日本共産党
2006年6月27日(火)「しんぶん赤旗」

このままでいいか、高すぎる日本の学費

国連・社会権規約委勧告への報告期限を前にして

角岡賢一


  現今、私立大学の文系学部では授業料の平均が年額約八十万円、それに加えて「施設設備費」が同じく二十万円、初年度には入学金として約二十万円が必要です。四年間で考えると、学費のみで四百万円を超える計算となります。この額は、世界的に比較すると一、二を争うような高額と言えます。

批准151カ国で留保は3カ国

 国際人権規約は一九六六年の第二一回国連総会において全会一致で採択され、一九七六年に発効しました。日本は一九七九年に批准しましたが、批准にあたって何項目かに留保を付しています。その一つが、社会権規約第一三条二項(b)と(c)、それぞれ中等教育と高等教育における漸進的無償化を謳(うた)った部分についてです。現時点でこの条約を批准している百五十一カ国中、この条項に留保を付しているのは日本の他はアフリカのルワンダとマダガスカル二国のみです。この二国とは一人当たり国内総生産の額にしても社会基盤の整備にしても比較にならないほどの格差があると考えられる点から、日本が高等教育の漸進的無償化条項に留保を付しているのは不合理と言えるでしょう。

 つまり「日本政府の姿勢としては(後期)中等教育と高等教育は、無償化を目指しません」という姿勢を国際社会に表明した、ということになります。それ以来二十七年が経過しました。

緊急避難的な留保のはずが

 批准当時の園田直・外務大臣は国会答弁で「留保条項なしに条約を批准するのが望ましい姿でありますけれども、残念ながら、時間その他の関係で政府部内の意見が統一をできなかったということを恥じておるわけでございます。(中略)留保した事項は、解除する方向に努力をし、また、そういう責任がある」と述べています。当初は緊急避難的に付した留保が、歳月の流れと共に固定化されてしまいました。今となっては、いつ留保が撤回されるのか出口が見えにくい状況です。日本政府の態度は、高等教育を受けるために要する学費が国際比較して極めて高い水準に張り付いているという結果となって現れています。これが学生や学費負担者に対して重荷となっています。

 社会権規約委員会から第三回の政府報告が求められ、期限が今年の六月末日と設定されています。この期限を前にして、私立大学教職員組合連合から文部科学省と外務省に要請に行ってきました(六月二十日)。残念ながら、期限までに報告は出ないだろうというのが実情でした。

高学費に走り格差の拡大へ

 その理由として挙げられたのは、次の二点でした。一、無償化を目指すのは、高等教育を受ける者と受けない者の負担が公平でない。二、国の財政難。一は前回と同じですが、今回の報告には財政難が新たな理由として盛り込まれるようです。「負担の公平さに欠けるので、高等教育への国費支出を増やせない」というのは詭弁(きべん)のように聞こえます。元々高かった私学の授業料・入学金と「均衡させる」という名目で国立大学の授業料・入学金を交互に値上げしていった結果、いまや国立大学法人の入学金平均額は私立大学より高額になっています。天然資源に乏しい日本には人材立国の道しかない、という発想が政府にはないものでしょうか。

 小泉政権も末期症状を呈し、世上「格差社会の到来」が喧伝(けんでん)されています。今の日本のように、国立大学法人・私立大学共に競って高学費に走るような状況では、格差がますます拡大していくのではないかと懸念されてなりません。理念としての教育とは、それを受けたいと望むすべての人が等しく機会を与えられ、授業料などの心配をすることなく勉学に没頭できる姿を求めるべきではないでしょうか。

 私たちは昨年「国際人権規約第一三条の会」を結成し、この理念を実現させるために種々活動を行っています。私たちが日々接する学生からも、高学費に苦しむ声が切実に上がっています。個人的な意見では、私立大学への経常費補助の倍増、国立大学法人を含んで学費負担者に対する直接補助が必要だと考えています。


社会権規約第一三条二項(b)(c)

 (b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとする。

 (c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。

かどおか けんいち=国際人権規約A規約第一三条の会事務局長。龍谷大学教授。言語学。


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