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国立大学

法人化の実態を追う


教員の研究費、非常勤講師手当 削減が続出

 国立大学が今年四月に法人化してから半年近くがたちます。その実態を追ってみました。

教育研究に支障

 「法人化は国立大学の重要な役割をいっそう担うため」―昨年の国会審議で政府は繰り返し表明しました。ところが、法人化初年度から、大学では各研究室の教育研究費の半減や非常勤講師賃金の減額などが続出しています。

 国立大学の各研究室が自由に使える教育研究費は、これまでも理工系で教員一人当たり百三十万円、人文社会系で二十八万円(二〇〇〇年度、文科省推計)程度でした。これが大学によっては法人化で四〜七割へと激減し、「最新の研究を紹介する学術誌の契約を打ち切った」「学生の卒業研究や制作活動の経費もままならない」など、教育研究に支障がうまれています。

 国立大学の非常勤講師は全国で約三万人。この賃金単価を十一大学が一割減額しました。多くの大学では、経費削減の名で大量の雇い止めを検討しています。首都圏のある大学では、非常勤講師予算を六割減らすため、英語を除き非常勤の授業をすべて削減、既存の常勤教員にもたせる計画です。全国的に、非常勤講師の大量失業と常勤教員へのしわ寄せが心配されています。大学の授業数が減少する事態もおきかねません。

文科省による誘導

 文科省は、国立大学に対する今年度の運営費交付金を「従来と同額を措置した」といいます。にもかかわらず、こうした事態がなぜうまれたのでしょうか。

 原因の一つは、多くの大学で、学長などが自由に使う全学的経費を大幅に増やし、基盤的な経費を圧迫したことです。中部地方のある大学では、全学プロジェクトの推進経費や学科の入試倍率・就職率などに応じて配分する経費など八項目の学長裁量経費を増やし、学部長の裁量経費を新設、予備費とあわせて十二億五千万円を計上しました。各学部に配分する教育研究経費は二十二億円に削減しています。

 文科省が、「学内の資源を柔軟に配分することにより、新たな研究教育組織の再編や教育研究プロジェクトの実施などの取り組みを積極的、機動的に行う」(六月八日の国立大学長会議)と各大学を誘導しているのです。

 また、これまで非常勤講師手当は、常勤教員給与と別枠で予算が確保されていました。文科省はこれらを一本化して運営費交付金を算定するしくみに変え、常勤給与の欠員分の中から手当をだすように求めました。その際、文科省は「人件費総額では減っていない」としながら、大学に対して「常勤で対応できるものを非常勤に依存していないか」などといって非常勤の削減をあおっています。

削減計画がさらに

 政府は、来年度から運営費交付金を毎年1%ずつ削減する計画を決めています(削減額は五年間で四百五十億円)。法人化にあたっての国会決議が「従来以上に各国立大学の教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保する」としたことに反するものです。このために大学が厳しい状況におかれ、今年度から経費削減をすすめていることもあります。

 さらに重大なのは、政府が来年度予算で競争的研究費(補助金)を大幅増額することを理由に、運営費交付金のさらなる削減を検討していることです。「競争的研究費や民間資金が潤沢に入る大学でなければ、経営が立ち行かなくなり、学費値上げとなることは必至」と、削減計画の撤回を求める声が大学関係者に広がっています。

 全国大学高専教職員組合は、七月の定期大会で「マイナスシーリングの付加や効率化係数に反対し、運営費交付金の十分な確保を政府・文科省に要求していく」ことを決めています。(「しんぶん赤旗」2004年9月23日)

 


役員会の密室化に批判

 国立大学法人では、学長と理事の数人からなる役員会が大学運営の決定機関になります。どの大学でも月一、二回程度は開かれていますが、「役員会の姿が見えない」、「財政などの情報が公開されない」との声が教職員からあがっています。関西地方のある大学では、役員会が何を議論し、どう決めたのかが教授会に報告されなくなりました。「重要事項を審議する」(学校教育法)役割をもつ教授会の審議が制限され、いわば役員会の下請けになる事態です。こうした役員会の密室運営や教授会の形がい化への批判が、全国でひろがっています。

