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安全体制抜きの原子力政策の根本的転換をもとめる

1976年1月30日 衆院予算委員会・総括質問 不破哲三

 衆議院予算委員会での日本共産党不破哲三書記局長(当時)の質問から、原子力政策に関する部分を抜き出しました。


○不破哲三 エネルギー問題で大事な問題は、原子力の問題であります。

 科学技術庁の長官でもいいし通産相の河本さんでもいいのですが、原子力の発電計画、現在の原子炉の基数と出力、それから昭和六十年度あるいは六十五年度の出力と基数の見通し、これをちょっと伺いたいと思います。

○河本通産大臣 現在動いております原子力発電は約四百万キロでございます。それから建設中のものが約千三百万キロになっております。昭和六十年の目標は四千九百万キロ、こういうふうに想定をいたしております。

日本の原子力開発は新しい段階に

○不破委員 私は、日本における原子力開発は、いまの河本さんの報告にもありますように、新しい段階に入っていると思うのです。つまり、いまは数百万キロワット単位ですが、九年後には四千九百万キロワットといういわば高度成長計画が進められている。この四千九百万キロワット体制というのは、安全の面でも管理の面でも新しい問題を生みます。

 たとえば原子炉が生み出す死の灰の問題がある。百万キロワットの原発は三キログラムのウランを毎日消費しています。それは三キログラムの燃えた燃料、つまり三キログラムの死の灰を毎日生んでいるということであります。これは広島型原爆に比べますと、死の灰の量から言えば、広島型原爆三発分が百万キロワットの原子炉の中で毎日生まれている勘定になる。四千九百万キロワットというと、それの四十九倍ですから、百四十七発分の死の灰が毎日日本の各地に、原子炉の中に生まれることになります。仮に経済稼働率八〇%として計算してみましても、一年間に四万発を超える広島型原爆に当たるだけの死の灰を日本の原子力発電が生むようになる。これ一つ考えても、これの管理の問題は新しい段階を生みます。

 しかも、これは三木さんも環境庁長官時代の演説の中で、日本という国は山岳地帯が多くて二〇%しか平地がない、それだけに平地の利用にかかわる公害問題は注意しなければいかぬということを言っておりましたが、平地面積当たりの原子力開発がどのくらいになるかといいますと、この四千九百万キロワット体制というのはアメリカの十・二六倍であります、原子力の密度が。それからイギリスの五・〇二倍、フランスの三・三三倍になります。そういうところにいま日本の原発計画が進みつつある。

 それから、よく原発で問題になるのは、温排水の問題があります。原発というものは、熱出力の中でエネルギーに転換するものが火力発電より少ないですから、どうしても出てくる温排水の熱の影響が大きいのです。これが四千九百万キロワット体制になりますとどれぐらい出るかというと、大体一年間に千二百億トンの水が原発から日本の周りの海に流れ出ることになる。日本の河川の自然流量は四千億トンと言われておりますけれども、これは豊水期を含めた量ですから、実際の豊水期でない時期には年率で大体二千億トンから三千億トン流れておるというのが学者の説であります。つまり、すべての河川が海へ流し出していると同じ、それに近いような、それのほぼ半分になるような原発からの温排水が日本列島の沿岸に流れ出ることになる。これは環境問題で全く新しい問題を生むわけであります。

原発大増設は、環境にも、安全管理にも取り返しのつかない危険をはらむ

 いまの原発の審査は、個々の原発地域で温排水の漁業への影響はいかんということを個別にやっておりますが、いま通産省が計画している四千九百万キロワット体制、こういうことになったら日本列島の自然環境がどう変化するか、日本列島の周りの漁業がどう変わるか、そこまで研究しなければ踏み切れないような過密原発時代にいま向かおうとしている。私は率直に言って、そういう時代にいま日本の原子力開発が向かいつつあるのに、そこにはさまざまな未知の問題があり、そこではさまざまな問題を解明して、それこそ石橋をたたくが上にたたいて進まなければ、将来、さっきの橋と同じで取り返しのつかない問題が起き得るのに、十分そういう点を検討しないまま、日本の経済成長のためにこれだけ必要だという計算だけから事態が進んでいる、ここに日本の原子力問題の実は自立性、従属性の問題もありますが、国民の安全、日本の将来という点から言えば、最大の問題の一つがあると思うのです。

