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日本共産党

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赤旗

2009年総選挙 分野別政策

5 税制


消費税など庶民増税を許さず、大企業・大資産家優遇の「逆立ち税制」をただします

 カジノ資本主義の破たんが明らかになる中で、いま世界では、これまでの大資産家優遇、多国籍企業優遇の税制の見直しがはじまっています。アメリカでは、オバマ政権と民主党が、富裕層への増税(10年間で100兆円以上)と、多国籍企業への課税強化(10年間で20兆円)を提案しています。イギリスでも所得税の最高税率引上げが提案されています。

 ところが、日本では、2003年以降の6年間に、庶民には定率減税廃止や配偶者特別控除廃止、高齢者への増税など、年間の税額にして5兆円以上もの増税が行われる一方、大企業や大資産家には、98年以降の10年間に、法人税率や所得税最高税率の引下げ、研究開発減税、証券優遇税制など、総額で7兆円(年間ベース)を超える減税がおこなわれてきました。

 そのうえ、政府は、昨年12月に決めた「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた『中期プログラム』」で、2011年度までに消費税増税を行うという計画を打ち出しました。こんなことが実行されたら、ますます国民生活は圧迫されるとともに、日本の税制のゆがみもひどくなってしまいます。

 税は「応能負担」が原則です。所得の少ない人には少なく、所得の多い人にはより多く負担してもらう、そして、生活に必要な最低限の所得をも得られないような人は非課税にするのが当然です。「貧困と格差」が大きな問題となっている今こそ、この原則がいっそう大事になっています。

 それなのに、政府は、ただでさえ生活が大変な庶民には大増税をかぶせて、史上最高の利益を謳歌してきた大企業や大資産家に減税をばらまくという、まったく逆立ちした税制をすすめてきたのです。そして、消費税の大増税によって、「逆立ち」をますますひどくしようとしているのです。

 日本共産党は、(1)当面する経済の危機的状況から、緊急にくらしと営業をまもるとともに、(2)「逆立ち税制」のゆがみをただす――という2つの角度から、次のように税制の改革を進めます。

消費税の増税を許さず、食料品非課税などの減税をすすめます

 政府は「景気が底打ちした」といいますが、それは大企業だけの話で、失業者や中小企業の倒産は増えています。くらしも営業も大変なのに、「このうえ消費税の増税なんて、とんでもない」と怒りの声があがっています。イギリスなどでは景気対策として消費税(付加価値税)の減税を実施しており、日本でも増税どころか減税が求められています。

 自民党は、マニフェストで、「消費税を含む税制の抜本的改革について、平成21年度税制改正法附則による道筋に沿って、平成23年度までに必要な法制上の措置を講じ、経済状況の好転後遅滞なく実施する」と明記しています。自公政権は「中期プログラム」で "消費税は社会保障の財源に充てる"といいましたが、その化けの皮は、たちまちはがれてしました。「骨太の方針2009」では、財政赤字の穴埋めも、ばらまき景気対策の財源もツケ回しすることを前提に、「消費税12%」への引き上げ試算を示しています。「社会保障のため」という看板を、政府自ら投げ捨ててしまったといわざるをえません。

 収入が10倍違っても、消費額が10倍も違うことはなく、政府統計で見てもせいぜい3~4倍程度です。消費税の負担は消費した額に比例しますから、収入に対する負担率は、低所得者ほど重くなります。「派遣切り」で失業した人にも、「母子加算」を削られた生活保護世帯にも、消費税は容赦なく課税されます。一方、大企業は、「輸出戻し税」制度なども含めて、消費税を1円も負担しなくてすむしくみとなっています。このように不公平性の強い税金である消費税は、「社会保障の財源」にふさわしくない税金です。

 民主党は、「4年間は消費税増税の議論を行わない」と言っていましたが、同党の鳩山代表は、「将来に関する消費税の議論を一切行うべきではないと曲解されたことは訂正申し上げたい」と述べ、消費税増税論議を行う姿勢を明らかにしています。

日本共産党は、消費税の増税にきっぱり反対し、国民のみなさんと力を合わせて、増税阻止のためにたたかいます。将来的には消費税の廃止をめざしつつ、当面、次のような改善をすすめます。

―──食料品など生活必需品の消費税を非課税にします。食料品や水光熱費などの生活必需品は、所得の多少によって支出額があまり違わないため、所得対比でみた消費税負担率が低所得者ほど重くなる「逆進性」がとくにひどくなります。こうした品目を非課税にすれば、家計をたすけるとともに、税制のゆがみをただすことにもつながります。

