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仕事・くらしのSOS 一人で悩まないで

Q収入が少なくなり、生活ができません。
生活保護を受けるには、どうしたらいいのでしょうか?


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A生活保護制度で受けられる扶助

 「貧困」問題が政治と社会の大問題になっています。生活保護はだれでも申請でき、要件にあっている場合は、「無差別平等に」受けることができます。世帯の収入が生活保護の「基準額」を下回った場合、その差額が支給されます。
 生活保護制度は、憲法二十五条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」との理念を具体化したものです。生活保護法では、「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的する」(第一条)として、国の責任を明記しています。権利としての生活保護制度を、積極的に活用しましょう。
 生活保護では、各家庭の世帯人数や年齢構成などに応じて、基本となる八つの扶助が支給されます(「生活扶助」、「住宅扶助」、「教育扶助」、「介護扶助」、「医療扶助」、「出産扶助」、「生業扶助」、「葬祭扶助」)。東京都二十三区で生活する両親(三十歳代)と小学生の子どもの三人世帯の場合、「基準額」は、生活扶助で十七万円程度、住宅扶助で七万円弱(医療扶助ふくまず。病気になった場合は、そのつど医療券を請求して現物支給に)となります。

 基本となる扶助以外にも、各種加算があります(「妊産婦加算」、「障害者加算」、「介護施設入所者加算」、「在宅患者加算」、「放射線障害者加算」、「児童養育加算」)。これらは、保護費支給のさいに見落とされる場合があるので、注意が必要です。

 なお、七十歳以上に支給されていた「老齢加算」は二〇〇六年度に、ひとり親世帯に支給されていた「母子加算」は二〇〇九年度に全廃されてしまいました。これにたいして、「暮らしていけない」との声がおこり、裁判や不服審査がおこなわれています。

 世論と運動におされ、今年の総選挙によって新しくできた政権の三党合意には、「二〇〇九年度に廃止された生活保護の母子加算を復活する」と明記され、厚生労働大臣も新政権発足後の記者会見で、「なるべく早めに復活したい」と強調しています。母子加算・老齢加算の復活を求める世論と運動が、きわめて重要になっています(編集部注 「母子加算」は〇九年十二月に復活)。

 以上のような月々支給される給付のほかに、生活するうえで臨時に必要な費用は「一時扶助」で支給されます。これは、生活保護法の「保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態その他個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切におこなうものとする」(第九条)にもとづくものです。具体的には、被服費、家具什器費、移送費、入学準備金などです。

「申請」を受け付けないのは違法

 生活保護を受けるためには、まず福祉事務所や役所の窓口に申請することからはじまります。 ところが、申請にいくと、「今日は相談だけ」、「まだ働ける」、「親類に世話になってから」、「あなたは該当しない」などと、口実をつけて追い返される場合があります。「水際作戦」といわれています。
 これは、生活保護法の第七条で明記された「申請保護」にもとづく申請権を侵害する法律違反です。厚生労働省の「生活保護実施要領」でも、「生活保護は申請にもとづき開始することを原則としており、保護の相談に当たっては、相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も厳に慎むこと」としています。

 また、同実施要領では、「保護に該当しない場合であっても、申請権を有するものからの申請の意思が表明された場合には申請書を交付する」となっています。とにかく、申請することが出発点です。一人で申請にいけない場合は、支援者が同席することも大切です。福祉事務所はこれを嫌い、「本人のプライバシーがあるから」などといいますが、申請者に「同席してもらいたい」との意思を明確にしてもらえば、同席することに支障はでません。

 申請は、本人以外でも、本人の扶養義務者、本人と同居している親族でもかまいません。また、本人がみずからの意思で記載した申請書を代理人が持参することも可能です。福祉の窓口には、「申請用紙」がありますが、それ以外でも、手書きの書面や手紙でも申請したものと認められます。申請に必要な事項は、(1)申請者の氏名、住所または居所、(2)要保護者の氏名、性別、生年月日、住所または居所、職業、申請者との間柄、(3)保護の開始または変更を必要とする理由、の三つのみです(生活保護法施行規則第二条)。なお、保護が決定された場合は、申請した日にさかのぼって支給されますので、日付を明記、確認しておくことが大切です。

 さらに生活保護法では、「要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護をおこなうことができる」(第七条)としています。生活に困窮している人がいる場合、本人からの申請がなくても、福祉事務所が職権で生活保護を適用する制度です。積極的に活用したいものです。

保護決定は十四日以内

 福祉事務所は、申請を受けてから十四日以内に、申請者にたいして書面で要否を通知しなければなりません(生活保護法二十四条)。ただし、調査に日時を要するなど、特別な場合は三十日まで延長できることになっています。

 通知がない場合は、申請が却下されたものとみなされます。申請の却下に納得がいかない、保護の種類に不満がある、いままで受けていた保護を廃止されたなど、行政の対応に不満がある場合、不服審査請求をすることが可能です。

