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日本共産党

ドイツ共産党のインタビューへの回答

日本共産党中央委員会議長 不破哲三

 2001年2月9日(金)「しんぶん赤旗」


 以下に掲載するのは、ドイツ共産党のハインツ・シュテア議長から日本共産党の不破哲三議長に寄せられた質問にたいする回答の全文です。昨年十一月の日本共産党二十二回大会に出席したシュテア議長は不破議長と懇談したさい、ドイツ共産党の機関紙「ウンゼレ・ツァイト」のためにインタビューをお願いしたいとし、その後、同党から質問状が送られてきました。

 ドイツ共産党は九八年に、日本共産党の活動を研究するために代表を派遣しました。昨年六月には、その代表が編者となって日本共産党の綱領や規約、理論活動を紹介する本がドイツで出版されています。(中見出しは編集局がつけました)


国民に開かれた党とは?

一、第二十二回党大会は、国民にたいして日本共産党はもっと自らを開かなければならない、という課題を決めました。これは具体的にはどういうことでしょうか。

 私たちが、党綱領の現在の方針を決めたのは、いまから約四十年前、一九六一年のことでした。当時、日本共産党の国政選挙での得票は約百万票でした。それ以来、党綱領の方針にもとづいて活動してきた結果、最近の国政選挙での得票は、七百万〜八百万票前後にまで前進してきました。この前進をさらに大きくすすめて、数千万の規模で国民との交流・対話を発展させ、新しい政治をおこす国民的な多数派をつくりあげなければなりません。私たちが、国民にとって“よりわかりやすい”活動ということを、最近の党大会で強調したのは、国民の多数派になるという、この任務を自覚してのことです。

 “国民にわかりやすい”活動ということは、党の政策・方針を立案するとき、つねに国民の多数の人びとの切実な利害から出発すること、日常の活動で、党の支持者だけでなく、さまざまな政治的見解をもつ人びととの対話・交流につとめること、党の方針などを、日本共産党について予備知識をもたない人びとにも理解できる言葉で表現すること(今回の党大会での規約改定にあたっては、とくにこの点に力を入れました)などなど、いろいろな角度からの努力をふくむものです。

 いま、日本の政治情勢は、非常に深刻な危機的要素を増大させており、そのことは、一九九〇年代の十年間に首相が八人も交代したという、政治の不安定さにも現れています。長期にわたる自民党政治からぬけだし、国民本位の新しい政治を求める声は、日本社会の全般に日増しに強まっています。私たちは、政治の革新をめざす日本共産党の政策方針が国民の大多数の利益に合致していることを確信していますが、日本改革のこの政策への国民多数の支持を広げる努力を強め、二十一世紀の早い時期に、民主的な政権を樹立する大きな展望を切り開いてゆきたい、と考えています。

憲法と自衛隊にたいする態度について

二、ブルジョア・マスコミも自衛隊にたいする日本共産党の態度の変更に大きな注目を寄せました。あなたは、日本共産党のこの新しい態度をどう定義しますか。

 日本の憲法は、日本が「戦力を保持する」ことを禁止する、つまり、常備軍をもたない、という特別の条項をもっています(憲法第九条)。日本共産党は、この条項を、日本が平和的な進路をすすむうえで、また世界の平和に独自の貢献をするうえで、きわめて積極的な意義をもつ条項だと評価しています。

 日本では、一九五〇年代に、憲法のこの条項を無視して事実上の軍隊である「自衛隊」が設けられ、多年にわたって軍備の拡大強化がすすめられてきました。その結果、憲法違反の状態は、いまでは、憲法上は常備軍をもてないはずの日本が世界第二の軍事費大国になるところまで深刻化しています。

 わが党は、以前から、自衛隊が憲法違反の存在であることを明確に指摘し、この状態をあらためて、日本が、憲法第九条の完全実施、すなわち自衛隊の解消にむかってすすむべきことを、主張してきました。憲法と自衛隊の問題で、こういうきちんとした立場に立っている政党は、日本では日本共産党のほかには存在しません。

 今回の第二十二回党大会の決定の特徴は、自衛隊の解散を将来の目標として一般的に主張するだけでなく、二十一世紀の早い時期にこの目標を完全に達成することをめざして、どのような道筋をとおってそこに接近してゆくかを、段階を追って明確に示したところにあります。

