労働基準法の改悪をやめさせ、労働者の要求を前進させるための日本共産党の提案

1998年9月16日 日本共産党国会議員団


 日本共産党国会議員団が九月十六日に発表した、「労働基準法の改悪をやめさせ、労働者の要求を前進させるための日本共産党の提案」は次のとおりです。


 衆議院で修正され、現在、参議院で審議されている労働基準法「改正」案は、一日八時間労働制の原則を根本から掘り崩すものとなっています。なかでも、日弁連をはじめとする法曹界、連合・全労連など広範な労働組合・国民が共通して要求し、大阪府議会はじめ多くの地方議会でも全会一致で決議されていた時間外労働の罰則付きの上限規制や休日・深夜労働規制など、いわゆる労働時間の男女共通規制の確立が見送られ、新裁量労働制の導入がそのまま残されていることです。

 これらについては、始まったばかりの参議院での審議でも、法案についての態度の違いをこえて、さまざまな角度から問題点が指摘されています。

 先の参議院選挙の結果は、野党が結束すれば悪法を阻止できる新たな条件をつくりだしました。こうした条件の下、いま出されている批判や疑問をそのままにして法案を通すようなことになれば、この選挙で示された民意に背くことになります。参議院は、NPO法を全会派の共同で作り上げた経験を持っています。

 日本共産党は、労基法「改正」案についての参議院本会議質問で「民意を生かす道を衆知を集めて模索することが本院の責務である」ことを訴えました。

 日本共産党はすでに一九九二年に「労働基準法の抜本的改正についての提案」を、九六年には「解雇規制法の立法提案」をおこない、人間らしい労働と生活のためのルールの確立を訴えて院内外で努力してきました。この立場は、今日いっそうの重要性を持っていますが、先にのべた見地から、いま改悪を阻止し、労働者の要求実現を一歩でも前進させるために、少なくとも以下の点での修正が必要と考えます。同時に、日本共産党はこれらの中の一つでも一致できるものがあれば、その点での各党・各会派との共同をすすめることが国民の願いにこたえる道であり、一致点での共同のために全力を尽くすものです。

1、時間外、休日・深夜労働の上限を法律で定める

 現行労働基準法は時間外、休日・深夜労働の上限をなんら定めていません。これが過労死に象徴される、長時間・過密労働を生み出している原因です。昨年の女性保護規定撤廃によって、来年四月からは女性労働者がこの長時間・過密労働においやられ、働き続けることが困難になります。そのため、昨年、女性保護撤廃にともない男女共通規制をすべきだという付帯決議が衆参両院でおこなわれました。実効性ある男女共通規制はいわば国会の国民への公約です。ところが衆院では、大臣が定めることのできる上限基準を三百六十時間以内とすることが確認されたにすぎません。

 全労連、連合は年間上限百五十時間を求めています。また、現行女性保護規定の上限が百五十時間であること、政府が年間千八百時間の目標を達成するには、週四十時間制で有給休暇を完全に取得しても時間外労働を年間百四十七時間以内としなければ達成できないとしていることからも、年間百五十時間以内とすべきだと考えます。

 休日・深夜労働についても法律で上限を定めることが必要です。

2、新しい裁量労働制は削除し、検討を継続する

 法案はこれまで、プロデューサー、弁護士など十一業務に限られていたものを、新たにホワイトカラーにも裁量労働制を適用することとしています。裁量労働制とは、一日何時間働こうが労使が決めた時間しか「働いていないとみなす」もので、賃金は労働時間でなく企業が認めた「成果」で決められます。八時間をこえて働かせても、賃金を支払わないで済むのですから企業にとってこれほど好都合なことはありません。労働者は、会社から仕事の成果だけをもとめられるために、長時間・過密労働を強いられることになります。こうした弊害があるからこそ、これまでは限られた職種にだけしか認められてこなかったのです。

 ところが政府案は、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」という抽象的で包括的な業務にまで裁量労働制の対象を広げ、ホワイトカラー全体に拡大するものとなっています。労使委員会での決定や労働基準監督署への届け出が、対象業務拡大のなんの歯止めにもならないことは、この間の審議を通じても明らかにされてきたところです。

 したがって日本共産党は、裁量労働制を新たに一般のホワイトカラーに適用することには反対です。しかし、対象業務や労働者の範囲、乱用の歯止め措置などがはっきりすればよいとの意見もあります。衆院での「修正」では、これらについて中央労働基準審議会の審議を経て「指針」を策定する、施行を一年延期することになっています。だとすれば、本法案からは削除し、中央労働基準審議会などで検討のうえあらためて改正案を提出しても、なんら不都合はないはずです。むしろ、具体的事項がはっきりしないまま一年後に施行することだけを決める法律こそ問題です。

3、一年単位の変形労働時間制の要件緩和部分を削除する  

 変形労働時間制は、使用者の都合によって期間中平均して週四十時間以内であれば、一日八時間、一週四十時間をこえて労働させることができるという制度です。一日八時間労働制の原則が解体され、長時間・不規則労働が強制されるとともに残業代が削られます。また、労働者とその家族の生活のリズムを狂わせるものです。前回の法改悪で、はじめて一年単位の変形労働制が導入されたとき、乱用防止の措置として、一日の上限九時間、一週の上限四十八時間と季節労働者には適用しないこととされました。ところが政府は、これらの措置を取り払い、一日十時間、一週五十二時間とすることとしています。これでは、乱用のすすめと言わなければなりません。したがって、要件緩和については削除すべきです。

 また、週あたりの所定労働時間は三十八時間に短縮することが必要です。

4、首切り自由の三年有期 雇用制を削除する

 現行の制度では、雇用期間を決められるのは一年以内だけです。一年以上になる場合は「期間の定めのない契約」つまり、いったん契約すると合理的理由と社会的相当性がない限り会社が勝手に解雇できないことになっています。

 これを三年たてば、使用者の側から解雇できるようにするというのが政府案です。ただでさえ、不安定雇用が増えている今日、この措置の導入はいっそう、雇用を不安定にさせるものですから、削除は当然です。

5、女性保護規定撤廃の 施行期日を延期する

 時間外、休日・深夜労働の男女共通規制が実現するまでの間、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保などのための労働省関係法律の整備に関する法律」の付則一条を改正し、女性保護規定撤廃の施行期日を延期します。


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