日本共産党

2002年12月10日(木)「しんぶん赤旗」

5中総決定の用語説明(下)


 外形標準課税

 政府が法人事業税について導入しようとねらっている課税方法。現行は法人所得に対して課税していますが、この一部を変更して、人件費や資本金などの企業の活動規模を表す「外形的」な金額に税率をかけて課税しようというもの。今までは納める必要のなかった赤字法人にも課税されるなど、中小企業は九割が増税となります。反面、トヨタ自動車や大手サラ金業者などは巨額の減税に。人件費に課税するため、リストラ促進の効果も。中小企業団体などは導入に強く反対しています。

 消費税の免税点制度見直し

 現在、年間売り上げ三千万円以下の業者は、消費税の納税を免除されていますが、この免税点を引き下げ、課税業者を増やそうというもの。大企業減税の財源確保と、将来の消費税率引き上げの布石として打ち出されてきています。政府は「益税」を口実にしていますが、現実には、免税業者も仕入れにかかった消費税を消費者に転嫁しきれず、身銭を切って負担しているような場合が少なくありません。政府の狙いは「益税」を宣伝して消費者と零細業者とを分断し、増税することにあります。

 簡易課税制度

 消費税は、売上額と仕入れ額の差額に税率をかけて計算するので、売り上げだけでなく、仕入れ額の計算も必要。年間売り上げ二億円以下の業者については、売り上げに一定の率(業種によって違い、90〜50%の五段階)をかけた額を「仕入れ額」とみなして、税額を計算できる制度。政府は、この制度についても縮小・廃止をねらっています。廃止されれば、年間を通じて仕入れにかかった金額を細かく計算して、記帳しておかなければならず、零細な業者にとっては大きな負担です。

 金融庁主導の信金・信組つぶし

 金融庁は、金融検査の結果として、貸倒引当金を何倍も積みますことを強要し、それだけの資本がなかった信金・信組を、全国で五十六も破たんさせました。この検査は、金融機関の「健全性」を理由に、都市銀行も、中小企業・地域金融を担っている信金・信組も、同じ「検査マニュアル」という乱暴なもので、自己査定では、正常貸出先の中小企業を、赤字や返済条件の緩和などの理由で、次々に不良債権にし、その「リスク」に見合う引当金を積むことを求めたのです。

 「地域金融の活性化のための法案」

 日本共産党の地域金融活性化法案は、(1)金融機関に、貸し渋り・貸しはがしの禁止をはじめ、中小企業への貸出比率などの目標をさだめ達成することを求める(2)国が地域金融機関を育成する責任をもち都道府県もこれに努める(3)金融機関の地域経済への貢献度などを評価、公表するとともに、金融庁と都道府県に必要な勧告をおこなったり、預金者・取引先などの苦情処理を行う「地域金融活性化委員会」を各都道府県に設置する、などが主な内容です。

 サービス残業に関する厚生労働省の「通達」

 この「通達」は、「割増賃金の未払いや過重な長時間労働」が広範にあることを認め、使用者には「労働時間管理を適正に把握する」責任があり、「労働日ごとに始業・終業時刻を使用者が確認し記録する」ことを求めています。この点は、日本共産党のサービス残業根絶法案の重要な柱でもあり、「通達」とはいえ、サービス残業根絶に向け使用者の責任を明確にさせたことは大きな意味を持っています。また、その後のサービス残業摘発でも重要な役割を果たしています。

 「不良債権処理の加速」

 今年九月の日米首脳会談での小泉首相の対米約束にもとづいて、十月に決定された「金融再生プログラム」に盛り込まれた政府の方針。具体的には、(1)銀行の資産査定を厳しくして、貸し倒れ引当金を積み増しさせる(2)銀行の自己資本比率の計算方法を厳しくする方向で見直す(3)自己資本が不足する銀行には、公的資金による資本注入を検討する―など。銀行は自己資本比率を維持するため貸付を減らさざるを得ず、「貸しはがし」をいっそうひどくして、景気をさらに悪化させることになります。

 アメリカ型金融システム

 アメリカの金融は、証券の引き受けや企業の合併・買収の仲介、デリバティブといわれる金融商品の投機的売買でばく大なもうけをあげる投資銀行(証券会社)が主流。貸し出しの場合も、個別案件ごとにおこない、その貸し出しを証券化して売ることが前提です。ふつう銀行は、企業の将来性や返済能力などを総合的に判断して融資し、景気変動など返済リスクを背負いながら、長期的に回収をはかるもの。銀行みずからリスクを負わず、目先の利益を追うような金融システムが直輸入されれば、日本の金融はマヒしてしまいます。

 米国の大手投資銀行や投資ファンド

 投資銀行は、日本の証券会社がおこなってきたような証券発行の引き受けや売買、企業買収の仲介や資金提供、金融商品の開発・販売、投資アドバイスなどをおこない、アメリカの金融業界の頂点に位置する金融機関。モルガン・スタンレー、メリル・リンチ、ゴールドマン・サックスなどが有名。投資ファンドは、不動産などを使った事業化プランをつくって証券化し、運用や投資家への売却で利益を上げる投資方法。不良債権処理で売却された土地や企業を安く買い入れています。

 銀行の自己資本比率

 銀行の「自己資本」を「リスク資産」で割ったものが自己資本比率。預金や借入金など返済義務がない資本金などが「自己資本」。一方、貸し出しや国債などは「資産」になりますが、銀行の場合、回収のリスク(危険度)に応じて計算します(たとえば国債は0%、貸し出しは100%)。このため、「資産」は「リスク資産」になります。自己資本比率の「国際基準」は8%以上。この根拠は、一九八八年当時、アメリカ、イギリスの銀行がこの水準をクリアしていたこと。「健全」、「不健全」を判断する基準ではありません。

 IMF(国際通貨基金)

 加盟国の出資で基金をつくり、外貨の資金繰りをお互いに助け合うことを目的に掲げて、設立された国際機関。一九四四年、当時の連合国(四十四カ国)が協定に調印し、第二次大戦後の四七年から業務を始めました。日本は五二年から加盟。現在、加盟国数は百八十三カ国。加盟国は出資額に応じた投票権をもち、最大の投票権はアメリカ(17・16%)が保有。多くの案件の決定には85%以上の賛成が必要というルールのため、アメリカが決定的な発言力を持っています。

 エンロンやワールドコムの破たん

 エンロンは規制緩和をきっかけに、デリバティブをガス、電力から天候やブロードバンドなどあらゆる分野に拡大し、売上高で全米七位へと急成長。しかし株価をつり上げるために、大手会計監査法人と組んで損失を名前だけの子会社に付けかえていたことなどが明るみにでて、昨年十二月に倒産。ワールドコムも世界第二位の長距離通信会社で、アメリカのIT革命の主力企業といわれましたが、もうけを大きくみせるために不正経理を行っていたことがわかり、七月倒産しました。

 マレーシアの経済再建

 一九九七年七月に始まったアジア経済危機にさいしてマレーシアは、貿易に関係のない外国為替の取引額を制限するなど、大胆な国際資本取引の規制に踏み切る一方、金融緩和などの自主的な景気対策を打ち出し、経済を徐々に回復させました。通貨・経済危機に陥った国は、IMF(国際通貨基金)から「資金援助」を受け、金利引き上げ、政府支出の削減、増税などを義務づけられるのが通例。タイ、インドネシア、韓国などはこのIMFの管理下に入りましたが、危機打開にことごとく失敗。マレーシアは、こうしたやり方を拒否し、自主的な政策をとることで危機を乗り切りました。


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