日本共産党
SEISAKU
SOUGOU,CHUUSYOUKIGYOU

2009年 総選挙政策 《分野別政策》

6 中小企業

中小企業は日本経済再生の力―緊急対策の実施と中小企業憲章制定で、本格的な支援をおこないます

 いま、中小業者のあいだでは、「仕事が蒸発した」「売上げが半減した」との悲鳴があがり、「仕事あるか」があいさつ代わりとなっています。2008年の倒産は1万5千件を超え、この1〜6月の倒産は8169件、前年同月比8.2%増となっています。日本の全企業の99%を占め、雇用の7割を担う中小企業・自営業者が“がけっぷち”においやられているいま、その経営の存続と安定をはかることは政治の緊急の課題です。

 中小企業への支援は、緊急に必要であるとともに、外需頼みから内需振興へ、財界・大企業のための経済政策から日本経済のバランスのとれた再生・発展をめざす政策へ、日本経済のあり方の転換をはかるうえで、カナメをなす重要課題の一つです。

 中小企業・自営業者は、雇用と所得を生み出し、多様な需要にこたえるモノづくり・サービスを提供し、地域経済と住民生活をささえ、国民の創意・活力の担い手として、日本経済と社会になくてはならない存在です。自営業者は、自らつくりだした仕事で自らの生計を維持している点では小規模な企業であるとともに、自分自身を労働力とする点では「自己雇用者」でもあり、雇用の拡大のうえでも大きな意義をもっています。

 ところが、自民党政治のもと、中小企業は、毎年1万件もの倒産や廃業によって、1986年の532万をピークに2006年までの20年間に100万以上減少しました。開業率は低迷し、廃業率が開業率を上回る状況が続いています。自営商工業者は、OECD諸国のなかでも、ドイツ、イギリス、イタリア、アメリカ、韓国などでは大幅に増えているのに、日本では逆に1980年比で3分の2に減っています。

 中小企業の経営難は、農林水産業の衰退とともに、地域経済を疲弊させています。96年度から05年度にかけて1人あたりの県民所得が伸びているのは東京などわずか4都県に過ぎず、全国的には、1割以上落ち込んだ8府県をはじめ、軒並み減少、地方経済の落ち込みがきわだっています。

 中小企業の経営を困難におとしいれている原因は、積年の自民党政治と10年にわたる自公両党の政治にあります。自民党政治は、大企業の利潤極大化のために経済も税制も社会保障もつくりかえる新自由主義の「構造改革」路線を推進し、大企業には都合よく、中小企業や国民生活には過酷な「規制緩和」、消費税の導入と増税などの税制改悪、「不良債権処理」の名目での中小企業つぶし、大型店出退店の容認、地域経済の切捨てと街こわし、国保・介護・年金など社会保障の改悪をすすめてきたのです。

 そのうえ、昨年来、中小企業は、未曾有の原油・穀物・原材料高の襲来をうけたうえに、アメリカの金融危機を引きがねにした世界的経済危機のもと、外需依存のもろい経済構造と大企業のしわ寄せの直撃を受けて、仕事と売上げの激減、資金繰りの深刻化、倒産と廃業の淵にたたされているのです。

中小企業・自営業者の経営を存続させる緊急対策を実施します

「緊急保証」を全業種に拡大し、貸し渋りによる倒産を防止します

 現在実施されている「原材料価格高騰対策等緊急保証制度」は、名前のとおり、昨年秋以来の世界的大不況による中小企業の苦境にこたえたものではありません。日本共産党国会議員の質問に首相自身が「影響を受けていない業種はない」と認めながら、いまだに業種を限定しています。銀行の中小企業融資の付け替えなどに利用されるなど、本当に資金を必要とする中小業者に行き渡るものとはなっていません。

3大メガバンクはこの1年間に中小企業向け貸し出しを2.6兆円も減らしています。金融機関の中小企業への「貸し渋り・貸しはがし」をやめさせるとともに、経営の存続を願う中小企業・自営業者が資金繰りのために倒産・廃業を余儀なくされることのないよう、全業種を対象に、「不況対策緊急保証」を実行します。融資は、「返済期間10年、据置期間3年」とし、既往債務の一本化に応ずるなど改善措置をとるともに、税金滞納などを理由にした融資拒否をしないようにします。

大企業の下請や納入業者イジメをやめさせ、中小企業に緊急の休業補償・直接支援を実施します

 大企業の下請切り捨ては目にあまる状況になっています。公正取引委員会が08年度摘発しただけでも、下請法違反による返還金額は29億円にのぼります。「下請かけこみ寺」などの相談体制を強めるとともに、広く立ち入り検査などを行い、大企業の下請イジメをあらためさせます。

