日本共産党

2002年6月16日(日)「しんぶん赤旗」日曜版

急ピッチ 国立大減らし

崩される「一県一大学」

 地方の教育・研究に大きな打撃


 国民に耐えがたい「痛み」を強いる小泉純一郎内閣の「構造改革」。いま、その「改革」路線が、日本の大学に押しつけられ、重大な岐路に立たされています。(村崎直人記者)


青森・小2の息子「弘前大学なくなるの?」

 青森市に住む新藤康子さん(41)=仮名=は、昨年十二月のある日、テレビのニュースを見ていた小学二年の長男、健くんから「弘前大学がなくなるって、ほんと」と聞かれてびっくりしました。

学習障害に助言

他大学との再編・統合に揺れる弘前大学=青森・弘前市

 ニュースは、国の大学「改革」路線に沿って、青森県の弘前大学と、近県の秋田大学、岩手大学の間で再編・統合の協議が進んでいて、当面の焦点は教育学部の統廃合だという内容でした。

 「国は教育学部が不要だと考えているんでしょうか。学習障害に理解のある先生が、もっともっと増えてほしいのに」と話す康子さん。

 健くんには、知的発達に遅れはないのに、「書く」「聞く」「読む」など学習能力の習得に困難のある学習障害があります。康子さんと健くんは月一〜二回、弘前大学教育学部の心身障害学科教室に、相談と指導を受けるために通っています。

 学習障害にたいする学校や行政の理解や支援はまだまだです。「わがままな子」などと誤解されやすく、いじめの対象になったり、不登校になってしまう子どもも少なくありません。

 子どもの学習障害に悩む家族にとって、弘前大学は貴重な助言と支援をしてくれる数少ない場です。片道二時間かけて通う親子もいます。

 相談と指導には、将来教員をめざす多くの学生が参加しています。

 「学生さんは、希望の星」と語る康子さん。「教育学部の内容の充実こそ必要だと思います。秋田にも岩手にも、私たちと同じ悩みをもつ家族がたくさんいます。国の大学『改革』は、ぜったいおかしい」

人材育成を担う

 日本の国立大学は、どこに住んでいても等しく高等教育が受けられるようにするために「一県に一国立大学」の原則が採用され、現在、全都道府県に複数の学部をもつ国立大学があります。

 多くの県では、進学する高校生の四〜五割が県内の大学に入学しています。とくに、深刻な不況のもとで、私立大学に比べて家族の経済的負担の軽い国立大学を選ぶ高校生が増えています。

 ところが、小泉内閣の大学「改革」は、この原則を崩して、国立大学のない県ができても仕方がないという改革です。

国の大学「改革」は、地方大学の役割を台無しにすると批判する田辺良則弘前大学名誉教授

 弘前大学元農学部長の田辺良則名誉教授(76)は「地方の国立大学は、その地域の将来を支える人材を育てる教育機関であり、地域の政治や経済、文化の発展に貢献する研究機関という面で大きな役割を担ってきた」と指摘します。

 農民の要望を受けて、特産のリンゴなど農産物の流通や経営について研究・教育する農産物流通論講座や農業経営学講座の新設に取り組んだ経験をもつ田辺さん。

 「農学の研究・教育は、多くが、その地方の農業を素材とし、特産物などその地方の農業のあり方に特徴づけられます。農学だけでなく、多くの学問は、地方住民との風土、風俗、文化の共有・共感に基づいて地方に密着したものです。国の大学『改革』は、地方の研究・教育の拠点を奪うもので、百害あって一利なしです」と怒ります。

“利潤第一主義”

 小泉内閣の大学「改革」は、財界の意向に沿って、「経済再生のため…世界で勝てる大学をつくる」(遠山敦子文相、経済財政諮問会議での説明)ことが狙いです。

 「改革」は(1)「少子化」を理由にした教員養成系の大学・学部の半減をはじめとして、国立大学を再編・統合して大幅に削減するとともに、(2)大学運営に民間経営手法を導入し、政府・文科省が各大学の研究・教育の目標を決める「国立大学法人」にして、教職員を「公務員」でなくする(3)政府・文科省が国公私立大学の上位三十校「トップ?」を選別して、予算を重点的に配分する−−という内容です。

 大学を大幅に減らして、国の管理・統制を強めて、財界・大企業の利益に役立つ研究成果や人材を効率よく生み出す大学を、重点的に育てようというのです。

 まさに、日本の大学を“利潤第一主義”に「構造改革」するもので、大学内外から「教育内容が制限され、学問が衰退せざるをえない」(鹿児島大学長)など批判の声があがっています。

 しかし、政府・文科省は、国立大学の「法人」化と再編・統合の具体的計画については、本年中に決めて、来年の通常国会で法制化しようとしています。

学生街で「反対」署名

「守る会」を結成

 

文科省によると、百一の国立大学(短大含む)のうち八割が再編・統合の検討をはじめており、筑波大と図書館情報大、群馬大と埼玉大など三十六大学では、大詰めの協議に入っています。

 一方、福井県議会や函館市議会が計画見直しを求める意見書を決議するなど、各地で、小泉内閣の大学「改革」に反対する世論と運動がひろがっています。

 弘前市でも、学生の下宿などが集中する中野町町内会が四月初めの通常総会で、再編・統合に反対する請願署名にとりくむことを決めました。

 きっかけは、町会長の佐藤克己さん(63)が三月に出席した、日本共産党市議団主催の「弘前大学統廃合をめぐる各界懇談会」でした。懇談会では、再編・統合で、約八千人いる弘前大学の学生・教職員が大幅に減少するおそれがあり、地域経済に与える影響は大きいと報告されました。

 

弘前大学教育学部を守ろうと開かれた「守る会」結成の集い=6日、青森・弘前市

佐藤さんは「学生街の町会として、大学とは共存共栄でやってきたのに、一方的な再編・統合話に困惑しているし、納得できん」と怒ります。

 六日には、心配する市民や団体代表が集まって、「弘前大学教育学部を守る会」が結成され、請願署名や学習、宣伝などにとりくむことを決めました。会場には佐藤さんの姿もありました。

 元小学校長で同会事務局長の柴田文男さん(66)はこう決意を語ります。

 「私たちは、他県の大学の教育学部や弘前大学の他の学部がなくなってもいいという立場ではありません。弘前大学教育学部の問題を通して、国の大学『改革』の理不尽さを告発し、他県の運動とも連携して抜本的な見直しを求める大きな運動にしていきたい」


日本共産党はこう考えます

 日本共産党は四月二十日、「『学問の府』にふさわしい大学改革か学術・教育を台なしにする小泉『改革』か−−国民の立場で大学改革をすすめるための提案」を発表しました。

 小泉内閣の大学「改革」が、大学を国民から遠ざける改悪だとして、「小泉『大学改革』をきっぱりとやめさせ、国民の立場に立った大学改革を」と、広範な個人や団体による共同のとりくみを呼びかけています。 そのうえで、国民の立場に立った大学改革として(1)国立大学の「法人」化と教職員の「非公務員」化、強権的な「再編・統合」を撤回させ、国民参加で国立大学改革を検討する(2)「大学の自治」を尊重した財政支援のルールを確立する(3)「国民の共通財産」にふさわしい大学改革を(4)国民の学費負担を減らす方向に踏みだす−−ことを提案しています。


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