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本気で政治を変える道はどこにあるか

「日本改革」の政策をかかげ、小泉流の自民党政と堂々と対決しよう

東京・日本武道館での不破哲三議長の演説(大要)

2001年5月14日 


 みなさん、こんばんは。第二会場の九段会館のみなさん、こんばんは(どよめき)。今夜はこの広い二つの会場いっぱいに、こんなにたくさんのみなさんがおいでいただきまして、本当にありがとうございます。まず最初に心からお礼申し上げます。(大きな拍手)

 また、先ほどは、酒井広さん、鈴木徹衆さんから、私どもへの期待をこめた温かい激励の言葉をいただきまして本当にありがとうございます。(拍手)

 小泉政権をどう見るか

 みなさん、いよいよ都議選まであと一カ月というところにきました。この間、日本の政治の状況はかなり変わりました。小泉内閣という内閣が成立しました。政界の中には、“小泉さんは八〇%の支持がある、選挙は大変だ”と、あわてているむきもありますが、私は大変面白い情勢が展開していると思っています。(拍手)

 小泉さんは「自民党を変える」、「日本を変える」、こういって国民のかなりの共感を集めました。これは、これまでの自民党政治にたいする国民の批判がいかに強いか、その批判が自民党の党員の中にまでどれだけ広がっているかを、示したものであります。しかし、彼はどう変えるかの中身は、ついにほとんど語りませんでした。多くの国民が、寄せた期待があたっているのかどうか、その実態を見守っています。小泉内閣が成立してまだ二十日になりませんが、このわずかな間でも、その答えはかなり出たと思います。

 私はまず、五月七日の小泉首相の所信表明と九日以来の国会での論戦の中身から、どんな答えが出ているかをあらためて考えてみたいと思います。

 “大胆に国民に「痛み」を”が小泉流「構造改革」の本音

 まず第一に、日本中がいま悩み苦しんでいる経済問題です。“この不景気をなんとかしてくれ”、これは日本列島にみなぎっている声で、政治を変えたいという国民の希望にはこの願いが強く含まれています。

 なぜ不景気が長引くのか。日本経済の六割を占める一番大きな力、国民の家計、個人消費が、消費税増税いらいのくらし抑圧政策のために、すっかり冷え込んでいる。政府がほかのところにいくらテコ入れをしても、この肝心の土台が活気づかなければ日本経済の生きる道はない。このことは非常にはっきりしています。

 だから私どもは、この三月、「緊急経済提言」といって、三つの提案をしました。消費税を三%に減税しようではないか(拍手)。国民の不安のもとになっている、毎年毎年の社会保障の改悪を凍結しようではないか。リストラではなく、サービス残業をなくすことで雇用拡大に転換しようではないか。中小企業を守るために本当の力を発揮しようではないか。この提案をおこないました。

 いま、この提案をもとに各方面と対話を広くおこなっていますが、「まさに私たちが求めているものだ」という声が非常に広範におこっています。

 では、「自民党を変える」といった小泉首相は、こういう問題でどんな方針を持っているのでしょうか。志位和夫(委員長)さんや市田忠義(書記局長)さんが国会でこの質問をしました。“消費税の減税はやりたくありません”、“社会保障の改悪も続けさせてもらいます”、つまり全部ダメというのが、「日本を変える」というあの人の答えであります。

 では、何をやりたいのか。「構造改革」だそうであります。その中身はと聞くと、第一は、森前首相がブッシュ大統領にいわれて決めた「不良債権の処理」を、これまでの方針通り断行する、そのために国民の痛みが起きてもしかたがない、これが「構造改革」というもののまず第一の中身であります。

 「不良債権の処理」というと聞こえがいいが、いまの不良債権は、大部分が中小企業の借金であります。まじめに事業をやっていても、景気が悪いなかで借金が返せない。これが不良債権の大部分なんです。だから歯に衣(きぬ)きせないではっきりものをいう人は、「不良債権の処理」とは中小企業につぶれてもらうことだ、ここまではっきりいう人が経済界にはかなりいます。

 それを国民の痛みも考えないで断行したらどうなるか。中小企業の倒産。失業の増大。いたるところに起きてくるでしょう。しかもこの痛みは生やさしいものではありません。いま、いろいろな民間の研究機関、ニッセイ基礎研究所とか、いわば大企業系の研究所もそういう処理を断行したらどうなるかの試算をやっています。ニッセイ基礎研究所の試算によると、この処理をあわててやったら百三十万人の失業者が増えるという、ものすごい結果が出ているのです。いまの三百二十万人の失業者に百三十万人の失業者が増えたら、四百五十万人、とんでもない事態になるじゃありませんか。それを、こんな痛みはがまんしてもらいたい、これが「構造改革」だといって強行する、それが小泉流の「日本を変える」中身であります。

 「財政を再建する」といいます。けっこうであります。しかし、日本の財政を一番ひどい状態にしてきた年間五十兆円の公共事業については、小泉さんはこれを「減らす」ということは、ついに国会でいいませんでした。しかし、社会保障については、負担が軽ければいいではすみませんと、これだけははっきりいいました。

 小泉さんが好きなのは「社会保障の精神は自立自助」という言葉であります。「自助」とは自ら助けること、「自立」とは自分で立つこと。みなさん、国民が自分で自分を助け、自分で立つ、それが社会保障の精神だったら、国の出番はどこにもないじゃありませんか(拍手、「そうだーっ」の声)。負担を全部、国民にかぶせて、どんな切り捨ても平気で断行したいということです。