大学憲章を力に

 昨年来、大学運営の理念をうたった大学憲章が、いくつかの大学で制定されました。

 中部地方のある大学では、学内構成員の総意を集めて大学憲章を制定、「すべての構成員が、それぞれの立場において、本学の目標を達成するため、大学の諸活動へ参画することを保障」するとしました。法人化後もこれにのっとって、教員、職員、学生が一堂に会して教育研究の充実のために協議する機関を設置。この機関で学生が要求した通学バスの増発などに、大学側がバス会社と交渉して一定の改善が図られ、学生から「自治の枠組みを広げるきっかけになった」と歓迎されています。

 東北地方のある大学でも、全構成員の過半数の賛同署名により大学憲章を制定、「私たちはそれぞれの立場から、大学運営に発言し参加する権利を有します」と宣言しました。これが役員会への圧力にもなり、「大学自治への侵害を排除し、大学全体の合意で運営していく強固な礎になった」といいます。

学長選挙の重視

 また、学長の権限が強くなることに対して、学長選考を民主的な方法で行うことが多くの大学で重視されています。学長選考権は、学外委員と学内委員の同数で構成する学長選考会議がもちます。この選考にあたって実施される教員の意向投票を、職員にも広げる大学が増えています。法人化にともない職員の役割が増大した反映とみられます。

 逆に、一部の大学では意向投票を形がい化させる動きもあります。東北地方のある大学では、学長選考会議の学外委員から「学長選挙など古い慣習にとらわれすぎ」と指摘され、意向投票制度は残したものの、その最高位でなく三位までから選考するしくみに変えてしまいました。

 法人制度のもとでも大学自治の枠組みを広げていくのか、あるいは大学自治の到達を後退させるのか、全国の国立大学が揺れ動いています。(「しんぶん赤旗」2004年9月24日)

 


蔓延するサービス残業

 「月百九十時間の残業に対し、手当は二十四時間分しか払われていない」。広島大学教職員組合が七月十三日、労働基準監督署に告発しました。同教職組によると、「法人移行にともなって多くの部局が連日、深夜の残業になった。学長がトップダウンで決めた事業は四カ月間に休暇は三日だけ」。その実態に取材の記者らからも驚きの声があがりました。

過労から病欠者も

 山形大学職員組合が行ったアンケートでも、「毎日深夜まで勤務があり、休日労働も加わり過労から病欠者もでている」との回答がよせられています。ところが、全残業時間分の手当が払われていると回答したのは、2・4%に過ぎません。いま、各地の労基署が、国立大学の調査に入っています。

 国立大学の教育、研究、医療をささえる大事な業務で、勤務時間の管理もされず、サービス残業がまん延しています。こんな状況で、文部科学省がいうような「世界最高水準の大学を育成する」ことができるでしょうか。

 そもそも、国が措置してきた超過勤務手当は、これまでも事務職員一人当たり月十二時間分、看護師で二十六時間分です。文科省は、これをはるかに上回る超過勤務の実態を知りながら、法人化後もこれと同額しか措置していません。「法人化したら大学側が払う義務をおう」(国立大学法人支援課)とのべるなど、自らの責任を棚に上げる姿勢です。

教員リストラの危険

 大学教員の間で不安が募っているのは、法人化によって任期制の導入が推進されることです。任期制とは、三〜五年の任期がきたら失職する雇用形態です。北見工業大学では四月から全教員の半数近い七十名余に任期制を導入。九州大学では法人化に先立って工学、農学、医学の各研究院で全教員に任期制を導入しました。

 九大では、「任期がきても再任されるから心配ない」と説明し、教員から同意をとりつけました。しかし、任期制は教員の雇用を不安定にし、教育研究に短期の業績を求めるなどの弊害をもちます。中期計画が終了する五年後、文科大臣が大学・学部の改廃を図る場合に、教員リストラの手段になる危険は否めません。九大教職組は、法人化後に改めて任期制の廃止を要求しています。

 法人化した国立大学では、大学自治の枠組みをひろげる上でも、教職員の雇用・労働条件を守る上でも、組合の役割が従来以上に大きくなりました。それだけに、教職員からの期待はかつてなく高まっています。この一年余に全国で二千六百人以上(全大教集計)の組合員が増えています。(「しんぶん赤旗」2004年9月25日)



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