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日本共産党

日本共産党第22回大会

規約改定案の討論についての
不破委員長の結語


 日本共産党第22回大会最終日の11月24日におこなわれた、「閉会あいさつ」は、つぎのとおりです。


 会場にお集まりの代議員のみなさん、評議員のみなさん、また全国の同志のみなさん、私は、中央委員会を代表して党規約改定の問題についての討論の結語をのべたいと思います。

規約の問題がこれほど生きいきと語られた大会はない

 党規約の問題は、これまでも多くの大会で議論されてきましたが、私は、規約の問題が、日常の党活動の柱になる問題として、これだけ生きいきと語られた大会はなかったと思います。

 まだ大会で決定する以前の活動の報告ですけれども、東京の江戸川地区や中野地区、埼玉の中央地区、滋賀の大津・湖西地区をはじめ、多くのみなさんの発言の中で、規約改定案にもとづく活動がすでにどんどんすすめられており、これが党前進の大きな力になっていることが報告されました。これは、規約改定案の適切さがすでに実践的に証明されているということだと思います。

 大阪の宗教者の同志は、規約第二条が仏教の教義とどういう関係に立つかについてまで、論じてくれました。この発言は、外国の代表のみなさんの間でもたいへん反響をよんで、「ぜひ全文がほしい」という注文も寄せられたことをご紹介しておきます。(拍手

 党生活、党活動の現実とむすびつけてのこういう討論は、大会前でも全党的な特徴になっていました。また、大会中、CS通信をつうじてじかに大会の報告を聞いた全国のみなさんから感想が続々寄せられ、その数は最初の二日間で八百二十二通にもなりました。その中にも、規約改定問題についての感想や意見をふくむものが半数近くありました。そこには、「これほど規約問題をおもしろく感じたことはありませんでした」という感想もありました。

 文字通り、この討論をつうじて、また今度の改定をつうじて、党規約が全党の血となり肉となった。党規約によって党を語り、党を考える、党規約によって党の運営と活動を語り、考える。まさに、規約とその精神が日常の党活動の力になるという状況がつくられつつあると思います。

 党大会では、党の「新しい発展段階」ということを何回もいいましたが、ここにも、新しい世紀にふさわしいわが党の新しい発展段階のあらわれがあるということを、強調したいのであります。

規約改定案の修正点について

 つぎに、これまでの討論にもとづいて規約改定案に修正をおこなう諸点について説明いたします。

 修正案は文書としてお配りしてありますが、修正点は大小合わせまして約三十カ所に上ります。読めばすぐわかるものは説明いたしません。多少その意味についての説明を要する点についてだけ、説明しておきます。

「者」という呼称をあらためる

 一つは、第四条に「十八歳以上の日本国民で、党の綱領と規約を認める者は党員となる」、この「者」という言葉に意見がありました。

 「日本語では、『者』という言葉には、相手を見下げる語感があるのではないか」という意見でした。「者」というのは、たとえば日本の憲法などの公的な文書にも、ごく普通に使っている言葉ですから、私たちはそのつもりで使っていたのですけれども、そういう意見をいただいたので、あらためて日本語の研究をしてみました。いろいろな辞書を調べましたら、たしかに心配されるだけの根拠が、この言葉のなかにあったということがわかりました。

 たとえば、ある辞書には、「モノ」という言葉を「ヒト」という言葉と対比して、「モノ」は“「ヒト」に比べて卑下したり軽視したりするような場合に使われる言葉だ”と書いてあります。それから、『古語辞典』という、日本語の歴史に詳しい辞書を引きますと、これはもっと端的でありまして、「社会で一人前の人格的存在であることを表現するヒトにたいして、ヒト以下の存在であるモノとして蔑視あるいは卑下した場合に多く使う表現」だと書いてあります。そしてその例として、“この用法では「わるもの」、「痴(し)れもの」、「すきもの」など、曖昧または良くないと認められるような人間をいう例が多い”とまで書いてあります。これは、古語という昔の時代の文章についての説明ですが。

 そういわれてみますと、たしかに「者」のつく言葉でほめ言葉はあまりないんですね。「怠け者」とか(笑い)。「わる者」はあるが、よい人の方は善人とよんで「よい者」とはいわないのです。まあ、若者という言葉はありますけれども。(笑い

 指摘されたおかげで、私たちも、日本語の歴史の奥深さを勉強しなおしました。(笑い

 そう指摘されるような歴史をもった言葉である以上、ここはきれいにあらためようということにいたしました。規約には「者」という言葉が十一カ所ありましたが、それをその条項の内容に応じて「人」、「党員」、ときには「委員・准委員」などにすべてあらためました。