 結局、小泉さんがいう「痛み」とは、中小企業の痛み、失業の痛み、社会保障の切り捨ての痛みです。これをいままでのどの内閣もやれなかったような思い切ったやり方で大胆にやりたい。こういうことになるのではありませんか。(拍手)

 「郵政民営化」論――利用する庶民の立場はまったく問題にされない

 小泉さんの一枚看板に「郵政三事業の民営化」というものがありますが、これも実は弱者切り捨ての同じ精神からのことであります。

 どこから民営化論が出てきたかを調べてみますと、だいたい銀行筋なんですね。郵便貯金があるために、現在二百五十五兆円もの貯金が郵便局にあずけられている。“銀行に対する強力な競争相手だ。国が民間の銀行を圧迫しているじゃないか”、これが郵政民営化論の実は一番の出所なんです。しかし、こうして銀行の都合ばかりを大事にするが、郵便局を利用している国民の側のことはどうしてくれるのか。それにはまったく目を向けないのが、いまの「民営化」論の特徴であります。

 週刊誌を読んでおりましたら、『サンデー毎日』が面白い特集をしていました(五月二十日号)。民営化論の特集ですが、一番最初のページは「なぜ変える?こんなに便利な郵便局」(笑い)。見開きの特集から始まっています。

 「身近な存在である郵便局には、国営だからこそできるサービスも多い。それをなぜ民営化する必要があるのか」という書きだしで、次は「全国どこにでもある最も庶民的な金融機関」というのが見出しです。「現在、日本全国には二万四〇〇〇を超える郵便局がある。全国津々浦々を網羅し、郵便局までの平均距離は一・一キロメートルという身近な存在だ」。そのあとも「郵便局のサービスは全国一律」などずーっと書いてあります。

 私の方でそれに付け加えていいますと、どんな小さなお金でも、郵便局ならみなさん、平気で出し入れに行けるでしょう。銀行だったらそうはいきませんよ。このごろアメリカでは、小さなお金を銀行に預けると、利子はくれないで、その代わりに手数料、小さいお金を扱ってやってるんだからと手数料をとられる、これが広がっているそうであります。しかし、郵便局にはそんな心配はない。

 だから、庶民の立場からいえば、この特集がいっているように、こんなに便利なものはないのです。

 そのことをまったく無視して、“国による民間の圧迫だ”といって、郵便局の「民営化」をやろうとする。しかしみなさん、利益第一主義がここまでおよんだら、全国一律のサービスもできなくなります(拍手)。ここにも、弱者切り捨てで平気という小泉さんの考え方がはっきり出ていると思います。

 「集団的自衛権」――アメリカとの共同の戦争に「大胆に」踏み出したい

 では、政治のほかの面はどうでしょう。安保・外交では、「集団的自衛権」という問題に異常な熱意を燃やしているのが特徴です。

 集団的自衛権といいますと、「自衛」という言葉がついていますから、なにか日本が外国から攻められたときに集団で守ってもらうことだ、という誤解もあるようですが、とんでもない間違いで、これは、日本の自衛とはまったく何の関係もない話です。軍事同盟を結んでいる相手の国が戦争をやるときに、仲間だからといってその戦争に一緒に参加する、これが「集団的自衛」ということであります。

 はっきりいえば日本を基地としてアメリカがアジアで戦争行動をおこしたときに、いままでは基地を貸すだけだったが、これからは日本も自衛隊を出して戦争を一緒にやろう、ということです。アジアでの戦争ですから、アメリカの国を守る戦争でもありません。ベトナム戦争のような、いわゆる干渉戦争であります。それに日本も入っていこう。それが見え見えですから、先ほど緒方さんがシンガポールの国会議員の言葉を紹介したように、そこを見ぬいて、そういうことはアジアでは絶対ごめんだという声が、早くもあがっているのであります。

 これは、アメリカがいくら求めてきても、日本の憲法では絶対禁じていることであって、これまでの自民党政治はさすがにそこまではやれないといってきました。そこへ足を踏み出そうというのです。

 小泉首相は、憲法の解釈をなんとか新しく研究すれば、戦争に踏み出す道は開けるのではないかという立場です。彼の片腕の山崎幹事長は、解釈では無理だから、憲法第九条を変えるところまですすむべきだ、こういう立場です。どっちにしても、「改革」と称して、憲法が禁じているこの危険な道に踏み出そうとしていることは間違いありません。

 しかしみなさん、こんなことは国民が望んでいることでしょうか。朝日新聞が、憲法記念日を前にして世論調査をおこないました(五月二日付掲載)。これからの憲法をどうするかについては、ずいぶんいろんな意見がありましたが、戦争を放棄した憲法第九条、これについては「変える方がよい」は一七%、「変えない方がよい」は七四%(拍手)。四分の三の国民世論は反対だという答えが、はっきりと出ているのであります。(拍手)

 私はいま、小泉流のやり方を、経済の問題と憲法の問題と両面から見てまいりましたが、国民が変えてもらいたいと思っている自民党政治の古い枠組みを変えるどころか、これまで以上に乱暴に強行しようというのがこの内閣の本音だということは、すでに明確ではありませんか。(拍手)