 そこで、きょうはこの点に問題をしぼって伺いたいと思います。

原子炉の安全審査は非常勤。30人足らずで

○不破委員 一つは、そういう段階を迎えようというのに、この原子力発電に対する安全規制の体制、これがどうなっているかという問題であります。

 科学技術庁長官に伺いますが、いま原子力委員会は原子炉の場合に、たしか具体的な詳細設計ではなしに基本設計だけを安全審査の対象として扱われているはずであります。この安全審査をやるスタッフ、委員の数、これはどれぐらいの陣容でやっているか、これを伺いたいと思います。

○佐々木科学技術庁長官 具体的な数字でございますので、かわって御説明いたさせます。

○伊原原子力安全局長 お答え申し上げます。

 ただいま原子力委員会のもとに、原子力委員会設置法に基づきまして原子炉安全専門審査会がございます。その審査委員は定数が三十名でございまして、現在二十九名の方に委員を委嘱いたしております。さらに専門的事項を調査していただきますために調査委員、これを現在二十九名お願いいたしております。なおこのほか、この審査会を補佐いたしますために原子力安全局の中に安全審査官、これを増員いたしまして、現在その安全審査の事務局側の専門官として二十名、さらに五十一年度増員が二名、こういうふうになっております。さらに庶務を含めまして五十一年度で二十四名、これが事務局として審査会の審査のお手伝いを申し上げる、こういうことになっております。

 さらに、日本原子力研究所におきまして、わが国の原子力施設につきましての独自の解析を行いますための御援助、これをいただくスタッフ、これがデータ解析、コード開発等につきまして現在四十名、五十一年度さらに七名の増員になっております。それから軽水炉の安全研究、これに現在百四十六名が従事いたしておりまして、五十一年度でさらに二十五名の増員をお願いいたすことになっております。

○不破委員 いまの原子炉安全審査委員、それから調査委員の方はたしか非常勤のはずであります。つまり大学に勤めていたり研究所に勤めていたり、仕事があるときにお願いをする、非常勤の委員ですね、たしか。そして専門にこれに当たっているスタッフはいま伺ったように二十名そこそこ。この点で、こういう体制に実は「むつ」問題などを引き起こす大きな原因があるわけです。

安全審査体制の根本的な欠陥を示した原船「むつ」放射能漏れ事故

 あの「むつ」の事件が起きたときに、一体なぜ、あんな科学的には考えられないような、一定の科学技術の条件を整えていたならばあんなばかげたことは絶対起きないようなことが起きるのか、国民全体が疑問に思いました。そしてそのことについて政府も責を果たすために「むつ」放射線漏れ問題調査委員会というものを設けて、俗に大山委員会と言われておりますが、そこで「「むつ」放射線漏れ問題調査報告書」というのを調査の結果まとめております。この中で、この安全審査体制の弱体にこういう「むつ」問題の大きな原因があるということがきわめて明確に指摘されているわけであります。

 読んでみますと、「原子炉安全専門審査会の委員は非常勤と定められており、一般に大学、研究所の研究者がパートタイマーという形態で審査に当っているので、必ずしも常に最も適当な専門家を当て得るとは限らない。」。非常に控え目な言い方ですけれども、要するにパートタイマーではうまくいかぬ。

