日本共産党

2002年度予算案にたいする
日本共産党の見解

2002年2月12日 日本共産党国会議員団


 日本共産党の筆坂秀世書記局長代行が十二日、発表した「二〇〇二年度予算案にたいする日本共産党の見解」は次の通りです。


 日本経済はいま、所得、消費、生産が連鎖的に落ち込み、物価下落が同時にすすむ、いわゆる「デフレの悪循環」に突入しつつある。これは戦後の日本でも、他の主要国でも経験したことのない事態である。小泉内閣が発足してから九カ月経過したが、昨年の企業倒産は一万八千七百八十七件におよび、完全失業率は内閣発足時の4・8%から昨年末には5・6%へと増加した。一方、昨年のサラリーマンの賃金(名目)は1・2%減、全世帯の消費支出(名目)は2・7%も減るなど、国民生活関連の指標は軒並み悪化している。このままでは国民生活は、壊滅的な打撃をこうむることになる。

 ところが小泉内閣は、「構造改革なくして成長なし」という空疎なスローガンのもと、乱暴な不良債権の早期最終処理、大企業のリストラ応援など、経済と暮らしを破壊するだけで、何も創造せず、何の将来見通しも示せないでいる。これは、小泉首相が「自民党を変える」とのべたにもかかわらず、“大銀行、大企業向け施策には熱心だが国民の福祉・暮らしには冷酷”という自民党政治の枠組みは、何も変えられないからである。二〇〇二年度政府予算はまさに、そのことを実証したものである。

 今日の経済危機を打開するためにも、結局、国民には“痛み”だけ、大銀行・大企業には“際限のない応援”という小泉「構造改革」をきっぱり中止するとともに、経済運営の軸足を、国民の暮らしと営業に置く方向に転換することである。日本共産党は、この見地から二〇〇二年度予算を、つぎの六つの柱にもとづいて抜本的に組み替えることを要求する。 

一、雇用をまもり、くらしの不安をなくす

 政府予算案に盛り込まれた雇用対策は、“構造改革をすすめるためには、離職者が発生するのはやむを得ない”として、大企業のリストラを大前提にしたうえで、これによって失業した労働者の「再就職支援」をおこなうというものにすぎない。

 EU(欧州連合)が昨年七月に発表した「企業の社会的責任」についての提言は、ただ大企業が株主のために利益をあげればいいというのではなく、雇用、環境、取引業者、地域社会などにたいする社会的責任を果たすべきであり、そのことが企業の競争力にも貢献するという立場を明確に打ちだしている。ただちにリストラ応援の政治をやめ、雇用をまもる社会的責任を企業に果たさせるために、本格的にとりくむべきである。

リストラ規制、「サービス残業」の根絶

 「希望退職」「転籍」の強要なども有効に規制できる解雇規制法、地域経済に打撃を与える一方的な工場閉鎖などを規制する立法措置など、「企業の社会的責任」を明確にしたルールをつくるとともに、それをまもらせる監督体制、労働者の相談や申告に即応できる体制を確立する。

 長時間労働の是正に本格的にとりくむ。「サービス残業」を根絶すれば九十万人、50%にとどまっている有給休暇の取得を欧米なみに100%にすれば数十万人の、新たな雇用の必要が生み出される。これを保障する事業計画を企業に義務づける。さらに年間三百六十時間を残業の上限とする現行の大臣指針を法的規制とする労働基準法改正にとりくむ。 

福祉・教育・防災など公的分野の雇用を拡大する

 多くの国民が願う三十人学級に政府が背を向けているため、小中学校教職員の予算定員は九百七人の減となっている。早期に三十人学級を実施すれば、小中学校だけでも十二万人の新たな雇用が生じる。五万人以上の保育所待機児童を解消し、ヨーロッパなみに保育士の配置基準を改善すれば十万人の保育士、学童保育には数万人の指導員が必要である。介護を必要とするお年寄り全体にサービスを提供するためには、ホームヘルパーなど、数十万人が必要である。消防庁が決めた「消防力の基準」からみて、全国で六万人近くの消防士が不足している。こうした、暮らしに直結した公的分野の雇用を計画的に拡大する。

