算を現状より1兆円前後増額します。

 一般歳出に占める農林水産予算の割合は10年前の7.1%から4.6%に低下しています。今年の国の予算規模を前提にしても、農業を「国づくり」の柱に据え、予算上の位置づけを10年前の水準に戻すだけでも1兆円は確保できます。

 また、食料の増産には、湿田の乾田化、用排水施設の維持・補修、山間地域の圃場整備などの土地改良が欠かせません。大型事業中心ではなく、農家や地元負担が少なく、経営改善につながる土地改良事業に予算を重点的に配分します。

農業者・消費者の共同を重視し、「食の安全・安心」を広げます

 中国冷凍ギョーザ事件やBSEなど食の安全・安心を脅かす事態が後を絶ちません。「安全な食料は日本の大地から」の実現をめざしつつ、食品の検査体制・安全基準を強めます。

 水際での検査体制を強化する――輸入食品の10%にすぎない水際での検査体制を抜本的に強化し、厳格な検疫・検査を実施します。原料・原産地表示をすべての加工品に実施します。

 現行のBSE対策を堅持し、牛肉の安全を確保する――BSE(牛海綿状脳症)対策がずさんなアメリカ産牛肉にたいする輸入規制を緩和すべきではありません。BSE全頭検査を維持するなど現行の対策を堅持し、牛肉の安全を確保します。鳥インフルエンザなど各種感染症の監視体制を強め、発生の影響を最小限にとどめるよう、機敏に対処します。

 安全な食料の生産・流通を広げる――「効率化」一辺倒で農薬や化学肥料に過度に依存した農業生産のあり方を見直し、有機農業など生態系と調和した環境保全型の農業、「地産地消」や「スローフード」への取り組み、食文化の継承・発展を支援します。

 卸売市場の公正な運営をはかる――卸売市場で広がっている相対取引をふくめて、コストを無視した低価格での納入を強要するなど大手スーパーなどの横暴を抑えるため、産地、中小小売が対等な立場で交渉できる協議会を設置するなど、公正な流通ルールを実現します。

山村地域の基幹的産業として林業・木材産業の再生をはかります

わが国の森林面積は国土の3分の2を占め、国土や環境の保全、水資源の涵養など国民生活に不可欠な役割をはたしています。森林資源の総蓄積量は44億立方メートルを超え、毎年の樹木の成長量は年間の消費量に匹敵する約8000万立方メートルになっています。日本の森林は「育林の段階から利用の段階」を迎えているにもかかわらず、現状は、木材消費量の8割弱が輸入材です。これを転換し、地域経済と低炭素社会に不可欠な産業として、林業・木材産業を再生します。

 外材依存政策を転換する――林産物輸出国主導のWTO体制を改め、各国の自主権を尊重した林産物貿易、森林・林業政策を保障することを世界に提起します。

 住民参加による地域林業にとりくむ――全国一律の大型産地づくりをやめ、森林所有者や素材・木材産業、大工・工務店、地域住民などの総合的な力を結集し、地域の条件に即した安定的な生産・加工の供給体制の整備をすすめます。

 林道・作業道など生産基盤の整備をはかる――間伐の助成を強めるとともに境界の確定を促進し、生態系や環境保全に配慮した技術の確立と助成制度で、林道・作業道など生産基盤の充実をはかります。

 国産材の適切な利用をすすめる――公共建築や公共事業をはじめ、助成や税制上の優遇措置による国産材住宅の拡大、木材バイオマスの推進など、国産材の適切な利用を促進します。また、資源を無駄なく活用するため、路網整備などで効率的な収集の仕組みをつくり、バイオエタノールなど新たな利用技術の研究開発をすすめ、実用化にとりくみます。

 森林所有者に再造林できる価格を保障する――森林の公益的機能の発揮と木材の安定供給体制をつくるために、国産材の利用拡大と適切な取引価格の設定などで林家に再造林できる原木価格を保障できるようにします。

 森林組合など林業事業体への支援を強めます――森林組合や林業事業体が、地域の林業振興のために積極的な役割がはたせるよう、素材生産業などとも連携し、所有者に代って長期的な経営管理にとりくめるよう支援を強めます。

 林業就業者の計画的な育成と待遇改善をはかる――新規就業者が必要な知識や技能の習得がはかれるように研修体制の確立や受入事業体への支援など「緑の雇用担い手対策事業」を拡充します。また、労働条件や生活条件を改善し、安心して働ける環境をつくります。

 特用林産物の活用や都市との交流をすすめる――山菜・きのこなどの新しい特産品作りや森林資源を活用した都市との体験・交流など、複合経営で森林所有者の経営安定をはかります。

 国有林の持続的な経営管理にとりくむ――わが国最大の林業経営体として、「国民の共有財産」として実態を総点検し、技術者の育成確保をはかり、地域自治体・住民との連携、協同関係を確立し、持続的な経営管理にとりくみます。木材販売にあたっては大企業優先の低価格販売でなく、地域産業との結びつきを強め、適正価格での適切定量な販売に努めます。

漁業者の経営安定と資源管理型漁業で水産物の安定供給をはかります

 四方を海に囲まれ、変化に富んだ海岸線をもつ日本の漁業は、沿岸、沖合を基本に多様な漁業が営まれ、豊かな魚食文化をはぐくんできました。しかし、海洋をめぐる国際環境の変化とともに開発優先の政策による漁場の悪化や漁獲力の増大による資源の減少、水産物の輸入増大と生産者価格の低落など、漁業・水産業は厳しい状況が続いています。