 「したがって、審査の実態についても、申請された原子炉の安全性について、」つまり電力会社から原子炉の問題が申請されると、「申請者側の計算を再計算によって確認することなどは事実上困難であり、」。つまり申請君側が一定の計算でこうなるということを言う。ところが、安全審査委員の側がそれについて自分の方で計算をして計算が間違いないかどうかということを確かめる能力も余力もない。だからその点では計算まで含めて電力会社から持ってきたものをうのみにするほかない、ということが書かれているわけであります。

 それからまた大事なことは、「原則として書面審査のみであるため、」、要するに出てきた書類を審査するだけだ。「設置許可を決めた原子炉がその後どのように運転されているか、また、技術的に問題はないかなどを絶えず注意し、これを次の審査に反映させるという一貫した技術のシステムに欠けるところがある。」。基本設計の粗筋だけの設計図を見て、これがいいかどうかの審査はできるが、それが果たして具体的な設計段階でそういうようにつくられているか、設計どおりになっているかどうか、果たしてうまく動いていくかどうか、そこまではとても責任を持たされる体制にない。

 そしてこの委員会が言うには、これまでに存在しない新型式の原子炉について審査、検査する場合は、実際問題としては書類だけでは完全審査は不可能だ。だから未知の技術的問題があるわけだから、この場合には設計の段階、施工の段階、監督の段階、規制の段階、そういう点で審査で発見できない新しい問題が絶えず生まれてくるのを評価し、分析し、判断して、絶えず最後まで責任を持って追求する体制がどうしても要る。いまの形式を整えるような規制を強化するだけでは不十分である。「むつ」という国民をあれだけ驚かせたあの事件についてたくさんの教訓がありますが、安全審査の問題で言うと、この大山委員会が下した最大の教訓がここにあります。

アメリカでは200名の常勤スタッフが着工から運転まで審査

○不破委員 このことは、日本と同じように原子力開発をやっているほかの国と比べれば非常にはっきりするのです。

 アメリカは今度原子力規制委員会というものにかわりましたが、そこに常勤のスタッフが何と千九百人いるのです。技術スタッフ以外の者を含めますと二千名を超える部隊がもっぱら原子力の安全管理に当たっているのです。ですからアメリカの安全管理というのは、よく政府側の発言で、日本みたいに原発反対運動が盛んなところはない、外国じゃすいすいというような話をする人がたまにはありますけれども、ところがアメリカの原発の規制はこれは大変なもので、まず第一に、この規制委員会が着工の審査と運転の審査をやります。着工の審査は、設計図を分析するだけじゃない、設計図がどう具体化されてそして実際に本当に設計図で予定したような仕様書ができ上がるかどうかまで全部責任を持って審査するし、その審査の結果を克明に発表して、公聴会も開き、あらゆる疑問にこたえるし、それをまた第三者機関でチェックをするということもやります。それで着工が許可になる。そして実際につくり上げます。それも絶えず監督します。さあ運転という段階では、また原子力委員会の審査があります。そしてでき上がったものがちゃんと運転して大丈夫か、その審査を徹底的にやって、アメリカの報告によりますと、設計の審査の場合よりも四割手間がかかる。一・四倍の労力を投入して二段階の審査をやる。そして実はこの原子力委員会では、運転してから最後に何十年かたって原子炉を使い捨てて破棄するに至るまで、全部安全面の責任を負うわけであります。

必要な権限をもった一元的な原子力の安全規制の体制を

 こういう一元的な原子力の安全規制体制というのは、これは名称は違いますが、イギリスにもあります。西ドイツにもあります。フランスにもあります。日本のように、一つの安全規制委員会があるけれども、設計の段階だけは責任を負うが、後は責任を負う体制にない、そういうことで何千万キロワットにわたるような原発の開発に取りかかっているような無責任な欠陥安全体制のままで原発計画に臨んでいる国は世界にどこにもないと言ってもいいのです。一休政府はこの大山委員会の報告書の結論、これをどのように評価しようとしているのか、これをまず伺いたいと思います。

