日本共産党
SEISAKU
SOUGOU,ROUDOU

2009年 総選挙政策 《分野別政策》

tesuto

1 労働・雇用

人間らしく働けるルールを確立します

 アメリカ発の金融・経済危機が自動車・電機などの輸出依存型産業を直撃するもとで、大企業は率先して「派遣切り」「非正規切り」をおしすすめ、大量の失業者とホームレスをつくりだしています。解雇の波は、いまや正社員をもおそっています。膨大な内部留保(隠し利益)を溜め込んでいる大企業が、予防的に雇用破壊を進めた結果、完全失業者数は348万人と前年同月比83万人増、完全失業率は5・4%となりました。有効求人倍率は0・43倍で、史上最低を更新しています。

 労働者の3人に1人、若者や女性では2人に1人が非正規労働者で、そのほとんどが年収200万円以下の「ワーキング・プア」です。正社員でも、長時間過密労働による過労死やメンタルヘルスが後を絶ちません。この夏のボーナスは大幅に下がりました。「名ばかり店長」「名ばかり正社員」と言われる使い捨て労働、無権利で過酷な労働条件もまかり通っています。

 失業者が増え、雇用不安が高まり、賃金が下がった結果、消費意欲は冷え込み、個人消費は落ち込む一方で、経済危機に拍車をかけています。結婚ができない、子どもを産めないなど、少子化への影響も深刻です。自殺や犯罪の増大との関連も指摘されています。雇用危機を打開し、労働者の状態を改善することは、内需にしっかりと基盤をおいた日本経済の安定的発展のためにも、技能の継承や労働者の「士気」など企業の健全な発展にとっても、さらには日本社会の将来展望にも、決定的な意義をもっています。そのためにも、解雇の規制、非正規の正社員化や均等待遇、「サービス残業」の根絶、長時間労働の是正など、人間らしく働けるルールを確立することは、緊急で最重要の課題です。

解雇、退職強要、労働条件の一方的切り下げを許しません

 違法・無法な「非正規切り」とともに、工場閉鎖にともなって、労働者の人権を無視した強制配転や退職強要が横行しています。従業員50人以上の工場のうち、すでに閉鎖あるいは今後閉鎖が決まっている工場は約100カ所にものぼるとされています。現行法でも、契約期間中の解雇や退職の強要は違法です。労働者の被る不利益の大きい配転命令は無効です。

 政府が2003年に労働基準法を改悪して「解雇自由条項」を盛り込もうとしたときに、日本共産党は、労働者・労働組合と協力してこれをやめさせ、逆に解雇を規制する条項をはじめて盛り込ませました。さらに、「解雇規制・雇用人権法」を提案して、労働者の人権をまもり、ヨーロッパ並みの労働契約のルールの確立をめざしています。

 大企業の身勝手な首切りをやめさせ、雇用の責任を果たさせるためには、解雇規制を強化することが必要です。判例でうちたてられてきた「整理解雇4要件」(差し迫った必要性、回避努力、選定基準・人選の合理性、労働者・労働組合の合意)を法律として明文化して一方的な解雇を禁止し、裁判などで争っているときの就労権を保障します。希望退職・転籍についても、本人同意・取消権、労働組合の関与などのルールを確立します。解雇を目的としたいじめや嫌がらせを禁止し、人権侵害をきびしく取り締まります。労働基準監督署が、退職強要などを日常的に監視し、取り締まるようにします。分社化などにともなう雇用と労働条件のルールをつくります。55歳一律転籍など、年齢による雇用契約の不利益変更や採用制限を禁止します。事業所の閉鎖、移転、縮小の際の自治体との協議の仕組みをつくります。

 高年齢者雇用安定法が改定され、年金の支給開始年齢引き上げにあわせて、65歳までの段階的な雇用延長が事業主に義務づけられました。雇用延長措置をとる企業は93%になっていますが、希望者全員を採用しない、雇用延長しても賃金が定年前の半分以下という企業が多数になっています。アメリカやヨーロッパでは、年齢を理由にして雇用や賃金など労働条件について差別することを禁じています。高齢者雇用延長制度については、希望者全員採用と年齢による賃金などの労働条件差別をやめさせます。

異常な長時間労働を是正し、安定した雇用を拡大します

 日本では、ヨーロッパと違い、労働基準法で残業の上限が定められていないため、長時間労働が横行しています。その労基法さえふみにじる「サービス残業」も横行しています。日本共産党は、1976年以来30年間、280回を超える国会質問で「サービス残業」は企業犯罪だと追及し、2001年には、厚生労働省に根絶のため企業が責任をもって時間管理を強化するなどを内容とする「サービス残業」根絶通達をださせました。過去4年間だけでも1350億円以上の未払い残業代を支払わせています。

 通達を活用し、職場からのとりくみを強化するとともに、「サービス残業根絶法」を制定し、悪質な企業には、企業名を公表するとともに、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせるようにします。中間管理職や裁量労働制の労働者の時間管理をきちんとさせます。

