追跡 闇の監視部隊
戦意高揚/「戦時」の情報戦を重視
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二〇〇五年十月三日、防衛庁(当時)。陸海空三自衛隊の各幕僚長と全国の主要部隊の指揮官ら約九十人を集めた「統合高級幹部会同」で、制服組のトップ、先崎一統合幕僚会議議長が発言しました。
「今や、ある意味で組織にとって『War Time』(戦時)であるという認識の下、たたかいつつ改革を進める」
「戦時」とは、イラク派兵など自衛隊が置かれている状況のこと。この表現から、派兵が自衛隊の“戦意高揚”につながったことがうかがえます。
派兵の課題
〇四年六月二十五日、埼玉県朝霞市の陸上自衛隊朝霞駐屯地の講堂。あるセミナーが開かれていました。陸上自衛隊研究本部が開いたもので、テーマは「イラク支援の教訓・現状・課題」。
参加者は陸自隊員や防衛産業関係者ら六百人。
イラクから帰国したばかりの陸自研究本部員などが報告に立ちました。
イラク派兵での状況について共通認識をこう示しました。
(1)テロの脅威下にあり、実戦と同様の部隊運用となる(2)自衛隊派遣をめぐり日本の国内世論が二分されており、国民注視の中で活動しなければならない──。
結論として強調されたのが、「部隊防護と情報戦に最大限の努力を傾注する」ということです。
情報戦(インフォメーションオペレーション)。自衛隊がイラク派兵で最も重要視したキーワードです。
陸自研究本部が作成した「イラク人道復興支援活動の教訓―情報戦と部隊防護」という報告書があります。同本部は自衛隊のイラク派兵の準備、現地での自衛隊の活動上の問題点や課題を日本に送る「教訓リポート」作成などに深くかかわりました。
報告書はその一つで、イラク派兵をめぐって自衛隊が重視した情報作戦などの事例研究集です。
自衛隊はイラク現地と日本国内で「情報戦」を実行しました。
イラクでは、自衛隊の作戦についてイラク国民にどうPRするか、影響力をもつ部族長や宗教指導者などにどう接近し、「信頼を得るのか」などを実施。一方、日本の報道機関の取材は「隊員の安全」を理由に制限し、監視も行いました。
情報保全隊に詳しいX氏は言います。「東ティモールのPKOには元情報保全隊員が派遣されたが、イラクには現職の情報保全隊員が何人も参加し、情報戦の中心としての役割を担った」
世論を恐れ
日本国内では──。
同報告書にこんな項目があります。「日本における支持気運醸成」。紹介しているのは北海道旭川市内の街角や旭川駐屯地にかかる「黄色いハンカチ」の写真特集です。
「イラク人道復興支援活動の特性」という項目では「派遣に関し国民世論が2分」したと分析。「情報戦成功の鍵」としてかかげたのが「日本国民の支持を獲得すること」。
当時、福島県船引町では自衛隊員の父母らでつくる自衛隊父兄会が「戦争の巻き添えによる、犠牲者が発生する事態は憂慮に耐えない」として「イラク派遣の中止」を陳情。同議会が同意見書を全会一致で可決したのをはじめ、各地方議会で同様の意見書決議が相次ぎました。
イラク派兵をめぐる環境はそれほど不安定だったのです。自衛隊はなによりも思想・信条をこえたイラク派兵反対の運動と世論の広がりを恐れていました。情報保全隊は、こうした背景のもと国民監視に総力をあげたのです。
「しんぶん赤旗」2007年7月3日付
目次
- 対象勢力/卑劣な目、抗議集会にも [6.21]
- 「面割り」/未公表の名前まで記録 [6.22]
- 潜入・尾行/私服・一般車の自衛官 [6.23]
- 略号「P」/市民色分けし継続把握 [6.24]
- 横の連携/諜報機関ネットワーク [6.25]
- 反響/驚き怒りたたかう決意 [6.27]
- 再編強化/情報収集の任務を統合 [6.28]
- 「軍の論理」/平和憲法「束縛」と認識 [6.30]
- 米軍と連携/「情報共有・協力は重要」 [7.1]
- 恣意的判断/「おそれ」で無制限調査 [7.2]
- 戦意高揚/「戦時」の情報戦を重視 [7.3]
- 抗議の力/撮影DVD提出させる [7.4]