○佐々木科技長官 お説のように、基本設計と詳細設計あるいは工事の実際の監視、監督等に対するやり方は、基本設計は原子力委員会が担当し、詳細設計並びに実施の部面は通産省がこれを担当しております。しかし、その間に何ら連絡がないというのは私は少し事実と違うのじゃないかと思います。何となれば、通産省の方で詳細設計をやるのに、基本設計を理解せずして詳細設計を吟味できません。したがいまして、原子力委員会の専門部会の皆様が大体同じ陣容で兼務いたしまして、そして基本設計も通産省の顧問会というところで検討いたしまして、そして詳細設計へと進んでいるのが現状でございます。

 なお、行政管理庁等でも指摘しているように、基本設計から詳細設計に移るためのいろいろな注文がございますれば、それを付加して、それを尊重しながら詳細設計への検討に入るというのが大変重要なことでございまして、いまそういう方向に実は進みつつございます。

 なお、この問題に関しましては、御指摘のような点も多々ございますので、有沢座長を中心にいたしまして内閣の中に原子力行政懇談会というものをつくりまして、この審査、検査体制等をいかにすべきか、改善すべきかという点を検討いたしまして、ずいぶん長いことかかりまして、暮れにその答申が出まして、それによりまして今後わが国の審査、検査体制の強化充実を図りたいというふうに実はただいま思っておる次第でございます。

○不破委員 いまのような紋切り型の政府答弁では日本の国民の安全を守れないところに問題があるのですよ。この大山委員会の報告は、そういう連絡があることを十分専門家は承知しながら、連絡程度では片がつきませんよ、連絡程度では「むつ」のようなことが起こりますよ、ということを警告しているわけであります。その冷酷を何にも評価していない。それが科学技術庁の長官の答弁としては、私はまさに欠陥安全体制を代表する欠陥長官と言わざるを得ない。

 それからまた有沢構想の話がされましたが、これも問題があります。いま私が指摘した抜本的な体制の問題が取り上げられていないだけではなしに、原発に関する審査の権限を通産省側に移す、開発側に移す。科学技術庁の審査もだらしがありませんが、通産省という形で開発側に安全審査を移すことがどんなに危険かということは、これは多くの公害の例を見れば明白であります。この点では、「むつ」のようなあれだけの大事件を起こしながら、政府はこの問題について何ら反省しないで、依然として原発企業の立場に立って、その程度の認識で対処していると思わざるを得ないのです。

膨大な量の使用済み核燃料が生まれ、安全管理の新たな問題に

○不破委員 話を進めますが、さらにもう一つ重大な問題が原子力発電では生まれております。それは、先ほど私は、原発の中では死の灰が生まれると言いましたが、この灰はいつまでも原子炉の中に置くわけにいかない。ですから、使用済み核燃料ということで必ず原子炉の外へ出します。毎年約四分の一の燃料が年次交代で外へ出されて、いまは大部分はそれぞれの原発の貯蔵庫のプールの中へしまわれております。ところが、このプールの容量には当然限りがあります。大体事故があったときには全部燃料棒を出すわけですから、その容量を残しておかなければなりませんから、私の調査では、若干の例外を除いて、大体のところでは一年半ないし二年原発を運転したらもう満杯になってしまう、そういう程度のプールしかつくっていないはずであります。まあ政府は原発を二年でやめるつもりはありませんでしょうから、そうすると、どうしてもこの使用済みの燃料の処理というものが生まれてくる。

 それからまた、これを処理して、使えるものはもう一遍サイクルで回収しないと経済採算は絶対成り立たないようになっております。ところが、四千九百万キロワットの原発生産計画だけはあるが、その再処理に関してはさっぱり具体的な計画がないように思うんですが、その点についてどういう展望を持って進んでいるのか伺いたいと思います。