―──消費税の免税点が年間売上3000万円から1000万円に引下げられた結果、零細な業者までが消費税の納税義務を負わされ、税が払えないために廃業を余儀なくされるなど、深刻な事態が広がっています。売上3000万円以下の業者は課税業者の半分にもなりますが、消費税収全体に占める割合は3.6%にすぎません。しかし、1業者あたりの税額は25万円で、零細な業者にとっては大きな金額です。消費税の延納措置を認めるとともに、免税点を引き上げます。

―──保険診療などの医療費は消費税非課税とされていますが、病院や診療所が仕入れる医薬品や医療機器などには消費税が課税されています。これによって、医療費の負担も増えるとともに、病院などの経営も圧迫されています。医療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税が還付されるようにします。

課税最低限の引き上げなど、所得課税の減税をはかります

 06年7月に発表された経済協力開発機構(OECD)の報告書は、日本の生産年齢人口の相対的貧困率が13.5%と、OECD平均の8.4%を大きく上回り、アメリカに次いで第2位であることを示しました。重大なことは、他のOECD諸国では税制と社会保障によって貧困率が大きく改善(18.2%→8.4%)されているのに、日本はわずかしか改善せず(16.5%→13.5%)、税制による貧困率の改善度合いが最も少ない国だと指摘されていることです。

 ほんらいなら所得格差是正のために役割を果たすべき税制が、日本ではほとんどその役割を果たしていないのです。それは、税を課すべきでないような貧困層にまで、所得税や住民税の負担が及んでいるからです。いま、独身サラリーマンの所得税の課税最低限は、わずか114万円です。これは、生活保護基準額にも満たない水準です。国際的に見ても低すぎる日本の最低賃金(時給703円)で年間2000時間働いた程度の年収しかなくても、所得税が課税されてしまうのです。これは、「生活に不可欠な経費には課税しない」という「生計費非課税」の原則を踏みにじるものです。

 日本の課税最低限は、国際的にも異常に低い水準です。6年前に、政府は「日本の課税最低限は高すぎる」と大宣伝して配偶者特別控除を廃止しましたが、この結果、サラリーマン4人世帯の課税最低限は、325万円に低下しました。ところが、今では欧米諸国の課税最低限は、日本よりはるかに高くなっています(アメリカ378万円、イギリス409万円、ドイツ595万円、フランス490万円)。

 課税最低限が低い最大の原因は、基礎控除が年間でわずか38万円に抑えられたままになっていることです。月額3万円で、どうして「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)ができるというのでしょうか。日本の基礎控除に相当する金額は、イギリスでは114万円、ドイツでは115万円、フランスでは88万円です。日本でも大幅な引き上げが必要です。

―──基礎控除を現行の2倍に引き上げます。これによって、サラリーマンの所得税の課税最低限は、単身者で156.6万円、4人世帯で384万円に上昇します。

―──120万円に引き下げられた高齢者の公的年金等控除の最低保障額を140万円に戻します。所得500万円以下の高齢者について、所得税50万円、住民税48万円の老年者控除を復活します。高齢者の住民税の非課税限度額を復活します。

―──子育て世帯には、児童手当の拡充によって負担軽減をはかるとともに、教育費の控除制度の創設を検討します。民主党は、「子ども手当」の財源として配偶者控除や扶養控除を廃止するとしていますが、これは手当をもらえる中学生以下の子どものいない夫婦世帯や23~69歳の扶養家族のいる世帯には、一方的な増税となります。所得税法上の扶養親族数が減り、所得税が増えることによって、公営住宅家賃や保育料など各種料金の負担増に連動するおそれもあります。このような増税には反対します。

―──介護保険の要介護認定を受けている人などが、障害者控除の認定を受けやすくするように、制度運用の改善をはかります。

―──介護保険や医療保険など、家族の年金などから源泉徴収された社会保険料についても、それを実質的に負担している納税者の所得から社会保険料控除ができるように、改善をはかります。今年10月から開始されようとしている住民税の年金からの特別徴収(天引き)については、各人の希望で普通徴収に変更できるようにします。

