過度に競争的な教育、児童虐待や少年犯罪…
深刻な子どもの現状どう打開する
民主主義学ぶ大事な基礎に/子どもを一人の人間として
■教師、親、生徒が対等に話し合い
石井 どうしてもうかがいたいのが権利条約一二条、意見表明権の問題です。権利条約の中心点はここだと思いますが、日本ではこれを実現するのが最も困難になっています。日本の政府、とりわけ文部科学省は、意見表明の機会は保障しましょうと言う。でも、聞き置くだけなんですよ。とくに学校運営、あるいは教育のいろいろな機関のあり方を決めるところには、子どもの参加を保障していません。
昨年五月、学校運営協議会をつくるという法律が作られました。住民も参加する協議会なんですが、生徒代表が入ってなかった。私どもは、諸外国ではとっくに入れている生徒代表をぜひ入れるべきだと主張しましたが、政府は受け入れませんでした。
それでも芽があります。三者協議会という名前で、教職員と父母と生徒が対等に話し合う場をつくって、どんな学校にするかルールやカリキュラムを考えるという試みが始まっています。子どもの権利条約を実践する立場で生まれてきていると思っています。
ドゥック 大事なのは、子どもたちが学校運営のパートナーとなるような民意というか文化ですね。
■集団としての意見表明権を
石井 それから、政府は、一二条でうたう意見表明権は児童個人にかんすることだ、というふうに限定しているんですね。個人の不利益にかんする意見表明は認めるけれど、学校全体に対して意見を述べるという立場ではないと。権利条約を非常にせばめた理解であり、とても問題です。
ドゥック その通りです。単なる個々人の問題に狭めることがこの条約の精神ではありません。一三条では表現や情報の自由をいう。一五条は結社や集会の権利ということで、集団として自分の意見を表明する権利をもっているのです。ですから、一二条は個人の権利だけと考えるのは、よい議論の仕方ではないでしょう。
一二条が条約のカギとなります。それがなぜ大事かといえば、やっぱり民主主義を教えるからだと思いますね。民主主義というのは、人の意見に耳を傾ける、他人を尊重するということ。社会に出てから学ぶのではなく、学校にいる間に民主主義を学ぶ、大変大事な基礎になる条項だと思います。
■行政が子どもの声を直接聞いて
石井 子どもを社会のパートナー、一人の人間として見るというのが条約の精神ですよね。
ドゥック 子どもたちに話を聞くというのは、単なる小手先の問題ではありません。そして、それはとても時間がかかることです。子どもたちが社会の中で尊敬されて、耳を傾けてもらえる存在であって、意見が意思決定に反映されるものでなければなりません。
だから例えば、行政の方が事務所に閉じこもって紙の上で考えるのではなく、外に出て子どもたちの意見を直接聞いてみないといけませんね。都市開発計画の中で子どもの遊び場をどう確保するかとか、サッカー場をどこにするかとか、集会室をどうするかとか、そういう討論ができると思うんです。官僚とやるのではなく、子どもたちとやっていく。なんといっても、子どもたちが長い間ここに住んでいくわけですから。
石井 その通りですよね。今日は本当にありがとうございました。
「子どもの権利条約」 第12条
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って正当に重視されるものとする。
2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。