東京23区中11区が実施
妊婦健診の公費負担の対象に助産院での健診を含めてほしいとの要望が、妊婦や助産師などからあがっています。公費負担を拡充する市区町村が増えていますが、対象を産科医療機関に限っているところも多いためです。国民の要望や自治体からの問い合わせを受け、厚生労働省も昨年六月、助産院を公費負担の対象に含めるよう促す通知を出しています。
妊婦健診の公費負担は、昨年一月、厚労省が自治体に最低でも五回程度の公費負担を求める通達を出して以降、拡充の流れが広がっています。東京二十三区では、今年度から二十一区が十四回分を公費負担します。
しかし、二十三区のうち、助産院での健診を対象としているのは十一区にとどまっています。
北区では日本共産党区議団が二月の代表質問で取り上げ、「助産院も対象とする」との答弁を引き出しました。他にも「区民から要望があった」(江東区)、「都内でも産科が減っているため」(世田谷区)などとして実施しています。今後の実施に向けて検討中の区も複数ありますが、「病院でしかできない検査もあり、慎重な検討が必要」と、消極的な区もありました。
中野区の松が丘助産院(院長・宗祥子助産師)で五月に第二子の出産を予定している女性(33)=板橋区在住=は、「妊婦健診は回数も多く、費用がかかります。板橋で公費負担が二回から十四回に増えると聞いたときは喜びましたが、助産院に通っている人は対象外と知り、がっかりしました。健診は母体と子どもの様子を確かめるもので、病院でも助産院でもそう違いはない。なぜ差をつけるのでしょう」と話します。
|
東京23区の助産院や里帰り先での健診に対する償還払いの実施状況
|
|||
|
|
受診票の配布枚数
|
助産院
|
里帰り
|
|
千代田 |
5枚+4.5万円(*1)
|
×
|
×
|
|
新宿
|
14枚
|
○
|
○
|
|
港
|
14枚
|
×
|
○
|
|
大田
|
14枚
|
○
|
○
|
|
品川
|
14枚
|
○
|
○
|
|
目黒
|
14枚
|
○
|
○
|
|
世田谷
|
14枚
|
○
|
○
|
|
渋谷 |
5枚+5万円(*1)
|
×
|
×
|
|
中野
|
14枚
|
○
|
○
|
|
杉並
|
14枚
|
○
|
○
|
|
豊島
|
5枚(*2)
|
検討中
|
検討中
|
|
練馬
|
7枚
|
×
|
○
|
|
江東
|
14枚
|
○
|
○
|
|
墨田
|
14枚
|
○
|
○
|
|
荒川
|
14枚
|
×
|
○
|
|
文京
|
14枚
|
×
|
×
|
|
中央 |
14枚
|
×
|
○
|
|
台東
|
14枚
|
○
|
○
|
|
板橋
|
14枚
|
×
|
○
|
|
北
|
14枚
|
○
|
○
|
|
足立
|
14枚
|
×
|
○
|
|
葛飾
|
14枚
|
×
|
○
|
|
江戸川
|
5枚
|
×
|
○
|
(*2)今年度中に14回に移行予定。助産院や里帰り健診を対象に含めるかもあわせて検討。
「ここで産みたい」の声
年間百二十―百三十人のお産を手がける東京都中野区の松が丘助産院の助産師、宗祥子さんは「十四枚の無料券が病院でしか使えないとなれば、『本当は助産院で産みたいけど病院で』という人も出るでしょう。助産院も法律でお産や健診を扱うことが認められているのに、おかしな話です」と語ります。「健診にはマッサージやお灸(きゅう)も取り入れ、食事や生活改善などの保健指導に力を入れています。そこに共感して助産院でのお産を望む女性も多い。全体の中では1―2%と少数ですが、その声を見過ごさないでほしい」と宗さんは訴えます。
東京都内の自治体での公費負担は、都内の指定医療機関で使える受診票を、公費負担の回数に応じた枚数だけ交付する方法が一般的です。里帰り出産などで都外の医療機関で健診を受ける場合には受診票は使えず、一回四千―六千円程度、検査によっては一万円以上の窓口負担が発生します。
二十三区中十九区は、都外の病院で健診を受けた場合に、領収書などを示せば後で払い戻す償還払い制度を設けています。助産院での健診の公費負担を実施している十一区は、いずれもこの償還払い制度で対応します。
全国的には、受診票をそのまま助産院の窓口で使えるようにしているところもあります。
今年度から、県下七十市町村で公費負担が二回から五回に拡充された埼玉県では、五回のうち一回は助産院でも受診票を使える制度を新設しました。
県の母子保健担当者は「五回のうち一回は少ないと思われるかもしれませんが、初めてのことでもあり、日本助産師会埼玉県支部との協議の結果、そうしました。助産院には嘱託医があるので、あとの四回はそこで受けていただければよいと思います」と話します。
小田切房子・助産師会県支部長は「助産院では血液検査や超音波による診断はできません。それらを含まない二回目の健診については助産院でもできると判断しました。当面は『一定の開業年数を経過し、行政指導を受けていない』などの基準をクリアした県内八―九カ所の助産院で、受診票を使えるようにします。助産院の側も水準を上げる努力をし、徐々に広げていきたい」と語っています。
(おわり)
(この連載は坂井希が担当しました)