 「店長」「マネージャー」といいながら、管理職としての権限、実態もない「名ばかり管理職」にたいする残業不払いを許しません。

 有給休暇の取得率は年々下がり、08年には、46.7%にまで低下しています。ヨーロッパでは、有給休暇の完全取得は常識になっています。年次有給休暇を最低20日とし、一定日数の連続取得と完全消化を保障します。

 「サービス残業」をなくすだけでも、新たに160万人分の雇用が生まれます。取得率が5割を切った有給休暇を完全取得すれば、148万人分の雇用が生まれます。当面、「残業は年間360時間以内」という大臣告示をただちに法定化し、残業割増率を現行25%増から50%増に、深夜・休日は100%増に引き上げます。さらに、労働基準法を抜本的に改正して拘束8時間労働制とし、残業時間を1日2時間、月20時間、年120時間に制限します。ILO1号条約(8時間労働制)をただちに批准します。恒常的な長時間残業や有休をとれないことを前提にした生産・要員計画をなくします。深夜労働・交代制労働、過密労働をきびしく規制します。EU(欧州連合)のように、連続休息時間を最低11時間は確保します(深夜12時まで働いたら翌日の出勤は11時以降)。こうして労働時間を抜本的に短縮し、安定した雇用の拡大につなげます。

派遣・非正規の正社員化をすすめ、均等待遇のルールを確立します

 派遣労働者は、その圧倒的多数が、仕事があるときのみ雇用される登録型派遣労働者であり、きわめて不安定な雇用と低賃金のもとに置かれています。日雇い派遣やスポット派遣といった「使い捨て労働」が増大し、偽装請負や「安全協力費」の天引きなどの違法行為が野放しになっています。そうした労働者が、経済危機を口実として、とたんに大量に首を切られているのです。そのおおもとには、労働者派遣法を再三にわたって改悪し、対象業務を原則自由化するなどの規制緩和をすすめてきたことがあります。

 日本共産党は、職場の運動と力をあわせて、国会で派遣労働の実態を告発すると同時に、労働者派遣法の抜本改正を求めてきました。そのなかで、派遣労働の規制緩和から規制強化への“潮目の変化”がうまれ、すべての政党が労働者派遣法の改正をいわざるをえなくなっています。当面、労働者派遣法を1999年の改悪前にもどし、派遣労働は一時的臨時的業種に限り、登録型派遣は専門的業務に限ることとし、究極の不安定雇用である日雇い派遣を禁止します。

 ヨーロッパでは、派遣労働を一時的業務に制限するとともに、一定期間以上使用する場合は正規雇用者として雇用する義務が、派遣先企業に課せられています。労働者派遣事業法を「派遣労働者保護法」に抜本的に改正し、派遣受け入れ期間の上限は1年、派遣期間を超えた場合や違法行為があった場合は派遣先企業が直接雇用をしたものとみなす、正社員との均等待遇、マージン率の上限規制など、派遣労働者の権利を守ります。

 労働基準法を改正し、契約社員や期間社員などの有期雇用を厳しく制限し、「首切り自由の使い捨て労働」をなくします。

 ヨーロッパでは、同じ仕事なら賃金も労働条件も同じ、違うのは時間だけという「均等待遇」の原則が確立しています。しかし日本では、正社員と同じ仕事をする短時間勤務社員がいる企業の割合は8割以上にのぼりますが、そのうち半数以上が処遇の均等どころか「均衡」すら考慮されていません。

 パート労働者の賃金は正社員の半分、女性正社員の賃金は男性正社員の6割強、女性パートの賃金はその女性正社員の7割程度にすぎません。パート・非正規の低賃金を利潤の源泉にすることをゆるしてはなりません。

 日本共産党は、賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件の均等待遇と正社員への道の拡大をめざし、「パート・有期労働者均等待遇法」を提案しています。

 賃金、休暇、教育訓練、福利厚生、解雇、退職その他の労働条件について、労働者がパート・有期労働者であることを理由として、正社員と差別的取扱いをすることを禁止します。正社員を募集するときは、パート・有期労働者に応募の機会を優先的に与えるようにします。短期の雇用契約のくり返しを、期間の定めのない雇用契約とみなした判例を法制化します。合理的理由のない「短期・反復雇用」「契約社員」は不公正な契約として規制し、正社員に移行させます。正社員が、育児・介護などの理由のために、一定期間、パートタイム労働者として働き、また正社員にもどれるようにします。「均等待遇」に違反している企業に対して、罰則を設けることも含めきびしく取り締まります。

 本来、労働者として企業の指揮・命令を受けて仕事をしているのに「個人請負」契約として、社会保険など労働者としての権利を奪う脱法行為も増えています。こうした違法行為もきびしく取り締まり、ILO(国際労働機関)の「雇用関係に関する勧告」(198号)を活用し、請負や委託で働く労働者を保護します。「多様な働き方」の名で、非正規雇用の拡大をすすめる政府・財界の政策に反対します。