 多くの人びとの間にこのことをいま事実できちんと明らかにしてゆく仕事が、非常に大事だと思います。

 日本共産党は本気で新しい政治をめざす

  この小泉流改革にたいして、日本共産党は、国民とともに本気で「政治を変える」ことをめざしている政党であります。

 いったいいまの自民党政治の枠組みの、どこを変えることが必要なのでしょうか。

 日本経済の二つのゆがみをただす

 第一に、経済の問題でいいますと、日本の資本主義は世界の資本主義国のなかでも異常なゆがみに満ちているのが特徴であります。大きな問題が二つあります。

 一つは税金の使い方のゆがみです。先ほど私は、年間五十兆円の公共事業といいましたが、一年間に公共事業に五十兆円も使いながら、社会保障には二十兆円しか使わない。税金のこんな使い方をしている国は、ヨーロッパにもアメリカにもありません。資本主義の国であっても、社会保障といえば国民全体のくらしを支える仕事ですから、予算のまず第一の使い道は社会保障、その何分の一かで公共事業をまかなう、これが世界の常識であります。ドイツでは、公共事業費の三倍のお金が社会保障に使われています。アメリカでは四倍のお金、イギリスでは六倍のお金。

 日本では逆に、社会保障の二倍半ものお金が公共事業に使われている。みなさん、こんなことがあるから、国民生活は政治の支えなしに苦しくなり、日本国中、環境は破壊され、そのうえ、つけがたまって、六百六十六兆円もの途方もない借金に悩む国になってしまいました。ここに第一のゆがみがあります。

 第二のゆがみは、日本の資本主義は、ヨーロッパなどにある国民の権利や生活を守るルールが欠けた国になっている、ということです。労働時間もサービス残業含めてどんなに延ばしても平気。労働者をリストラするときには、企業の勝手放題で何でもできる。環境問題でも開発優先。どこにもルールがないのです。まさに“ルールなき資本主義”です。

 そこをあらためて、せめてヨーロッパ並みのルールをもった経済社会をつくろうではないか、それがいま、大問題になっています。

 こういうゆがみの大もとを見定め、段取りを踏みながらそれをただす目標をみなさんに示しているのが日本共産党であります。

 だからいまの経済の危機についても、先ほどご説明した「緊急経済提言」のような、道理があって有効な政策を打ち出せる。消費税減税には五兆円の財源がいりますが、こういう問題についても、財政再建の見通しをきちんと立てながら責任ある提案ができる。

 それでこそ私は、二十一世紀に日本が生きる経済的な道が開けると思います。

 安保のない日本をめざし、自主外交に踏み出す

 二番目は、安保・外交の問題です。何が一番問題かといえば、やっぱり日米安保条約です。海兵隊とか、空母機動部隊とか、海外に遠征することを主な任務としている米軍に、基地や母港を提供している国は、日本のほかには世界のどこにもありません。

 日本がなぜこんなことになっているかというと、実はこれはマッカーサーが日本にいた時代、戦争直後のアメリカに全面占領されていた時代につくられた仕組みが、五十年以上たってもまだ二十一世紀の日本に生き残っている、これが根源であります。

 こんな状態が半世紀も続きますと、日本はいわばアメリカの傘のもとで生きている国ですから、一人前の外交ができなくなります。「大国」、「大国」と言いながら、世界の政治のなかで日本ぐらい存在感のない国はないのです。だいたいどんな外交問題でも、道理をつくして外国と正面から交渉した経験がない。そういう国に、残念ながらいまの日本はなりはてています。

 私たちは二十一世紀には早い時期に安保条約とアメリカの基地をなくし、自分の足で立った一人前の国として世界の平和に役立ちたい、そういう展望を持っています。これは国民の声がまとまれば直ちにできることです。しかし、安保条約の廃棄にまでゆかないあいだでも、外交面で自主外交に踏み出すことは、政府にその気があればできることであります。私たちはいまでも、日本の政府がいつまでもアメリカの言いなりになるのをやめよ、日本の国民の利益と世界の民主主義の道理を踏まえた自主外交で世界に役立つような道にたて、と提案しています。

 私たちは野党でありますが、自主外交という点で大きな実績をあげてきていることを、ここで少し紹介したいと思います。

 たとえば、北朝鮮の問題です。三年前、テポドンの騒ぎがあった時に、日本と北朝鮮の関係は大変険悪になりました。お互いに非難し合う。私は当時、状況をよく調べてみました。日本では北朝鮮がいつテポドンを撃ち込んでくるか、そうなったら大変だといっている。北朝鮮の報道を見てみますと、ガイドライン法(戦争法)などの動きをみて、アメリカと日本がいつ攻め込んでくるか、それに対してどう対応するか、そればかりです。双方が、お互いに相手が攻めてくるぞ、攻めてくるぞといって、関係が大変険悪になっている。しかし、その二つの国のあいだには外交交渉をやるルートがなにもない。これは非常に危険な状態だと思いました。

 北朝鮮問題というのは、世界全体の大きな問題でしたが、アメリカにしても韓国にしても、外交ルートはちゃんと持って、交渉をやっています。日本だけが交渉ルートを持たないまま、対立だけがはげしくなっている。

 これは大問題だということで、私は一昨年一月の国会で、この事態を打開しようじゃないか、北朝鮮とのあいだにこれだけ問題がありながら、外交ルートを持とうとしない、これはとんでもない話で、外交ルートを開く努力を真っ先にやろうじゃないかと提案しました。秋の国会では、交渉のやり方についても提案をおこないました。実は、その提案が一つの実りになって、十二月には超党派の代表団が北朝鮮を訪問することになり、わが党からも緒方さん、穀田さんが参加しました。そしてそこでの話し合いをもとにして、今日の日本と北朝鮮との交渉が始まったわけであります。

