1999年9月10日「しんぶん赤旗」

1998年政治資金報告

日本共産党以外の政党は企業・団体献金、政党助成金頼み変わらず


政党助成金を使い会議費名目の飲み食いも

 自治省は九月十日付官報で、九八年の政党助成金使途報告書を公表しました。

 九八年は、自民、民主、公明、自由、社民など十二政党にたいして総額三百十二億千九百万円が交付されました。各党は前年の政党助成金によるためこみ金(政党基金)のとりくずしも含め、三百三十八億四千九百万円を使いました。これは、九七年の二・〇六倍増で、各党とも参院選に「税金」を注ぎこんだことを示しています。鹿霈

 百五十二億円が交付された自民党は、政党基金からとりくずして、前年の約二倍の百八十億円を支出、二十八億一千万円を基金積み立てにあてました。支出では、衆院小選挙区、参院選挙区などを単位とした全国五百五十七の支部(支部長は大半が国会議員・同候補)にたいして百六億一千万円を交付しています。このなかには、政党助成金流用疑惑にはじまり、贈収賄でも有罪判決を受けた中島洋次郎元衆院議員が支部長だった群馬県第三選挙区支部への千五百万円も含まれています。鹿霈

 民主党は五十五億八千万円の交付を受けましたが、解散した民政党、新党友愛、民主改革連合からそれぞれ引き継いだ分も含め、七十二億一千万円となっています。このうち、二十三億七千万円を二百の支部に交付しました。

 二十八億七千万円の交付を受けた自由党も、新進党から十三億三千万円を引き継ぎ、計四十二億円。七十五の支部に七億三千万円を支給しています。

 支出のうち、経常経費の事務所費や、調査研究費のなかには、「会議費」という項目が五十六回にのぼり、料亭や中華料理店、パーラーでの飲食も含まれています。

 社民党は二十四億七千万円の交付を受け、土井たか子党首、村山富市元首相はじめ約四十人の衆参国会議員・候補に二百〜五百万円、計一億八千五百万円を交付。また、各都道府県連・ブロック協議会に十三億八千万円を選挙関係費などとして支給しています。

 公明党は十六億七千万円の交付を受けましたが、昨年十一月に合流した新党平和から二十九億八千万円、解党した新進党から政党助成金を受け取るために作った黎明クラブから十一億二千万円をそれぞれ引き継ぎ、五十七億七千万円となりました。衆参の七十五の選挙区・比例区支部に八億八千万円を支給したほか、法定ビラ、ポスター、テレビCMなどの選挙関係費や宣伝事業費に十二億六千万円を支出しています。鹿霈

 同党参院比例区第七総支部(代表・益田洋介参院議員)は、渉外費として東京・銀座の飲食店に計九回、約二百二十万円を支出。うち、昨年十一月には、接待の女性が付く店で一回に約六十五万円を支払っています。


資金集めパーティー

1億円以上は15団体、民主は5億6千万円の純益

 九八年の一年間のパーティーによる収入は、過去最高を記録した九七年より一億二千七百万円減少したものの、百二十億四千万円となりました。パーティーの収入総額に占める割合は、収入総額が一八・四%の増となったため、前回の七・七%から六・五%となりましたが、ひきつづき大きな割合を占めています。鹿霈

 「○○君を励ます会」「○○政務次官就任を祝う会」など、さまざまな名称でパーティー券を業界・企業、労組などにまとめて押しつけるなど、パーティーは、政党や政治家の有力な資金源となっており、形を変えた企業・団体献金です。

 九八年には、民主党などの政党や、自民党の派閥、日本共産党を除くおもな政党の国会議員、候補者など、三百四十六団体(九七年は三百十九団体)が開催しました。このうち、一千万円以上の収入を得た団体は二百五十二団体で、一億円以上の収入を得たのは十五団体にのぼりました。鹿霈

 収入トップは、北九州市で「春の交歓会」(四千六百五人)、東京で「躍進パーティー」(四千五百二十八人)という二回の大規模なパーティーを開き、六億円近い収入をあげた民主党。かかった費用はわずか、三千八百七十五万円で、約五億六千万円の純益を二晩であげたことになります。また、収入順位は三十八位ですが、与謝野馨通産相は三十三万円という費用で千四百三十五人を集めた「セミナー」で純益六千六百万円を超すという荒稼ぎぶり。鹿霈