 モノづくりを支える町工場は「日本の宝」です。大不況のもと、中小製造業者を倒産の危機から救うため、雇用調整助成金の拡充をはかるとともに、緊急の休業補償・直接支援を実施します。借り工場への家賃補助をはじめとした固定費への補助、元請企業からの注文に応えるために行った設備投資への助成などをおこないます。

官公需の中小企業発注や生活密着型公共事業の推進など中小企業への仕事を増やします

 官公需法にもとづき、中小企業の受注機会の増大に努めるとともに、国と地方自治体の中小企業むけ官公需発注比率を少なくとも7割以上に引き上げます。

 特別養護老人ホームや保育所の建設、学校・福祉施設の耐震補強、地域の危険箇所対策、個人宅の耐震補修やバリアフリーなどのリフォーム、太陽光パネル設置を地域工務店の仕事と結びつけるなど、生活密着型公共事業をすすめます。

 中小建設業者への負担増となる住宅瑕疵担保保証制度の改善をはかります。

消費税増税をやめ、零細業者イジメの免税点引き下げをもとにもどします

 国民生活をささえ、家計をあたためるために、緊急に食料品の消費税を非課税にします。自公政権が強行した2011年度の消費税の増税計画は撤回します。

 中小業者が転嫁困難で身銭を切らされている消費税の課税義務となる年間売上高、現行1000万円を3000万円にもどし、簡易課税の適用上限、現行の5000万円を2億円にもどします。小泉内閣の税制改悪で、消費税の滞納件数は3割増加、毎年60万件、4000億円もの滞納が発生しています。

燃油・材料高などから経営をまもります

 世界的不況で、昨年春、高騰した燃油や小麦など穀物の価格が落ち着いてきましたが、金融緩和政策のもと、いま、燃油や穀物、原材料価格がじりじりと上がり始めています。価格高騰の場合、中小企業の苦境を放置することなく、価格の暴騰を抑える措置をとるとともに、直接補填など、速やかに支援を実施します。

中小企業憲章を制定し、中小企業を重視する経済政策に転換します

 中小企業・自営業者がその役割を存分に発揮できるよう、中小企業憲章を制定し、中小企業を振興する施策を実行します。

 中小企業憲章には、中小企業・自営商工業者が日本経済と社会で果たしている役割を明確にし、国と自治体に中小企業振興策を推進することを義務づけ、その指針となる諸点を定めます。経済政策の実施にあたって、中小企業への影響評価をおこない、「中小企業の発展を第一に考える」(Think small first)ことを原則とし、国政に中小企業者の実情・要望・意見が反映されるような措置を講ずるようにします。

 ヨーロッパ連合(EU)は、「小企業憲章」をさだめ、従業者が10人から49人の小企業に焦点をあてて、この小企業こそ、「ヨーロッパ経済の背骨」であり、「雇用の主要な源泉」であり、「ビジネス・アイデアを産み育てる大地である」と、ヨーロッパ経済における小企業の地位と役割を明確にしています。EUは、この立場から「小企業が最優先の政策課題に据えられてはじめて、新しい経済の到来を告げようとするヨーロッパの努力は実を結ぶだろう」とし、加盟諸国にたいし、「小企業経営と企業家精神のための最良の環境が創造される必要がある」と訴えています。

国の予算を当面一般歳出の2%、1兆円に増やします

 09年度の中小企業予算は1890億円で、1企業あたり4万5千円にすぎません。他方、米軍への「思いやり」予算は2879億円で、米兵1人あたり年811万円であり、中小企業の180倍です。広範な中小企業の要求と地方自治体の中小企業振興策に応えられるよう、中小企業予算をとりあえず一般歳出の2%、1兆円程度に増やします。

下請いじめなど、大企業の横暴をおさえるルールをきびしくします

 独禁法・下請関連法を改正し、中小企業との取引・競争における大企業の地位の濫用をきびしく規制します。下請代金法を改正し、違反した企業名や事実の公表、損害賠償支払いの義務化などの措置をとれるようにします。訴えのあるなしにかかわらず、系統的に下請取引に関する実態調査を行うため、下請検査官を抜本的に増員します。公正取引委員会を民主的に改組し、中小企業の代表者も加えます。業界団体、中小業者団体が、大企業ならびに大手の業界団体を相手に、下請取引の改善を求める「団体交渉」を行う権利を保障した「公正取引確保法」(仮称)を制定します。

