日本共産党

中国・台湾問題

2001年5月14日 東京・武道館での不破議長の演説からの抜粋


 日本共産党の自主外交――台湾問題の平和的解決をめぐって

 最近のことですが、もう一つこういうことがありました。中国と台湾の問題です。去年、台湾の選挙をめぐって中国と台湾の関係にいろいろ緊張した状態がありました。私どもは、中国と台湾の問題に関しては、日本は「一つの中国」という国際法の枠組みを守らなくてはいけないと、確信しています。

 「一つの中国」というのは、国連でもその立場で中国の代表権を台湾の政権から今の中国の政権に交代させたのだし、日本と中国の間でも、アメリカと中国の間でも、「中国は一つ」という原則が確認されています。破るわけにはゆかない国際的原則です。

 しかも日本は、一八九五年に、日清戦争に勝ったというので中国から台湾をとりあげ、五十年後の一九四五年にポツダム宣言で返した国です。ですから、世界で一番この原則を守らなくてはならない立場にあるのは日本だといっていいでしょう。

 これを解決する手段・方法については、日本の国民の圧倒的多数はこの問題が平和的に解決されることを熱く望んでいます。だれも、台湾海峡で戦火が起こることを望むものはありません。

 私は、去年四月に中国の代表団が来た時に、この問題についての私たちの考えを率直に話しました。曽慶紅さんといって、中国共産党の中央組織部長さんで、短い会談でしたが、そのとき私はこういう話をしたのです。

 “「一つの中国」というのは大事な国際原則だ。しかし、それを実現する方法については、われわれはあなた方に日本の国民の声をふまえて提案をしたいと思う。あなた方は香港を中国に復帰させ、マカオを復帰させた。

 その際、香港やマカオの現行の制度を変えない、「一国二制度」――今の制度のままで中国に復帰するという新しいやり方をあみだして成功していることを、われわれはよく知っている。台湾について、その考え方をみなさんが持っていることもたいへん結構だと思う。

 しかし、香港とマカオについては、あなた方は植民地としてこれをもっていたイギリスの政府やポルトガルの政府と交渉してこれを実現した。台湾はそうはいかない。台湾でその方向で問題を解決するには、台湾住民の支持をえること、台湾の“民心”を得ることが決定的だ”。

 こういう問題提起をしました。十人あまりの代表団でしたが、私が“台湾の民心を得る”という話をしたとたんに、団員の全体にざわめきがおこりました。何か、自分たちが考えていなかったところに問題提起がされたという驚きの感じでした。

 団長はさすがで、そのまま話をすすめ、その日の会談は、それで終わったのです。一カ月たって五月に中国から唐家〓(王へんに旋)(とうかせん)外相が日本に来ました。

 また会談をやりましたら、驚いたことには、唐家〓(王へんに旋)さんが“不破さんが四月に提案したことを、今、中国では真剣に研究しています”というのです。(拍手)

 外国の代表団がきて各党の代表と三十分くらいの会談をする、そういうときは、儀礼的な話としてその場だけの一過性のことで終わりがちなものなのですけれども、中国側はそういう態度をとらなかった、こちらからの問題提起を全体の問題としてきちんと受け止めて、検討しているという回答が、翌月別の代表からかえってきたので、私は率直にいって驚きました。大事な提案をすれば、集団でまじめに受け止めて、まじめに検討するだけの幅を中国は持っているんだなというのが、うれしい実感でした。

 今年になってから、中国の台湾問題にたいする言い方が変わってきたのです。「一つの中国」の原則は変わりません。しかしいままでは、「中華人民共和国が中国のただ一つの合法政府であり、台湾は中国の一部である」という言い方だったんですね。台湾のみなさんの気持ちが入る余地があまりない言い分でした。それを改めて、こんどは「中国は一つであり、中華人民共和国と台湾は一つの中国を構成している」という言い方に変えたのです。

 大事な変化だとそこに注目していましたら、三月、中国の平和団体の代表が日本を訪問して、緒方さん(国際局長)と会談しました。その時に、“こう変えるのはなかなか大変だった、しかし、台湾のみなさんの気持ちを考えて、こう発展させたのだ”という説明があり、その際、“不破さんが、台湾の人たちの声を注意深く聞いた方が良いと提案したことを私たちはよく知っています”といって、不破提案の研究もその検討のなかに含まれていたことを紹介しました。これも、貴重な感慨深い経験でした。(拍手)

 私たちは政権は持っていません。政権党ではありません。持っているのは道理だけです(笑い)。しかし、道理を持って世界にのぞめば、いろんなところで道理にかなった、国民の希望にかない平和の立場にかなった道が開ける。それが最近の私どものささやかな経験であります。(拍手)

 それでも、国際社会で、道理を持った外交がどんな力を発揮できるか、そのことが、ここにも現れているといえるのではないでしょうか。

 もし日本が国として自主外交を確立し、国民の願いにたって、アジアで世界で、平和の外交を展開するようになったらどんな新しい展望が開けるでしょう。みなさん、その道を国民の力で開こうではありませんか。(拍手)


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