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1.労働・雇用

人間らしく働けるルールを確立します――内部留保の社会的還元を

 労働者の3人に1人、若者や女性では2人に1人が非正規労働者で、そのほとんどが年収200万円以下の「ワーキング・プア」(働く貧困層)です。正社員でも、長時間過密労働による過労死やうつ病などのメンタルヘルスが後を絶ちません。10年間下がり続けてきた賃金は、経済危機を口実にさらに切り下げられています。「名ばかり店長」「名ばかり正社員」と言われる使い捨て労働、無権利で過酷な労働条件もまかり通っています。

 失業者が増え、雇用不安が高まり、賃金が下がった結果、個人消費は落ち込む一方で、経済危機から抜け出す道は見えません。結婚ができない、子どもを産めないなど、少子化への影響も深刻です。自殺や犯罪の増大との関連も指摘されています。

 大企業が溜めこんでいる229兆円もの内部留保を社会的に還元して雇用危機を打開し、労働者の状態を改善することは、内需にしっかりと基盤をおいた日本経済の安定的発展のためにも、技能の継承や労働者の「士気」など企業の健全な発展にとっても、さらには日本社会の将来展望にとっても、決定的な意義をもっています。そのためにも、解雇の規制、非正規の正社員化や均等待遇、「サービス残業」の根絶、長時間労働の是正、最低賃金の引き上げ、過密労働の規制と労働災害の防止・認定基準の緩和など、人間らしく働けるルールを確立することは、緊急で最重要の課題です。

 人間らしく働けるルールの確立のためにも、ILO(国際労働機関)の一連の労働時間・休暇関係の条約をはじめ、111号(雇用における差別禁止)、158号(解雇規制)、175号(パートタイム)などの条約を批准します。

 (なお、労働基本権回復など、公務員労働者については「公務員制度改革」の項を参照してください)。

解雇、退職、配転強要、労働条件の一方的切り下げを許しません

 違法・無法な「非正規切り」とともに、正社員でも労働者の人権を無視した強制配転や退職強要が横行しています。契約期間中の解雇や退職の強要は違法です。労働者の被る不利益の大きい配転命令は無効です。

 政府が2003年に労働基準法を改悪して「解雇自由条項」を盛り込もうとしたときに、日本共産党は、労働者・労働組合と協力してこれをやめさせ、逆に解雇を規制する条項をはじめて盛り込ませました。さらに、「解雇規制・雇用人権法」を提案して、労働者の人権をまもり、ヨーロッパ並みの労働契約のルールの確立をめざしています。

 大企業の身勝手な首切りをやめさせ、雇用の責任を果たさせるためには、解雇規制を強化することが必要です。判例でうちたてられてきた「整理解雇4要件」(差し迫った必要性、回避努力、選定基準・人選の合理性、労働者・労働組合の合意)を法律として明文化して一方的な解雇を禁止し、裁判などで争っているときの就労権を保障します。希望退職・転籍についても、本人同意・取消権、労働組合の関与などのルールを確立します。解雇を目的としたいじめや嫌がらせを禁止し、人権侵害をきびしく取り締まります。労働基準監督署が、退職強要などを日常的に監視し、取り締まるようにします。分社化などにともなう雇用と労働条件のルールをつくります。55歳一律転籍など、年齢による雇用契約の不利益変更や採用制限を禁止します。事業所の閉鎖、移転、縮小の際の自治体との協議の仕組みをつくります。

 高年齢者雇用安定法が改定され、年金の支給開始年齢引き上げにあわせて、65歳までの段階的な雇用延長が事業主に義務づけられました。雇用延長措置をとる企業は93%になっていますが、希望者全員を採用しない、雇用延長しても賃金が定年前の半分以下という企業が多数になっています。アメリカやヨーロッパのように、年齢を理由にして雇用や賃金など労働条件について差別することを禁じます。高齢者雇用延長制度については、希望者全員採用と年齢による賃金などの労働条件差別をやめさせます。

 退職金の後払いである企業年金の一方的な切り下げを許さず、受給権を守ります。

異常な長時間労働を是正し、安定した雇用を拡大します

 日本では、ヨーロッパと違い、労働基準法で残業の上限が定められていないため、長時間労働が横行しています。その労基法さえふみにじる「サービス残業」も横行しています。日本共産党は、1967年以来30年間、300回を超える国会質問で「サービス残業」は企業犯罪だと追及し、2001年には、厚生労働省に根絶のため企業が責任をもって時間管理を強化するなどを内容とする「サービス残業」根絶通達をださせました。過去8年間だけでも1547億円以上の未払い残業代を支払わせています。