 98年からの10年間で漁業生産量は16%、生産額は18%も減りました。一方で、世界の水産物の消費増と価格上昇のため輸入が減り、自給率は57%から62%に上昇しました。不況の消費への影響や大手スーパーの買い叩きなどで、生産者魚価は下がり続けています。また、一時ほどではないといえ、燃油や魚網などの価格が高騰しており、経営困難や高齢化などのため、漁業経営体の減少も止まっていません。

 こうしたもとで、日本が水産資源の保全・管理に責任をもち、漁業を振興し、水産物の自給率を向上させることがきわめて重要になっています。

 魚価安定対策、燃油・資材価格対策を強め、漁業経営を安定させる――漁業経営を安定させ、乱獲を防ぎ、資源の保全をはかる資源管理型漁業をすすめ、政府の責任で価格安定対策を強化します。卸売市場の公正な運営につとめるとともに、相対取引でも大手量販店などの優越的地位を利用した生産コストを無視した買い叩きを規制するルールづくり、積み立てプラスなど魚価低落のよる損失補てんを充実させます。水産資源保全のための休漁・減船に対する保障を国の責任で充実させます。

 石油価格や漁船・漁具、養殖用飼料の価格高騰による経営困難を打開するため、資材価格の安定と省資源型漁船や漁法にたいする援助をつよめ、消費者価格の安定をはかります。

 資源管理と漁業の振興を保障する貿易ルールの確立をめざす――世界の消費量が増え、漁業資源の減少があきらかなもとで、輸入拡大一辺倒のWTOでは対応できません。適切な輸入規制など、資源管理と漁業の振興を保障する貿易ルールの確立をめざします。 

 マグロ、クジラなど遠洋漁業について、国際的な資源管理尊重しながら、わが国の漁食文化を守る方向での外交的努力をすすめます。

 新規漁業就業者支援制度を創設する――各地の自治体では、新規就業者にたいするさまざまな対策がとられています。国の制度として新規漁業就業者支援制度を創設します。地産・地消の振興、販路の確保、水産加工の振興、魚食文化の普及など、水産物の消費拡大と流通改善に取り組みます。

 大型開発をやめさせ、漁場の保全、操業の安全をはかる――名護市辺野古沖への米軍基地の建設をはじめ干潟を破壊する大型開発をやめさせ、諫早湾への海水導入による干潟の再生など漁場の保全・改善をすすめます。潜水艦事故のような海難事故の根絶や米軍の訓練海域の縮小など、漁船操業の安全をはかります。

 漁業・漁村を維持する地域活動を支援する――漁業・漁村のはたしている環境や国土保全にはたしている役割をきちんと評価し、「離島漁業支援再生交付金」など、多面的機能を維持・増進する地域活動への支援制度をつくります。

 国の予算の使い方を、公共事業中心から、漁業者の所得補償や販路の確保、地産・地消の推進、産地における水産加工の振興などを重視するように改めます。

農林漁業に基盤をおいた農山漁村の再生に取り組みます

 農林漁業の衰退を放置し、企業誘致や公共事業など大型開発に依存した地域づくりが、企業の海外進出、公共事業の激減などで、ゆきづまり、各地で破たんしています。農山漁村の再生には、農林漁業を基盤としながら、生産者・地域住民・消費者との共同をひろげ、地域資源をフルに生かした循環型の経済で、就業や雇用の場を確保することが重要です。

 地産地消を重視した地域づくりをすすめる――わが国の農林漁業は、地域ごとにきわめて多様であり、再生の取り組みは地域の自主性を尊重すべきです。「食の安全都市宣言」「地産地消宣言」などをかかげる自治体が各地に生まれています。直売所や産直がにぎわい、高齢者や女性、兼業農家などが元気に参加して、都会の消費者との交流もさかんです。地産地消や食の安全を重視した地域農林業、沿岸漁業の振興をはかります。

 地場農林水産物を生かした加工や販売を促進する――農林水産物の生産と販売とともに、地域の資源を生かした加工や販売に力を入れることも、農林水産物の需要を拡大し、地域の雇用を増やし、農漁家の所得を増やすうえで重要です。

 バイオマスや小水力発電など自然エネルギー開発に力を入れる――地球温暖化対策の一環として、世界ではいま、太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発が進んでいます。わが国も、その本格的な普及が切実に求められています。農山漁村に豊富にある自然エネルギー資源の積極的な活用を、農林業とともに農山村の経済や雇用の重要な柱として位置づけ、開発・普及に力を入れます。

 過疎集落への支援を思い切って強化する――地域資源を生かした第一次産業の振興とともに、「山の駅」(仮称)など地域にあった生活拠点をつくり、集落を結ぶコミュニティバスの運行、高齢者集落への「集落支援員」の配置など、買い物や医療、福祉、教育などの生活に不可欠な最低条件の整備に努めます。こうした対策を講ずる自治体に対し、国の支援を強めます。

 鳥獣害対策を抜本的に強める――増え続ける鳥獣被害は、農家の生産意欲を失わせ、集落の衰退に拍車をかけ、それが鳥獣害への対抗力も弱める、という悪循環をもたらしています。根本的には、農林業が成り立ち、農山村で元気に暮らせる条件整備が不可欠ですが、当面、該当する鳥獣の生態や繁殖条件の調査を国の責任で行い、増えすぎる鳥獣を適正な密度に減らす地域や自治体の取り組みを支援します。鳥獣が里山に下りずに生息できる森林環境を整備するとともに国の鳥獣被害対策交付金を大幅に増やし、防護柵・わなの設置、捕獲物の利用など農家や自治体の取り組みへの支援を強めます。

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