党機関の呼び方を整理する

 第二点は規約のうえでの党機関の呼び方についてです。

 上級、下級という言葉をなるべく使わないということは報告でも説明しましたが、もう一つの問題がありました。わが党の場合、党機関には、それぞれの級の最高機関である党会議と、党会議と党会議の間の執行機関である各級の委員会と、この二つの種類があります。それで、あとの方の機関――都道府県委員会、地区委員会、中央委員会などを「指導機関」とよび、党会議などふくめて全体を総括的によぶ場合には、「機関」あるいは「党機関」という言葉を使っています。

 このことを意識して、全体をあらためて点検しなおしてみましたら、だいぶ未整理のまま使われている場合がかなりありました。そこは全部正確な呼び方で統一されるように直しました。それが第二点であります。

機関紙活動を支部の任務の柱の一つとして規定する

 第三点は、機関紙活動の問題です。その重要性は決議案でも大いに強調され、今度の規約改定案でも、中央委員会の任務の一つに中央機関紙の発行をあげることでとくに強調しました。しかし、党員の活動、あるいは党支部の活動の任務としてそれがうたわれていないのは、大きな欠点だという指摘がありました。これは検討しまして、第四十条、支部の任務のところに「要求実現の活動、党勢拡大」に加えて、「機関紙活動」に積極的にとりくむということを明記することにしました。

地方議員の党生活について

 第四点は、議員団の党生活の問題です。第九章の第四十四条で、「すべての議員は日常的には議員団で党生活をおこなう」という規定をおこないましたが、これについて、現実には議員の同志が地域支部の支部長をやっている場合がかなり多い、そういう場合に議員団での党生活が基本だと一律にきめられても困るという意見がかなり多くありました。

 実際に調べても、そういう例は相当多くありました。そこで、「すべての議員は、原則として議員団で日常の党生活をおこなう」というようにあらため、弾力的な対応のできるゆとりを、規約の中に明記しました。

党費の減免の規定に弾力的な幅をもうける

 第五点は、第四十六条にある党費の減免の問題です。原案では、「……生活保護をうけている党員などいちじるしく生活の困窮している党員の党費は、免除する」、それから「その他の生活困難な党員の党費は、軽減することができる」というように、二つに書き分けてありました。

 ところが実際には、三日目の討論の中にもあったように、生活困難な同志のところへ行って減免の規定があるということを説明しても、党員として減免なしにきちんと払いたいという同志がいるなど、党員の実態はいろいろであります。ですから、これこれの場合には「免除する」と一律に決めてしまうのではなく、「軽減し、または免除することができる」ということを規約上の規定にし、これもその党員の実情と意志におうじて運用できるように、あらためました。

主な質問・意見について解明する

 つぎに、修正にはいたらなかった問題で、質問・意見があったものについて、主だった点を説明いたします。

「前文」のなかのいくつかの命題の取り扱いについて

 一つは、前文の問題です。前文をなくしたことは結構だが、あの中に自分の好きな命題がある、それを本文のどこかに生かしてほしいという意見がかなりありました。

 「集団指導と個人責任制の結合」が必要だという意見もあれば、「批判と自己批判」の部分をいれてもらいたいという意見もありました。「誤りはさけられない」というのもたいへん意味のある命題ではないかとか、「党の上に個人をおかない」というのもいいなど、それぞれにいろいろな思いがのべられました。

 これらの命題は、内容をきちんと正確にとらえた場合は、もちろん党活動に有益で重要なものです。

 しかし、これらの命題は、前文として、党員心得のようなことを展開している部分のある文章だったからこそ、しかるべき位置においてのべられていたものです。規約の本文には、なかなかなじまないものですから、その精神は党活動の方針に具体化してゆくということで、了解願いたいと思います。

なぜ「日本国民」が入党の資格条件となるのか

 つぎの質問は、規約の第四条にかかわるものです。さきほどの修正をいれて読みますと、「十八歳以上の日本国民で、党の綱領と規約を認める人は党員となることができる」、ここをなぜ「日本国民」にかぎるのか、いま地方参政権の問題もあり、日本に永住している外国人なら入党の資格を認めるべきではないかという質問がありました。

