2001年12月26日(水)「しんぶん赤旗」

「しんぶん赤旗」主張

芸術振興会

独立法人化は文化振興に逆行


 小泉内閣は特殊法人の「整理合理化計画」に、日本芸術文化振興会の独立行政法人化をもりこみました。本来、もっと増やすべき芸術・文化活動への公的支援を削減し、国の監督は強めようという大改悪です。

 日本芸術文化振興会は、芸術文化振興基金によって芸術・文化活動への助成をおこない、国立・新国立劇場の運営にかかわっています。

政府の強力な「監督」

 芸術文化振興基金は、自民党政治の貧しい文化行政にたいして、文化関係者がその充実を求めて一九九〇年にできた制度です。団体の運営助成でなく、事業の赤字補てんを中心としているなどの制度的な弱点を抱えているものの、多様な芸術・文化活動への助成として一定の成果をあげてきました。

 映画では「午後の遺言状」「アイ・ラヴ・ユー」「郡上一揆」など、社会と人間の真実にせまる作品が助成を支えに生み出されてきました。

 新国立劇場も、長年の舞台関係者の運動で九七年にやっとオープンしたばかりです。時代と向き合う意欲的な創作作品を生み出し発表する場として、なくてはならない劇場となりつつあります。

 伝統芸能公演を中心とする国立劇場も、商業的には成り立ちにくい「通し上演」をしたり、後継者養成事業で大きな成果をあげています。

 今回の「整理合理化計画」は、この振興会を独立行政法人とするとともに、国立・新国立劇場の事業や芸術文化振興基金をつうじての国の助成を「抑制」「終了」することを求めています。

 重大なことは、独立行政法人になると、自由・自律を生命とする芸術・文化活動に、政府の強い「監督」がもちこまれることです。

 独立行政法人は、「行政コスト」削減のために、文部科学大臣によって「中期目標」が決められ、事業が目標にそって「効率的」にすすめられたかどうか、文科省内におかれた機関の「評価」を受けることになります。その評価を予算配分に反映するしくみによって、政府は強力な「監督」をおこなうようになります。

 すでに独立行政法人となった国立美術館・博物館には、調査研究や教育普及など内容にも立ち入った「中期目標」が文科省から押しつけられ、研究員が配置されない部門が出るなど、影響が出ています。

 文化芸術振興基本法の制定にあたって、日本共産党議員は行政的介入への懸念を表明し、その歯止めを求めましたが、今回の「計画」は、芸術・文化への国の介入が現実の危険となっていることを示しています。

 また、国立・新国立劇場は、独法化の下で国費投入を「抑制」され、民間委託がすすめられることになります。

不介入と支援充実を

 ヨーロッパの国立劇場の運営形態はさまざまですが、運営資金は大半が公的資金によってまかなわれています。しかも、芸術監督が強い権限をもち、事業の運営は芸術関係者が自律的におこなうなど、国はお金は出しても運営には介入しないというのが当然となっています。

 今回の「計画」は、こうした世界の流れと逆行するものです。

 すでに演劇、映画関係者から「計画」に反対の声があがり、新国立劇場や芸術文化振興基金の充実を探る模索が始まっています。国は、芸術・文化活動の活動条件を整えるよう公的支援を充実し、その運営や内容に口を出すようなやり方はきっぱりとやめるべきです。


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