認可保育所をつくる際に守ることになっている、施設面積や職員配置などを定めた国の最低基準の引き下げ・廃止が狙われています。幼い子どもが一日の大半を過ごす場所をもっと良くしてほしいという父母たちの願いに逆行する動きです。
(坂井希)
現在の保育所の最低基準は、表のように厚生労働省令で定められています。保育士の数は、ゼロ歳児三人対一人、四歳以上は三十人対一人など。施設面積は、二歳未満児の乳児室で子ども一人当たり一・六五平方b(約一畳)以上、ほふく室で子ども一人当たり三・三平方b(約二畳)以上などとなっています。
改善を怠る
制定されたのは戦後まもなくの一九四八年です。当時は日本全体が貧しく、ぎりぎりの基準しか定められませんでした。経済の発展と国民生活の向上に応じて改善していくことが前提でした。
しかし政府は、保育現場からの再三の要求にも耳を貸さず、改善を怠ってきました。制定されて六十年の間に、職員配置基準が若干改善されただけです。家庭では、食堂と寝室とくつろぐ空間が別という水準が一般的になりましたが、保育所の子どもは「食べるのも寝るのも遊ぶのも同じ部屋」という状態に置かれたままです。
改変視野に
今年六月、「機能面に着目した保育所の環境・空間に係る研究事業」を行うため全国社会福祉協議会の中に設けられた調査研究委員会が初会合を開きました。厚生労働省が委託した研究事業です。
厚労省保育課は「基準について科学的・実証的に考えるということだ」と述べ、最低基準の引き下げ・廃止の結論ありきではないとしています。
しかし、事業の目的には「現行の構造基準による設備の基準(数値基準)ではなく、乳幼児の生活・活動を支える機能面に着目した保育環境・空間の基準(定性的基準)について検討を行う」と明記されています。最低基準の改変を視野に入れていることをうかがわせます。
舛添要一厚労相も、最低基準を「地方自治体の条例に委ねる方向で検討していく」と発言しています(五月十九日)。これらの動きは、財界などの要求と呼応したものです。
参入を狙い
政府の地方分権改革推進委員会(委員長=丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は、「昭和二十年代に定められた保育所の基準については今や科学的な根拠がな」い(昨年十一月「中間取りまとめ」)などと主張。国の基準を廃止し、基準づくりを地方に委ねるよう求めています。
政府の規制改革会議(議長=草刈隆郎日本郵船会長)は、東京都で行われている認証保育所制度では、乳児ほふく室の面積基準は、国基準より低い「2・5平方b以上」までの弾力化が認められているとして、高すぎる国基準≠フ見直しを求めています(七月「中間取りまとめ」)。保育の規制を緩和し、企業参入を進めたい思惑からです。
今でも低すぎる最低基準をさらに引き下げ・撤廃すれば、「部屋が狭いので玄関の下足入れの上で給食の配膳(はいぜん)をしている」(企業が最低基準ぎりぎりで経営するある認可保育所)などの事態が全国に広がりかねません。最低基準は改善こそが求められています。
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保育所の最低基準(一部)
■職員
児童 : 保育士
・保育士 ゼロ歳児 3 : 1
1・2歳児 6 : 1
3歳児 20 : 1
4歳以上児 30 : 1
・嘱託医および調理員は必置(注1)
■設備(施設)
・2歳未満児
乳児室 1.65u/人
ほふく室 3.3u/人
医務室、調理室、便所の設置
・2歳以上児
保育室又は遊戯室 1.98u/人
屋外遊戯場(注2) 3.3u/人
調理室、便所の設置
注1…調理業務の全部を委託する場合は調理員を置かないことができる
注2…保育所以外の公園などでも代替可