 この問題は、日本の変革の事業は日本国民の事業だという問題、それからまた各国の運動はたがいに他国の内政には介入しないという問題、このことにかかわる問題なのです。

 わが党の党員が、あるいは「赤旗」の特派員として、あるいはいろんな仕事上の関係で一つの国に長く滞在するということはずいぶんあります。その場合にも、私たちの党員は、住んでいる国の内政には介入しないという立場でとおします。それと同じことが日本にいる外国の方々の場合にはあるわけで、国として、そういう問題についての原理原則を明確にしている国もあります。

 ですから私たちは、日本の国の変革の事業、革命の事業である以上、これは日本国民の事業だという立場で、第四条に「日本国民」ということを明記したわけです。

 つけくわえていえば、永住外国人の参政権の問題についても、私たちは、地方参政権、つまりそこに住んでいる住民の福祉、生活に非常にかかわりの深い地方政治の分野では、選挙権も被選挙権も当然もつべきだという立場で、提案していることも申しそえておきます。

 第四条の「日本国民」という規定のおおもとには、そういう考えがあるわけであります。

「機関紙誌」上の党内討論はどうなるのか

 つぎの問題は、第五条の党員の権利と義務ですが、この第四項に「党の会議で、党の政策、方針について討論し、提案することができる」という規定があります。“以前は、この部分に機関紙誌でも討論や提案ができるという中身があった、今回それがけずられているが、それは党員の権利をそれだけ削減したことになるのではないか”という質問がありました。

 現行の規約には、この部分は、「党の会議や機関紙誌」となっていますが、すぐそのあとで「ただし、公開の討論は、中央委員会の承認のもとにおこなう」という限定をつけています。つまり、もともとここで機関紙誌と書いたのは、いつでも公開の討論をやるということではなく、今度の大会でやったような、特別な全党的討論をさしてのものでした。党大会の機会に「党機関紙誌」のうえでの党員の個人意見の発表をふくめて全党的な討論をやるということは、七〇年代以来不動のかたちで確立していることですから、いついかなる場合でも機関紙誌上の討論がやられるのだという誤解を生まないように、現状にあわせて表現をあらためたもので、権利の削減ということはまったくないことを、申し上げておきます。

党内の選挙で「自薦」の権利は保障されているのか

 つぎは、党内の選挙についての第十三条の問題で、ここに「選挙人は自由に候補者を推薦することができる」という条項がありますが、選挙のさいの「自薦の権利」を明確にせよという意見がありました。

 ここで「選挙人は、自由に候補者を推薦することができる」という場合、この「自由」のなかに自分を推薦する自由もふくむのだということは、すでに現行規約の当然の解釈となっていることです。

 実は、だいぶ以前の時期には、この点が曖昧になっていた一時期があったのですけれども、一九七六年に党中央の通達を全党に出して、「この規定は、党内の機関役員や大会、党会議代議員などの選挙における立候補(自薦)をふくむ党員の被選挙権を認めたものであり、これが規約の原則的な立場である」ということを、規約の解釈として徹底しました。

 ですから、すでにその権利が確立している問題なのですけれども、いままで公にこのことを言明する機会がありませんでしたから、この大会で、自薦をふくむのが規約の当然の解釈なのだということを明らかにすることで、解決としたいと思います。

支部総会の成立の条件について

 つぎに、第十四条にかかわることですが、党会議の成立の条件をのべたところで、「支部総会は党員総数の過半数」とあります。この支部総会の成立の問題については、現行規約では、「党組織の努力にもかかわらず、一年以上党生活にくわわらず、かつ一年以上党費を納めない者は、党会議(総会)をひらくさい、その成立の基礎となる党員数からのぞくことができる」(現行第十一条)という規定があったのに、なぜ今度の規約からなくなったのか、このままだと現実に困ってしまうという意見がありました。

 党のあり方としていいますと、活動に参加しない党員が、総会の成立要件にかかわるほど多いということは、普通の状態ではないのです。その普通の状態ではないことを、いかにもこれがあたりまえであるかのようにあつかって、その規定を規約に残すのはあまり健全なことではありませんから、今回の改定ではこれを省きました。

 現実にそういう事態が生まれたときには、従来規定されていた通りの対応をすることを、いわば内規的な対応、あるいは規約の解釈として認めることにしたいと思います。

 そして総会の成立要件にかかわるような事態が起きないような、支部生活のより健全な発展を期待したいものであります。

第十八条では、なぜ「経営」という言葉を使っているのか

 つぎは、第十八条の補助指導機関のところに、「経営」という言葉を使っていることについてです。「経営、地域(区・市・町村)、学園にいくつかの支部がある場合、必要に応じて、補助的な指導機関をもうけることができる」という条項ですが、規約全体としては、いままで「経営」支部とよんでいたものを「職場」支部とあらためたのに、なぜここだけ「経営」という言葉を使っているのかという質問でした。

