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日本共産党

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赤旗

国民の監視の目がゆきとどき、国民の声が生きる行政にするために

「行政監視院(オンブズマン)法」「審議会通則法」に関する法案大綱の発表にあたって

1997年3月3日


 日本共産党はすでに、行政改革に関する3法案――(1)企業・団体献金禁止法案、(2)天下り禁止法案、(3)情報公開法案――を国会に提出しています。今回、これに加えて新たに、「行政監視院(オンブズマン)法」および「審議会通則法」の法案大綱を発表します。

 「行政監視院(オンブズマン)法」は、行政を国民の立場で監視してその歪みをただすとともに、国民の意見・要望を行政に積極的に反映させるこ とを目的として、「行政監視院(オンブズマン)」制度を国会のもとに設置するものです。また、「審議会通則法」は、行政機構に設けられた審議会を、財界が 行政に介入する機関から国民の声を反映する機関に改革する目的で、すべての審議会に適用する公正・民主的な一般的通則を規定するものです。この2法案大綱 は、すでに国会に提出している3法案とあいまって、行政を主権者国民の手にとりもどすための真に民主的な行政改革の出発点をなすものです。

 行政監視院(オンブズマン)法案大綱 日本共産党は、ロッキード疑獄をはじめ行政をめぐる汚職・腐敗事件があいついだ70年代から、オンブズ マン制度の導入を一貫して提起してきました。今日、住専問題、HIV疑惑、厚生省汚職など行政の不正・腐敗がかつてない規模と内容ではびこり、消費税問題 などが典型的にしめすように、国民の意見や要望が国の政治から排除される事態が日常化しています。こうした国民不在の行政のあり方に国民のきびしい批判の 声があがっているいま、わが党はあらためて、国民の立場で行政を監視する「オンブズマン制度」の導入を強く主張します。

 この制度は、すでに諸外国やわが国の少なくない地方自治体で導入され、民主的で公正な行政を実現するうえで注目すべき成果があげられているも のです。また今日、この制度を国の行政のレベルでも採用することをもとめる世論も高まり、自主的に組織された「民間オンブズマン」の活動も展開されていま す。今回のわが党案は、こうした積極的な経験や各界からの提案を十分考慮して練り上げたものです。

 行政の歪みを正して清潔で公正な行政を確保するとともに、国民の批判や苦情、要望を反映した国民本位の行政を実現するためには、国権の最高機 関、国民の代表機関である国会が、憲法の定める国政調査権および行政監督権を積極的に発揮することがきわめて重要です。わが党の「行政監視院(オンブズマ ン)」構想は、国会のこの憲法上の権能を充実・強化することを重要な前提としつつ、その機動的な発動をはかるために、国会の権能を補完する機構(行政監視 院)を国会のもとに設置することを内容とするものです。

 審議会通則法案大綱 現在、わが国の行政機構には、法律にもとづくなど公式に設置されるものだけで二百数十、いわゆる「私的諮問機関」をふく めれば、500をはるかに超える数の審議会・委員会がおかれています。これらは、“国民各層の意見・要望を行政に反映させる”ことを表むきの建前として設 置されていますが、実体は、その構成からいっても運営からいっても、この建前から大きくかけはなれたものとなっています。

 審議会等の構成を見るならば、財界・大企業の代表者が極端に大きな比重を占めており、その会長・座長の座には、ほとんどの場合、高級官僚出身 者がついています。また、その運営についていえば、行政官庁=高級官僚が作成した「シナリオ」どおりに事が運ばれ、国民の目にはまったくうかがい知れない 密室審議が常態化しています。こうして政府に設けられた審議会は、“国民各層の意見を聴く”という名を借りて、財界・大企業の意見・要望にもとづいた政策 決定をおこなう場とされているのが実際の姿です。

 わが党案は、この現状を根本的にあらため、真に国民の声を反映する審議会制度を実現するために、審議会の構成・運営などに関する一般的通則を法定し、これを全審議会・委員会に適用することを目的としたものです。

 日本共産党は、「行政監視院(オンブズマン)法」「審議会通則法」の制定が、憲法の保障する主権在民と議会制民主主義原則の徹底と発揚にとっ て、きわめて重要な意義をもつと確信します。わが党は、両大綱にもとづく法案を近日中に国会に提出し、その成立に全力をつくすものです。


行政監視院(オンブズマン)法案大綱

第一 法制定の目的

 憲法が定める国会の国政調査権・行政監督権の充実かつ機動的な発動に寄与するため、国会にその付属機関として行政監視院を設置し、国会の任命 する行政監視員に行政の内容について調査・監視させ、その経過及び結果について国会に報告させることによって、行政の過誤及び公務員の不正行為を防止する とともに、公正で民主的な行政の運営を確保することを目的とする。

第二 行政監視院の組織

(1) 行政監視院は7名の行政監視員で構成する。監視院に監視員会議と事務局及び調査局を置く。

(2) 監視員会議の互選で行政監視院長を置く。

(3) 監視員は、同一の政党に所属するものが2名以上となってはならない。

(4) 調査員は、監視員の職務を補佐し、一定の権限を行使して調査にあたる。

第三 行政監視員及び調査員の職務及び権限

(1) 行政監視員は、各議院または国会議員の付託にもとづき、独立して行政の内容を調査する。

(2) 監視員は、調査のため内閣及び官公署その他関係機関に対して必要な資料の提出を求めることができる。その際、「情報公開法」に定める「開示しないことができる行政情報」であっても、必要ある場合には一定の条件のもとで提出を求めることができる。