 緊急地域雇用創出特別交付金制度については、失業者が就労しやすくすることや、半年間に限定されている雇用期間の延長など、活用しやすくするための改善をはかる。 

雇用保険の拡充を

 昨年後半の失業手当受給者が毎月百十万人を超し、さらに失業者の増大が見込まれるというのに、失業手当の予算は毎月八十四万人分しか計上されていない。これは、昨年四月に雇用保険制度が改悪され失業手当の給付期間が短縮されたことによって、来年度には給付期間の切れる失業者が急増することが見込まれるためである。失業者にとって命綱である失業手当の拡充は急務である。短縮された給付期間を元に戻すとともに、訓練延長給付などの拡充をはかる。 

二、ほんとうに「持続可能な社会保障制度」にするために

 社会保障制度は、老齢や病気、失業など経済的な負担能力がほとんどなくなっても、安心して医療や介護を受けたり、生活費の給付を受けられる、そのために「所得のある時にその経済的能力に応じて負担する」という制度であり、この道理をつらぬいてこそ、社会保障制度は「持続可能」になる。 

医療改悪の中止と自己負担の軽減

 政府・与党が、高齢者医療は原則一割負担と償還払いとし、六カ月超の入院費用の一部保険はずしなどを政府予算に盛り込んだうえ、サラリーマンの三割自己負担を二〇〇三年四月に実施することを明記した法案提出を決めたことは重大である。この不況下で、これが強行されれば、受診抑制が急増し、かえって症状の重症化をまねき医療保険財政を圧迫することになる。これこそ、持続を不可能にする最悪の選択である。医療を受けやすくし、早期発見・早期治療こそ重要である。

 家計消費支出に占める医療費の窓口負担などの「医療費」の割合でみても、公的医療保険制度における自己負担の割合でみても、すでに日本は主要国のなかで最も高い水準にあり、これ以上、国民負担を増やす理由はない。「持続可能な医療制度」にするためにも、このような患者負担増と保険はずしなどの医療改悪をやめ、自己負担の軽減に踏み出す必要がある。そのためにも、(1)国が最優先で財政支出をおこない、(2)高すぎる薬剤費にメスを入れ、(3)保険料は経済的能力に応じた負担とする、などによって、医療保険財政を立て直すべきである。高すぎる国民健康保険料の引き下げのため、国庫負担を元に戻し、保険料滞納者からの保険証取り上げは直ちに中止する。すべての自治体で実施している乳幼児医療の無料制度を国の制度とする。 

介護基盤の整備促進、利用者負担の改悪中止

 六十五歳以上の高齢者は、昨年十月から介護保険料を満額徴収されているが、負担が二倍になったわりには、いぜんとして介護基盤整備が遅れている。ところが、特別養護老人ホームなどの施設整備費は百六十億円も削減されている。これを大幅に増額する

 政府は、特別養護老人ホームの入居者には、これまでの介護保険の利用料にくわえ、部屋代や水光熱費を「ホテルコスト」として月四万〜五万円も徴収しようとしている。これでは何のための介護保険か、ということになる。介護施設から介護の必要な人をしめ出す「改悪」を中止し、保険料・利用料の減免を要求する。 

児童扶養手当の改悪中止、無年金障害者の救済

 政府予算は、母子家庭に支給される児童扶養手当の所得制限を強化したうえ、支給額も減額するなどの改悪を盛り込んでいる。このような無慈悲な改悪は中止し、拡充すべきである。

 無年金障害者の多くは、所得を形成できず年金に加入できなかった時に、不幸にして障害者になった人である。こうした人を救済することは、国民の生存権を明記した日本国憲法と世界的な社会保障の流れからも、当然の措置である。

学費値上げ・無利子奨学金削減の中止

 政府予算は、またもや国立大学の授業料値上げを盛り込む一方、日本育英会の無利子奨学金を一万六千人分も削減している。これは、小泉首相のいう「米百俵の精神」とどう両立するのか。使い古された「私学との格差是正」による国立大学の学費値上げは中止するとともに、奨学金を「教育ローン」化する企ては放棄すべきである。 