 ここで「経営」といっているのは、大きな事業所あるいは企業体という意味です。つまり、一つの事業所にいくつもの職場支部があるときに、それらの職場支部の活動を調整し、あるいは統一するために、その事業所全体に対応する党委員会をつくるといったことを、想定しているのです。ですから、ここでいう「経営」という言葉を「職場」にしてしまいますと、いくつもの職場をふくむ職場といった意味の読みとれないことになるので、ここでは「経営」という言葉で、「職場」と区別した、広い事業所、あるいは企業体を表現したわけです。

臨時党大会で「党員総数の三分の一の要求」という条項がなくなっているが…

 第十九条の臨時党大会の規定についても質問がありました。

 臨時党大会の開催条件については、「中央委員会が必要と認めて決議した場合、または三分の一以上の都道府県党組織がその開催をもとめた場合」ということが規定してあります。現行規約にはこれにくわえて、「党員総数の三分の一」が要求する場合という規定がありました(規約第二十五条)。その規定を今度省いたわけですが、なぜ省いたのかという質問でした。

 「党員総数の三分の一」という従来の規定はどういう意味の規定だったかといいますと、これは党内でそういう署名運動などをやって、その署名が三分の一になったら臨時党大会を開くということではないのです。いくつかの都道府県党組織から要求があった場合に、それらの組織に属する党員の総数が、党員総数の三分の一を超えた場合には、党大会を開く要件にするという意味だったのです。

 これを現状にあてはめて考えますと、たとえば東京・大阪・京都・北海道という四つの大きな都道府の党組織が要求しますと、四つの党組織であっても党員総数は三分の一を超えます。そういう意味の話なのです。ですからこの規定を残すということは、党の規約の中に、大県とそうでない県との区別を残すような意味合いをもつので、今度思い切ってこれを省きました。

 ただ実際問題としては、臨時党大会の要求というのはこれまでの四十二年間に起きたことがないのですが、将来、そういう状況が起きたときには、たとえ一つの県の要求であったとしても、中央委員会はおそらく真剣に対処するだろうと思います。ですから、「党員総数の三分の一」といった規定を残さないでも、臨時党大会開催要求が全国のかなりの部分で起こった場合には、かならず適切に処理されるであろうことをつけくわえておきます。

「社会生活、社会活動の共通性」にもとづく支部とは?

 最後に、支部の問題です。第三十八条は「状況によっては、社会生活・社会活動の共通性にもとづいて支部をつくることができる」という規定を新たにもうけました。この規定は、青年支部、すでに全国で有力な活動を発展させている青年支部のような形態に規約上の根拠づけをあたえる規定としてもうけたものです。

 質問を寄せられた方は、青年支部ができるのなら、中小業者の支部などいわばタテ線支部もつくっていいのかという質問でしたが、私たちはそういうことを考えてはいないのです。この第三十八条には、冒頭に、「職場・地域・学園など」で支部をつくるのが基本だということが明記してあります。

 青年支部についても、最初の報告で志位書記局長が説明したように、青年はいつまでも青年であるわけではないのですから、歴史がすすむ中では多世代にわたる支部に当然発展してゆく、一つ一つの支部について見れば、これは自然の方向です。

 そういうなかで、現在、青年の間での活動を発展させるために、組織のこういう形態をとる必要が生まれたので、それに対応するためにこの組織形態をとったものです。

 この規定は、同じような状況がほかの分野にも生まれて、党としてその状況に真剣に対応しなければならなくなるときにも、適用されるものです。そういうことにそなえての規定づけであって、現在の支部をタテ線に割って、産業別といいますか、階層別といいますか、そういうものの集合体に党を変える方針ではないのだということをご了解願いたいと思います。

 以上が、これまでに寄せられました質問・意見の主だった点についての解明であります。

七中総報告も、党大会としての確認を

 なお、今回の規約改定案の内容の基本的な説明は、七中総でおこなって、党大会での報告は、そのときに説明したように、かなり追加的、補足的なかたちでおこないました。そういうことですので、七中総の報告についても、党大会としての確認をお願いしたいと思います。

 

  今回の党大会を転機にして、全党が規約をよく読み、研究して、われわれの組織原則をただしくふまえた党活動をすすめる、この機運は、現実に大きな波となって起こっております。この活動をおおいにすすめ、二十一世紀の新しい政治を担う党として、日本共産党の真価を発揮してゆこうではありませんか。以上で結語を終わります。(拍手

 


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