 そのことに関して、政府情報に詳しい方から、私はあとで面白い話を聞きました。私が国会で提案しても日本の外務省はなかなか腰を上げなかったのです。その時に、韓国の政府筋とアメリカの政府筋の両側から、共産党が国会でこういう提案をしているのに、なぜそれに応じて動かないんだという働きかけがあったというのです。それで外務省が重い腰を上げて動き出し、やがて超党派代表団の朝鮮訪問につながった。このことを聞いて、やはり道理をもった提案は、世界政治で力をもちうるということの一つの表れだと思いました。

 日本共産党の自主外交――台湾問題の平和的解決をめぐって

 最近のことですが、もう一つこういうことがありました。中国と台湾の問題です。去年、台湾の選挙をめぐって中国と台湾の関係にいろいろ緊張した状態がありました。私どもは、中国と台湾の問題に関しては、日本は「一つの中国」という国際法の枠組みを守らなくてはいけないと、確信しています。

 「一つの中国」というのは、国連でもその立場で中国の代表権を台湾の政権から今の中国の政権に交代させたのだし、日本と中国の間でも、アメリカと中国の間でも、「中国は一つ」という原則が確認されています。破るわけにはゆかない国際的原則です。

 しかも日本は、一八九五年に、日清戦争に勝ったというので中国から台湾をとりあげ、五十年後の一九四五年にポツダム宣言で返した国です。ですから、世界で一番この原則を守らなくてはならない立場にあるのは日本だといっていいでしょう。

 これを解決する手段・方法については、日本の国民の圧倒的多数はこの問題が平和的に解決されることを熱く望んでいます。だれも、台湾海峡で戦火が起こることを望むものはありません。

 私は、去年四月に中国の代表団が来た時に、この問題についての私たちの考えを率直に話しました。曽慶紅さんといって、中国共産党の中央組織部長さんで、短い会談でしたが、そのとき私はこういう話をしたのです。

 “「一つの中国」というのは大事な国際原則だ。しかし、それを実現する方法については、われわれはあなた方に日本の国民の声をふまえて提案をしたいと思う。あなた方は香港を中国に復帰させ、マカオを復帰させた。

 その際、香港やマカオの現行の制度を変えない、「一国二制度」――今の制度のままで中国に復帰するという新しいやり方をあみだして成功していることを、われわれはよく知っている。台湾について、その考え方をみなさんが持っていることもたいへん結構だと思う。

 しかし、香港とマカオについては、あなた方は植民地としてこれをもっていたイギリスの政府やポルトガルの政府と交渉してこれを実現した。台湾はそうはいかない。台湾でその方向で問題を解決するには、台湾住民の支持をえること、台湾の“民心”を得ることが決定的だ”。

 こういう問題提起をしました。十人あまりの代表団でしたが、私が“台湾の民心を得る”という話をしたとたんに、団員の全体にざわめきがおこりました。何か、自分たちが考えていなかったところに問題提起がされたという驚きの感じでした。

 団長はさすがで、そのまま話をすすめ、その日の会談は、それで終わったのです。一カ月たって五月に中国から唐家〓(王へんに旋)(とうかせん)外相が日本に来ました。

 また会談をやりましたら、驚いたことには、唐家〓(王へんに旋)さんが“不破さんが四月に提案したことを、今、中国では真剣に研究しています”というのです。(拍手)

 外国の代表団がきて各党の代表と三十分くらいの会談をする、そういうときは、儀礼的な話としてその場だけの一過性のことで終わりがちなものなのですけれども、中国側はそういう態度をとらなかった、こちらからの問題提起を全体の問題としてきちんと受け止めて、検討しているという回答が、翌月別の代表からかえってきたので、私は率直にいって驚きました。大事な提案をすれば、集団でまじめに受け止めて、まじめに検討するだけの幅を中国は持っているんだなというのが、うれしい実感でした。

 今年になってから、中国の台湾問題にたいする言い方が変わってきたのです。「一つの中国」の原則は変わりません。しかしいままでは、「中華人民共和国が中国のただ一つの合法政府であり、台湾は中国の一部である」という言い方だったんですね。台湾のみなさんの気持ちが入る余地があまりない言い分でした。それを改めて、こんどは「中国は一つであり、中華人民共和国と台湾は一つの中国を構成している」という言い方に変えたのです。

 大事な変化だとそこに注目していましたら、三月、中国の平和団体の代表が日本を訪問して、緒方さん(国際局長)と会談しました。その時に、“こう変えるのはなかなか大変だった、しかし、台湾のみなさんの気持ちを考えて、こう発展させたのだ”という説明があり、その際、“不破さんが、台湾の人たちの声を注意深く聞いた方が良いと提案したことを私たちはよく知っています”といって、不破提案の研究もその検討のなかに含まれていたことを紹介しました。これも、貴重な感慨深い経験でした。(拍手)

 私たちは政権は持っていません。政権党ではありません。持っているのは道理だけです(笑い)。しかし、道理を持って世界にのぞめば、いろんなところで道理にかなった、国民の希望にかない平和の立場にかなった道が開ける。それが最近の私どものささやかな経験であります。(拍手)

 それでも、国際社会で、道理を持った外交がどんな力を発揮できるか、そのことが、ここにも現れているといえるのではないでしょうか。

 もし日本が国として自主外交を確立し、国民の願いにたって、アジアで世界で、平和の外交を展開するようになったらどんな新しい展望が開けるでしょう。みなさん、その道を国民の力で開こうではありませんか。(拍手)

 憲法改悪阻止の国民的な大同団結に努力

 三番目に憲法の問題です。

 いま、攻撃の的になっている憲法第九条は、日本が本気でこれを守る努力をしたら、世界から信頼と共感をかちとることができる、世界史の流れに立った誇るべき条項であります。(拍手)