三、公平・公正な税制を

 一九九〇年から九九年までの間に国税収入が約十一兆円も落ち込むなど、「税収の空洞化」が進行している。これは不況もあるが、歴代自民党政府が、高額所得者減税、大企業減税などを繰り返してきたからである。「税収の空洞化」を是正するためには、戦後、まがりなりにも確立されてきた直接税中心、総合・累進、生計費非課税という原則にたって、税制の民主的再建をはかることである。

 ところが小泉首相や塩川財務大臣などは、消費税増税や所得税の課税最低限引き下げなど、もっぱら庶民増税の発言を繰り返している。これは、税制のもつ所得再分配機能を踏みにじるものである。

所得税の課税最低限引き下げではなく、消費税減税こそ

 小泉首相は「税金を納めていない人が多すぎる」などとのべている。しかし、年間収入が百万円程度のパート労働者がどうやって税金を納めることができるのか。このような所得税非課税の低所得者は現在、就業者数の20%強存在するが、これは何もいまに始まったことではない。一九八〇年代の後半には30%弱であり、しだいに納税者数が増えてきたというのが実態である。

 また、“日本の課税最低限が高すぎる”というのもウソである。「財務省モデル」による課税最低限三百八十四・二万円は、購買力平価で国際比較をおこなえば、アメリカ、フランスと同程度であり、ドイツよりはるかに低い水準である。

 所得税の課税最低限の引き下げという愚策を放棄し、消費税減税にこそ踏み出すべきである。消費税減税は、庶民の税負担を減らすだけでなく、税の所得再分配機能の再構築にも役立つ。しかも、国民の消費購買力を増やし、「デフレ」脱却にも貢献する。 

「基幹税」である所得税・法人税の再建を

 一九九〇年当時とくらべて、所得税の最高税率は50%から37%へ、法人税率は37・5%から30%へと大幅に引き下げられた。さらに、株式の売却益にたいする税負担を大幅に軽減する「証券税制」の改悪に加え、二〇〇二年度予算案では、グループ大企業の税負担を減らす「連結納税制度」が盛り込まれている。「基幹税」がこれほど減税されれば、「税収の空洞化」が起こるのは当然である。

 かつて、財政赤字と貿易赤字という“双子の赤字”で苦しんでいたアメリカは一九九三年、所得税および法人税の税区分を三段階から四段階にし、最高税率を引き上げた。その結果、景気回復もあって近年、大幅な財政黒字を計上するようになった。日本も、この経験に学ぶ必要がある。“勤労意欲や国際競争力を阻害しないため”、などというごまかしは許されない。

 所得税は、土地・株式などの課税が不当に低くなる分離課税を総合課税に改めるとともに、最高税率の引き上げなど累進税制の再構築をはかるべきである。

 法人税はさまざまな税逃れの仕組みにメスを入れるとともに、アメリカ、ドイツ、フランスなどにくらべて三〜四割も低い、大企業の税と社会保障負担を適正なものにすべきである。

四、産業・企業に資金をゆきわたらせ、中小企業への支援こそ

 長引く不況のもとで、ただでさえ厳しい状況を強いられている地域経済と中小企業は、乱暴な「不良債権の早期最終処理」がもたらした貸し渋り・貸しはがしにくわえ、貸出金利の上昇や、政府主導の信用金庫・信用組合の連続破たんなど、かつて経験したことのない重大な危機に直面している。

 ところが政府は、いまなお「七十兆円の公的資金枠」を維持するなど、もっぱら銀行支援に熱中している。昨年末までに、公的支援の使用額は約二十九兆円に達し、国民の負担となることが確定している金額は約十兆円にものぼる。小泉内閣は、大銀行の不良債権処理を助けるため、公的資金の再投入もありうるとしているが、いま必要なのは、銀行への公的資金投入を中止するとともに、産業・企業に資金をゆきわたらせ、地域経済を支えている中小企業を支援することである。 