―──寡婦控除について、死別の場合だけでなく、離婚の場合やいわゆるシングル・マザーにも適用されるように、制度の改善をはかります。

―──「住宅は福祉」の観点に立って、家賃に関する税の控除制度の創設をはかります。

中小企業支援税制を強化します

 この20年間に、中小企業は100万社以上も減少しました。政府の「構造改革」路線で内需が冷え込まされてきたあげくに、原油など原材料コストの高騰が重なり、ただでさえ経営が大変なうえに、消費税の免税点引き下げなどの増税が加わって、「税金が払えず廃業に追い込まれる」という事態も生まれています。大企業ばかりを優遇する税制をあらため、中小企業や零細な事業者を支援する税制に転換します。

―──事業主、家族従業者の働き分(自家労賃)を経費に認めます。

―──同族会社の役員報酬の損金算入の制限は、赤字の中小企業にまで一方的に負担をおしつけるものであり、撤回すべきです。

―──法人税にも累進制を導入し、中小企業の一定範囲内の所得については、現行より税率を引き下げます。

―──法人事業税の外形標準課税を資本金1億円以下の小規模企業にまで拡大することは、赤字企業などに過大な負担を負わせることになるので反対します。

―──事業用資産については、一定期間の事業の承継を条件に、相続税の猶予制度を設けます。

―──「納税者憲章」を制定し、消費税納税にあたっての仕入税額控除否認、機械類への償却資産課税の強化、倒産に追い込む差し押さえの乱発など国と地方の過酷な徴税・税務調査をあらためます。

証券税制をはじめ大資産家優遇の税制をあらためます

 この間、大資産家向けの減税が繰り返されてきました。99年には、所得税・住民税の最高税率が、あわせて65%から、50%に引き下げられました。アメリカでもイギリスでも所得税の最高税率を引き上げようとしているのに、日本では引き下げられたままです。自公政府だけでなく、民主党も「最高税率を引き上げることには反対」という態度です。

2003年度には「証券優遇税制」が導入され、上場株式の配当所得や株式譲渡所得の税率は、わずか10%(所得税7%、住民税3%)に軽減されてしまいました。これは庶民の預貯金の利子への税率(20%)の半分です。額に汗して働く庶民には、定率減税廃止などで増税をおしつけながら、カネを右から左に動かしただけで得た所得には、10億円稼ごうと100億円稼ごうと、たった10%の課税。こんな不公平がまかり通っていたのでは「働くのが、ばからしい」という風潮を広げてしまいます。

「株主資本主義」と批判されるアメリカでさえ、株のもうけの税率は最高25%(ニューヨーク市の場合)です。しかも、オバマ政権は、さらに5%の引き上げを提案しています。フランスでは株のもうけにも医療保険などの財源に充てられる一般社会税が課税され、所得税とあわせて30%の税率です。欧米諸国と比べても、日本の金持ち優遇は際立っています。

「金持ち優遇」と国民の批判が強まっているのを無視して、自公政権はこの優遇税制を2011年まで延長・継続することを決めてしまいました。民主党も優遇税制を当面継続するとしています。

こうした金持ち優遇税制を改めることが、経済危機の中で必要な財源を確保するためにも、格差と貧困の是正に向けて税制による所得再分配機能を再建・強化するためにも、不可欠です。

―──引き下げられた所得税・住民税の最高税率を引き上げ、累進税制を強化します。税率を98年の水準に戻せば、約7000億円の増収になります。現行では何千万円の給与があっても5%が控除される給与所得控除については、頭打ちを設け、高額所得者優遇にならないようにします。

―──世界に例を見ない大資産家優遇の配当や株式譲渡所得の税率軽減措置を、ただちに廃止します。配当や譲渡所得などは、勤労所得とあわせた総合課税を原則とし、大資産家には応分の負担を求めます。

―──2003年に引下げられた相続税の最高税率を引き上げるなど、大資産家への課税を強化して社会的格差を是正します。

大企業優遇税制をあらためます

 1986年度には43.3%だった法人税率が、42%(87年度)、40%(89年度)、37.5%(90年度)、34.5%(98年度)と、次々と引き下げられ、99年度以降は30%にまで下げられてしまいました。そのうえ、連結納税制度、研究開発減税、欠損金の繰越期間延長、減価償却制度の見直し、海外子会社からの配当益金不算入などによって、実質的な税率はさらに引き下げられています。

 大企業(金融・保険を除く)の経常利益は07年度に32.3兆円に達し、バブル期のピーク(90年度)の18.8兆円の1.7倍に増えましたが、税負担は14%しか増えていません。減税によって得た利益は溜め込まれ、巨額の内部留保がつくられました。