 ほかにも日本のこの憲法には多くのすすんだ条項があります。“五十年もたって古くなった”と言う人がいますが、たとえば憲法第二五条には、「(1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。(2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とあります。国民の経済的な権利を決めた、このような条項が書きこまれた憲法を、いったいサミット諸国のどこが持っているでしょうか。はっきりいって、日本とイタリア以外には、国民の経済的権利を憲法で決めている国はありません(拍手)。それくらい、日本の憲法は世界でもすすんだ内容を持っているのです。(拍手)

 先ほど、酒井さんや鈴木さんから、戦前のことが語られました。わが党は、戦前の苦難の時代に、侵略戦争反対、国民主権、基本的人権を貫いてきた党です。そして、多くの先輩たちが命がけで守った国民主権、侵略戦争反対、民主主義と平和などの原則は、戦後、日本国憲法にきざみこまれました。

 私たちは、この歴史にてらしても、憲法のいかなる改悪にも反対であります。それだけでなく、憲法にかなった方向に日本の現実をすすめるために力をつくすものであります。(拍手)

 自衛隊がこれだけ大きくなった日本では、憲法第九条を完全に実現するのはなかなか難しい問題ですが、この問題でも私どもは、昨年十一月の第二十二回党大会で、国民の合意を広げながら第九条の完全実施にすすんでゆく段階的な道筋を明らかにしました。

 憲法擁護の立場をここまで全面的に明確にしている政党は、日本共産党以外には、現在の日本にはないと断言できます。(拍手)

 社民党は、九四年の村山内閣成立の時に、自衛隊は憲法違反だというそれまでの主張をすてて、“自衛隊は憲法にかなった存在である”という立場に切り替えました。その点では、私どもと大きな違いがあります。しかし、いま問題になっているのは、自衛隊の海外出動のために、憲法第九条の文章そのものを変えようという策動であります。それに反対する点で、一致できる全勢力が団結して憲法改悪を食い止める、これが憲法問題でいま一番大事な任務であります。(拍手)

 私どもは、その点で社民党と一致していることを重視しています。一昨年の六月、ある雑誌で、私は土井さんと対談しましたが、そのときに、憲法問題での統一戦線の必要性についていろいろ意見を交わしました。今年は、五月三日の憲法集会で、土井党首と志位委員長が、ともに、憲法擁護の同じ演壇に立って、注目されました。非常に力強い新しい前進であります。(拍手)

 憲法改悪阻止の一点で、国民的な大同団結を図る。私たちは、そのために、今後とも努力をつくしたいと思います。(拍手)

 以上が、日本共産党が国民に示す、日本改革の大きな柱であります。二十一世紀の日本が、生き残り、栄え、世界に貢献してゆく道は、これしかありません(拍手)。この旗を堂々と掲げて、「改革」を唱えながらあくまで自民党政治の枠組みに固執する小泉政権と対決してゆきたいと思います。(拍手)

 小泉政権と野党戦線の状況

  目を野党の戦線に向けますと、かなり波乱がおこっています。

 前から指摘していますように、今日の多くの野党は、「反自民」の野党の立場を明確にし、また「共産党をのぞく」という古い枠を捨てて、国会では、私どもとともに野党共闘をすすめるなど、政治情勢の新しい変化をつくってきました。しかし、やっぱり長い間、自民党政治の中にいて、そこから生まれてきた野党ですから、政策の面では、考え方が自民党政治の枠組みからなかなか抜け出せないという面が、率直にいって強くあります。消費税減税の問題でも、国民の間では多数意見ですが、野党の中では賛成だという党がありません。

 だから私たちは、国会の中では一致点で国会内共闘をすすめるが、今度の参議院選挙で選挙協定をやる、この選挙区では、この党に六年間政治を任せますというわけにはゆかないという態度をとってまいりました。

 私たちがみてきたこの弱点が、小泉内閣の成立とともに、一気に表面化してきたという印象があります。この間ある新聞に出ていましたが、もともと、「自民党とどこが違うのか」と聞かれるのが、民主党の一番いやな質問だったそうであります(笑い)。森内閣の段階では、なんとか説明ができたが、小泉内閣になると、小泉さんの「改革」論と民主党の「改革」論の区別がいよいよつかなくなってきた。「構造改革」、憲法改定、集団的自衛権どれをとっても民主党の現在の政策ときわめて近いものです。

 だから、この間の国会の質問を見ますと、“もともと、私どものいっていたことをあなたが言い出した”といって質問したり、“お互いに、この改革はどっちが本物か、またどっちがスピードが早いかの競争をしようじゃないか”といってみたり。予算委員会では、“私はあなたの後押しをしようと思って質問しているんだ”という議員が出たり。小泉答弁に対して、自民党席からではなく、民主党席からしきりに拍手がおこったり。なかなか変わった状況がおこっています。

 私たちは、この状況は、自民党と対決するといいながら、政策的には、自民党政治と対決する枠組みを確立できないまま、「政治を変える」ということを一般的に問題にしてきた、その弱点が、かなり強く現れたものだとみています。

 「改革」といいながら自民党政治をあくまで続けようという小泉政権に対して、いま必要なのは、本当の意味で、自民党政治の枠組みを打破する改革であります(拍手)。その「日本改革」を一貫して訴えてきた日本共産党こそ、いま政治を変えることを本気で求めている国民多数の希望にこたえることができるのであります。(拍手)

 小泉政権の実態はなんなのか。本気で政治を変える道がどこにあるのか。そういうことをあくまで事実にもとづいて、道理をつくして、広範な国民に訴えること、都議選、参議院選挙を前にしたいま、ここにもっとも大事な仕事があると思います。日本共産党は、この仕事を、精力的に確実に、果たしてゆくつもりであります。(拍手)

