2003年7月26日「しんぶん赤旗」

女性差別撤廃の遅れ日本政府に苦言

国連審議を傍聴して

堀江ゆりさん(日本婦人団体連合会事務局長)のリポート

 国連の女性差別撤廃委員会が八日、九年ぶりに日本の条約実施状況を審議しました。日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC。代表世話人・山下泰子国際女性の地位協会常務理事・文京学院大教授)の十六団体・五十五人がニューヨークに行き審議傍聴や意見表明などのロビー活動を行いました。JNNCの一員として初めて審議を傍聴した堀江ゆりさん(日本婦人団体連合会事務局長)のリポートです。

 審議は日本のNGO(非政府組織)メンバーが二階の傍聴席まで埋めて見守るなか、五時間半にわたって行われました。

「9年前と変わらない」

 まず日本政府代表の坂東眞理子内閣府男女共同参画局長が報告。続いて二十人余りの委員が条約の各章ごとに質問し、政府が回答します。今回の審議は一九八八年、九四年に続いて三回目。ようやく委員と政府との「対話」になってきたと、第一回目から傍聴している山下泰子さん、浅倉むつ子さん(都立大教授)は感慨深げでした。

 と言っても、日本の差別撤廃の遅さには委員もイライラをかくせません。「間接差別の研究を昨年になって始めたとは驚き」「女性の意思決定参加の遅れは九年前と変わらない」など、苦言が相次ぎます。とくに、タンザニア、アルジェリア、バングラデシュの委員の「豊かな国である日本の、経済・技術発展と女性の低い地位との格差に衝撃を受けている」という発言が心に残りました。

 差別を直接国連に通報できるとした選択議定書の早期批准も、議長(トルコ)をはじめ多くの委員から催促されました。政府答弁は「司法権独立の侵害の可能性を含め検討」と相変わらずです。これに対しては「国際人権条約は日本の法の一部のはず」「批准は司法による差別撤廃の努力を助け、むしろ司法の独立を支える」など、国際法や女性学の専門家である委員の反論が続きました。

 夫婦別姓や非嫡出児差別撤廃のための民法改正についても「世論の問題ではなく条約締約国の義務」と、オランダの委員は政府の怠慢をずばりと指摘しました。

 レイプ擁護など自民党政治家の暴言を批判し行政・司法担当者のジェンダー研修をすべきだという指摘もありました。

 ほかにも従軍慰安婦問題、女性の政治参加と選挙制度、賃金差別是正、M字型雇用と保育政策、高齢者対策、在日外国人など少数派女性の実態等々、委員の質問は二百項目以上。どの発言も日本の実情をよく把握しており、事前に提出したNGOリポートやロビー活動の効果を実感しました。

「条約実施する立場で努力を」

 国連の委員が審議国の膨大な資料を読み、NGOの意見も積極的に聞いて真剣に討論する姿を目の当たりにし感銘を受けました。国境をこえた人権ルールである条約の価値を再認識しました。

 しかし、どんなに素晴らしい条約も実施されなければ意味がありません。坂東局長は遅れの理由として「社会的合意が必要」と強調しましたが、委員からは「条約を実施する立場で世論を変える努力をしているか」と鋭い追及です。いつまでも「慎重な対応」ではすまされない、日本政府の意志と行動が問われる場面でした。

 最近発表された国連開発計画報告の女性の社会進出度を示す数値でも、日本は昨年の三十二位から四十四位へと大幅転落。先進国で最低というこの状態を改善するためには、日本政府が?締結した条約を誠実に順守する?(憲法九八条)ことが求められています。途上国選出の委員が指摘したように、日本は資金がないわけではありません。昨年の軍事費が世界第二位という数字を考え合わせれば、政治のあり方を変えることが女性の地位向上のためにも必要だと痛感します。

 政府代表が「差別撤廃の遅れに私もいらだちを感じる」と率直に答えたのは一歩前進と言えますが、答弁内容はこれまでの枠を出ないものです。今回の審議内容やNGOの共同行動の前進を生かし、女性差別撤廃条約をさらに活用して国内運動をすすめたい、という思いを強くしています。

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