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赤旗

「夫婦間等における暴力の防止並びに被害者の保護及び自立支援に関する法律案」大綱の発表にあたって

2000年9月5日

日本共産党国会議員団・夫婦間等の暴力問題プロジェクトチーム 日本共産党女性局


「法案大綱」の発表にあたって

 夫やパートナーから女性に加えられる暴力(ドメスティックバイオレンス)が、深刻な社会問題になっています。昨年おこなわれた初めての全国的 な調査(総理府「男女間における暴力に関する調査」)によれば、夫やパートナーから「命の危険を感じるくらいの暴力をうけたことがある」女性が、実に二十 人に一人にのぼっています。

 「第三者」に対するものであろうと、「夫婦・恋人間」のものであろうと、そもそも暴力は放置できない犯罪であり、法にのっとって厳正に処罰す べきものです。たとえ夫婦間であったとしても、そこで暴力がふるわれていることが明らかになったときは、なによりもまず、「個人の生命、身体及び財産の保 護に任じ、犯罪の予防」(警察法第二条)にあたることを本来の使命とする警察が機敏に対処すべきです。

 同時にいま、夫婦間等における暴力の特殊性をみきわめることが切実な問題になっています。

 夫婦間等における暴力は、本来ならば深い愛情と信頼のきずなで結ばれているはずの人間関係のなかで起きるために、往々にして「家庭内の問題」 として重大視されなかったり、いわば「密室の犯罪」として容易に周囲の目にさらされないまま見過ごされてきたりしました。また、さきの調査では、被害者の ほとんどが警察などに訴えられないまま、事件そのものが潜在化している実態、「私ががまんさえすれば」と、被害者が長期にわたってひたすら耐えるだけとい う悲惨な実態が明らかになっています。また、一度は逃れても、そのままでは暮らしていけない現実の困難があり、不本意ながら加害者のもとへ帰らざるを得な い実態も指摘されています。これに適切に対処するための法的措置が、どうしても必要です。

 男女が平等でともに力をあわせて社会や家庭をささえる、個々人の人間としての尊厳を大切にする――これは、私たち国民が、さまざまな困難を克服しながら獲得した「人類普遍の原理」(日本国憲法前文)です。

 社会のあらゆる場で人間の尊厳が大切にされる社会をつくる努力とともに、理不尽な暴力にさらされている女性たちを保護、救済し、自立して生活できるよう実効ある措置を講ずることは、政府や地方自治体に課せられた大事な仕事だといわなければなりません。

 日本共産党は、そのための立法措置として、以下、「夫婦間等における暴力の防止並びに被害者の保護及び自立支援に関する法律案」大綱を提案するものです。

 


「夫婦間等における暴力の防止並びに被害者の保護及び自立支援に関する法律案」大綱

一、国と地方自治体の責務の明確化

 夫婦間等における暴力の防止と被害者の保護についての国と地方自治体の責務を法律に明記します。

二、暴力の防止と被害者保護のための機関・施設の抜本的充実・強化

 現在では、夫婦間等における暴力の被害者を援助する公的機関はなく、売春防止法にもとづいて各県に設けられている婦人相談所が主として対応しています。これではきわめて不十分です。

 婦人相談所の法的位置づけを改め、夫婦間等における暴力の防止と被害者保護のためのセンターとしての機能を法定します。体制を抜本的に拡充 し、専門知識を持つ職員を配置して、二十四時間体制で電話相談や緊急保護を行い、被害者と児童などの同伴家族の一時保護、自立生活を促進するための援助、 立ち直りたいという夫婦への相談や医学的心理学的対応などを行えるようにします。センターの費用については、国が二分の一を負担することとします。

三、被害防止と被害者援助のための行政的・司法的制度の創設

 現在の刑法などの法律では、夫婦間等における暴力の加害者が被害者に接近するなどの行為を規制する有効な仕組みがなく、被害者が安心して生活 できるような保障ができません。被害を防止し、被害者の自立生活を援助するために、行政命令と裁判所の命令による二本立ての新たな法的制度を創設します。

 (1)被害者の安全確保のための行政命令制度

 被害者が逃げようとすると暴力が凶暴化したり、被害者が身を寄せた親戚宅や、婦人相談所の職員までが危険にさらされる例も少なくありません。 こうした事態に機敏に対処し、被害者の安全をまもるために、婦人相談所(センター)の権限で、加害者に対して、被害者の生活場所への接近、被害者への直接 連絡、被害者と同伴する家族(児童など)への面接・交渉などを禁止する行政命令をできるようにします。行政命令に違反した場合の罰則を設けます。

 (2)被害者の自立生活援助のための保護命令制度

 加害者が自宅に居残り、被害女性の方が、現に生活している住居を放棄せざるを得ないというような「矛盾」を解決するために、裁判所の判断で、 加害者に対して、住居からの退去、被害者の生活費等の支払い、子に対する親権の一時停止などの「保護命令」を行うことができるようにします。保護命令は、 加害者に対する審問も経たうえで発することとし、命令に違反した場合には制裁金を科すなどの制度を設けます。

四、夫婦間等における暴力をなくすための多角的な措置

 被害を届け出やすくし、被害者保護を効果的に進めるために、婦人相談所(センター)と福祉事務所、警察、民間シェルターなどが密接に連携する ようにします。とくに、生命の危険を感じた被害者が最初に通報する第一線の警察官が被害者の安全確保のため適切に対処できるように、具体的にとるべき措置 を定めます。

 被害者を発見した者は、警察やセンターに通報するものとします。医師・看護婦等、職務遂行中に発見しやすい立場にある者は、早期発見に努めるものとします。この場合、医師などの守秘義務は免除します。

 加害者に罪の意識が希薄なことは重大な問題です。犯罪に相応した刑罰を科するだけでなく、交通刑務所で行われているように夫婦間等における暴力の犯罪性を教育する制度を導入したり、カウンセリングによる自己改造の機会を与えます。

五、民間シェルターへの助成

 行政にさきだって被害者の保護と援助活動をすすめてきたのが、全国に二十カ所ある民間シェルターです。民間シェルターには、かろうじて地方自治体の補助金が出ているものもありますが、円滑な運営にはほど遠い額であり、どこも財政的な困難をかかえています。

 この法律にもとづいて公的施設が整備されたとしても、きめ細かい保護・援助を行ううえで、民間シェルターには大きな役割が期待されます。安定的な運営ができるよう、国・地方自治体が補助金を交付することとします。

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