 いま日本共産党の都政政策が光っている

 「いいことはいい、悪いことは悪い」は、都民の利益が基準

 さて、都政ですが、都政は事実上昔ながらの「オール与党」の状況であります。その中で、日本共産党都議団が、都民の利益をなによりの基準にして、「いいことはいい、悪いことは悪い」、この態度を一貫してとってきたことを、みなさんに繰り返し説明してきましたが、そのことの値打ちが、いま、きわめて光っています。

 これは、都民の目からみれば、なんの不思議もない、あたりまえの立場です。しかし現実の状況では、日本共産党以外のどの党も、このあたりまえの立場をとりませんでした。自分の党の公約に反することでも、石原都政が方針にしたとなると、公約を捨てて「賛成」に回る。これが大勢です。

 シルバーパスの有料化や、マル福、老人福祉手当の段階的廃止などは、わが党以外のすべての党が公約を捨てたために、都議会で採択されたものであります。

 面白いのは、選挙が近づいたら、こういう党が、自分たちの実績を棚上げにして、「いいことはいい、悪いことは悪い」が自分たちの態度だと言い始めたことであります。たとえば公明党です。ある候補は、「乱暴なことが提案された場合には、議決権を行使してストップをかけたい」、こんな演説をやっているそうであります。しかし、みなさん、それが本当なら、シルバーパスの乱暴な有料化やマル福の乱暴な切り捨てに賛成した態度をこそ、反省すべきではないでしょうか。(拍手)

 その時、反対を貫いた共産党に攻撃を集中して、今後の態度についてだけ物まねをしてみても、それで都民の目をごまかすことはできないのであります。(拍手)

 高齢者福祉の復活は多数の都民の切実な声だ

 都民の立場にたつかどうか、このちがいは都議選を前にして、各党が発表した都政政策のなかにも非常によく表れています。

 日本共産党は五月九日、都政政策を発表しました。この日本共産党の政策を各党の政策と比べながら読んでみると、その特徴はいっそうはっきりしてきます。

 第一は、日本共産党の政策は、都民に密着した要求をズバリ掲げていることであります。なかでも福祉の復活を第一に掲げたのがたいへん重要です(拍手)。とくに高齢者福祉の復活要求――シルバーパスの無料化、マル福、老人福祉手当の復活は、非常に重要な問題です。これは、高齢者とその家族の切実な要求であるだけでなく、いま若い方でもやがては高齢者になるのが自然の法則でありますから(笑い)、いま圧倒的な都民の要求になりつつあります。

 去年の十一月に東京都の政策報道室がおこなった「都民生活に関する世論調査」を拝見したのですが、そこにもはっきりでていました。都政はどこに力を入れてもらいたいかという質問にたいして、「高齢者対策」が四四・七%で、圧倒的に第一位です。二人に一人の方がまず真っ先に高齢者対策をあげました。東京都を六つの地域にわけて全部の地域を調査していますが、六地区すべてで高齢者対策が要求の第一であります。それから世代別の調査でも、男性三十代以上、女性四十代以上のすべての世代で、高齢者対策が第一です。文字通り圧倒的な都民の声であります。

 ところが、各党の政策をみますと、どの党も高齢者福祉を項目には掲げているのですが、肝心の問題、シルバーパスとかマル福とか、福祉手当とかを避けて、いわば周りをうろうろしている感じの要求で、「悪いことは悪い」といえなかった政党の悩みが端的にまざまざと表れていました。(拍手)

 そのほかの問題でも、たとえば不況対策です。わが党の政策は“東京雇用ルール”――サービス残業をやめてリストラから雇用拡大に転換するということを含め、中小企業の要求、地域経済の問題など核心になる問題を広く提起しています。これにたいして他党をみますと、「ベンチャー企業支援」とか、自民党政治や石原都政に調子を合わせた要求はあるが、肝心のリストラ規制がない。サービス残業の問題がない。大型店規制の要求もない。つまりいちばん大事な魂がない要求になっています。

 この点で、私は、どの分野でも“日本共産党こそ都民の切実な利益の代表だ”と胸をはっていえる政策になっているということを、まずみなさんにご報告したいのであります。(拍手)

 都民の願いにこたえる気持ちがあれば必ず実現できる要求

 第二に、日本共産党の政策は選挙のときだけの口先の政策ではありません。この基本には、三月都議会で共産党都議団が予算の組み替え要求をだしたという実績があります。各分野の政策はそこにすべてが裏付けられています。もちろん、より発展させた項目もあることは当然ですが、大事なことは、都議会から選挙まで、都政にのぞむ態度として、一貫性を明確に持った政策だということであります。

 第三に、この政策が、きわめて現実的な、実現可能なものだということも、付け加えて説明しておきたいと思います。

 三月の予算組み替え要求では、都議団は、この要求をやるのにいくらかかるか、項目ごとに全部計算をして、都議会に提出しました。たとえば、シルバーパスの復活は二十億円あればできる。マル福の復活は五十四億円あればできる。老人福祉手当の復活は六十三億円あればできる。全部三点そろって復活させて必要な財源は百三十七億円であります。

 ただ、このことを“わずか百三十七億円でできる”といっても、一般にはなかなかわかりません。われわれは、だいたい億という金は触ったことはありませんから(笑い)。ですからいま、私どもはたとえ話で説明しています。