最低賃金を引き上げ、全国一律最低賃金制を確立します。

 貧困と格差が広がるなかで、年収200万円以下の「ワーキング・プア」といわれる労働者が、1000万人を超えるようになっています。働いても働いても低賃金でアパートも借りられず、ネットカフェで寝泊りしながら働いている青年もいます。労働者がまともな生活ができるようにするためにも、労働者全体の賃金を底支えするためにも、最低賃金の引き上げが必要です。職場・地域の運動と世論の広がり、日本共産党の国会論戦が相まって、最低賃金法が39年ぶりに改定されました。改定最賃法では、最賃決定基準として、生計費とかかわって憲法25条の生存権規定が盛り込まれました。この改定にふさわしい最賃の大幅引き上げを実現します。最低賃金の決定基準は、生計費のみとし、改定最賃法にも残されている企業の「支払い能力」を削除し、最低賃金の時給1000円以上への引き上げと、全国一律の最低賃金制度を確立します。

 中小零細企業が最低賃金を支払えるように、大企業の下請けいじめや規制緩和による過当競争をきびしく規制するとともに、助成措置を講じます。発注する公的機関と受注する事業者との間で結ばれる契約(公契約)に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定めるようにし、そのための法律や条例を定めます。「官製ワーキング・プア」を許しません。また、自治体は、誘致する企業について正社員化の度合いや均等待遇の状況を重要な判断基準とすべきです。

失業者の生活と職業訓練を保障し、安定した仕事、公的仕事への道を開きます

 労働者は、失業すればとたんに収入が途絶え、貯蓄だけが頼りです。派遣や期間工の労働者は、貯蓄もできないような劣悪な労働条件で働かされ、首を切られると同時に寮から追い出されてホームレスになっています。ILOは今年、日本は失業手当を受給できない失業者の割合が77%にものぼり、先進国中最悪の水準にあると発表しました。失業者が安心して仕事を探せるようにするためにも、雇用のセーフティーネットの拡充が不可欠です。

09年の雇用保険法の「改正」では、雇用保険から排除されている失業者1008万人のうち適用対象になるのは148万人にすぎません。雇用保険の拡充は、「失業保険が切れる」から劣悪な労働条件でも就職せざるをえないという状況を改善し、「働く貧困層」をなくしていくうえでも重要です。失業給付期間を、現在の90−330日から180−540日程度までに延長します。給付水準の引き上げ、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくし、受給開始時の3ヶ月の待機期間をなくすなど抜本的に拡充します。

 安定した仕事につく機会を広げるために、専門学校なども活用して職業訓練制度を抜本的に充実させます。フランスでは、職業訓練への資金提供を企業に義務づけています。ドイツには、企業が職業訓練生を一定の報酬を支払って受け入れ、終了後は正社員として採用するという制度があります。政府は、雇用保険を受給していない労働者や、給付を受けても再就職できなかった労働者を対象に、職業訓練とセットで訓練期間中の生活を保障することを柱とした「緊急人材育成・就職支援基金」を創設しました。しかし、3年間の時限措置であり、単身者月10万円、扶養家族ありで12万円と、生活保護基準にも満たない不十分なものです。低賃金で貯えもなく、企業内での教育訓練の機会もなかったワーキング・プアやフリーターの職業訓練を重視し、有給の職業訓練制度や訓練貸付制度を創設し、訓練期間中の生活援助を抜本的に強化します。

 「ネットカフェ難民」だけでなく、最近では「ファミレス難民」や「バーガー難民」まで生まれています。公園の青テントから出勤している人もいます。ワーキング・プアや失業者に、公共・公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度など、生活支援を強め、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設します。

 政府は、今年4月、雇用創出の目玉対策として「ふるさと雇用再生特別交付金制度」を創設しました。しかし、3年間の時限措置であり、事業の実施を民間企業に限定し、雇用期間を原則1年とするなど、長期に安定した雇用を創出するという点では不十分です。国と自治体の責任で、効果のある公的就労事業を確立することが必要です。国と自治体の協力による臨時のつなぎ就労の場を確保させます。また、福祉、医療、環境、防災、教育など、国民のくらしに必要な分野が慢性的に人手不足状態にあります。この分野での雇用を、職業訓練と結びつけて拡大することは、国と自治体の重要な責任です。

 働く者が連帯してみずから受け皿をつくり、仕事をつくりだす「協同労働の協同組合」について、労働者性を担保した根拠法を制定します。

国の労働行政を強化します

 人間らしく働けるルールを確立するために、国の労働行政の強化は不可欠です。労働基準監督署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。ILO理事会の決定にそって、労働基準監督官を2倍にします。職業訓練の充実や再就職支援、労働者の権利と雇用主の義務を知らせる広報・啓蒙活動を強化します。そのために、ハローワークの体制を抜本的に拡充します。学校教育で労働者の権利をしっかり教えるようにします。

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