日本共産党

いっせい地方選挙にのぞむ各分野の政策

2007年1月19日  日本共産党

【6】安全に暮らせる経済・社会を実現するため、環境問題に真剣に取り組みます

 持続可能な経済・社会のために、温暖化ガス削減を実現する対策など地球環境の保全とともに、国内のアスベスト対策や大気汚染対策など環境対策に真剣に取り組むことが必要です。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守る取り組みを強化します。そのためにも各地で起きている環境汚染の問題解決には、少なくとも(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3)住民参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で、次のような取り組みを強めます。

大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任をはたさせます

 自動車排ガスと健康被害との因果関係を、あいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。患者と住民の粘り強い運動で川崎市では、患者の医療費の一部を市が負担する新たな救済制度がスタートしました。増え続ける大気汚染患者の救済のために、自治体独自の取り組みを強めます。公害健康被害補償法(公健法)で認定されていなかった被害者の健康被害が司法で認められた結果、東京都もようやく自動車メーカーに救済のための負担をもとめる案を提起するようになっています。国も1988年以降、被害者の認定を打ち切った姿勢を転換し、新たな措置も含めてすべての被害者の早期・迅速な救済にあたるべきです。また判決が、健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化を進めたことなど、自動車メーカーの対応に社会的責任上、問題があったと指摘したことは重要です。企業がいま使用しているディーゼル車の汚染物質(粒子状物質や二酸化窒素など)除去装置の実用化など、メーカーが社会的責任を果たすよう求めます。大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での走行規制など、汚染対策を進めます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化します。

公害被害者の救済を急ぎます

 公式認定から51年になる水俣病にかんして、最高裁が国の責任と判断基準や認定制度・検診の見直しを認めたこと(2004年10月)をうけ、4700名をこえる被害者が国の認定を求めています。ところが、政府は、認定基準の見直しを拒否し、わずかばかりの「解決金」で患者を切り捨てるようとしています。ただちに全容解明の実態調査をおこない、最高裁が示した救済水準に合わせてすべての水俣病被害者の救済を急ぐべきです。カネミ油症患者についても、実態調査をいそぎ、被害に見合った補償と救済を行うことが必要です。

アスベストの除去や被害者救済を急ぎ、化学物質の有害性に対する規制を強めます

 吸いこんでから20〜30年以上も後に悪性腫瘍(がん)を引き起こすアスベスト(石綿)のために、がんの一種である中皮腫(ちゅうひしゅ)などの被害が続々と明らかになり、その影響は家族、周辺住民にも及んでいます。政府が、ILO条約の批准を先延ばしにした結果、WHO基準の200倍も緩い基準(76年の通達)を一昨年まで放置してきました。関連業界と政府の責任は重大です。

 地方自治体は、「相談窓口」を設置し、石綿関連企業の労働者や事業所周辺住民などの健康診断調査を継続して実施することが必要です。そのために国が全面協力し、健康診断調査の費用を原因企業と国が負担するよう求めます。法の施行後も余りにも少ない救済数となっているアスベスト対策法の認定対象を実態に合わせて拡充し、石綿の労災認定も抜本的に見直すとともに、すべての健康被害者を救済し、被害に対する補償水準を引き上げるなど救済制度を早急に改善するよう政府に求めます。石綿の特例使用が認められている分野を含め、早急に全面的な使用禁止を目指すとともに、石綿除去や解体に伴う二次被害を阻止するために、自治体の指導・監督を強め、国の補助の拡充を求めます。

 化学物質による環境汚染が引き起こすとされているアトピーや化学物質過敏症、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックスクールやシックハウスなどへの健康被害の調査と安全対策を強化し、地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。工場跡地や、旧日本軍の毒ガス兵器の成分をふくむ不法投棄が原因とみられる地下水の汚染などの環境汚染にたいして、住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度などを求めます。

ごみの“焼却中心主義”から脱却し、ごみを出さないシステムを製造段階から確立します

 大型焼却炉によるごみの“焼却中心主義”からの脱却を図ります。ごみの発生を設計・生産段階から削減するためには、自治体と住民に負担を押しつける現行制度を、OECDも勧告している「拡大生産者責任」の立場で抜本的に見直すことが必要です。政府がダイオキシン対策として導入を急いだ大型廃棄物処理施設の建設・運営の高コストや、処理施設の爆発事故やトラブルに、自治体は費用負担と安全性の問題で頭を痛めています。自治体は国の誘導策にのって大規模施設の建設にはしるのをやめ、事故やトラブルについてはプラントメーカーに責任ある改善と補償を要求するとともに、国もその実現のために指導すべきです。家電製品のリサイクル費用については、廃棄時に不法投棄をなくしごみになる部分を減らすために、商品の販売時に負担を求めるようにすべきです。

 不正軽油の生成から大量に発生する硫酸ピッチをはじめ、地下水から法定基準値を超えて検出されたヒ素やセレンなどの有害物質など、廃棄物の不法投棄とそれによる環境汚染に歯止めをかけ、違法行為の「やり得」を許さないために、都道府県が徹底した立ち入り検査を実施し、違反者への厳格な指導と監督をおこない、不法投棄のルートと関与者の解明、違反者はもちろん排出者の責任による撤去を実施させます。

