「北朝鮮に拉致(らち)された日本人を救出するための全国協議会」から、「北朝鮮による日本人拉致問題に関する全国会議員アンケート」が日本共産党国会議員にも寄せられました。党国会議員団を代表して穀田恵二衆院議員が二十一日、次のような返事を送りました。

拉致問題に関するアンケートへの回答にかえて

2000年3月21日 穀田恵二


 「北朝鮮による日本人拉致問題に関する全国会議員アンケート」をいただきました。その趣旨書には「『超党派訪朝団』は、拉致問題を曖昧にし、ひたすら独裁国家に媚を売るという醜態を演じました」などと述べられていますが、それは、少なくともわが党については、まったくあたらない非難です。私は、超党派訪朝団に参加し、日朝間の諸問題の解決をどうはかっていくかについて心を砕いてきた政党の一員として、この問題での日本共産党の基本的立場を明らかにすることが必要だと考えました。アンケートへの回答にかえて、日本共産党国会議員団を代表して、以下ご返事します。

 一、日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との間には解決をはからなければならない問題が山積しています。北朝鮮は、戦前の侵略戦争と植民地支配によって日本が被害を与えた国々のなかで、その清算がまったく未解決のまま残っている唯一の国です。この不幸な過去の歴史を清算する課題をはじめ、日本人拉致疑惑(以下、拉致問題)やミサイル問題などをふくむ諸問題を日本共産党はぜひとも早く解決したいと考えています。

 しかし、日朝両政府間の対話と交渉の場が失われたまま、これらの諸問題の解決への糸口さえつかめない状況が最近まで続いてきました。一九九〇年の金丸訪朝団を契機に始まった日朝国交正常化交渉は、拉致問題の真相解明を会談再開の前提条件としたため、九二年十一月に決裂しました。その後も、自社さ連立与党代表団が九五年、九七年に訪朝しましたが、本交渉を開始できずに終わりました。拉致問題の解決を交渉の前提として固執する態度では、日朝間の問題の解決をさぐるための交渉そのものを閉ざすことになり、不幸な過去の歴史の清算はもちろん、拉致問題そのものの解決をも遠ざけてしまうことになったのです。

 一、この閉塞状態を打開するため、わが党の不破委員長は、昨年一月の衆院本会議代表質問で、北朝鮮との交渉ルートを開く努力を求めたのに続いて、昨年十一月の代表質問では、日朝間の交渉ルートを開くさいには、一連の懸案の解決を事前の前提条件にしない態度をとるよう、政府に求めました。「日本自身、北朝鮮とのあいだには、ミサイル問題、拉致問題などいくつかの紛争問題をもっていますが、それは、交渉によって解決すべき交渉の主題であって、その解決を交渉ルートをひらく前提条件としたり、すべてを他の国の外交交渉におまかせするといった態度では、問題は解決できません」と指摘し、交渉ルートを開くことと、日朝間に存在する諸問題の解決を図ることとの関連を明確に示しました。

 わが党が、こういう態度を政府に求めたのは、たとえば、拉致問題をとっても、北朝鮮側と実際に交渉してこそ、道理にそった解決の道が開かれるのであって、交渉の道も開かずに、要求を主張しているだけでは、問題の具体的な解決に一歩も近づくことができないからです。

 このことは、拉致問題の解決を、棚上げするとか、事前にはいっさい問題にしないとかいうことでは、もちろん、ありません。交渉ルートを開く話し合いの過程で、日朝関係の確立にとってこの問題がどんなに重要な意味をもつかを真剣に提起し、拉致問題に双方がとりくんでゆく道筋をつけることは、重要なことです。

 これが、日朝間の国交交渉にのぞむ、私たちの基本的な態度でした。

 一、昨年十二月に訪朝した日本国政党代表団は、日本共産党をふくめ国会の主要政党が全て参加した初めての超党派訪朝団となりました。超党派訪朝団は、日朝間に懸案は多いけれども、前提条件をつけず、両政府間の国交正常化交渉のテーブルづくりのための環境を整えることを目的とし、同時に、拉致問題をはじめ一連の人道問題についての解決への努力を率直に提起することを方針として日朝両代表団会談に臨みました。そして実際に、会議の席上で日本側から、拉致問題の解決を人道上の重大問題として提起しました。

 こうして、超党派訪朝団は朝鮮労働党代表団との間で、国交正常化交渉を無条件で再開するようそれぞれの政府に促すこと、人道問題など両国間の懸案問題を両国の政府・赤十字間の交渉のテーブルにのせることで合意しました。日本共産党の提唱の方向は、会談の合意形成に積極的役割を果たしました。

 この両代表団の合意にもとづき、日朝両国政府間の国交正常化交渉が予備交渉を皮切りに開始され、本格的な両国政府間の対話につながりつつあります。また、並行して日朝赤十字会談も開かれ、直近の会談(三月十三日)では拉致問題に関して、北朝鮮として調査を再開したことが表明され、「調査の結果、仮に見つかれば日本側に通報し、適切な措置を取る」旨の説明もなされました。今後の進展も見極めなければなりませんが、これまでの北朝鮮の態度に照らせば、前進的方向への動きとして注目されます。

 一、対北朝鮮をめぐっては、アメリカも韓国も対話と交渉による問題の解決を探究しており、最近の日朝間対話の機運についても両国は歓迎の意向を示し注目を寄せています。

 わが国が北朝鮮との関係改善を対話によって進展させることができるなら、日本とアジアの平和と安定に大きな貢献となるでしょう。それは日朝間の懸案問題の解決への道筋とも重なるものと考えます。


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