 通達を活用し、職場からのとりくみを強化するとともに、「サービス残業根絶法」を制定し、悪質な企業には、企業名を公表するとともに、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせるようにします。中間管理職や裁量労働制の労働者の時間管理をきちんとさせます。

 「店長」「マネージャー」といいながら、管理職としての権限、実態もない「名ばかり管理職」にたいする残業代不払いを許しません。

 01年に5割を切った有給休暇の取得率は、その後も年々下がり、08年には、47.7%にまで低下しています。ヨーロッパでは、有給休暇の完全取得は常識になっています。年次有給休暇を最低20日とし、一定日数の連続取得と完全消化を保障します。

 「サービス残業」をなくすだけでも、新たに115万人分の雇用が生まれます(民間のシンクタンク労働総研の試算)。有給休暇の完全取得による経済効果は16兆円、188万人分の雇用が生まれます(財界系のシンクタンク日本生産性本部の試算)。当面、「残業は年間360時間以内」という大臣告示をただちに法定化し、残業割増率を現行25%増から50%増に、深夜・休日は100%増に引き上げます。さらに、労働基準法を抜本的に改正して拘束8時間労働制とし、残業時間を1日2時間、月20時間、年120時間に制限します。恒常的な長時間残業や有休をとれないことを前提にした生産・要員計画をなくします。深夜労働・交代制労働、過密労働をきびしく規制します。EU(欧州連合)のように、連続休息時間を最低11時間は確保します(深夜12時まで働いたら翌日の出勤は11時以降)。こうして労働時間を抜本的に短縮し、安定した雇用の拡大につなげます。

労働者派遣法を抜本的に改正し、使い捨て労働をなくします

 大量の派遣労働者が、違法に長期間働かされつづけたあげく、経済危機を口実として仕事を奪われてきました。300万人以上いた派遣労働者は、09年1年間で、約100万人減となっています。日本は、他国に例を見ない「派遣労働者使い捨て」の国となっています。そのおおもとには、労働者派遣法を再三にわたって改悪し、対象業務を原則自由化し、専門業務での派遣期間の撤廃などの規制緩和をすすめ、正社員を大量に派遣労働者に置き換えてきたことがあります。日本共産党は、違法な派遣・非正規切りとたたかう労働者・労働組合のみなさんと力を合わせて、大企業の派遣法違反の実態を告発し、国会で繰り返し取り上げ、労働者保護のための労働者派遣法の抜本改正を求めてきました。

 しかし、民主党政権の提出した派遣法「改正」案は、「製造業は原則禁止」といいながらも、実際は、1年以上の雇用の見込みさえあれば「常用型」として、これまでと同様に製造業派遣を認めるなど、大きな抜け穴をもつ欠陥法案であり、名ばかり「改正」法案です。不安定な「登録型」派遣の禁止でも、専門業務を例外とするなど、一般業務を専門と偽装することを正すどころか、派遣を固定化するものとなっています。派遣労働者のなかで「これでは私たちは救われない」との怒りが渦巻いています。

 労働者派遣法を抜本的に改正し、派遣労働を一時的臨時的業務に制限します。製造業派遣や日雇い派遣を全面的に禁止し、使い捨て労働をなくします。登録型派遣は真に専門的な業務にきびしく限定します。派遣受け入れ期間の上限は1年とし、違法があった場合は派遣先に期間の定めなく直接雇用されたものとみなし、正社員化をすすめます。派遣先の正社員との均等待遇、グループ内派遣の制限を行い、常用代替を規制します。

有期雇用を制限して均等待遇と正社員化をすすめるとともに、「個人請負」などの脱法的契約を許しません

 契約社員やパート、期間社員などの非正規労働者は、細切れの雇用契約の更新を繰り返し、つねに雇用不安のなかで働いています。派遣先企業が、直接雇用に切り替えても、数カ月の契約をくりかえし、いつでも「雇い止め」「首切り」自由の「期間工」とされるケースが後をたちません。労働基準法では3年を越える雇用契約ができないことになっていることから、「最長2年11カ月契約」と称して、それまではいつでも「雇い止め」できると「曲解」「誤解」し、違法・脱法を繰り返しているケースもあとをたちません。現行法でも、契約途中の解雇は厳しく規制されており、また、契約更新の「ある」「なし」や、更新する際の基準について明示しなければならず、反復更新を重ねていれば、「解雇権濫用法理」が類推適用されます。現行法を厳しく守らせ、労働者の泣き寝入りを許しません。