地域金融機関向け「検査マニュアル」を実態に合ったものに

 中小企業への融資の実態に合わない「検査マニュアル」の使用をただちに中止するとともに、地域への貢献と中小企業の育成の観点を含め、金融機関自身の健全な経営状況をチェックできるような、独自の検査基準に改める。信金・信組の経営を安定させるため、それぞれの連合組織が自主的におこなっているとりくみを援助する。 

公的金融の役割強化を

 民間金融機関による貸し渋りや、貸しはがしで、中小企業が資金繰りに悩んでいるなかで、公的金融機関がいっそう大きな役割を果たすよう求められている。政府系金融機関の融資にかかわって、バブル期の高金利部分を減免する措置を復活させるべきである。また信用保証協会が相手先中小企業の「リスク」に応じて保証率を変え、融資先の選別を促進するようなことはやめ、信用保証の枠を大幅に上積みする。返済期間の長期化など中小業者の実情に即した抜本的対策をとる。

中小企業予算の増額を

 中小企業予算は5%削減され、一千八百六十一億円と、一般歳出比で過去最低になった。米軍にたいする「思いやり予算」の74%という少なさである。昨年下半期には、製造業の倒産が急増し、「国内の『モノ』作りを根幹から揺るがす事態」(帝国データバンク)といわれるなかで、中小企業がおこなう新製品開発や技術開発についての支援を抜本的に強化することが必要である。地域産業集積活性化法の指定産地のとりくみにたいする予算や、地域活性化創造技術研究開発費などについて、中小企業の自己負担分(三分の一)を大幅に軽減し、利用しやすくする。

 商店街振興組合や商工会などがおこなう商店街・商業集積の活性化を図るため、空き店舗対策や駐車場対策などソフト事業への補助である商店街等活性化事業に今年度から三分の一の自己負担が導入された。自治体や商店街の負担が重くなったため(それぞれ三分の一)、応募が困難になっている。国の補助率を抜本的に引き上げて、自治体負担を軽減し、商店街の負担をなくすようにすべきである。

 大企業の一方的な単価切り下げや、下請けいじめが横行しているにもかかわらず、下請け対策費は削減された。下請け対策費を増やし、専任下請検査官を増員する。

五、国民の命と健康、安全を大切にする予算にBSE、いわゆる狂牛病への抜本的なとりくみを

  畜産・酪農農家や焼き肉業者などはいま、経営の存亡をかけた深刻な事態にまでおいこまれている。ところが狂牛病関連予算は、検査体制の改善や食肉センターの施設整備のみで、わずかに十三億円が計上されているだけである。

 安全な牛肉を安定的に供給するために、(1)感染した牛や、その牛と同居していたなど感染の疑いが高い牛については、国が感染していない牛を基準にした価格で買い入れる、(2)感染の原因として注目されている牛肉骨粉についても、国が感染牛の発生以前の価格で買い入れる、(3)全頭検査以前に国内で解体されたことが確認された牛肉を、発生前の価格で国が買い入れる、(4)廃用牛を国が買い入れ、責任を持って処置する、(5)農家・流通業者・焼き肉店などへの損失補償をおこない、安全な牛の解体のためのと畜場の整備をすすめる――などの措置をとる。 

農業・食料をまもる

料自給率45%という目標を掲げたにもかかわらず、いっこうに40%から引き上げる具体策が出てこない。農業対策について、一部の認定農家だけに所得保障をしぼることをやめ、広範な農業の生産基盤をまもるためにも、農産物下落で経営危機に追い込まれている農家・農業生産者へ、EUと同様に所得保障を実施する。

 野菜やウナギ、ワカメなどの水産物の輸入急増にたいして、WTO(世界貿易機関)で合意されたセーフガードなども踏まえた効果的な対策をとるとともに、地域経済の維持と食料自給率の向上を目指した振興策に、政府が本格的にとりくむ。