 上位二十団体には、自民党総裁選に出馬する加藤紘一前幹事長、山崎拓前政調会長や、亀井静香元建設相、竹下登元首相、梶山静六元官房長官など政権中枢がズラリ。自由党は小沢一郎党首、野田毅自治相が上位に名前を連ねています。また、ことし二月の愛知県知事選で初当選した神田真秋氏(自民、自由、民主、公明推薦、社民支持)の選挙母体「夢・あいち21の会」も十七位に。鹿霈

 昨年の参院選の自民党比例候補では、再選をめざした建設官僚OBの清水達雄氏(落選)が一億三百万円で十五位、農水省構造改善局次長から初当選した佐藤昭郎氏は八千四百万円で二十五位などとなっています。

パーティー収入上位20団体(単位万円、千円以下は切り捨て)
順位 政治団体(政冶家など) 収入 費用
1 民主党 5億9876 3875
2 亀井静香後援会(亀井静香) 3億3272 1969
3 社会計画研究会(加藤紘一) 2億2366 3369
4 長期政策総合懇話会(竹下登) 2億1316 4732
5 拓政会(山崎拓) 2億0270 1445
6 近未来研究会(山崎派) 1億6237 2510
7 小沢一郎政経研究会(小沢一郎) 1億5920 691
8 益習会(梶山静六) 1億5301 3933
9 幸政会(尾身幸次) 1億3529 1934
10 平沼会(平沼赴夫) 1億3018 362
11 秀政会(中川秀直) 1億1529 3370
12 21世紀政経会(原田義昭) 1億1506 1379
13 新財政研究会(旧宮沢派) 1億1066 1512
14 構造改革研究会 1億0684 1450
15 清水達雄後援会(清水達雄) 1億0289 792
16 野田毅会(野田毅) 9725 1988
17 夢・あいち21の会(神田貢秋愛知県知事) 9698 2658
18 温故知新の会(渡辺喜美) 9359 1579
19 庄政会(自見圧三郎) 9330 701
20 番町政策研究所(旧河本派) 9184 1429


金融関連行

地銀生保などから自民に4億円公的資金投入の都銀などはゼロ

 九八年に巨額の公的資金を注入された都市銀行、長期信用銀行、信託銀行は、一行をのぞいて自民党への政治献金をしていません。しかし、地方銀行、生命保険、証券など金融関連業界は四億円余の巨額献金をしており、ゼネコン・建設業界とともにひきつづき自民党の大口スポンサーとなっています。鹿霈

 住専(住宅金融専門会社)問題で世論の憤激をかった自民党は九六年二月、金融機関からの献金”自粛”を表明しました。ところが、自民党はその後も「借入金の返済分は別枠だ」という理屈で、大手銀行から資金を受け入れつづけ、金融関連業界からの献金は毎年七億円(九七年は約七億七千万円)を超えていました。鹿霈

 九八年分の政治資金収支報告書では、日本信託銀行が四百六十二万円を献金したほか、各業態別では、地方銀行・第二地方銀行が一億六千二百六十五万円、信用金庫・信用組合が五千百三十万円、生命保険会社が四千四百三十五万円、損害保険会社が六千万円、証券業界が八千六万円を献金しており、金融関連業界からはあわせて四億二百九十八万円もの巨額献金がされています。鹿霈

 また、自民党が九三年の総選挙で都市銀行八行から百億円を選挙資金として「無担保、無保証」で借り入れた金は、九八年中に十八億円減少しましたが、それでも借金残高は七十三億四千万円にのぼっています。(表参照)



自民党の借入金(万円)

         98年     97年     減少分
第一勧業銀行  8億6750 10億5500  1億8750
さくら銀行   8億6750 10億5500  1億8750
富士銀行    8億6750 10億5500  1億8750
東京三菱銀行  8億6750 10億5500  1億8750
三和銀行    8億6750 10億5500  1億8750
住友銀行    8億6750 10億5500  1億8750
大和銀行   12億6750 17億5500  4億8750
東海銀行    8億6750 10億5500  1億8750
   計   73億4000 91億4000 18億0000


ゼネコン

自民だけでなく自由、民主にも

 ゼネコン・建設業界は、自民党はじめ、民主党、自由党の各政治資金団体に巨額の献金をおこなっています。(表参照)