 ヨーロッパでは、有期労働は、合理的な理由のある場合に限られ、正社員との均等待遇なども当たり前となっています。有期雇用については、一時的臨時的で合理的な理由がある場合に限定し、賃金やその他の待遇について正社員と均等待遇にすることを明確にします。

 日本最大の非正規雇用をかかえる日本郵政グループは、ワーキングプアを大量につくりだし、同様の事業を行う宅配事業者のなかに非正規化を広げる牽引者ともなってきました。日本共産党は、国会でこの問題をとりあげ、正社員化への流れをつくりだしてきました。希望する人全員を正社員化するよう、ひきつづき力を注ぎます。

 本来、労働者として企業の指揮・命令を受けて仕事をしているのに「個人請負」契約として、社会保険など労働者としての権利を奪う脱法行為も増えています。こうした違法行為もきびしく取り締まり、ILOの「雇用関係に関する勧告」(198号)を活用し、請負や委託で働く労働者を保護します。「多様な働き方」の名で、非正規雇用の拡大をすすめる政府・財界の政策に反対します。

男女がともに、人間らしく生き、働ける労働条件を確立します

 女性の2人に1人が、パートや契約、派遣などの非正規雇用のもとに置かれています。

長時間・過密労働のなかで、育児休業どころか、結婚や出産しても働きつづけられる女性は3割にすぎません。

 「転勤できない」「業務がちがう」などを表向きの理由とした男女間の昇給・昇格差別、賃金差別の結果、男性の正社員に比べて、女性の正社員の賃金は7割、女性の非正規では4割という格差があります。派遣労働者でも、女性の時給は男性の9割です。実態は一般業務であるのに専門業務派遣だと偽装されて、長期に細切れ契約で働かされ、30歳代で事実上の「定年」という実態もあります。雇用形態差別がそのまま男女間格差に直結し、退職金や年金支給の低さなどにも大きな影響を与えています。わが国も批准しているILO100号条約(同一価値労働・同一報酬)にもとづき格差を是正します。

 労働時間を短縮し、男女賃金格差を是正することは、男女ともに仕事も家庭生活も両立できる社会にする上でも重要です。

 日本共産党は、賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件の均等待遇と正社員への道の拡大をめざし、「パート・有期労働者均等待遇法」を提案しています。賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について、労働者がパート・有期労働者であることを理由として、正社員と差別的取扱いをすることを禁止します。正社員を募集するときは、パート・有期労働者に応募の機会を優先的に与えるようにします。短期の雇用契約のくり返しを、期間の定めのない雇用契約とみなした判例を法制化します。合理的理由のない「短期・反復雇用」「契約社員」は不公正な契約として規制し、正社員に移行させます。正社員が、育児・介護などの理由のために、一定期間、パートタイム労働者として働き、また正社員にもどれるようにします。「均等待遇」に違反している企業に対して、罰則を設けることも含めきびしく取り締まります。

 1985年に男女雇用機会均等法が制定されて25年。しかし、日本の男女賃金格差は130カ国中90位と世界でも最下位の部類に甘んじています。雇用機会均等法では、「間接差別の禁止」について、「募集・採用で身長・体重・体力を要件にすること」「転勤を採用・昇進の要件にすること」などの3例の限定的な列挙にとどめています。条件をつけずに「間接差別」の禁止を明記すべきです。雇用形態差別や低賃金の業務に女性の比率が高くなっていることなどについて、実効性ある措置をとることが求められています。

 (詳しくは「女性」の項を参照してください)。

最低賃金の抜本的引き上げなど、政治の責任で賃金の大幅底上げを実現します

 貧困と格差が広がるなかで、年収200万円以下の「ワーキング・プア」といわれる労働者が、1000万人を超えるようになっています。働いても働いても低賃金でアパートも借りられず、ネットカフェで寝泊りしながら働いている青年もいます。労働者がまともな生活ができるようにするためにも、労働者全体の賃金を底支えするためにも、最低賃金の引き上げが必要です。職場・地域の運動と世論の広がり、日本共産党の国会論戦が相まって、最低賃金法が40年ぶりに改定されました。改定最賃法では、最賃決定基準として、生計費とかかわって憲法25条の生存権規定が盛り込まれました。この改定にふさわしい最賃の大幅引き上げを実現します。最低賃金の決定基準は、生計費のみとし、改定最賃法にも残されている企業の「支払い能力」を削除します。民主党の最賃引き上げ先延ばしをゆるさず、中小企業への適切な支援をはかりながら、すみやかに時給1000円以上への引き上げをめざすとともに、全国一律の最低賃金制度を確立します。

