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日本共産党

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赤旗

配偶者からの暴力の被害女性の保護と自立支援の充実のために「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」改正への提案

2003年10月9日

日本共産党国会議員団ドメスティック・バイオレンス対策委員会


 2001年、国内外の世論の高まりのなかで、議員立法として「配偶者からの暴力(DV=ドメスティック・バイオレンス)の防止及び被害者の保護に関する 法律」が制定されました。国連は、1993年女性への暴力撤廃宣言を採択し、1995年第4回世界女性会議の「行動綱領」でこれを具体化しました。 2000年国連女性特別総会の「成果文書」では、ドメスティック・バイオレンスは、女性や少女の基本的人権の享受をさまたげるとして対策を求めていまし た。立法化によって、従来「法は家庭に入らず」として放置されてきた配偶者からの暴力の実態が表面化し、裁判所による保護命令が約1600件も出されるな ど、女性の保護、暴力撤廃へ踏みだしたことは歴史の進歩です。

 しかしながら、法制定後も配偶者からの暴力は多発し、殺人等に至たる深刻な例が後をたちません。昨年の政府の調査によると、配偶者からの暴力を受けたことのある人は5人に1人です。また、被害者のほとんどが女性です。

 今年8月、国連の女性差別撤廃委員会最終コメントは、日本政府に対して、ドメスティック・バイオレンスを含む女性に対する暴力の問 題を人権侵害として取り組みの強化を求めています。そのためには、家族における男女平等の徹底、戦前の封建的家族制度を引きずっている民法の改正が必要で す。また、女性の経済的及び精神的自立、女性が働き続けるための条件整備、とりわけ男女賃金格差の是正等が必要です。さらに大企業のリストラ、中小企業い じめなど弱者切り捨て、学力偏重と競争社会、児童虐待、性の商品化という社会的荒廃の克服に取り組むことが必要です。

 日本共産党は、参議院共生社会に関する調査会の「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の見直しに関するプロジェクトチームに参加し議論する一方、党内でも検討してきました。

 わが党は前回の立法時に積み残した問題や法施行後に明らかになった問題点にたち、次のように提案します。

配偶者からの暴力防止、被害者保護法の改正等について提案

【一】DV被害者の保護の拡充

(1)被害者の救済の拡充

[1]不法な攻撃の相手を配偶者に限定せず、離婚した元配偶者も対象とする。

[2]配偶者等からの暴力とは、物理的な暴力だけでなく、暴言によって精神的な暴力や性行為の強要等による性的な暴力も存在するので「配偶者からの暴力」に「精神的暴力」および「脅迫」を加える。ただし、保護命令の要件として「精神的暴力」は慎重に扱う。

[3]住民基本台帳法の4情報の原則公開についてDV被害者は例外とする。被害者の新しい生活のスタートが妨害されないように、被害者の住基台帳の住所、氏名等の情報を公開しないよう法改正し、加害者に新しい住所を突き止められることを防ぐ。

(2)保護命令の改善

[1]「被害者」に子どもなどを含め、接近禁止命令が出せるようにする。

裁判所は、被害者の申し立てにより、被害者の身辺につきまとうことを禁じ(接近禁止命令)、被害者の住居から退去を命じ(退去命令) られることになっている。しかし、子どもには接近禁止命令が出せないため子どもを通じて被害者の居場所がわかってしまう。これを防ぐために子どもにも接近 禁止命令を認める。この改善によって暴力の現場を子どもが目撃することを防ぐ効果もある。その際、暴力をふるう親への親権の制限はやむを得ない。

[2]期間の延長などの改善

接近禁止命令の期間を6か月から1年に延長し、電話、手紙、電子メールによる面会の強要も禁止する。また、退去命令期間を現行の2週間を1ヶ月以上に延ばす。この期間中加害者が住居周辺を徘徊することを禁止する。

[3]24時間以内に発令する緊急保護命令を検討する。

[4]「さらなる配偶者からの暴力」だけではなく、「暴力を受けるおそれ」でも保護命令を発動できるようにする。

【二】被害者への自立支援の充実

(1)国と地方自治体の責任の強化

[1]配偶者暴力相談支援センター(駆け込み寺)を都道府県1カ所だけではなく、当面、政令指定都市に設置する。その他の市等にも設置を促進する。

[2]DV法担当者の研修・人権教育の制度化

警察官、自治体職員、裁判官、弁護士など、被害者の保護と自立支援を行う者の研修によって人権意識を高め、その言動等によって被害者が二次被害にあうことを防ぐ。

[3]外国人の被害者を救済するため法律の趣旨を生かし、通訳の充実・相談体制などの改善を行う。

(2)職員の身分保障、民間シェルターの運営費への財政的支援

[1]被害者の保護、自立支援のために不安定な雇用、低賃金の婦人相談員、シェルターの職員の身分を保障し増員をはかる。また専門職としての研修を制度化する。

[2]民間シェルターへの委託費の増額と運営費への財政的支援を行う。

【三】加害者の更正のために

 加害者更正対策は重要であり、加害者に対する教育、カウンセリングによる自己改革の機会を保障する。教育内容についての研究の充実をはかる。

【四】法律の名称について

「配偶者等からの暴力の防止並びに被害者の保護及び自立支援に関する法律(略称=DV法)」として、被害者の保護だけでなく自立支援を行うことを明確にする。

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