○佐々木科技長官 ただいまの質問でございますけれども、再処理計画は先ほど、四千九百万キロワットを原子力発電した場合に大体四千百トンの使用済み燃料が出ますけれども、これを処理するのに動燃で大体千五百九十トン、それから海外に千七百六十トン、これはフランスあるいは英国でございますが、契約ができまして、ただいま進んでおりますけれども、若干足らずまえがございます。これは不足分は、ただいま英国のBNFLと相談中でございます。

 ただ、私どもといたしましては、動燃の第一工場に次いで第二工場を圏内でつくりたい。そうして、その再処理問題は重要な問題でございますから、国産でやりたいということでただいま計画中でございますけれども、その実現を待つまでには相当の時間もかかりますし、いままでの原子力委員会の長期計画では民間にこれをやらすということになっておりますので、今後の進め方等にもいろいろむずかしい問題もあるやに承知しております。したがいまして、いまのつなぎといたしまして、海外にその不足分を発注しているということでございます。

核燃料再処理はどこの国でも成功していない

○不破委員 いま世界で経済用のあるいは商業用の再処理工場で動いているところがありますか。

○伊原安全局長 お答え申し上げます。

 商業用の再処理工場の運転状況につきましては、天然ウラン系の使用済み燃料の再処理をいたしております工場が英国とフランスにございまして、これはいずれも動いております。ただし、軽水炉からの使用済み燃料を再処理いたします工場、これは幾つかあるわけでございますけれども、改造中あるいはまだ建設の最終段階、そういうふうなことでございまして、たまたま現在のところ動いておらない実情でございます。

○不破委員 ここに問題があるんです。つまり、経済用の再処理工場は、各国がかかってみたけれども、失敗したりいろいろ問題があって、現在世界じゅうどこでも動いていないんです。イギリスのBNFLと言いましたが、これは六九年から動き出して、七三年九月に予期しない大事故を起こしていまだにストップであります。恐らくこれは一遍事故を起こした再処理工場は、やってみたけれども再運転という方向に向かわないでしょう。それからアメリカは、NFSというところで六六年から動かしておりましたが、七二年に中止しております。それからAGNSというところは七一年に着工しましたが、これは工事がストップであります。アメリカのゼネラル・エレクトリック、GEは、六千四百万ドルを投じて七三年にテストまで入りましたが、これは不可能だという結論を出して、テストまでやった施設を放棄をしております。それから、日本が動燃で技術を買ったフランスでは、天然ウランはやっているけれども、商業用のこの再処理工場というのはほぼ日本と同じ時期にテストをやっている段階で、ここもいまだに商業用で動かした経験を持たないわけであります。アメリカのエネルギー研究開発庁、ここの最近の報告によりますと、経済的規模の再処理技術は実証されていない、これがアメリカの結論なんです。つまり、これは原発も同じなんですが、軍事用で成功した、だから経済用もうまくいくだろうと思って安易にかかったところにいまの原子力の発電所問題があることはもう常識ですが、再処理も、軍事用の再処理はプルトニウム生産のためにやってみて成功しているが、さあこれを経済的に成り立つようにやってみようと思うと、どこでも成功しないで難航している。そのことを認識しないまま、まだ自分で動かしたこともないフランスから技術を買って、そしてもうそれがいまにも動くように考えたり、世界でどこでも成功していない大容量の第二工場をすぐにもできるように考えたり、そこに私は日本の原子力行政の、いわば未知への挑戦じゃなしに無知の危険が存在していると思う。

