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赤旗

【30】公務員制度改革

公務員が「全体の奉仕者」として行政サービスに臨める仕組みをつくります

2007年6月22日 日本共産党中央委員会


 社会保険庁の「消えた年金」「宙に浮いた年金」問題に関連して、政府・与党は、「現場の公務員のずさんな仕事が原因」などと批判するとともに、「社会保険庁は廃止、解体し、国民に信頼される新しい組織に変える」(安倍首相)などとしています。今回の年金問題で、社会保険庁の労働者に責任を転嫁するのは、政府・与党の最悪の責任逃れでしかありません。まして社会保険庁を解体・分割して民営化するのは、政府の責任そのものも宙に浮かせ、解体することになります。

 公務員の仕事のあり方についていえば、民間もふくめて、労働者が健康で文化的な生活を営むうえで、「過労死」さえ問題になるようなこんにちの過酷な労働条件は、一刻も早く改善しなければなりません。しかし、公務員の場合、労働者という側面と同時に、住民・国民に奉仕し、公正で効率的な行政サービスを提供するという、他には代えられない側面ももっています。とりわけ、戦後の公務員制度は、戦前の公務員が「天皇の官吏」と位置づけられていたことへの反省のうえに、「全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」(憲法第15条)と規定されてスタートしました。

 こうした性格をもつ公務員が、ただ機械的に「労働者の権利」や「労働条件」を声高に主張するのは正しいことではありません。まして、一部の報道にあるように、「コンピュータ化絶対反対」などと主張することは、時代の趨勢に逆行するだけでなく、効率的な行政サービスを住民・国民に提供する公務員の立場とは相容れないものです。

 日本共産党は、現行憲法の精神にたって、30年以上も前から公務員は「全体の奉仕者」であり、行政サービスという公共性をもつ仕事に携わっている以上、公正中立で民主的効率的な行政を実現するために、住民と国民の目線にたって積極的に働くようにすべきだと主張してきました。

 一方、政府・与党は、「公務員制度改革」などと称して、07年の通常国会で国家公務員法の改悪を強行しました。安倍首相は、「社会保険庁のような体質が、公務員制度全体に多かれ少なかれ残っている」などと主張し、今回の法改悪を合理化しています。ところが、改悪された内容は、一部特権官僚の「天下り」を合法化させるだけでなく、公務員を政権与党に都合のいい働き手に変えようというとんでもない内容です。

 1つは、特権官僚の「天下り」への国民の反発を逆手にとって設置された「官民人材交流センター」(新人材バンク)の問題です。一部の高級官僚はいくつもの「天下り」をくり返し、莫大な退職金を手にしています。こうした「天下り」のシステムが、たびたびくり返される官製談合の温床ともなってきました。ところが、導入される「官民人材交流センター」は、従来、省庁ごとにおこなわれていた「天下り」を、内閣の下に一元化し、これまであった人事院の「承認」もなくしてしまうという、まさに官僚専用の「特製ハローワーク」「天下りあっせん機構」そのものです。そればかりか「天上がり」も自由化されることになりました。この結果、大企業による霞ヶ関支配を許すとともに、新たな政官財癒着に道を開き、行政の公平性中立性さえ損なわれる危険もでてきました。

 「天下り」規制は、その対象を民間企業だけでなく公益法人や特殊法人などにも拡大し、離職後2年間の規制期間を5年に延長する必要があります。また、退職金の二重取り三重取りをなくすなど、規制を抜本的に強化することが求められます。民間の労働者はもちろん、地方公務員も定年まで働いているのであり、それにならえば「官民人材交流センター」などは必要ありません。「天下り」の仕組みを存続させようとする動機の大もとには、ごく一部の「キャリア組」を優遇する人事制度の存在があり、これを廃止することが必要です。

 2つめは、「能力・実績主義」の人事評価制度の導入です。これは、要するに公務員の仕事ぶりも「成果主義」で評価しようということにほかなりません。成果主義については、その導入を経験した民間企業のなかから、"上司の顔色ばかりうかがって、チームワークを壊す"という批判が広がり、すでに事実上、破綻しているものです。国家公務員の職場にこういう制度が持ち込まれたら、現場の人びとの目線を、国民のほうではなく、最終的な上司である時の政権党にばかり向かわせる危険があります。こうなれば、公務員は、「全体の奉仕者」ではなく、「ヒラメのような公務員」「物言えぬ公務員」にさせられかねません。実際、社会保険庁で問題となった保険料の不正免除も、民間出身の長官による成果主義の持ち込みが原因でした。

 いま必要なことは、上司が一方的に仕事を評価するような成果主義の人事制度の導入ではなく、国民へのサービスを基準にして能力と実績を客観的に実証することであり、専門性と熟練を正当に評価する仕組みを導入することです。

 国家公務員から剥奪されているスト権などの労働基本権の全面回復をはかる必要もあります。

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