 東京都の予算は全部の会計を合わせると約十二兆円です。だからこれを月額十二万円の家計と比べていただきたいということです。そうしたら、十二兆円の予算の都政が二十億円使ってシルバーパスを復活させるということは、家計十二万円の世帯で、十二万円の中から二十円分節約してまわすと同じことです。同じように考えれば、マル福の復活は五十四円分の節約ですむし、老人福祉手当の復活は六十三円の節約ですむ。高齢者福祉三点全部の復活も百三十七円の見直しですむ。東京都の予算のなかでは、これだけの改革で、高齢者福祉がまるまる復活できるということであります。

 予算組み替え要求では、たとえば福祉の復活でも障害者の問題、難病の問題など二十一項目あげました。介護関係でも保険料、利用料の減免制度など三つの要求を出しました。さらに不況の問題、医療の問題、教育の問題、生活密着型公共事業の問題、環境問題、防災問題など、あわせて六十四項目をあげましたが、その全部を合わせても十二兆円のなかの九百十九億円の使い道を変えれば、解決できるわけであります。

 みなさん、これを十二万円の家計でいえば、そのうち九百十九円の使い道を変えればできるということであります。都知事を変えて都政の流れを大もとから変えるようなことをしないでも、いまの都政のもとでも、都民の願いにこたえる気持ちが少しでもあれば実現可能だというのが、ここに数字の裏付けをもって示されています。(拍手)

 都議団が都議選で勝利してもっと大きな力をもち、都民の運動と力を合わせるならば、一つ一つ必ず実現の道が開かれる要求であります。

 四番目に、「いいことはいい」という問題でも、たとえば横田基地の返還の問題です。関係自治体と都民の年来の要求であり、石原知事もこれを提起しました。ところが、自民党も、公明党も、民主党も、都政政策ではこれに一言もふれていません。自民党政治の悪い枠組みに縛られている実態はここでも明白ではありませんか。

 公約を守ってその実現のために奮闘する、その実績はためされ済みの日本共産党都議団であります。都民の利益と要求をになって新しい都議会で新たな大活躍ができるように、みなさんの都議選勝利への大きなご支援を心からお願いする次第です。(大きな拍手)

 謀略的な選挙妨害を日本の政治から一掃しよう

  次に、公明党・創価学会の反共攻撃とのたたかいですが、この面でもなかなか面白い発展がありました。

 なにしろ橋本派とあれだけ深くつながっていた公明党ですから、今度の首相交代にさいして、公明党と小泉新体制の間には、いろんな矛盾がありました。しかし、その矛盾を抑えこんでも、いったん手に入れた政府与党の地位は絶対手放したくない、こういう権力願望があらわになった点でも、なかなか興味深い状況があります。

 もう一つ面白いのは、「ハイエナ攻撃」の末路であります。私たちは、石原知事と手を組んでのあの攻撃に対して全面的な反撃をやりました。私自身の演説も「しんぶん赤旗」に二度にわたって掲載しましたが、「公明新聞」にも「聖教新聞」にも、何の反論もありません。もっぱらビラと口コミで全国にふれまわりました。なかには、「ハイエナ」という言葉を覚えられないで、「ハイアナ」(笑い)と間違える者もあり、そのたび言われた方で注意しているそうであります。(笑い)

 四月七日には、公明党の全国遊説が始まりました。名古屋の第一声で神崎(武法)代表が東京のビラを手に持ってかざしながら、「ハイエナ攻撃」をやったそうであります。その二週間後、四月二十一日に東京で神崎さんの街頭演説がありました。「ハイエナ」が大いに出てくるだろうと楽しみにしていましたが、ハイエナについて一言も出ないのです。名古屋ではいえたが、東京ではいえないのです。党の代表者自身が、ハイエナ攻撃は、肝心の東京では持ち出せない話だということに気がついたようであります。(拍手)

 道理を持った反撃の前には、相手側の反共攻撃がいかに無力か、このことは各地の数々のたたかいで証明されていますが、公明党の中央もこんな状態だということをご紹介しておきたいと思います。(拍手)

 きょうは、鈴木徹衆さんもおいでになりました。私どもは宗教者との交流をおおいにすすめています。徹衆さんもお話になったように、私は去年は京都の聖護院で、今年は京都の知恩院で、キリスト教、仏教、金光教、天理教、大本など宗教界の各派さまざまな方々に集まっていただいて懇談をやりました。

 そこではやはりみなさんが、公明党の政権参加を心配しておりまして、「公明党という宗教政党、創価学会という宗教団体を、どうみたらいいのか」と見方を聞かれます。私は、“世界には宗教政党はいろいろあって、キリスト教民主党のように政権参加した政党もあります。しかし、日本の公明党には、世界のこういう宗教政党の持たない、二つの独特の特徴がある”という説明を、その都度してまいりました。

 一つは、異なる宗教の信仰の自由を認めない、他宗の排撃であります。以前は、「邪宗撲滅」といっておりました。邪宗というのはどこまでも広がるもので、以前は創価学会が帰依(きえ)していたはずの日蓮正宗、大石寺が総本山ですが、そこから破門されましたら、今度は日蓮正宗も“邪宗”の宗門だということになって、いまもっぱら“撲滅”の対象にしています(どよめき)。それぐらい「邪宗撲滅」――他の宗教を認めないというのが、大変な特徴であります。

 もう一つは、宗教者というのは、市民道徳の点で熱心な方が多いのです。ところがあの政党とあの団体は、市民道徳を持たないのが特徴であります(拍手、笑い)。人に「ウソつき」というのは平気だが、自分は平気でウソをつく。(笑い、拍手)