原発で生み出された「死の灰」は日本中を輸送される

○不破委員 それから、その次に聞きたいのですが、再処理工場が動き出すと、そこへ使用済み核燃料を運ばなければいけません。これは原発安全問題で新しい段階なんです。つまり、原発の放射能というのは、幾ら出ても、いまは発電所の中に閉じ込められている。日本の局地的な問題であります。ところが、再処理工場が動き出しますと、その死の灰のかたまりのような使用済み核燃料を原発から、たとえば東海まで運ばなければいけない。つまり、原発に閉じ込められていた死の灰がいわば日本じゆうに動き出すという段階に入ります。いま政府の計画ですと、この輸送は船でやるそうでありますが、これは大体ミトンぐらいの核燃料を運ぶのに百トンの入れ物が要るのです。なぜかというと、この核燃料は、原料のウランとば違ってしょっちゅう激しい勢いで放射能を出していますから、輸送中にも高熱を出します。だから、これを絶えず水で冷やしていかなければいけないから、冷却機つきの入れ物で、このキャスクが大体百トンになる。それで、この一本の核燃料に含まれている放射能は大体千数百万キュリーといわれます。死の灰にすれば二十八キログラムから三十キログラムの分に当たる。これを、いまの政府の計画ですと、あるいは四国の伊方の原発にしても敦賀の原発にしても、船で運んで東海村の再処理工場に運ぶという計画だそうでありますが、それは間違いありませんか。

○佐々木科技長官 そのとおりでございます。

深海の圧力に耐えられない危険なキャスク(核燃料輸送容器)

○不破委員 そこに私は非常にやはり問題があると思うのです。実はこの輸送はこれから始まるわけじゃなしに、敦賀とか福島とかからばすでにイギリスに向かって、敦賀、福島だけでも過去に六回輸送されています。すでにこの物を船で運ぶ計画が進んでいるのです。ところが、これは運輸省の研究でも明らかになっているはずですが、いま使われているこの使用済み核燃料の入れ物は海には余り強くありません。いままでの実験ですと、十五メートル以内の水の中では大丈夫だが、それ以上の深海に入った場合には保証されていないというのが、いま使われている世界のこの入れ物の実態なんです。これは学者の論文もあるし、運輸省の研究を含めたものも私持っております。

 時間の関係で結論だけ言いますが、ところが日本のように沿岸で海難が多い。大型船でも一年間に二百隻近い海難が起こります。そういう所でこの危険な放射能のかたまりを積んだ船がもうすでに敦賀や福島から合計六回も出航している。再処理工場が動き出したら、日本じゅうの原発から東海村へ運ぶようになる。大変な問題なんです。その危険性をちょっと「むつ」と比較しますと、「むつ」で放射能が漏れて危険だということになりましたが、あのときに「むつ」の原子炉の中に存在していた死の灰は八十ミリグラム相当であります。この使用済み核燃料は一本のキャスクだけで死の灰二十八キロから三十キロですから、三十五万倍であります。それを何本も積んで船で運ぶと衝突の危険もある。これは完全密封不可能なものですから絶えず熱を放流しなければいけませんから、その意味で、沈没したときに安全性が保証されていない。「むつ」以上に危険なものが、現在すでに国民が知らないうちに何遍も運航されている。そして再処理工場が動き出したら、これが日本じゅうを歩き回る、こういう事態ですね。これについて、私は科学技術庁の一昨年の原子力開発利用計画というのを見せてもらいましたが、深海つまり海にもぐっても大丈夫なキャスクを開発しなければいかぬという計画がちょっとあるだけで、いつまでにこれができるというプログラムなしに事態が進んでいる。

プルトニウムの輸送と処理の特別の危険性

○不破委員 時間もありませんので、もう少し問題点を言わしてもらいますと、もう一つ大事な問題はプルトニウムの問題であります。

 再処理工場を動かしますとプルトニウムが生まれます。これは地球上に自然には存在しない元素で、原発の開発の中で生まれた「地獄のプルートー」という名をつけた元素であります。まさにこの名にふさわしいので、これは非常な危険があります。学者の研究によりますと、角砂糖一個分のプルトニウムがあると、〇・〇四マイクロキュリーが骨に対する許容量ですから、大体五千二百五十万人を冒すだけの量になる。角砂糖二個分で大体日本人全体を――なかなか平等に配分するのはむずかしいことで、理屈で言えば、日本人全体を汚染できるだけの許容量以上になる。それぐらいの放射能の有害の毒性を持っている。おまけにもう一つ、これは非常に簡単に原爆ができるという特性があります。