 さて、「非正規切り」にあって、手持ちのお金が底をついたような場合、十四日も待てません。ましてや一カ月後に決められるというのでは、当面の生活ができなくなります。昨年末から今年にかけておこなわれた「年越し派遣村」では、保護の受給決定を、即日もしくは数日で実現しました。これは、生活保護法を本来の想定どおり適用したものとして注目されました。

 生活保護法では、「保護の実施機関は、要保護者が急迫した状況にあるときは、すみやかに、職権をもって保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を開始しなければならない」(第二十五条)となっています。厚生労働省も、「申請者の手持ち金が限られているなど急迫した状況にあるときは、迅速な保護の決定が求められる」(二〇〇八年三月四日の「生活保護関係全国係長会議」)としています。

 また、「年越し派遣村」のときに厚生労働省は、東京都社会福祉協議会をつうじて、低所得者向けの「生活福祉資金貸付制度」のなかの「緊急小口資金」を活用して、最大五万円の緊急融資をおこないました。この制度が、十月一日から「効果的な支援」ができるように、大きく改定されています。(堤 文俊)



どういう人が生活保護を受けられますか?



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A住所や住居がなければダメか

 そんなことはありません。住居や住民票は、生活保護の要件ではありません。生活保護法は、「居住地がないか、又はあきらかでない要保護者であって、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの」について、行政は「保護を決定し、かつ、実施しなければならない」(第十九条)としています。住民票がない場合や路上生活の場合、申請するさいの「住所または居所」の欄には、その管轄地で寝起きしているところ、たとえば「○○橋の下」、「○○公園」でもかまいません。

 生活保護法は、「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする」(第三十条)と、アパートなどでの居宅保護を原則としています。そして、例外的に、居宅では保護の目的が達成できない場合や、本人が希望した場合に、施設や病院などで保護することになっています。

 なお、被保護者の意に反して、施設への入所を強制することはできません。行政側は、野宿生活者にたいして「自立支援センター」などへの入所をすすめますが、本人がアパートで生活保護を望み、居宅生活能力があるにもかかわらず施設に入所させるのは、誤った対応です。

 「実施要領」では、「保護開始時において、安定した住居のない要保護者(保護の実施機関において居宅生活ができると認められる者に限る)が住宅の確保に際し、敷金等を必要とする場合」には、「限度額」内での家賃、敷金を出すことができる、としています。また、当面の布団や生活用品、交通費についても、「一時扶助」を申請して確保することができます。

 この点にかんして、路上生活者を集めて生活保護を受給させ、劣悪な環境のアパートを提供するかわりに、保護費をピンはねする「貧困ビジネス」が大問題になっています。路上生活者が住宅を取得するさいに、保証人が確保できないことが背景にあります。こうした悪徳業者の情報を公開すること、すくなくとも無料低額宿泊施設については、現在の届出制から許可制にすること、そして、路上生活者にたいしては、保護を実施したうえでアパートなどの確保についても行政がきちんと保障すること、が必要となっています。

「働ける年齢だから」と拒むことは不当

 生活保護法では、「生活に困窮するものが、その利用しえる資産、能力その他あらゆるもの」を活用したうえで、それでも生活できない世帯が受けることになっています(第四条)。「働く能力の活用」もその要件です。
 しかし、働く能力や働く意思があっても、働く場がなければ、収入を得ることはできません。そこで、「実施要領」では、〇八年度から、この部分が大幅に加筆・改善され、「稼働能力を活用しているか否かについて」、次の要件により判断するとしています。(1)稼働能力があるか否か、(2)その具体的な稼働能力を前提として、その能力を活用する意思があるか否か、?(3)実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否か、です。
 しかも、(3)の「就労の場を得ることができるか否か」については、「地域における有効求人倍率や求職内容等の客観的な情報」や「育児や介護の必要性などその者の就労を阻害する要因」をふまえなければならなくなりました。
 「派遣切り」にあって、働く場がない場合や、求人内容が不十分な場合、また、家族の関係で働けない場合など、「稼働能力がある」ことだけで、生活保護を受けさせないことは、あってはならないことです。
 なお、「働く意思」があることをしめすうえで、職業安定所の職業相談を受けた日付がわかる「求職受付票」を保存しておく、「求職活動日誌」をつくり、電話や面接の内容や日付を記録しておく、などが有効です。

車や家などの資産は一定の保有が可能

 生活保護は、“すべての資産や預貯金を処分しないと受けられない”という制度ではありません。一定の資産の保有を認めています。その「基準」として、「実施要領」では次の五点をかかげています。

  1. その資産が現実に最低限度の生活維持のために活用されており、かつ、処分するよりも保有しているほうが生活維持及び自助の自立に実効があがっているもの
  2. 現在活用されてはいないが、近い将来において活用されることがほぼ確実であって、かつ、処分するよりも保有しているほうが生活維持に実効があがると認められるもの
  3. 処分することができないか、又は著しく困難なもの
  4. 売却代金よりも売却に要する経費が高いもの
  5. 社会通念上処分させることを適当としないもの