 そのためにも、トラクターなどの揮発油税相当の額を農道整備事業の“特定財源”としているような“財源消化が先にありき”というやり方を改め、一般財源にする。諌早干拓のように無駄な農業公共事業への固執をやめ、切実な価格・所得保障対策の充実を図る。

環境対策を強化する

 ことし八月には、南アフリカのヨハネスブルクで十年ぶりに「持続可能な開発に関する世界首脳会議」が開かれる。OECD(経済協力開発機構)が日本の環境保全の成果に関する審査報告書で勧告している戦略的環境アセスメントの実施にくわえ、汚染の原因となる物質・商品を生産・使用している企業の責任と負担を明確にした環境対策税の創設、地球温暖化を引き起こす炭酸ガス排出を削減するための産業界の「自主的とりくみ」の見直しなどをおこなうべきである。

 諌早干拓や川辺川ダムなど、政府が強引にすすめる大規模公共事業によって、貴重な自然の破壊が問題になっており、緊急に環境調査を実施すべきである。

 自動車による大気汚染に関する国の責任が、あいついで裁判で明らかにされた。大気汚染防止への本格的なと すめ、当初の目標期限から十五年たっている窒素酸化物環境基準を早急に達成するとともに、増え続ける公害患者の認定と救済にとりくむ。深刻な事態となっている土壌汚染対策に本格的にとりくむため、予算を大幅に増額する。

 環境対策の名のもとに大型焼却炉の建設を強引にすすめるのでなく、生産者が廃棄物処理まで責任を持つ「拡大生産者責任制度」を導入した廃棄物政策を実施すべきである。

原発依存のエネルギー政策の転換を

 原子力関係予算の総額は、文部科学省と経済産業省の分を合わせ、前年度比3%増の四千八百九十四億円にのぼる。地球環境保全予算(財務省まとめ)の四割が原子力関係予算である。中部電力浜岡第1号機の水素爆発事故や、六ケ所村の核燃料サイクル施設での水漏れなど、安全上重大な事故が続いているにもかかわらず、「原子力発電を……着実に推進する」(小泉首相の施政方針演説)ことは許されない。風力、小型水力、太陽熱・光、バイオマス、水素(燃料電池)などの再生可能なエネルギー源の開発と利用を、抜本的に強化する。そのたの太陽光発電の装置を設置する住宅への補助単価を元にもどし、補助の総額を拡大するなど、きめ細かな対応が必要である。

被災者の生活再建、災害対策の強化を

 昨年八月、国連の人権規約委員会は兵庫県と日本政府にたいして、高齢者、障害者への地域サービス向上と、住宅再建資金の調達や二重ローンの返済に効果的な措置を迅速にとるよう勧告した。阪神・淡路大震災をはじめとする災害の被災者の生活再建は急務である。政府は「事実誤認」などといって逃げるのではなく、日本共産党が昨年六月に提案したように、現行の被災者生活再建支援法を改正して、全額国の負担で、支給限度額を百万円から一千万円に引き上げ、使途規制を撤廃して、現行法では適用除外とされている住宅再建への支援をおこなえるようにすべきである。既存ローンについても、災害弔慰金法の改正で、長期・低利の資金への借り換えができるようにする。

 全島避難がつづいている三宅島については、帰島したさいに生活が続けられるよう、腐食性ガスなどから住居を保全するための支援や、就業助成の活用をおこなうべきである。

 東海大地震への観測強化、震災への備えを強化することが求められている。監視・観測機器の老朽化などを放置せず、更新・整備を急ぐ必要がある。監視業務の「集約化・効率化」の名で人員削減をすすめるのではなく、観測データの処理・分析、機器のメンテナンスなどを支える人員を確保する。

六、浪費にきっぱりメスを入れる、ほんとうの財政改革をめざす予算に

 小泉首相は、「国債発行三十兆円以内」の公約を達成したと、自画自賛しているが、これは、四兆円もの「隠れ借金」や二〇〇一年度第二次補正予算での二・五兆円の公共投資前倒しでごまかした結果にすぎない。