公共事業などの大型開発による環境破壊をやめさせ、生態系や住環境をまもります

 人類生存の基盤である生態系や住環境をまもるため、環境破壊を引き起こすような大規模開発をやめさせるとともに、環境アセスメント制度を改善し、住民参加と情報公開、代替案の検討を義務づけ、事後評価を実施させます。さらに欧米で導入されている「政策の計画段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の実施を求めます。諫早干拓などをただちに中止し、自然の維持と回復の取り組みを盛り込んだ干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。

 昨年12月、輸入カエルの死因として国内で初めて確認されたツボカビは、過去30年間に中南米やオーストラリアの両生類を激減させたカビです。日本の両生類への壊滅的打撃と生態系全体への影響が危惧されます。日本は外来種生物の大量輸入国であり、それが自然界に出て日本の固有種の生息を脅かしています。動植物の輸出入検疫を強化するとともに、内外の知見にもとづくリストを作成し輸入を規制すべきです。輸入業者の立入り検査の強化も必要です。米軍の岩国基地で繁殖した毒グモが基地外にまで広がったように、港湾や空港、基地などでは意図せず付着などで入り込む外来種があり、こうした施設の周辺の監視を強めるとともに、固有種を脅かす外来種の除去をいっそう積極的に行うべきです。

地球温暖化を抑制するために地域での取り組みを強めます

 京都議定書にもとづいて2010年前後までに二酸化炭素などの温暖化ガスの排出量を、1990年比で6%削減するという日本の国際公約は、達成が危機的状況にあります。政府が頼みの綱としている原発の新増設は安全性に問題があり、温暖化ガスの排出量の8割をしめる事業所や官庁からの排出は、日本経団連の「自主行動計画」まかせのままでは、温暖化ガスの排出削減は進みません。原発依存をやめ自然エネルギーの導入に本腰を入れ、政府と企業・業界との自主協定によって削減を担保するなど、いっそうの取り組みを政府に求めるとともに、地域でも路面電車など公共交通機関へのシフトや、パーク・アンド・ライドの推進、ロード・プライシング制の検討で都市部への自動車流入の抑制を図ります。都市の気温が上昇するヒートアイランドを防止するため、都市の過密化を避け、緑化の促進を図ります。

プルサーマル計画の中止、既存原発の総点検と計画的縮小をすすめます

 原発は、未確立な技術であり、5年前の損傷隠しや、磨耗した配管の破裂で死傷者を出した美浜原発の事故(2004年)にひきつづき、東芝による給水流量計の不正操作や電力など4社の冷却用海水温のデータねつ造が明るみにでるなど、ずさんな検査体制とルール違反は深刻です。東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発にたいする地震研究者の警告などが示すように、政府の原発拡大政策は無謀です。老朽原発をはじめ安全が危ぶまれる原発については、運転停止を含めた必要な措置をとらせます。原発の危険性を増幅するだけのプルサーマル計画の中止、六ヶ所再処理工場をはじめ核燃料サイクル施設の総点検の実施と計画の中止、既存原発の計画的縮小を進めます。政府は、自治体がプルサーマル実施を受け入れたり、高レベル放射性廃棄物の最終処分場に応募すれば、手厚い補助金を出すと自治体に働きかけています。自治体は、住民の安全を補助金と引き換えにするような姿勢を採るべきではありません。

太陽光・熱、小水力、バイオマスなど自然エネルギーの開発・利用を本格的に促進します

 エネルギーは食料とともに経済・社会の存立の基盤であるにもかかわらず、日本のエネルギー自給率はわずか6%(2005年度)にすぎません。地球の温暖化防止のためにも、エネルギー政策は要です。エネルギーの自給率を引き上げ、また地球温暖化対策を進めるためには、エネルギー効率の徹底した向上とともに、環境に配慮した自然エネルギー源の開発・活用に本格的に取り組む必要があります。風力や太陽光・熱、地熱、小水力、波力や、あるいは畜産や林業など地域の産業とむすんだバイオマス・エネルギーなどは、まさに地域に固有のエネルギー源です。こうして得られる電気やガスを販売することで地域に新たな収入が生まれます。事業の成果や副産物を地元に還元したり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化に役立ちます。

 自然エネルギーの普及に取り組んでいる人たちの声を反映させ、NGOがとりくんでいるように2020年に自然エネルギーの割合を20%にすることができるよう、意欲の出る制度に改善して、自然エネルギーの取り組みを活性化させます。そのためには、導入目標を大幅に引き上げ、固定価格による電力の買い取り制度を導入すべきです。廃棄物発電は、林業の廃材や加工くずなどに限定し、廃プラスチックなどを大量に燃やすやり方は対象外にすることが必要です。小規模・分散型という特徴をもつ自然エネルギーを利用して発電した電力を利用し、既存の電力供給システムに組み込んでいく系統連携のやり方についても、地域での先行的な取り組みをやりやすくするために、制度の改善や財政的支援を自治体や政府に求めます。

 自然エネルギーの設備設置への補助を手厚くし、発電量に応じた助成の創設を求めます。原子力のために巨費を注ぎ込んでいる電源開発促進税や、石油関係諸税などの税制の見直しを前提に、化石燃料の消費や自動車などがもたらす環境への負荷も考慮し、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税の導入によって、自然エネルギー促進のための財源の充実を図ります。


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