 そのうえで、「実施要領」では、「土地」、「家屋」、「事業用品」、「生活用品」、「保険」などについて、「保有」の判断基準を具体的に定めています。大切なことは、当事者の生活実態を十分にふまえた対応をさせることです。

 いくつかの例をみてみます。

 ■自動車

 「自動車をもっているから」と保護を認めないケースがありますが、「車の所有」=「保護を認めない」ことではありません。「実施要領」でも、車の保有が認められる例をしめしています。

 それは、(1)障害者が自動車により通勤する場合、(2)公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合、(3)公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車により通勤する場合、(4)深夜勤務等の業務に従事している者が自動車により通勤する場合、です。これらは、就労中の人が対象です。

 さらに、保護の申請時に失業や傷病によって就労を中断している場合でも、車の保有を認めています。「実施要領」では、「概ね六カ月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者であって、保有する自動車の処分価値が小さいと判断されるものについて……処分指導を行わないもの」としています。あわせて、〇九年度の「実施要領」では、「公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住している者については、求職活動に必要な場合に限り、当該自動車の使用を認めて差し支えない」としています。

 また、障害者(児)の通院・通所・通学のための自動車の利用、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者の通院等のための自動車利用については、〇九年度の「実施要領」で保有できるようになりました。

 上記の場合以外でも、「生活保護問答集」では、「なかには保有を認められなければならない事情がある場合もあると思われる。かかる場合は、実施機関は、県本庁及び厚生労働省に状況提供の上判断していく」としています。ですから、かりに「処分せよ」といわれたときでも、自動車が必要であることをねばりづよく説明していくことが大切です。

 以上は、「生活用品」としての「自動車の保有」についてですが、「事業用品」としての自動車(業務用)については、より広く所有が認められています。

 ■宅地・持ち家

 宅地や持ち家は、原則として保有が認められています。

 厚生労働省の社会・援護局長通知第3―1は、「次に掲げるものは、保有を認めること」として、「ア 当該世帯の居住の用に供される家屋に付属した土地で、建築基準法第五十二条及び第五十三条に規定する必要な面積のもの」としています。

 また、同3―2では、「当該世帯の居住の用に供される家屋」について「保有を認めること」としています。例外的に、「処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合は、この限りではない」とされていますが、これについても、「ケース診断会議等において、総合的に検討を行う」必要があります。そして、ケース診断会議が目安にする額としては、「当該実施機関における最上級地の標準三人世帯の生活扶助基準額に同住宅扶助特別基準額を加えた値に十年を乗じ」た額となっています。たとえば東京二十三区の場合、二千八百万円程度になります。しかも、これはあくまで目安であり、保護の要否の決定基準ではありません。

 ただし、〇七年四月から、生活保護法・制度とまったく相いれない制度が創設されています。評価額が五百万円以上の持ち家に居住している世帯で、六十五歳以上の人がいる場合、生活が困窮しても生活保護が利用できず、まず、各都道府県社会福祉協議会の「要保護世帯向け長期生活支援資金」を利用しなければならなくなりました(リバース・モーゲージ制度)。これは、住宅用の不動産を担保に借金をさせるもので、高齢者世帯を生活保護制度から締め出すものです。

借金、住宅ローンについて

 生活保護制度の要件のなかに借金の有無はありません。借金があるからという理由で申請させなかったり、保護を開始しないというのは誤った対応です。

 しかし、生活保護を受けたからといっても、借金が免除されるわけではありません。また、支給される保護費は最低限度の生活を維持するためのものであり、借金の返済にあてるというのは、生活保護制度の趣旨と違ってきます。

 そこで、借金のある場合は、生活保護の申請とともに、専門家に相談して、自己破産などの借金の整理をすすめておくといいでしょう。こうしておけば、「借金を法的に整理する予定」であることを福祉事務所に示すことができ、適用されやすくなります。

 ただし、保護を受けている最中に、無届の収入を借金の返済にあてると、後に収入の届出義務を怠ったとして、保護費の返還を求められる可能性があるので、注意が必要です。

 住宅ローンを払っている人の場合、「実施要領」では、「原則として保護の適用はおこなうべきではない」としています。これをもって、「住宅ローンを払っている人は保護できない」などの窓口対応があります。しかし、これは、あくまでも「原則」にすぎません。厚生労働省の見解は、「ローンの支払を繰り延べしている場合」または「ローンの返済期間も短期間であり、かつローン支払額も小額である場合」には、生活保護が受けられるとしています。

 この点について、東京都は、目安として、「期間は五年程度、金額は月毎の支払額が世帯の生活扶助基準の一五%程度、ローン残額が総額で三百万円以下」が考えられるが、「個別事例ごとに慎重に判断すべき」としています。(堤 文俊)

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