日本共産党第22回大会決議より抜粋(2000年11月24日)

(8)日本国民の21世紀の生存と生活の基盤をまもる政治を

 (1)日本の二十一世紀を展望したとき、国民の生存と生活の基盤にかかわって、解決がせまられている問題が山積している。

――子どもと教育……「いじめ」や学級崩壊、校内暴力、児童虐待など、子どもと教育をめぐる状況は深刻である。不登校も増大している。あいつぐ少年犯罪に国民だれもが心を痛めている。わが党は、前大会決定で、民主的な社会の形成者にふさわしい市民道徳を身につけるための教育を重視することを提案したが、これはいよいよ重要な課題になっている。

 わが党は、(1)受験中心の「つめこみ」教育、競争教育、ふるいわけ教育から子どもたちを解放し、一人ひとりの子どもの成長と発達を中心においた教育への改革をはかる、(2)子どもの世界の健全な発展のためにも、おとな社会の各分野にモラルを確立し、道義ある社会をめざす、(3)子どもたちを有害な情報から守るため、文化面で社会の自主的ルールをつくる、という三つの問題での国民的とりくみをよびかけてきた。

 九八年六月に国連子どもの権利委員会は、日本政府への勧告のなかで、「極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子どもが発達のゆがみにさらされている」と、きびしい批判をおこなったが、主要国政府への勧告のなかで「教育制度」そのものが不適格だと批判されたのは日本だけであり、わが党の提案が国際的にも道理あるものであることを裏づけた。

 すべての子どもに基礎的な学力を保障する教育改革が、きわめて切実な課題となっている。いま子どもたちのなかに「学力の危機」ともいうべき深刻な事態が広がっている。学校教育が、多くの子どもたちにとって「わからない」「面白くない」ものになっていることは、重大である。

 これは、自民党政府・文部省が長年つづけてきた、競争主義、管理主義の強化という教育政策がつくりだしたものである。「学校の勉強だけではわからない、塾通いをしないとわからないのが当たり前」という異常な事態は、学習指導要領のおしつけによって、学習内容が系統性を欠いた断片的知識を棒暗記させるというゆがみをもっていることとともに、基礎的な科目に必要な授業時間を保障していないことも、大きな原因の一つとなっている。

 すべての子どもに基礎的な学力を保障することは、国民の根本的な教育要求であり、憲法と教育基本法が要請している学校教育の基本任務である。学習内容を子どもの発達段階にそくした系統的なものにするとともに、真に基礎・基本的な事項については、十分な授業時間をとって、すべての子どもがわかるまで教える教育への改革が必要である。

 それらを保障するためにも、三十人学級への前進をかちとり、さらに少人数学級にすすむことが不可欠である。そのための教員の増員と教育予算の増額、学校の民主的運営が必要である。

 政府・与党は、子どもと教育をめぐる深刻な現状を打開する何らの方策ももたず、国連の勧告にたいしては「法的拘束力はない」などと無視する態度をとりながら、教育勅語を肯定し、教育基本法改悪をくわだてるなど、反動的逆流を教育にもちこもうとしている。このような勢力に、子どもたちの未来をまかせるわけにはいかない。

 わが国の知的基盤である大学の自主的創造的発展をゆがめる、国立大学の独立行政法人化に反対し、大学の教育研究条件の抜本的改善をはかることも重要な課題である。

――「少子化」……日本社会が子どもを産み育てる力を失いつつあることは、日本の未来にとっての大問題である。わが党は、この問題の根本要因が、“働くこと”と“子どもを産み育てること”との矛盾が広がり、深刻化していることにあることを指摘し、その解決のための提案をおこなってきた。

 この問題の根本を解決しようとすれば、保育体制の拡充や子育て支援の充実などにとどまらず、労働、雇用問題に正面からメスを入れる必要がある。すなわち、男女がともに子育てに責任をはたせるように、職場の労働環境を全体として改善すること、雇用に関するすべての面で男女平等をつらぬくようにすること、失業や不安定雇用の解決にとりくみ男女ともに安定した雇用を保障することなどが不可欠である。“ルールなき資本主義”をただすというわが党の経済改革の提案は、「少子化」問題の解決ともむすびつくものである。

――農林漁業と食料……国民の生命をささえる食料の自給率は、四〇%にまで低下した。穀物自給率にいたっては二五%にまで低下し、世界の百七十八カ国・地域のなかで百三十番目という低さであり、人口一億人以上をかかえる十カ国のなかでは最下位、九位のブラジルが八四%であることをみても日本の低さはきわだっている。多くの国際専門機関が、人口の増加、異常気象、農用地拡大の制約など、あらゆる面で二十一世紀の食料需給の逼迫(ひっぱく)を警告しているもとで、わが国の食料自給率を下がるにまかせている政治は、まさに亡国の政治といわなければならない。

 WTO(世界貿易機関)農業協定を改定し、米を輸入自由化の対象からはずし、実効ある輸入規制がはかれるようにするなど、食料主権を保障するとともに、農業を国の基幹的産業に位置づけ、農業予算を公共事業偏重でなく農産物の価格保障に優先してあて、農業の再建発展と食料自給率の計画的向上をはかるために政治が責任をはたすことがもとめられている。