 この展望では、

 (1)現在の自民党政権のもとで、自衛隊の海外派兵と憲法改悪に反対し、軍縮を要求してゆく段階、

 (2)民主的な政府を樹立し、そのもとで日米安保条約(アメリカとの軍事同盟)を廃棄するとともに、それに対応する内容で自衛隊の改革と軍縮を逐次実行してゆく段階、

 (3)自主的な平和外交でアジアにおける平和的な国際関係の構築に貢献しながら、自衛隊の解消への国民的な合意をすすめてゆく段階、

 などが大きな区切りとなるでしょう。

 この道をすすむ過程では、民主的政府が成立したあとでも、自衛隊が存在する時期が過渡的には当然生まれてきます。党大会の決定は、この時期に、国民の安全をまもるために自衛隊の役割が必要とされる情勢が生まれた場合には、自衛隊を「活用」することもありうることを、明らかにしました。これが、新しい問題提起として、マス・メディアでもかなりの関心を呼びましたが、問題の核心は、わが党が、そういう過渡的な時期の問題までふくめて、自衛隊の解消への道筋をより全面的に明らかにしたところにあったのです。

党規約から「前衛政党」の規定を削った考え方は?

三、規約改定で、日本共産党が将来の社会の指導勢力であると自認するような個所は削除されました。社会にたいするこうした党の態度は、どういう考え方と結びついているのですか。

 私たちは、今回の党規約改定で、「前衛政党」という用語を削除しました。この規定は、わが党がかなり伝統的に使ってきたものですが、「前衛」という言葉には、ある種の誤解――日本共産党が、自分自身を「指導するもの」と、国民を「指導されるもの」と位置づけているかのような誤解――を引きおこしやすい要素がふくまれていました。今回の規約改定は、その種の誤解の根をたつ意義をもつでしょう。

 私たちは、日本共産党は、日本社会のなかで、また日本国民の運動のなかで、共産党でなくては担えない重要な役割を担わなければならない、と考えています。しかし、これは、国民に号令したり、自分たちの考えを押しつけたりすることではありません。

 改定された規約で、私たちは、日本共産党の担うべき任務を、次のように規定しました。

 「党は、創立以来の『国民が主人公』の信条に立ち、つねに国民の切実な利益の実現と社会進歩の促進のためにたたかい、日本社会のなかで不屈の先進的な役割をはたすことを、自らの責務として自覚している。終局の目標として、人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会の実現をめざす」。

 そこで重要なことは、共産党の役割を、国民の利益をまもり社会進歩を促進するという目的とあわせて、(1)どんな迫害や攻撃にもまけないで頑張りぬく不屈性および(2)社会と運動の将来を科学的に見定める先見性、先進性という二つの面から特質づけていることです。

どのような活動で、国民のあいだに太く根をはってゆくのか?

四、日本共産党は、多くの重要な議会外活動のなかに太く根を張った大衆政党です。今日における党の発展のありようはどのようなものでしょうか。あなたがたは、日本共産党の議会活動と議会外活動との結合を、どのようにつくりだしているのでしょうか。

 議会活動と議会外活動との結合には、さまざまな側面、さまざまな要因がありますが、ここでは、いま私たちがとくに力を入れている二つの問題をとりあげたいと思います。

 第一は、全国で党の支部がおこなっている日常活動です。支部は、基本的には、地域、職場、学園を単位として組織されており、いま全国に約二万六千の支部が存在しています。これらの支部は、党員と機関紙読者の拡大を中心に、党そのものの発展を日常の課題とすると同時に、自分が責任を負っている地域・職場・学園で、切実な大衆的要求にこたえる活動をすることを、基本的な任務としています。支部が中心になったこの“草の根”の活動は、日本共産党の議会外活動の全体のなかでも、いちばんの基礎的な活動をなしています。

 第二は、地方自治体での活動です。日本共産党は、国会の議席数では、日本の有力な七つの政党のなかで第四党という地位にあります。しかし、地方議員数では、一九九〇年代の前半に自民党を抜いて第一党になり、現在では、その自民党を九百人以上も引きはなして抜群の第一党の地位を占めています。一九九九年末現在の各党の地方議員数は、日本共産党四四五二人、自民党三五三八人、公明党三一九五人、社民党八八七人、民主党八二三人、です。

 日本共産党がこうして地方政治で大きな地位をきずいていることは、国政の舞台で議会活動と議会外活動を結びつけるうえでも、重要な役割をはたしています。

日本共産党に新しい人びとが入党するきっかけは、どこにあるのか?