 こういう話をしますと、たいていの宗教者が、みなさん思いあたることがそれぞれにあるようで、深くうなずかれます。(笑い)

 だいたい選挙での謀略や、私どもが被害者になった盗聴事件、ああいうことは、まさに市民道徳、政治道徳がないことの典型じゃありませんか。(拍手)

 四月十七日の小金井市議会の決議は、全国に影響を及ぼしましたが、それはどんな政治的立場に立とうと、これだけは守らなくてはいけないという政治道徳、政党の守るべき市民道徳が選挙戦でやぶられたことを、具体的に告発したからであります。(拍手)

 「特定の候補が所属する政党・団体の陣営と思われる運動員によって」――名前をあげないでも、だれのことか私たちはすぐわかります(笑い)――、「候補者が演説している周りを囲んで脅し、選挙活動を妨害され」た、「各候補者が『うそつき』呼ばわりされる事態が発生した」、また「選挙期間中も政治活動として認められているポスターの掲示について『選挙違反』の張り紙をされ」た、「各候補者や所属する政党の誹謗・中傷の謀略チラシが夜陰に紛れて撒かれ」た、こういうことがずっと具体的にあげられて、「公正に行うべき選挙が、一部の候補者陣営の行動によって汚されてしまったことは、由々しき事態である」。絶対にこれの再現を許してはならない(拍手)。こういう告発をおこなったのが小金井市議会の決議です。(大きな拍手)

 みなさん、市民道徳も政治道徳もかなぐり捨てた、こういう勢力の横暴勝手が政治を左右することを、これ以上許すわけにはゆかないではありませんか。(大きな拍手)

 昨年の総選挙の際には、公明党・創価学会が、それこそ小金井市議会の決議にいうように、「夜陰に紛れて」反共の謀略チラシを全国でまき散らす、こういう総攻撃をかけてきたのは、選挙最終盤の三日間でした。油断せず、今度の選挙でも、反撃と告発に引き続き力をいれたいと思います。(拍手)

 彼らのこの実態については、私には深い思い出があります。三十一年前の一九七〇年、私が初めて国会にでて、初めて予算委員会で質問した時、取り上げた問題は、公明党・創価学会の出版言論妨害の問題でした。創価学会を批判した本が発行された時に、田中角栄という自民党幹事長に頼んで、町へ出る前にこれを全部抑えこむ、そういうことをやろうとして大問題になりました。私たちがこの問題を民主主義のもとでは許されない大問題として国会で取り上げたら、公明党・学会はそれこそ全国的な反共のあらしでこれに立ち向かうとし、これにたいして国会内と国会外で徹底的にたたかいをすすめました。

 そして最後には、五月三日、「創価の日」というのだそうでありますが、この日の記念講演で池田会長が“言論妨害は猛省したい”“選挙はこれからは公明党中心でやって、学会は地域ごとの応援の役目にとどめたい”“かたくなな反共主義はとらない”、こういうことを天下に公約するところまで追いつめたのであります。(拍手)

 今度の中心問題は、一般的な言論妨害ではありません。小金井市議会の決議で指摘されたような悪質な選挙妨害、もっとはっきりいえば、自民党の悪政の守り手を買って出ての謀略的な野党攻撃、なかでも反共攻撃であります。

 われわれの目標は、あの人たちがいっているような、邪宗の「撲滅」ではありません。このような無法な謀略が日本の政治から一掃されるところまで、反撃をやりつくすことであります。(拍手)

 この分野でも民主主義と正義の旗を掲げて、たたかいをやりとげようではありませんか。(大きな拍手)

勝利をめざし、意気高く攻勢的な選挙戦を

  私たちは、四月二十三日、東京の共産党の支部、地区の総結集の会議を開いて、二十六議席を絶対守り抜くと同時に、いま議席を持たない全選挙区で議席をめざして挑戦するという基本態度をあらためて確認しました。

 この目標を実現するには、これまでの枠を越えた新たな活動が必要であります。情勢はいま、そういう活動を求めていると思います。

 小泉政権の成立とともに、政治への関心が高まり、政治的討議も活発になる、こういう状況が各地に生まれています。世論調査での内閣支持率がいま高くても、そのことに驚く必要はありません。「政治を変える」ことに期待をかけたこの声は、新首相にすべてを白紙でお任せする、あるいは、新首相が何をやろうが黙ってこれを見ているだけの、受け身のものでは決してないと私たちは考えています(大きな拍手)。「政治を変える」声を、政治に生かす意欲を持った、生きた力を持った世論だと考えています。

 この広範な人びとに呼びかけて、本当に政治を変える道をともに探求する対話と交流の輪を、圧倒的に広げようではありませんか。(大きな拍手)

 福祉復活の運動の先頭に立ち、また「緊急経済提言」での対話をさらにさらに広げ、都民の世論と運動を、草の根から政治を変える大きな力に発展させてゆこうではありませんか。(大きな拍手)

 そして、この新しい情勢のもと、ほかのどの党にも負けない活動を展開し、あらゆる手段をつくし、あらゆる可能性を生かし、死力をつくして都議選での勝利をなんとしてでもかちとろうではありませんか。(大きな拍手)

 つぎは参議院選挙であります。都議選の勝利に燃やした力をさらに大きくし、全国の先頭に立って、東京選挙区での緒方靖夫議員の再選と、比例選挙での日本共産党支持票の大躍進をかちとり、二十一世紀の新しい政治をめざす大きなうねりを首都東京から巻き起こしてゆこうではありませんか。(大きな拍手)

 本日はありがとうございました。(長く続く拍手)


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