日本共産党
2005年12月5日(月)「しんぶん赤旗」

総合科学技術会議 答申案をめぐって

第3期科学技術基本計画の策定

研究現場の声 尊重を


 政府の総合科学技術会議が十一月十一日、「『科学技術に関する基本政策について』に対する答申(案)」を発表し、十二月十一日まで意見を募集しています(*)。年内に答申を決定し、それをふまえて来年三月に第三期(二〇〇六〜一〇年度)の科学技術基本計画を閣議決定します。

 答申案は、第二期計画(〇一〜〇五年度)で推進した「科学技術の戦略的重点化」をさらにすすめ、「成果を還元する科学技術」「人材育成と競争的環境の重視」を基本姿勢にしています。研究開発投資の目標は、まだ明示されず「検討中」となっています。

■研究現場のゆがみ拡大

 日本の科学技術の発展には、基礎研究への支援や高等教育への公費支出を抜本的に強めることが不可欠です。研究費総額(民間を含む)にしめる基礎研究の割合が、欧米の19〜23%に比して、13%という低い水準にあり、基礎研究とかかわりの深い高等教育に対する公財政支出も欧米の半分にとどまっているからです。

 答申案は、この十年間で「基礎研究の比重は着実に増加し」たといいますが、高等教育予算のGDP比は0・5%のまま伸びておらず、大学の基盤的研究費は法人化などによって削減されています。経済効率偏重の「重点化」によって特定分野のみが優遇され、その他の多様な基礎研究は予算削減で阻害される事態がうまれ、「研究現場のゆがみ」をもたらしているのです。

 ところが答申案は、こうした事態を抜本的に改善するのではなく、政策目標として「世界を勝ち抜く産業競争力の強化」や「世界一安全と言える国」などをかかげ、その達成に直結する研究開発を「戦略重点科学技術」として推進する方針をうちだしました。なかでも、スーパーコンピューターや宇宙輸送システムなどを「国家の総合的な安全保障の観点」から「国家基幹技術」と位置づけ、巨額の資金を投入するものです。

 基礎研究については、「政策に基づき将来の応用を目指す基礎研究」を重点的に推進して政策目標達成につなげるとする一方で、それ以外の多様な基礎研究については、競争の激しい科研費補助金(新規採択率が二割余)をあてるとし、大学や公的研究機関の基盤的経費を拡充する方策は示されていません。

 こうした方向では、国の政策目標達成に貢献したかどうかを基準にした研究組織の再編や予算の配分を強め、人文・社会科学をはじめ競争的資金を獲得しにくい分野が衰退するなど、「ゆがみ」をいっそう拡大する恐れがあります。

■「人材育成」に不十分な対策

 科学・技術の発展には、多様な優れた研究者の確保が期待されます。そのためには、研究者が安心して研究にうちこめる環境を保障することが不可欠です。ところが、研究者の不安定雇用が増大する一方で、大学院生・ポスドク(博士号取得者)の就職難、女性研究者が出産・育児と両立し難い研究環境、若者の理科離れなどの深刻な現状はほとんど放置されてきました。

 こうしたなかで、答申案も「人材育成」を強調し、若手研究者の自立支援のための競争的資金の拡充、女性研究者の採用目標の設定、大学院教育の質的強化、知的好奇心にあふれた子どもの育成など、数多くの施策を並べています。

 しかし、ポスドク制度のあり方の再検討や、研究者の社会的地位の向上、大学院生や若手研究者に対する経済支援の大幅な拡充、大学・研究機関で基盤的研究費を自由に使える安定したポストの拡大などの抜本的な対策は、ふれられていないか不十分です。他方で任期制をはじめ研究者に競争をあおる施策を強める方向であり、「人材育成」に逆行しかねません。

 これらのことも含め、国の科学技術政策の内容は研究現場の実態をよくふまえて決めるべきです。日本学術会議の意見を尊重することや、科学者からよせられる多様な意見にしっかり目をむけることが求められます。 (改正 充)

 (*)意見の提出は、内閣府科学技術基本政策担当室宛(千代田区霞が関三―一―一)、または総合科学技術会議のホームページから。



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