人権救済機関のあり方について

人権擁護推進審議会の「最終答申」発表にあたって

2001525日 日本共産党・衆議院議員 木島日出夫


 人権擁護推進審議会の「最終答申」発表にあたって、日本共産党国会議員団法務部会長の木島日出夫衆院議員は二十五日、次のような見解を明らかにしました。


一、人権擁護推進審議会は二十五日、法務大臣に人権救済制度のあり方について「最終答申」を提出した。答申は、裁判所とは別に、わが国に政府から独立した包括的な人権救済機関を設置する方向を打ち出しており、一定の積極的意義がある。

 しかし、答申は、公権力による人権侵害や公害・薬害など行政がかかわるものに対して消極的であり、大企業の思想差別をはじめとする人権侵害に対しては必要な特別の対策がない。また、現在の人権擁護委員制度との関連もあいまいであり、独立機関としての制度的保障も不十分である。

一、わが国の人権の状況は、憲法で保障された基本的人権が、自民党政治のもとで、いちじるしく侵害されている。「職場に憲法なし」と言われている大企業では、賃金・雇用などでの女性差別、思想・信条による差別が、依然としてまかりとおり、警察の自白強要のための過酷な取り調べ、警察留置場(代用監獄)や刑務所などでの人権侵害もあとをたたない。薬害エイズへの加担、ハンセン病患者に対する隔離政策など、行政機関がかかわった被害も深刻である。

 いまや、政府から独立した人権救済機関の設置は、一九九三年国連総会で「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)が採択されるなど、国際的な流れとなっている。しかし、日本政府は、九八年、国連子どもの権利委員会ならびに国際人権(自由権)規約委員会から、人権侵害の申し立ての調査のための独立した機関の設置を、あいついで勧告されたにもかかわらず、改善の手だてをなんらつくそうとしていない。

一、日本共産党は、新たに政府から独立した包括的な人権救済機関の設置は当然必要であるが、最小限、次のような条件が満たされる必要があると考える。

 (1)、[1]人権救済機関は、個別の人権侵害の救済にあたるとともに、政府の施策に対しても人権侵害の調査や是正勧告、国際人権条約から遅れている国内法の整備、完全実施、各種人権条約・選択議定書の批准・承認の促進など、国民の人権保障のための積極的な活動をおこなう責務を明確にする。

 [2]そのために、政府から独立して活動できるよう、委員の任命手続きを民主化するとともに、運営、財政などの面での独立性を確保する。

 [3]公権力や大企業などによる重大な人権侵害について、事実調査が十分におこなえるよう、関係者への出頭命令と聞き取り調査、関連する書類や物件の提出命令、関係場所への立ち入りなどの権限を法律で規定する。

 (2)、マスメディアによる人権侵害については、言論・表現、報道の自由を守るうえで、九七年にNHKと民間放送が設置した「放送と人権等権利に関する委員会機構」(BRO)のような自主的な解決機関を確立し、そこで自主的に解決することを基本とする。人権救済機関は、強制力はもたないが、任意の調査権をもち、調停や是正勧告、被害回復勧告などをおこなう。

 (3)、人権救済機関は、「解同」など一部の運動団体が一方的に「部落差別」と認定し、糾弾するような事案にたいし、迎合することなく、それ自身が人権侵害にあたるときはきぜんと対処する。部落差別が許されないことは当然であるが、「差別的表現」の差し止めや削除など表現活動に関する強制的な措置をはじめ、「差別」を口実に、国民の内心の自由を侵す一方的な「教育・糾弾」などについては、認めてはならない。


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