 公共事業や軍事費などの浪費は、まったく「聖域」とされている。これでは財政再建の保障などまったくないことは、二〇〇三年度には三十六兆円、二〇〇五年度には四十二兆円もの国債発行が必要になってしまうという財務省の試算でも明らかである。

公共事業の浪費をなくす

 予算案での公共事業費の削減は、塩川財務相が発言しているように、建設コストの低下分を削減した程度で、むだな事業それ自体を減らすことにはなっていない。ゼネコン奉仕の大型公共事業にメスを入れ、浪費をなくして、公共事業費を段階的にバブル以前の水準に戻す。

 関西空港二期工事や中部国際空港、川辺川ダム、諌早湾干拓など、必要性もなく、採算の見込みもない事業、重大な環境破壊をもたらす事業は、きっぱり中止する。過大な交通量予測を前提とした高速道路整備計画はいったん凍結し、抜本的に見直す。整備新幹線については、在来線の廃止や多額の地元負担につながる現在の計画を見直し、予 算規 模も財政状況をふまえた適正なものにする。

 老人ホームや保育所の建設、老朽校舎の改築、公共住宅の拡充、公共施設のバリアフリー化や交通安全対策など、生活改善型の公共事業を重視し、予算配分を転換する。

 政府は、自動車重量税のうち二千二百四十七億円を一般財源化するとしているが、これは国・地方の道路特定財源全体の4%にすぎない。道路特定財源制度は廃止して一般財源化し、不要不急の道路建設が推進される仕組みを改める。

 大型プロジェクトを推進する五全総(全国総合開発計画)や、道路・港湾・空港などの長期計画を廃止する。

軍事費の大幅削減

 約五兆円の巨額にのぼる軍事費は、来年度も七億円増やされ、史上最高を更新した。自衛隊の海外出動やアメリカへの戦争協力のための空中給油機の初導入や、「ミサイル防衛」構想の有力手段として想定されている新型イージス艦の新設などの中止、在日米軍への「思いやり予算」の全廃、新米軍基地建設のためのSACO(日米特別行動委員会)予算の削減、軍事衛星計画の中止などによって、軍事費を大幅に削減する。 

国民本位の特殊法人改革を

 政府の「特殊法人改革」は、無駄な公共事業や大企業奉仕の事業は温存し、公共住宅建設や奨学金など、国民向けの事業は廃止・縮小するという、まったく逆立ちしたものである。石油公団、日本政策投資銀行、核燃料サイクル開発機構などの無駄づかいに抜本的なメiXを入れる。住宅金融公庫や都市基盤整備公団、日本育英会の縮小・廃止計画は中止する。高級官僚の天下りや「渡り鳥」を禁止し、ファミリー企業との癒着をただすなど、利権構造にメスを入れ、税金の無駄づかいをなくす。

政治腐敗を生み出す予算の仕組みを改める

 公共事業発注契約に関する政治家の「口利き」事件では、3%の「成功報酬」が約束されていた。ODA(政府開発援助)をめぐっても、「族議員」の暗躍が指摘されている。こうした腐敗をなくし、歳出の無駄を削減する。

 内閣官房の機密費(報償費)は、二〇〇一年度補正(第一次)後と同額、外務省分については若干減っただけで、依然として使途も明らかにされず、疑惑に包まれたままである。野党工作資金に使われた実態や、財政法違反の「上納」問題など、疑惑を徹底的に解明し、不要経費を削減する。

 国会議員歳費総額の二倍近い三百億円をこえる国民の血税が、日本共産党を除く政党に交付され、政党の都合で勝手に使われ、使途も不明なままになっている。このような政党助成金は、ただちに廃止すべきである。 

地方交付税の削減や市町村合併のおしつけをやめる

 政府は、本来国が責任をもって増額すべき地方交付税を削減し、地方自治体に借金をおしつけたうえ、小さな自治体への配分を減らすことによって、財政面から市町村合併を促進しようとしている。自治体の合併問題は、国が目標を決めて上からすすめるのではなく、住民の意思を尊重すべき問題である。市町村合併のおしつけをやめ、地方交付税など必要な地方の財源確保は、国が責任もっておこなうべきである。


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