 中小零細企業が最低賃金を支払えるように、大企業の下請けいじめや規制緩和による過当競争をきびしく規制するとともに、助成措置を講じます。「官製ワーキング・プア」を許さないためにも、国や自治体の非常勤職員の賃金を引き上げます。国や自治体と受注する事業者との間で結ばれる契約に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定める法律や条例(公契約法・条例)を定めます。また、自治体が誘致する企業について、正社員化の度合いや均等待遇の状況を重要な判断基準とさせます。

失業者の生活と職業訓練を保障し、安定した仕事、公的仕事への道を開きます

 労働者は、失業すればとたんに収入が途絶え、貯蓄だけが頼りです。派遣や期間工の労働者は、貯蓄もできないような劣悪な労働条件で働かされ、首を切られると同時に寮から追い出されてホームレスになっています。ILOは昨年、日本は失業手当を受給できない失業者の割合が77%にものぼり、先進国中最悪の水準にあると発表しました。失業者が安心して仕事を探せるようにするためにも、雇用のセーフティーネットの拡充が不可欠です。

09年の雇用保険法の「改正」では、雇用保険から排除されている失業者1008万人のうち適用対象になるのは148万人にすぎません。雇用保険の拡充は、「失業保険が切れる」から劣悪な労働条件でも就職せざるをえないという状況を改善し、「ワーキング・プア」をなくしていくうえでも重要です。失業給付期間を、現在の90−330日から180−540日程度までに延長します。給付水準の引き上げ、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくし、受給開始時の3カ月の待機期間をなくすなど抜本的に拡充します。

 安定した仕事につく機会を広げるために、専門学校なども活用して職業訓練制度を抜本的に充実させます。フランスでは、職業訓練への資金提供を企業に義務づけています。ドイツには、企業が職業訓練生を一定の報酬を支払って受け入れ、終了後は正社員として採用するという制度があります。政府は、雇用保険を受給していない労働者や、給付を受けても再就職できなかった労働者を対象に、職業訓練とセットで訓練期間中の生活を保障することを柱とした「緊急人材育成・就職支援基金」を創設しました。しかし、3年間の時限措置であり、単身者月10万円、扶養家族ありで12万円と、生活保護基準にも満たない不十分なものです。低賃金で貯えもなく、企業内での教育訓練の機会もなかったワーキング・プアやフリーターの職業訓練を重視し、有給の職業訓練制度や訓練貸付制度を創設し、訓練期間中の生活援助を抜本的に強化します。

 民主党政権が「事業仕分け」で打ち出した全国83カ所の地域職業訓練センターの全廃方針を撤回し、希望するすべての失業者に職業訓練の機会を提供します。

 「ネットカフェ難民」だけでなく、「ファミレス難民」や「バーガー難民」まで生まれています。公園の青テントから出勤している人もいます。ワーキング・プアや失業者に、公共・公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度など、生活支援を強め、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設します。

 「ふるさと雇用再生特別交付金制度」など、政府の不十分な雇用創出制度を抜本的に拡充するとともに、国と自治体の責任で、効果のある公的就労事業を確立します。国と自治体の協力による臨時のつなぎ就労の場を確保させます。また、福祉、医療、環境、防災、教育など、国民のくらしに必要な分野が慢性的に人手不足状態にあります。この分野での雇用を、職業訓練と結びつけ、人間らしい賃金・労働条件を確保して拡大することは、国と自治体の重要な責任です。

 働く者が連帯してみずから受け皿をつくり、仕事をつくりだす「協同労働の協同組合」(「労働者協同組合」)について、労働者性を担保した根拠法を制定します。

新卒者の就職難を打開します

 日本共産党は、2010年4月21日、「新卒者の就職難打開へ――社会への第一歩を応援する政治に いまこそ、国、自治体、教育者、そして企業と経済界が真摯な取り組みを」という新卒者の就職難に関する政策を発表しています。くわしくはこちらをご覧ください。

http://www.jcp.or.jp/seisaku/2010/20100421_syuusyokunann_dakai.html 

国と地方の労働行政を強化します

 人間らしく働けるルールを確立するために、国の労働行政の強化は不可欠です。労働基準監督署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。ILO理事会の決定にそって、労働基準監督官を2倍にします。職業訓練の充実や再就職支援、労働者の権利と雇用主の義務を知らせる広報・啓蒙活動を強化します。そのために、ハローワークの体制を抜本的に拡充します。中央と地方の労働委員会の民主化と機能の強化、パワハラ・セクハラをはじめ個別労働紛争の処理制度の充実をすすめます。学校教育で労働者の権利をしっかり教えるようにします。


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