日本共産党

「主張」

国立大学法人化
教育研究の土台を崩すもの

2002年3月28日


 国立大学の独立行政法人化を検討してきた文部科学省の調査検討会議が、最終報告「新しい『国立大学法人像』について」を、遠山文部科学大臣に提出しました。文科省は、これをふまえて早急に法案化するとしています。

教職員を非公務員化

 最終報告は、国立大学の制度をなくし、法人化をはかろうとするものです。その内容は、(1)文科相が各大学の目標を定め、その達成度を国からの交付金配分に反映させる(2)教職員を非公務員とし、教員による営利企業の兼職を可能にする(3)大学の重要事項を決定する「役員会」に学外者が参加し、学長が経営責任をもってトップダウンで大学を運営する(4)学費は政府の定める枠内で大学ごとに決める、などです。

 公立大学も同様に法人化することを、総務省などが検討しています。

 独立行政法人のしくみを国立大学に適用するとした中間報告(昨年九月)は、大学関係者やマスコミから「大学にはふさわしくない」など、厳しい批判をうけました。最終報告は、この批判にまったくこたえないばかりか、教職員の身分を非公務員にすることなどを、大学関係者の強い反対にもかかわらず、新たにもりこんでいます。

 国立大学教職員の非公務員化によって、雇用や身分の不安定化を招き、教授会による教員選考などの人事権や、評議会による学長選考などを定めている教育公務員特例法の規定をなくすことは、重大です。この規定は、「学問の自由」を保障するために国公立大学に適用されているものであり、少なくない私立大学でも準用して取り入れられています。

 これによって形成される「大学の自治」が、教職員の安定した身分と相まって、自由な教育・研究環境を保障し、多くの優れた研究成果と人材をうみだしています。最終報告はこの法制上の保障を一挙に取りはらうものです。

 しかも、非公務員化は、公務員として「教育を通じて国民全体に奉仕する」という大学教員の立場を弱め、営利企業の兼職などによって、大企業の利潤追求に奉仕することにもなりかねません。

 さらに、「効率性」を尺度に、政府が定める目標の下で教育研究がすすめられ、大企業など学外者が大学運営に参加するなど、政府・財界の意向で大学の教学も経営も左右されるしくみを強めることになります。

 このような大学になれば、「学術の中心」としての自由な雰囲気は失われ、政府・財界が求める目先の経済的目的にそわない地道な基礎研究や、大学が担っている広い学問分野の教育は成り立たなくなるでしょう。マスプロ授業など劣悪な教育条件は放置され、学費の大幅値上げや学部間格差もさけられません。

国民の立場で改革を

 小泉内閣は、大企業の競争力強化に役立つように、大学制度を根本的に変える「大学の構造改革」をすすめようとしています。最終報告はこれにそったものであり、高等教育への国の責任をいっそう後退させ、わが国の知的基盤である大学の自由な発展を大きくゆがめるものです。

 「誰もが学べる安い学費に」「国民のくらしと文化に貢献する豊かな研究を」などの国民の要求にも、逆行しています。

 このような国立大学法人化に反対し最終報告の撤回を求めるとともに、国民の立場にたった大学改革を実現するために、国民的な討論と共同がひろがることを期待します。


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