 また、国産材の利用促進と輸入の抑制による林業の再建、水産資源の回復と魚価の安定による漁業振興とあわせて、農林漁業を永続的に維持・発展させることは、食料の安定確保、農山村の維持とともに、国土・環境の保全や多様な生態系の維持など、国民生活に欠かせない多面的機能を発揮させるためにも重視しなければならない。

――エネルギー……政府は、二十一世紀のエネルギーを、原子力発電所の大増設と、プルトニウムをくりかえし利用する路線に頼り切るという政策をとっている。このようなエネルギー政策をとっている国は主要国では日本だけである。欧米の主要国のほとんどが、原発建設計画をもたず、プルトニウム循環方式からも撤退しているなかで、日本のエネルギー政策の異常さはきわだっている。世界の主要国で放棄された政策にしがみつく政府の姿勢は、この問題でも国民の未来を危険にさらす。

 昨年スウェーデンが原発の閉鎖に足を踏みだしたのにつづいて、ドイツが二〇二〇年代初めまでに原発を全廃することを決定した。原発大増設とプルトニウム循環方式という危険きわまりない政策を中止し、低エネルギー社会の実現、再生可能エネルギーの開発をすすめながら、原発からの段階的撤退をめざすべきである。

――環境問題……ダイオキシン汚染の深刻化、産業廃棄物処理・処分場などからの汚染物質の流出、環境ホルモン問題、大気汚染など、国民の命と健康を脅かす環境破壊は深刻である。アセスメント、リサイクルなど、環境にかかわるすべての分野で、大企業の製造責任、排出責任をきびしく問う環境保全のルールを確立し、汚染の原因となる物質・商品を生産・使用している企業の責任と負担を明確にした環境対策税などを創設する。

 開発至上主義の公共事業によって、自然林、干潟、自然の海岸線、湿地、河川・湖沼など、日本の豊かな自然が破壊され、国際的にもきびしい批判が集中している。開発至上主義との決別は二十一世紀にむけての緊急課題である。

――災害対策……日本は世界有数の地震国であり、火山国である。この間のあいつぐ地震、火山活動などによる災害の経験から、政治が教訓をくみとり、貧弱な監視・予知体制の抜本的強化、災害に強いまちづくりの推進、個人補償、生活と営業への保障など被災者にたいする生活支援の強化など、災害への備えを抜本的に厚くすることは急務である。

 有珠山や三宅島の噴火の経験は、火山への監視・予知活動の重要性をしめした。現在、文部省の測地学審議会が“要注意”ときめた活火山三十七のうち常時監視体制がしかれているのは二十だけであり、それ以外はきわめて貧弱な体制か、体制なしの状態におかれている。すべての活火山で常時監視体制を構築することをはじめ、自然災害にたいする長期的な視野にたった対策に力をつくす。

 集中豪雨による水害もあとをたたず、住民の生命・財産に重大な損害をあたえている。この原因には、防災をなおざりにした無秩序な大規模開発や都市化、山間部における原生林の無謀な乱伐などがあり、「想定外」ではすまされない。開発のあり方をふくむ総合的な防災体制、避難体制などの抜本的な強化が不可欠である。

――IT(情報技術)……二十一世紀を前にして、コンピューターをはじめとした情報通信技術の発展は、人類の文化・技術の発展のなかでも、画期的な一段階を開きつつある。とくにインターネットの発展と普及は、世界中のコンピューター同士の通信を可能にし、すでに国民の二割以上がこれを利用し、多様な情報を入手し、発信する、新しいコミュニケーションの手段となっている。

 ITの展開は、現在まだ発展の途上にあり、政治がこれに対応するには、いま政府がやっているような、「IT革命」の看板を従来型の公共事業の推進策に使ったり、景気対策の手段にするといった目先の対応ではなく、新しい技術を社会全体が有効に活用できるようにするための本格的な方策をとることが重要である。なかでも、新技術を国民の共有財産とし、その成果を国民すべてが受けられるようにする方策や、ITを利用した新たな犯罪を防止する対策、ITのもたらす否定的諸問題への対応などは、当面とくに重視する必要がある。

 (2)これらの諸問題は、二十一世紀の日本国民の生存、生活を大きく左右する重大問題である。しかし、自民党政治は、どの問題でも、長期的視野にたった本格的な国民的解決策をもたず、小手先の無責任な対応しかしめせないでいる。この政治のもとでは、二十一世紀に日本国民の生きる道がなくなる危機的状況にある。

 日本共産党は、これらのすべての問題で、責任ある解決の基本方向をしめしている。大企業中心、アメリカ追随の政治からの転換という「日本改革」の目標をもつ党だからこそ、どんな問題でも国民の立場にたった解決策をしめすことができる。わが党は、二十一世紀を広い視野にたって展望し、日本社会が提起する新しい諸問題に積極的にとりくみ、日本国民の未来に責任をおう党としての先駆的役割をはたさなければならない。


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