 自民党の政治資金団体「国民政治協会」へは、戸田建設の三千二百五十万円を筆頭に、一千万円以上を献金したゼネコンは二十社にのぼります。ゼネコン大手・準大手・中堅二十四社からの献金は総額三億七千百九十四万円です。献金額数万円の中小建設業者をふくめると、建設・土建関連企業からの献金の総額は九億円近くになります。国民の強い批判にもかかわらず、ゼネコン奉仕の浪費型公共事業を推し進める自民党政治の裏に、ゼネコンからの巨額の献金があることを示しています。鹿霈

 昨年末に会社更生法を申請した日本国土開発や、債権放棄をしてもらった長谷工コーポレーション、青木建設、フジタなども献金をしています。

 ゼネコン大手・準大手・中堅二十二社は、民主党の政治資金団体「国民改革協議会」に二千七百九十一万円、自由党の政治資金団体「改革国民会議」に二千七百三十七万円をそれぞれ献金しています。


主要ゼネコンから自民・自由・民主各党の政治資金団体への献金(単位・万円)

            自民党   自由党    民主党
           (国民政  (改革国  (国民改革
            治協会)  民会議)   協議会)
戸田建設        3250    66   111 
大成建設        2797   119   199 
大林組         2397   119   199 
竹中工務店       2397   119   199 
フジタ         2277    66   111 
清水建設        2267   119   199 
鹿島          2172   119   199 
熊谷組         2067   586   199 
長谷工コーポレーション 1867    66   111 
西松建設        1378   666   111 
鴻池組         1373    55    91 
佐藤工業        1291    55    91 
奥村組         1201    55    91 
青木建設        1198    66   111 
五洋建設        1128    66   111 
住友建設        1117        ― 
前田建設工業      1078    66   111 
間組          1078    55    91 
東急建設        1018    66   111 
飛島建設        1002    55    91 
日本国土開発       912    ―    ― 
鉄建建設         811    55    91 
三井建設         811    55    91 
銭高組          307    43    72 
合  計       37194  2737  2791 


軍需産業

防衛庁背任事件のNECから自民に4千万円

 軍需産業が九八年、自民党におこなった献金は、防衛庁調達実施本部との契約額上位二十社(九八年度)で、二億三千七百九十四万円にのぼっています。

 自衛隊の装備品調達をめぐる背任・汚職事件で、軍需産業と防衛官僚との腐敗構造が浮き彫りになっていますが、自民党との癒着も相変わらずです。

 内訳をみると、日本電気(NEC)が四千万円でトップです。同社は、東洋通信機にかかわる背任・汚職事件で元専務ら幹部六人が起訴され、装備品納入で国に長期にわたる水増し請求をおこなっていたことも明らかになっています。

 つづいて、日産自動車が三千九十万円、東芝、日立製作所がそれぞれ二千九百六十四万円など。

 千五百五十万円を献金している富士重工業は、海上自衛隊の救難飛行艇の開発を有利に受注できるよう中島洋次郎・元自民党衆院議員(防衛政務次官当時)に五百万円のわいろを贈ったとして前会長らが起訴され、昨年末に一年間の取引停止処分を受けています。


軍需産業献金――防衛庁調達(98年度)上位20社の契約額と自民党への献金

企業名         契約額    献 金
            (億円)   (万円)
三菱重工業      3324.3  1288
三菱電機       1030.9  1820
川崎重工業       872.7   174
石川島播磨重工業    644.1  1616
日本電気(NEC)   446.1  4000
東芝          377.4  2964
小松製作所       353.7  
―三井造船       277.4   138
日産自動車       267.4  3090
マリンユナイテッド   267.1  
―日本電子計算機    262.3 
―日立製作所      219.9  2964
三菱商事        157.2  2240
沖電気工業       150.2   400
ダイキン工業      148.3   300
富士通         147.1  1000
伊藤忠アビエーション  136.6  
―富士重工業      133.1  1550
日本製鋼所       130.1  
―兼松         111.3   250
合  計        9457.1 2379
注)自民党への献金は、国民政治協会を通じてのもの。
  合計は四捨五入のため合わないことがあります。


各党の特徴は…

各政党の収入と支出の構成グラフ

自民党=企業団体献金バブル期なみ

公明党=64億円以上の収入が増加

民主党=政党助成金が収入の約6割

自由党=献金の大半がゼネコンから

社民党=機関紙収入は一億円の減少


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