 一方、株主への配当は、バブル期の2.9兆円から07年度の10.3兆円へと3.6倍に増えました。経済危機で大幅減益となった08年度には法人税も大きく落ち込みましたが、株主への配当は溜め込んだ内部留保を使って行われ、わずかしか減っていません。

「三菱東京UFJ」「みずほ」「三井住友」「りそな」などの大銀行グループにいたっては、3兆円近い申告所得があった07年度にも、わずか1169億円、たった4%の税金しか納めていません。何年も前に「不良債権処理」で発生した「欠損金」によって、利益が相殺されるからです。その一方で、株主や親会社には、あわせて1兆5000億円もの株式配当をしていました。「配当を増やすのは、まともに納税義務を果たせるようになってからにしたらどうか」と、多くの国民が怒るのは当然です。

 こうした大企業への優遇税制は、日本経団連などの財界が強く要求してきたものです。自民党はもちろん、民主党も財界の要求にこたえて、競い合って大企業への減税を要求してきました。財界は「日本の法人税は高い」などといいますが、社会保険料の負担もあわせた大企業の公的負担は、ドイツの8割、フランスの6~7割程度にすぎません。大企業にもうけ相応の税負担を求めることは当然です。

―──景気回復の状況をみながら段階的に、大企業の法人税率を97年度の水準(37.5%)に戻します。法人事業税についても税率を引き上げます。07年度と同程度の利益があがる経済状況になれば、これだけで国・地方あわせて4兆円規模の新たな財源になります。

―──03年度に大幅拡充された研究開発減税は、研究開発費の10%程度を法人税から減額するというものです。福田前首相は「大企業だけでなく中小企業にも減税となる」(08年通常国会での志位委員長の代表質問への答弁)といいましたが、国税庁の統計でみても、年間4000~5000億円の研究開発減税のうち、資本金1億円未満の企業が占める割合は5%足らずしかなく、もっぱら大企業が利益を受けています。こうした大企業優遇にメスを入れます。

―──グループ内の黒字企業と赤字企業の利益を相殺させることができる連結納税制度によって、年に4200億円もの減税になっています(国税庁の07事務年度)。トヨタ、日産自動車、ホンダ、NTT、日立、ソニー、東芝など、名だたる大企業が連結納税制度の利益を受けています。こうした税金逃れをやめさせます。

―──海外を含めた企業再編が進められる中で、大企業の利益の中で、グループ企業や海外子会社からの配当が占める割合が増加しています。こうした配当には、「配当益金不算入制度」や「外国税額控除制度」などが適用されるため、税負担が大幅に軽減されています。そのうえ、今年から「海外子会社からの配当非課税制度」が導入され、「海外で稼げば日本の税金はゼロ」という状況になっています。これでは、ますます海外進出の勢いが強まり、国内産業の空洞化を招きかねません。こうした優遇税制を縮減します。

―──大銀行のほとんどが巨額の利益を上げた年にも「法人税ゼロ」となっているのは、政府が5年前に欠損金の繰越期間を5年から7年に延長し、「01年度の欠損金にさかのぼって適用する」ことにしたからです。01年度に銀行が「不良債権処理」で発生させた欠損金について、この繰越期間延長の効果が、07年度からあらわれたのです。08年度も大銀行のほとんどが「法人税ゼロ」の状況を続けています。大銀行にももうけに応じた税を求めます。

―──アメリカでも導入されている、法人税の累進制度を導入し、大企業には応分の負担を求めます。

社会情勢の変化に対応した税制改革をすすめます

―──現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入をすすめます。

―──「道路特定財源」とされてきた揮発油税などの暫定税率を廃止するとともに、揮発油税などの税率については、環境税の導入をも考慮して検討します。

―──投機マネーの暴走を抑え、途上国支援の財源を確保するために、国際連帯税の導入を検討します。

―──集合住宅の共用部分の固定資産税を軽減します。

―──都市計画区域内農地への宅地並み課税の廃止をめざし、当面、生産緑地指定の要件を緩和し、追加指定を広げます。

―──芸術・文化団体への寄付税制を充実するとともに、民間劇場や映画館の固定資産税の減免などの支援をすすめます。

―──税源移譲によって所得税の最低税率が引下げられたため、NPOなどへの寄附金控除の効果が低所得者では削減されてしまいました。住民税でも寄附金控除を認めるなど、改善をはかります。

―──政府は、「プライバシー保護」を口実として、高額納税者や法人企業についての公示制度を廃止してしまいましたが、一定以上の金額については、復活します。とくに大企業については「プライバシー」は理由にならず、公開は当然です。


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