 ですから、この二つの問題で、プルトニウムを実際につくり出したら、これの管理は大変な問題なのです。漏れる管理だけじゃなしに、アメリカでは核ジャックといって、これが襲撃されてだれかの手に移ったら大変だと、国家的問題になっています。ですから、アメリカでは再処理工場が動かないと先ほど言いましたが、それはこれに関係がある。再処理工場を動かすと、プルトニウムがどうしても民間の手に出てくる。軍の手ではなしに、民間の手に出てくる。そのプルトニウムをどうやって管理するか。その管理のルールがまだ確立されていない。原子力委員会が一つのGESMOという案を出しています。この案がまだ国家的に決まっていない。そのためにこれが決まるまでは再処理工場の着工が認可にならぬ。それでアメリカでは再処理工場を動かせないでいるわけです。しかも、この問題はどうしても、プルトニウムの輸送をかぎつけられないために輸送先は秘密にするとか、絶えず武装部隊で守るとか、原子力の公開の原則に反することも生まれてくる。それが一体民主主義や公開とどう両立するかという問題まで生まれています。そういう重大な問題が再処理工場の問題に関連していま世界的に生まれていて、アメリカではその答えが出ないから再処理工場の着工も認可にならない、全部ストップしているという段階なのに、日本ではそういう問題があることすら国民に知らされないで、ただひたすら四千九百万キロワット体制に向かって進んでいる。

高レベル放射性廃棄物の処理も未解決

 さらにもう一つ再処理工場について言えば、その死の灰を処理すれば最後に非常に圧縮された高放射能の廃棄物が出てきます。産業廃棄物は悩みの種ですが、この高放射能の廃棄物を最後にどこに捨てるかという問題は、これは世界的にも大問題です。たとえばその中にはプルトニウムのように半減期二万四千年なんというものもあります。二万四千年たたないと危険性が半分にならぬ。つまり、とても三木内閣一代どころか、自民党政府がどのくらい続くか知りませんが、自民党政府どころか、さらに人類の将来まで責任持って管理できるような計画を立てないと、この廃棄物の処理ができぬ。だから、アメリカでは原発に手をかけてみたが、やってみると新しい問題が大変だ、経済的に成り立つかどうかもわからぬ、そこまで議論が出ている段階なんです。

日本国民の民族的な安全のかかる問題――安全体性確立まで開発を延期せよ

○不破委員 私はもう時間がありませんから、最後に要望と質問を言いますが、こういう段階に原子力発電の問題があるということを政府はやはりはっきり認識すべきだ。それを認識した上でそういう問題を解決して、国民に納得のできる条件を整えた上で原子力開発のレールを進むべきだ。それをしないままに、経済成長がこれから六%に勘定すればこれだけになる、それで石炭の分が幾ら、石油の分が幾ら、残りは全部原子力にかましてしまえ、そのためには再処理工場はここでこれだけ要る、そのための体制はこうこうだというようなことば絶対に許されない問題であります。

 三木さんは、先ほどの紹介した演説の中で、「私は政治家として日本の政治というものにいかに先を見通す力が欠けていたか、いかに科学的知識というものが欠如していたかということに対して恥ずかしい思いがするものであります。」ということを昭和四十八年六月七日大阪で言っております。私はこれを恥じるのはりっぱなことだと思う。しかし、あの高度成長政策が公害を引き起こしたことに関してこれだけの認識をされるんなら、これから原子力の高度成長政策を進めようとする場合に同じ反省を十年後にしたのでは、それこそ日本の国民の民族的な安全がそのときには危機に瀕しているかもしれない。そう言っても過言でない。そうでないとだれも言えないような問題が、未知への挑戦の問題がここにあるわけであります。