 国と大企業の拠出で「下請中小企業経営安定基金(仮称)」を創設し、発注が変動する場合、補償を行う仕組みをつくります。

 労働者の平均賃金に見合う最低加工賃の算定基準を策定します。

 フランチャイズ加盟店の経営安定と本部との公正な取引関係を確立するため、本部の優越的地位の濫用として公取から是正を命令された「値引き販売の禁止」をやめさせるとともに、加盟店に本部との交渉権限をあたえ、契約内容やロイヤリティの適正化などを盛り込んだ「フランチャイズ適正化法」を制定します。

中小企業を育てる税制・金融のしくみをつくります

 消費税を転嫁できない中小業者は6割にも達し、利益のでていない中小業者にも納税義務の生じる消費税は、零細な中小業者に著しく不利で経営を圧迫する税制となっています。他方、大企業は1円の負担もなく、輸出大企業は輸出にかかわる仕入税額を控除され、還付金を受け取れる税制です。経済主体の力の大小によって税負担に著しい違いが生じる消費税を廃止し、高額な奢侈品中心の間接税方式への転換をめざします。

 法人税にも累進税率を導入し、中小企業の一定範囲の所得については現行より税率を引き下げます。所得税法56条を廃止し、事業主、家族従業者の働き分(自家労賃)を経費と認めるとともに、事業用資産については、一定期間の事業承継を条件に、相続税の減免を認めるようにします。中小企業の経営を圧迫する外形標準課税の拡大に反対します。同族会社の役員報酬の損金算入の制限をとりやめます。

 「納税者憲章」を制定します。G7諸国でも、韓国でも、納税者の権利を保障しており、納税者憲章をもたないのは日本だけです。消費税納税にあたっての仕入税額控除否認、機械類への償却資産課税の強化、倒産に追い込む差し押さえの乱発など、国と地方の過酷な徴税・税務調査をあらためます。

 今日の不況は、政府系中小企業金融機関の統廃合・民営化が緊急時の円滑な中小企業融資を妨げるものであることを明らかにしました。商工中金の完全民営化をやめさせるなど、政策金融全体のあり方を再検討し、円滑な資金供給という本来の役割を果たさせます。無担保・無保証人融資などの制度融資の拡充、借り換えや返済条件の変更など、中小企業への資金繰りを円滑化するよう支援します。ヤミ金の規制を強化するとともに、個人向け、事業者向けの貸出制度を抜本的に拡充します。多重債務の相談窓口を自治体に設置します。

 金融機関の地域経済への貢献を義務づける「地域金融活性化法」を制定します。中小企業向け検査マニュアルを独自につくり、金融機関の円滑な資金供給を促します。

 信用保証を縮小するいわゆる「部分保証」をただちに撤回し、信用補完制度に小規模零細業者の資金繰りの「命綱」としての役割を果たさせます。そのため、信用保証協会や再保険への財政援助をおこないます。独自の制度融資に取り組む自治体にたいし国の支援をおこないます。

 日本では毎年3000人を超える中小業者が自殺しています。この痛ましい事態の要因の1つが、中小企業融資における個人保証制度です。現在、金融機関が中小企業融資を行う際に、経営者自身や知人に対して保証・連帯保証を求めるケースがほとんどです。この制度のもとでは、会社だけでなく経営者自身も保証人も全財産を失うことになり、家族や保証人に迷惑をかけないようにと生命保険をあてにした自殺が多発しています。欧米では、数十年前に金融機関の個人保証制度は廃止されています。中小企業融資に対する個人保証制度の廃止をめざし、当面、政府系金融機関の融資について、個人保証を廃止します。

 病気や事故などに備える「自主共済」は、2006年施行の保険業法により、保険会社に委託するか少額短期保険業者に移行するか選択が迫られました。しかし、多くの自主共済が、準備金の積み立てや外部監査導入などの負担ができず、制度廃止に追い込まれる事態も生まれています。社会保障の改悪などで国民の不安が増しているいまこそ、自主共済を守り発展させることが必要です。助け合いのためにつくられた自主共済については、保険業法の適用除外とします。