(3) 監視員は、調査のためなにびとに対しても必要な証言及び記録の提出をもとめることができる。この場合、「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」を準用する。証言拒否・偽証等のあった場合には、両議院の議院運営委員会の承認を得たうえでこれを告発する。

(4) 調査員は監視員を補佐し、その命によって調査する。調査員は、立ち入り調査し、質問し、資料の提出を求めることができる。

(5) 調査員は、調査にあたってその相手方に対してあらかじめ調査の目的を告げ、調査員である身分を示す証票を提示しなければならない。

(6) 監視員は、調査が終了したとき、調査の経過及び結果について両議院に報告する。また、調査案件を付託した議院または議員から求められたときは、中間報告をする。

(7) 両議院または調査案件を付託した議員は、前項の報告(中間報告を除く)を受けた後、必要ある場合、監視員に対して調査によって得たすべての資料の提示を求めることができる。

(8) 監視員は、必要ある場合、職権で調査することができる。この場合、各調査案件ごとに監視員会議の議決を経ることとし、調査の開始にあたっては、あらかじめ両議院の議院運営委員会に調査の目的及び趣旨を報告する。

(9) 監視員会議は、行政監視院規則の制定または改廃、院の人事その他院の運営に関する事項を議決する。

第四 行政監視員の任命と身分保障

(1) 両議院の議長は、両議院の議院運営委員会の合同審査会と協議のうえ、両議院の議決を経て行政監視員を任命する。

(2) 監視員は、国庫から国会議員の歳費に準じた相当の額の報酬を受ける。

(3) 監視員は、心身の故障、職務上の不正など特別の理由のない限り罷免されない。

(4) 監視員の停年を65歳とし、任命後5年ごとに国会で信任されなければならない。

第五 監視員等の服務

 監視員及び調査員は、職務上知りえた秘密を他に漏らしてはならない。その職を離れた後も同様とする。


審議会通則法案大綱

第一 法制定の目的

 この法律は、各種審議会等に係る委員構成・運営等の共通的事項について民主的で適正な一般的通則を定め、これをすべての審議会等に適用することによって、審議会制度を、国民本位の公正、民主的な行政運営を確保することに役立つものとすることを目的とする。

第二 法律の適用対象

 この法律は、法律の規定によって設置される審議会等のほか、審議会・調査会・審査会・委員会その他名称・所掌事務等の如何にかかわらず、行政各部に設置されるすべての諮問・決定機関に適用する。

第三 委員構成に関する通則

(1) 委員構成の根本原則――各種審議会の委員構成は、国民各層の意見が公正かつ総合的に反映するよう適正なものとしなければならない。

(2) 財界・大企業の代表による審議会支配の排除――財界・大企業の代表が各種審議会において過重な比率を占め、かつ重要な地位を独占して審議会の運営・決定を支配している現状をあらためるため、次の措置をとる。
 イ 現に企業及び業者団体の役員となっている者が委員として加わる審議会にあっては、それらの者の総数は、当該審議会の委員定数の三分の一を超えてはならない。

 ロ 現に企業及び業者団体の役員となっている者は、法律の規定によって設置される審議会等の会長またはその職務代理者の地位に就くことができない。

(3) マスコミ関係者の行政関与の制限――報道に携わることを業とする会社の役員または従業員は、当該事業の利害に直接関わる事項を審議するものを除き、原則として審議会等の委員にはなれない。

(4) 審議会の自主性・独立性の確保――各種審議会が行政当局に支配されている現状をあらためるため、次の措置をとる。

 イ 国務大臣・政務次官が審議会に委員として加わることを禁止する。

 ロ 国の行政機関等の職員が委員として加わることを禁止する。ただし、これらの職員の分限または待遇もしくは処分を取り扱う審議会で、特に法律で定める場合を除く。

 ハ 国の行政機関等の職員であった者は、その離職後5年間、審議会等の委員となることができない。禁止期間が経過した後に審議会等の委員とな るときは、任命権者による任命、国会の承認等の所要の手続にさきだって、「国の行政機関の職員等の営利企業等への就職の制限に関する法律(天下り禁止 法)」にもとづいて新設される「国家公務員等離職者就職審査委員会」の承認を得ることを要する。

1. 運営に関する通則

(1) 審議会公開の原則――審議会の審議は公開を原則とする。会議の議事はすべて議事録に記録し、なにびとも自由に閲覧できるようにする。

(2) 公聴会開催の原則――審議会の調査・審議に国民各層の意見を公正かつ総合的に反映させ、合理的な結論を得ることができるようにするため、審議会は随時、公聴会を開催するものとする。

(3)会議の定期的開催等――審議会の会議(総会)は、正当な理由がない限り3ヵ月に1回以上開催するものとする。また、委員の4分の1以上から会議招集の請求があったときは、10日以内に臨時総会を開かなければならないものとする。

1. 委員の給与及び手当に関する通則

(1) 審議会等の常勤委員が受ける給与及び手当の支給基準は、一般職国家公務員の給与及び手当の例に準じた適正なものにあらためる。

(2) 審議会等の非常勤委員が受ける手当の支給基準は、前項で定める常勤委員の給与の日額を超えてはならない。


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