 私は、三木さんが「二十一世紀への挑戦」などと言わないで、いま現在やっていることに対して未知の部分、どうしても十分納得的な解決をしなければ進めない部分、これには大胆に未知への挑戦ということをしっかり腹に据えられて、この原子力問題ではここでこれまでの原子力行政の根本転換を図る必要があると思います。

開発体制とは切り離した一元的な安全管理体制を

 そのためには、アメリカやイギリスや西ドイツやフランスでやられているように、単なる原子炉の設計審査でなく、原子炉の設計、着工、運転から、核燃料の運搬から、将来の廃棄物の処理から、すべてにわたって責任を一元的に負えるような、開発側とは結びつかない原子力の安全体制を緊急に確立する必要があるし、このことを軸に国民に納得のできる条件をつくり出すまでは、少なくとも新しい原発の着工や新しい原子力船の着工は延期をする、こういう大胆な措置をいまこそとらないと、将来取り返しのつかない段階が生まれ得るということを申し上げて、三木総理の決意ある答弁を伺いたいと思うものであります。

○三木内閣総理大臣 これは、現在石油というものがエネルギーの中心になっておる。相当この事態は続く。しかし、その間、世界各国とも原子力発電というものが、アメリカでもヨーロッパでも石油にかわるエネルギーとして相当なウエートを占めてきておる。ことにフランスなどは非常な積極的な態度で原子力発電の開発をやっているわけで、いま不破君の御指摘のような問題は、世界共通の課題でありますから、この問題はわれわれとしても重大な関心を持たなければならぬことは当然でありますが、世界もまたこの問題については、どの国の政府だって国民の安全を考えないものはないわけですから、いろんな提起された諸問題についての研究開発というものは進めておるわけであります。

 こういう国際的な協力という面もわれわれは大いに進めていかなければなりませんが、とにかく日本の場合でも、石炭の問題をいろいろ提起されましたけれども、どうしても日本の場合は、アメリカとかヨーロッパ諸国と違って石炭のエネルギーというものに大きなウエートを置けない、二千万トンのベースも横ばいということで石炭はいかざるを得ないわけでありますから、原子力発電というものに対しての日本のこのエネルギー源というものは相当ウエートがこれからかかっていく。その場合に開発と安全の問題というものを一元的でなしに、やはり開発と安全の確保というものは別個の問題として、この問題を処理することが必要であるという考え方は、私もさように考えておるわけであります。原子力委員会などに対しても、そういうふうな意見というものが大勢を占めておるわけでございますから、今後開発するについて、やはり安全の確保というものに対しては一段と今日よりも体制を強化してまいりたい。

 科学技術庁においても安全局などを新設したこともその政府の決意のあらわれでありますが、原子力委員会等のそういう意見も徴して、やはり開発と安全の確保というものに対しては、一緒にするのでなくして、別個の考え方で安全の確保を図ってまいりたい。そういう問題の体制を整備しながら開発は進めていこうということで、全部体制が、使用済み燃料の再処理のそういう結論が出るまで原子力発電の工事を中止するという考え方は持っておりませんが、いま御指摘のようなことに対しては、政府自身としても重大な関心を持っておりますから、安全の確保というものに対しては、一段とこの問題には政府は今後の原子力行政の中で重点を置いてまいります。そして、科学者の意見も尊重しなければならない問題でありますから、そういう意見も徴して、国民の不安を解消するということは今後の原子力開発を進めていく上において重大な問題点だと考えておるわけでございます。

○不破委員 確かに多くの問題、国際共通の問題がありますが、政府が出した資料でも、一元的な安全管理体制を持たないで事に当たっているのは日本だけであります。そこが問題です。その体制を整備するまでは、私は、このままの計画に沿って事態を進めることは非常な危険が伴う、これが私の提案であります。ただ、総理が言う安全の体制と開発の体制を切り離す、通産省が一本でやるようなことをしないということは、これは大事な点でありますので、それを確認して、午前の質問をこれで終わらしてもらいまして、残りの問題は午後伺いたいと思います。(拍手)

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