五、日本共産党は高度に発達した国で活動しています。党にたいして人びとが信頼を寄せつつあることは選挙結果にも示されています。新しい人びとが入党するきっかけは何でしょうか。彼らはなぜ入党し、「しんぶん赤旗」の読者になるのでしょうか。

 第一に、日本共産党がかかげている「日本改革」の諸政策が、広範な国民の利害・要求を的確に代表していることです。それには、私たちの綱領の路線――日本の当面する革命を反帝反独占の民主主義革命と意義づけ、「資本主義の枠内での民主的改革」を党の基本政策と規定した――が、大きな役割をはたしています。自民党政治に苦しめられている多くの人びとが、日本共産党のこの政策のうちに、自分が生きてゆく活路を見いだしており、そのことが、党に入ったり、「しんぶん赤旗」の読者になったりするさいの、最大の原動力となっています。

 第二に、日本共産党の歴史です。

 日本は、過去において、天皇制の支配のもとで侵略戦争につきすすみ、国内では民主主義と人権を否定する軍国主義の専制・抑圧の体制をしきました。そのとき、日本共産党は、これに反対して、「主権在民」の民主主義の旗、侵略戦争を許さない「反戦平和」の旗をかかげ、迫害に抗して不屈にその旗をまもりぬいた、日本で唯一の政党でした。

 また、第二次世界大戦後、ソ連や中国の毛沢東派が、自分たちの勝手な方針を日本共産党と日本の民主運動に押しつけようとして乱暴な干渉攻撃を大規模にかけてきたとき、日本共産党が自主独立の立場を不屈にまもりぬいて、干渉派のあらゆる攻撃を打ち破ったことも、広く知られている歴史的事実です。外国の干渉にたいして、こういう自主性を発揮した政党は、ほかには存在しませんでした。

 こういう歴史は、反共勢力のさまざまな日本共産党攻撃をうちくだいて、多くの人びとのあいだに日本共産党への信頼を広げる活動に、大きな基盤を提供しています。

 第三に、政党としてのあり方にたいする共感と支持の広がりを、大きな要因としてあげなければならないでしょう。

 ――企業・団体からの政治献金も、国民の税金の不当な分けどり(政党助成金)もいっさい受けとらず、党の財政を党費・機関紙収入・個人献金でまかなって、他の諸政党を侵している金権腐敗とまったく無縁なこと(清潔さ)、

 ――国民にたいする公約をきちんとまもること(誠実さ)、

 ――離合集散の激しい日本の政界で、その旗印を変えず、政治的な一貫性をつらぬいていること(一貫性)、

 ――支部を基礎にした組織を全国的に確立し、日常活動で国民各層と結びついていること(国民との結びつき)、

 などなど、日本共産党の日常的な姿そのものが、人びとを引きつける重要な要因となっていることは、多くの識者からも指摘されていることです。

ドイツ訪問についての招待をいつ受け入れるか?

六、最後の質問です。あなたにとって日本共産党とドイツ共産党の良好な関係がいかに重要かについて、あなたはくりかえし触れました。あなたは、わが国を訪問するようにというドイツ共産党の招待を、どのような形でまたいつ受け入れますか。

 いちばんむずかしい質問です。わが党の大会の席でシュテア議長からこのご招待をお受けしましたが、私がその時、感謝の言葉とあわせておこなった私の側の事情説明を、もう一度くりかえさなければなりません。

 私は、マルクス、エンゲルスが生まれたドイツの地にも、またその地で活動するドイツ共産党にも、深い関心と連帯の気持ちをもっていますし、ぜひ機会をつくってドイツを訪問し、あなたがたと交流したいという強い希望をもっています。

 ただ、この希望をいつ実現するかという日程の問題については、少し長い視野で考えていただくことを、お願いしておきたいと思います。ひんぱんに選挙があり、政治日程があわただしい日本では、私たちにとって、ヨーロッパ訪問の計画をたてることには、なかなかむずかしい条件があるからです。

 一九九〇年代の十年間には、私はヨーロッパを訪問する機会をついにもてませんでした。今度、ヨーロッパ訪問の計画をたてるような状況になったときには、ご招待にこたえてのドイツ訪問を、その計画に必ずおりこみたいと考えています。

 

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