日本共産党

2002年4月9日「しんぶん赤旗」

国際到達からみた「国立大学法人像」最終報告

大学の論理否定の独法化

深山正光


 一九九〇年代のユネスコのとりくみのハイライトの一つは高等教育であった。「高等教育発展のための政策文書」のとりまとめ(一九九五年)、「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」の採択(九七年)、そして、高等教育世界会議の開催と「高等教育宣言」および「優先行動」の採択(九八年)、さらに、世界科学会議の開催と「科学宣言」および「科学アジェンダ」の採択(九九年)などが重ねられて、高等教育の変革と発展の原則と方向が明示され、それを担う教育職員の地位の保障にかんする国際基準が確認された。

大学の役割や理念の欠落

 これらの提起や合意、確認からみるならば、今回の「新しい『国立大学法人像』について」の最終報告は、一言でいうならば、何ともあいた口がふさがらないほどの誠に身勝手な提案であり、大学の論理を否定するものといわざるをえない。

 第一に、日本と世界の社会発展における大学の役割についての確認が欠落している。「報告」は、随所に「『知』の時代」の「『知』の拠点としての大学の責務は重大である」などと述べるのだが、新しい世紀の発展に貢献する大学の役割、任務、その理念を欠落させている。したがって、大学の役割、任務を果たすことを制度的に保障する学問の自由と大学の自治の死活的な重要性については語ろうとしない。

 アリバイ的に「憲法上保障されている学問の自由に由来する『大学の自治』の基本」と一度だけいい、また、随所に「大学運営の自主性・自律性」といった表現をちりばめてはいるが、それは言葉にすぎず、技術的レベルのものである。

 また、社会にたいする大学の「説明責任」が強調されるが、大学の場合、学問の自由と大学の自治の保障を前提としない「説明責任」論は本来成立しないものである。「自治は、学問の自由が機関という形態をとったものであり、高等教育の教育職員と教育機関に委ねられた機能を適切に遂行することを保障するための必須条件である」(「地位勧告」第18項)。

官僚統制の強化を提起

 第二に、この報告は、大学の自治および団体組織性を事実上否定する大学への官僚統制の強化を提起している。それは、「経営責任の明確化」や「学内体制の強化」をかかげ、「学内コンセンサスの確保に留意しつつも、全学的な視点に立ったトップダウンによる意思決定の仕組みを確立すること」だとし、そのための綿密な機構を提案していることに露骨に示されている。

 そこには教職員を代表する団体の参加、協力の位置づけがまったく欠落している。高等教育における「団体組織性の原則は、学問の自由、責任の分担、機関内部の意思決定機関と慣行へのあらゆる関係者の参加という政策、および諮問機構の開発を包含する」(「地位勧告」第31項)というのが国際的確認である。

学生の地位完全に無視

 このことと結びついて、第三に、大学の運営および意思決定における学生の地位の完全な無視を指摘しなければならない。「国および教育機関の意思決定者は、学生および彼らの必要をその関心の中心におかねばならず、かつ彼らを高等教育の革新における主たる共同者および責任ある当事者とみなさなければならない」(「高等教育宣言」第10条のC)のである。当事者としての学生や教職員を代表する団体の大学の意思決定、大学運営への参加を制度的に保障することなしに高等教育の刷新も変革も期待することはできない。

 「報告」は「学外者の参画による社会に開かれた運営システムの実現」を主張するが、重要なのは、「国および教育機関の意思決定者に高等教育機関の教員および関係職員、……学生、労働の世界、地域社会の諸集団等の間の共同関係と協力」(「高等教育宣言」第17条)を構築することである。

(ふかやま まさみつ・身延山大学名誉教授)


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