日本共産党

2003年2月8日「しんぶん赤旗」

国立大学法人化、大学「改革」に異議

アピール呼びかけ人代表 池内了さんにきく

大学の自主性を破り、介入に道

経済論理優先で基礎的分野軽視に


 著名な大学人・文化人十五人が、文部科学省が進める「大学改革」に懸念を表明し、国立大学法人法案の国会提出のとりやめなどを求めるアピールを発表し、賛同を呼びかけています。呼びかけ人代表の池内了(さとる)名古屋大学教授に話を聞きました。

 ―法人化で何が問題ですか。

 法人化は大学の自主性を破るものです。政府の進める法人化では経営の側面と教育・研究が分離してしまいます。すると経営的な論理が、先行することになります。

 そうなると、基礎的な分野や時間のかかる分野、あるいは教育は軽視されるでしょう。法人化の狙いが大学を経済の論理で運営しようということにあるのです。

 ―アピールは、「大学改革」により学問・文化の健全な発展が危ぶまれると警告していますね。

 法人化とともに、昨年秋の学校教育法改定で、私立大学も含め文部科学相が認可する認証評価機関(注)の評価を受けなくてはならなくなりました。評価が悪ければ廃校もあり得ます。日本のすべての大学が、文部科学省に握られてしまう可能性が高い。大学の自治が危機です。

 文化とか思想は本来、国家なりお金を持っているものからは、独立した存在でなくてはなりません。それを保障するのが国の役割です。憲法や教育基本法は、政府は教育の自由、学問の自由に介入してはならないとしていますが、今回の法人化はむしろ介入できる道を開こうとしているのです。

 ―具体的にどんな問題が起きますか。

 私の専門の天文学は、お金は使うが、お金もうけはあまりできない。その意味では文化のみに寄与するものです。

 小柴昌俊さんがノーベル賞を受賞されたとき、ニュートリノ研究がなんの役に立つのかと聞かれて、「役に立たない」と言われました。経済論理からいえば役に立たない。しかし、人類の共通の知的財産、宇宙に対する共通の知識とか、そういうものを通じて人々が精神的に豊かになる。それには役立っていると思います。そういう役立ちかたはなかなか評価されない傾向が、日本にはあります。経済論理を優先させると、そういう分野は枯れていく可能性があります。

 天文学でいえば、地方の大学で小さいスケールでもがんばっている人たちは、外部資金はなかなか取れないし、大学の経営には役に立たない、そういう分野はいらないのではないか、ということになりかねません。われわれは大学で教育面で役に立っていると思っていますが、教育面についての評価はほとんどなされない。天文学という分野は、東大と京大にさえあればいいと公言するお役人もいるぐらいで、そうなりかねないのです。

 ―国民にとって直接の弊害は。

 国は戦後、新設大学を作って、各県に最低一つずつは国立大学があるようにしました。どこに住んでいても教育を受ける権利を保障し、相対的に安い学費で国民の教育権を保障してきたのです。

 すでにいくつかの県を越えた大学統合の話が出ていますが、法人化されれば大学間の統合についても経営の論理が優先され、この県には大学があってこの県には大学がないということになり、地方の大学は切り捨てられていく可能性があります。大学の確実な収入である学費の値上げもありえます。親にお金がある子どもだけが、都会の大学にいくことになります。

 ―競争と評価に関しては、必要との意見もありますが。

 そもそも競争という意識は研究をやっている個人すべてにあり、評価を覚悟しています。しかし、研究結果をどう評価するのかは、いろいろ見かたによって異なってきます。評価を認証評価機関など国と結びついたようなところだけでやるのは非常にまずいのです。少なくとも、国と独立した複数のシステムを作らなくてはいけません。

 ―アピールは研究・教育条件の改善を求めていますが。

 現状はわれわれは忙しさが増える一方です。きっちりと教育も研究もやっていくためには教員の人数が少なすぎます。無論、実験設備も古いままです。光の当る部分は金がどんどん入ってきますが、経常的な経費はどんどん絞られています。

 それと対照的に、競争的資金の増大はこの数年の間、急速に増加しています。そういう資金を多く受けられるのは、特定の、外部資金をもらえる応用開発分野です。富めるものはますます富み、貧しいものはますます貧しくなるやり方です。

 日本は不況ですが、僕はそういう時期であるからこそ、近視眼的なことを慌ててやるのはかえってまずいと思います。むしろ基礎的なところの充実に力を注いだほうが、長い目で見れば大きな力になるのではないでしょうか。

 ―賛同署名が広がってほしいですね。

 大学人だけでなく広く賛同を求めて、幅広い呼びかけ人で呼びかけました。法人法案が閣議決定される前までに、賛同署名を集めて、国会にもっていく予定です。

(松沼環記者)

◇「大学改革を考えるアピールの会」のホームページ http://homepage2.nifty.com/~yuasaf/appeal/

 注・認証評価機関 文科相の認証を受けた、国公私立大学にたいする第三者による評価機関。昨年の学校教育法の「改正」で、すべての大学に、認証評価機関による評価(認証評価)が義務付けられます。


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