男女共同参画会議・調査会
どうみる「中間報告」
ライフスタイルの選択というが
男女共同参画会議の影響調査専門調査会がこのほど「中間報告」を発表しました。
影響調査専門調査会は、男女共同参画会議のもとに設けられた専門調査会の一つで、女性の「ライフスタイルの選択」に影響が大きい税制や社会保障、雇用制度等の検討を目的として設置されました。その立場から「中間報告」は、「ライフスタイルの選択への中立性の確保」をいっかんしたテーマに位置づけています。
女性パートを前提に分析
しかし、具体的な中身は、多様なライフスタイルにおける女性の能力発揮や地位向上を支援するものではなく、女性がパートで働くという「ライフスタイル」を基本に、女性パートを増やし、活用する立場で制度見直しを前提とした分析・検討になっています。
「中間報告」は、共働き世帯が増え、従来の女性が専業主婦として家事・育児を担い、男性が働くという役割分担を主なモデルとした制度が今の実態に合わなくなってきており、見直しが不可欠と結論づけています。
こうした見地から、就業、結婚、出産・子育て、再就業、引退、離婚など、女性の生涯に直面する転機にそって実態を分析し、男女の賃金格差、子育て後に仕事復帰する女性の圧倒的多数がパートタイムである問題などを指摘します。さらに賃金格差が、年金など社会保障における格差につながっていると論じ、年金をふくむ夫婦の生涯可処分所得の推計では、夫婦とも勤務を継続した世帯との差額が、専業主婦世帯では一億五千万円、退職後パートの世帯で一億円にのぼると算出しています。
「中間報告」がパートで働く女性の矛盾に焦点をあてていることは、この間の女性の社会進出のひろがり、不安定就労の増加、少子化の進行など、女性をめぐる深刻な実態や要求を一定反映したものです。しかし、パート女性の増加を、「やむなくパートになったというより、時間がフレキシブルであることなどからパートタイムでの就業が選択される傾向がある」と描き出しています。実態は、残業の常態化、長時間労働のもとで、女性が育児や家事負担を一手に引き受け、パートを選択せざるをえないのが現実です。保育所など社会的子育て支援も依然として不十分です。再就職を希望してもパートしか雇用の場がないのです。
格差の原因 “自発的”とまた「中間報告」は、パート女性の低賃金について、配偶者控除の基準の百三万円や、夫の家族手当の支給基準、また社会保障加入基準の百三十万円を超えない範囲で働くよう自発的に就業調整するためにもたらされていると分析しています。
しかし、女性パートの平均時給は昨年度で八百九十円(賃金構造基本統計調査)にすぎません。フルタイム同様に年千八百時間働いても百六十万二千円、家事、育児の時間を考慮して週四日、各六時間働くとしたら百二十万円程度という水準です。
就労調整の問題以前に、女性パートの時給があまりにも低いのです。
財界は女性パートを安上がりな労働力と位置づけ、積極的に活用してきました。実際、事業所の61%が「人件費節約のため」短時間パートを雇用しています(厚労省調査、九九年)。「中間報告」はその点に目をむけず、賃金格差の原因を女性の選択の結果としています。
新たな増税と不安定雇用増大へ
具体的な政策的方向として「中間報告」は、税制・社会保障制度改革と雇用システムの二つの柱をうちだしています。
税制・社会保障制度については、専業主婦世帯の優遇になっているとして配偶者控除、配偶者特別控除の縮小または廃止を主張、また年金制度の個人単位化、パート労働者への社会保険適用の拡大、第三号被保険者制度の見直しなどを提起しています。企業の家族手当廃止も奨励しています。
働く理由は生活の維持
第三号被保険者制度、パート労働者への厚生年金適用などをめぐっては、さまざまな議論があります。しかし「中間報告」の方向は、「社会保障の持続可能性の増大」のため女性と家計にひろく増税と負担増を求めるものです。パートなどで働く理由は「家計にゆとり」と「生活を維持するため」がトップで54・7%(全労連パート・臨時労組連絡会実態アンケート)というように、不況で家計がきびしくなっているなかでのあらたな負担は問題です。
雇用の問題では、将来的な方向として、雇用の流動化、労働形態の多様化、能力主義・成果主義の導入を余儀ないものとし、「正社員・非正社員という区分」をなくし、「雇用形態や処遇全体の見直し」を行うなどと、一部の基幹的な労働者以外は低賃金の不安定雇用におきかえてゆく財界戦略にそった方向を提起しています。
賃金差別是正の切実な願いにたいしては、「日本型均衡処遇ルール」の検討が必要としています。「日本型均衡処遇ルール」とは、均等待遇の国際的な原則とは違い、過労死をうみだすような日本の異常な働かせ方を前提に、残業や配転、転勤がない、少ないなどの場合は「合理的な差」もありうると、結局はパート差別と低賃金のしくみを温存するものです。
「ライフスタイルの選択に中立確保」というならば、女性が能力を発揮して社会参加できるように、賃金格差是正の実効ある措置の導入や子育て・介護などへの社会的支援の充実、社会保障拡充こそ求められるはずです。専門調査会のワーキングチーム報告でさえ「保育サービスや育児・介護休業など、家族的責任に係る社会サービスや制度も含めて比較すると、我が国は、共働き世帯であれ、専業主婦世帯であれ、家族的責任の遂行に対する公的支援が低い」と指摘しています。ところが「中間報告」は、増税と負担増の方向ははっきりしているものの、現実の女性の地位向上につながる具体策が見えてきません。
配偶者控除の将来的廃止へ
「中間報告」の内容は、この間政府の各種審議会等がうちだしている方向と共通しています。「構造改革」と称して弱肉強食、国民負担増の政策をすすめる経済財政諮問会議の「骨太の方針(第二弾)」は、労働法制の規制緩和をはじめ財界の二十一世紀戦略にもとづく女性労働力の活用と社会保障の担い手としての女性対策を打ち出しています。
政府税調はこの六月に、配偶者控除の将来的廃止、当面、配偶者特別控除の廃止を答申。雇用問題でも、厚生労働省「パートタイム労働研究会中間とりまとめ」(二月)の「雇用多様化」「日本型均衡処遇ルールの確立」の方向と一致しています。
調査会の審議のなかでは、負担増を危惧(きぐ)する意見も一部の委員から出されたものの、「結論先にありき」ですすめられてきた印象をいなめません。調査会は九月にも最終報告を予定しています。「中間報告」の方向が、「男女共同参画」「ライフスタイルの選択に中立」の名のもとに女性に何をもたらそうとしているのか、政府・自民党がすすめる「構造改革」全体の流れとともにみておくことが必要です。
(日本共産党女性委員会事務局 米沢玲子)
( 2002年06月28,29日 5面 掲載 ,著作権=赤旗)
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