高齢者が利用しやすく、若者に魅力的な商店街の再生をすすめます

 「シャッター通り」が各地に広がるなど、商店街の疲弊は深刻です。歩いて暮らせるまちづくりをすすめるためにも商店街を「地域の共通財産」として活性化することが欠かせません。商店街と公営住宅、病院、介護・福祉施設、図書館、郵便局、役場などの公共施設を組み合わせたまちづくりを促進します。生鮮三品の店の確保、空き店舗を活用したチャレンジショップ、高齢者のたまり場づくりなど、高齢者・子ども連れの親子・若者が楽しみながら買い物のできる店づくりや商店街の企画を支援します。市町村合併による行政サービスの低下をあらため、コミュニティバスの運行など公共交通機関の整備をはかり、どこに住む住民も安心してくらせるようにします。

 大型店の進出と退出、営業時間などについて、自治体が「まちづくり条例」をつくって規制できるようにします。「商業調整にならない制度とする」と定めている大店立地法・第13条を廃止し、06年改正された「まちづくり3法」を抜本的に強化し、郊外への大規模集客施設の出店を原則禁止します。アメリカでは、大型店の出店にあたり、預託金を取り置く自治体が生まれていますが、大型店に、地域貢献など社会的責任を果たさせます。改定中心市街地活性化法によるまちづくり・商店街支援に関する国の認定制度を、自治体の認定・支援策にあらためます。

食糧・エネルギー・環境・医療・福祉など地域経済をささえる中小企業を支援します

 地域に根ざしている中小企業は、地域住民に雇用を提供し所得を保障することで、地域経済を支えています。地域経済が発展し、住民の暮らしが向上するには、地域で生み出された付加価値が地域に還元され、再投資される経済循環が促進されることが必要です。それでこそ、地域で持続可能な社会が可能となります。最近、このことを自覚した自治体が、中小企業者や住民の要求にも応え、各地で、中小企業振興基本条例を定め、中小企業振興の取り組みをすすめています。この取り組みを支援します。地域への再投資を促進し、地域経済循環がすすむよう、地域金融機関にその役割の発揮を求めます。

 農・林・水の第一次産業の振興とむすんだ「農・商・工」連携の中小企業振興をすすめます。地元農水産物の給食材への供給や地元産の木材を使った公共施設や住宅の建設、消費者と結んだ直売所や産直センター、地元農林水産物による特産品づくりなどに力を注ぎます。

 21世紀の緊急課題となっている地球温暖化防止・持続可能な地域づくりのためにも、「地産地消」、「地産地商」の循環型の地域経済を発展させます。地球温暖化防止へ、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済からの転換をはかる新産業政策、グリーンニューディールを推進し、これにとりくむ中小企業・中小工務店への仕事おこし、技術開発と普及を支援します。太陽光・風力・小型水力・バイオマス・地熱など再生可能エネルギーの開発と普及、静脈型産業、さらに再生医療・個人に合った福祉器具の開発などにとりくむ中小企業への支援をおこないます。

 地域の特性である自然と歴史を生かし、伝統・技術が蓄積された地元産業の発展と観光の振興をはかります。モノづくり技術の集積地や産地支援のための自治体ごとの振興計画づくりをすすめます。中小企業製品の開発・モノづくりを支援するとともに、販売への支援として、商品を広く知らせる常設展示場を各地にもうけ、インターネット上のサイトを提供します。

 ひも付きの補助金制度をあらため、地方が、生活密着型の公共事業に創意的にとりくめるようにします。公共工事入札は、中小企業の育成につながるようにします。公共事業・官公需の発注・入札は、分離分割発注、「小規模工事登録制度」など随意契約の活用、無制限の一般競争入札ではなくランク制の厳格な実施で、中小企業への発注率を高めます。最低制限価格制度を導入し、ダンピング入札をなくし、工事の品質を確保するなど、公正なルールを確立します。国や自治体の仕事を受注する企業に、人間らしく働ける賃金や下請単価、労働条件を義務づける「公契約法・条例」の制定をすすめます。

 地域医療の確保、国保料の減額、生活保護の改善、教育費扶助の増額など医療・福祉・教育を充実し、住民が安心して生活できる地域をつくります。

 中小企業の技術革新と発展、創業に生かすために、教育・研究機関などとの産学連携・人材育成を重視します。

経済の活力=中小企業の開業を支援します

 経産省の「若者と中小企業とのネットワーク構築事業」の予算を抜本的にふやし、若者の就労・社会的自立、開業に役立つ「インターンシップ」、新規開業塾・相談会、大学等での中小企業論講座など、中小企業の魅力と正確な情報・知識を発信するとりくみを幅広く支援します。

 新規開業者が利用できる起業支援制度の拡充とともに、現行の新規開業融資を抜本拡充し、自己資金要件の緩和や低利で返済猶予期間を備えた開業資金融資制度の創設をはかります。

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