日本共産党

2003年3月22日しんぶん赤旗

主張

中教審答申

根拠なき基本法改悪は反対だ


 中央教育審議会(中教審)が「教育基本法の改正と教育振興基本計画の策定を進めていただきたい」とする答申をまとめました。

 いま、国民は学力の問題や十年間で倍増した不登校をはじめ、教育の問題をなんとかしたいと強く思っています。しかし、中教審の答申はその国民の思いに沿うものではありません。何よりも、今日の教育が荒れている問題を教育基本法に求める根拠はまったくないからです。

不当な支配を正当化

 中教審の鳥居会長は、「基本法が悪いから教育の問題が起こる、だから基本法を直すんですね、という質問をよくいただくが、そうではないと答えている」と発言しています。

 中間報告にあった、現行法は「不十分」との評価が答申では削られたことにも見られるように、中教審ですら、“教育基本法に問題あり”とすることはできませんでした。

 それにもかかわらず、現行法に「重要な理念や原則を加える」としたのは、はじめに“見直しありき”という政府の立場を貫こうとしたからです。基本法見直しには、根拠も道理もないことがはっきりしました。

 しかも、その内容は重大です。

 その最たるものが、教育内容等への国の関与を強調した「教育振興基本計画」の策定を教育基本法に加えるとしたことです。

 現行法は、国による教育への「不当な支配」を禁じ、教育行政の任務を教育「条件の整備」に限定しています。ところが、政府は学習指導要領をはじめ教育内容に介入し、そのことが学力問題など教育を行き詰まらせてきました。失敗済みの教育への「不当な支配」を正当化する改悪は許されません。

 国民の懸念と批判を招いているのが「国を愛する心」を教育理念に加える問題です。答申には、「国を愛する心を大切にすることが国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないことは言うまでもない」との文言が入りました。背景には、自民党などに「愛国心」を侵略戦争肯定や憲法改悪と結び付ける時代錯誤的な勢力が残存しており、それが「教育基本法改正」に最も熱心であるという事情があります。こうしたもとで「国を愛する心」を基本法に位置付ければ、「日の丸」「君が代」の押し付けなど、国民の思想・信条の自由への侵害が広がることは必至です。

 教育基本法は、教育の目的に「人格の完成」をおき、「平和的な国家及び社会の形成者」の育成をかかげ、子どもの成長と発達を何よりも大事にする教育の実現をめざしたものです。中教審答申でも、現行法を貫く理念は「憲法の精神に則った普遍的なものとして今後とも大切にしていく」とせざるをえませんでした。

 今日の教育の問題はむしろ、この基本法の精神を歴代の自民党政治が踏みにじってきたことに要因があります。

基本法生かしてこそ

 いま大切なことは、基本法を改悪するのではなく、その精神を教育の立て直しに生かすことです。

 「人格の完成」(一条)を教育の目的にすえ、子どもたちを苦しめている「管理と競争」の教育を改めることです。「教育の機会均等」(三条)や「諸条件の整備確立」(一〇条)の立場から、世界一高い学費や劣悪な奨学金を改善する、「三十人学級」や私学助成の拡充などに真剣に取り組むことが急がれます。そうしてこそ未来を切り開く希望ある教育にすることができます。


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