日本共産党

第2回中央委員会総会

参議院選挙にあたっての訴えと重点政策についての報告と結語

政策委員長 筆坂秀世

 2001年5月29日に開かれた日本共産党第2回中央委員会総会で筆坂秀世政策委員長がおこなった「参議院選挙にあたっての訴えと重点政策」についての報告と結語は、つぎのとおりです。


 「第十九回参議院選挙にあたっての日本共産党の訴えと重点政策(案)」について、主な柱と特徴はどこにあるのか――を中心に簡潔に報告します。

一、政策の構成について

 三月に発表した「緊急経済提言」は、当面する日本経済の危機を打開するには、これしかないということで提案したものでした。こんどの参議院選挙政策にも、そのエッセンスは盛り込んでいますが、同時に、小泉流「改革」と正面から堂々と対決する立場をあきらかにし、二十一世紀の新しい日本の国づくりの方向、「日本改革」提案をスケール大きくうちだしています。

 それは、次の五つの「改革」提案で構成されています。

 第一の改革は、経済の分野です。ここでは、大銀行・大企業応援から、国民の暮らし応援にきりかえる経済改革をすすめることです。

 第二の改革は、安保・外交の分野です。ここでは、二十一世紀の早い時期に安保条約を廃棄し、外国の軍隊がいない日本にすること。それ以前にも、自主・平和の外交で、アジアと世界の平和を前進させることです。

 第三の改革は、憲法。憲法改悪ではなく、憲法を生かし、平和・人権・民主主義が花ひらく日本にすることです。

 第四の改革は、子どもと教育、食料自給など、日本社会の危機を打開し、希望ある未来をひらくことです。

 第五の改革は、「カネまみれの政治」に終止符をうち、「きれいな政治」を実現することです。

 そのそれぞれについて、いくつかの特徴、みどころ・読みどころを説明しておきたいと思います。

二、「緊急経済提言」と参議院選挙政策

 最初に、「緊急経済提言」と参議院選挙政策の関係についてです。

 わが党は、これまで国民がもとめる緊急に解決すべき課題に全力をあげるとともに、より根本的な解決をめざすという二重の取り組みを重視してきました。

 「緊急経済提言」と参議院選挙政策とは、まさにこういう関係にあります。「提言」は、すでに各地で申し入れと対話、懇談会が活発におこなわれており、参議院選挙をたたかううえでの大事な政策となっています。

 この「提言」は、(1)財政的な裏づけをもっていること、(2)「日本改革」の提案の具体化であること、(3)国民多数の世論と合致していること――この三つの裏づけをもったものです。同時に、日米のエコノミストや大学教授などからも、いまの経済危機から抜けだすには、「消費税引き下げしかない」という指摘があるように、経済の道理にも立っています。経済同友会など、財界人との対話もはじまっていますが、そういう力をもった「提言」であるわけです。

 こういう「提言」ができるのは、自民党政治の根本的な改革をめざす「日本改革」の提案をもっているからこそできるということにも注目してほしいと思います。

 たとえば消費税の引き下げですが、私たちは、不公平な税制である消費税は、できるだけ早く廃止するという展望をもっています。また、直接税中心、総合・累進、生計費非課税という民主的な税制の確立をめざすという立場をもっているからこそ提案できるのです。

 社会保障の負担増凍結も、「逆立ち財政」をただすこと、税でも、保険でも「負担能力に応じた負担」という原則に立った改革をはかれば、社会保障財源を確保できるという展望をもっているからこそ提案できるわけです。

 サービス残業の根絶や中小企業支援で雇用を確保するというのも、「ルールなき資本主義」をまともなルールのある経済社会にするという「日本改革」の提案が裏づけになっています。

 だから、「緊急経済提言」は、緊急な経済危機の打開策ということにとどまらず、日本改革への大きな一歩をきりひらくものとして重視する必要があるのです。

三、消費税引き下げ提案について

 次に、消費税問題について、重要な争点ですので、少し立ち入って説明しておくことにします。

 いま、日本経済の六割をしめる個人消費が落ち込んでいるのは、この間の増税や社会保障連続改悪での負担増、倒産、失業、リストラで国民の所得が低下し、将来不安が高まったことによってもたらされています。「緊急経済提言」が消費税減税とともに、社会保障の負担増凍結、リストラ規制と雇用拡大をあわせて提起しているのは、そのためです。

 なかでも、消費税減税は、平均的な世帯で年間八〜九万円の所得補てん効果をもつため、国民の所得を実質的に増やし、消費意欲を高めるため、景気回復にもっとも効果的です。また、消費拡大と直結した減税であり、毎日、毎日の買い物に直接影響をあたえることになります。なによりも、これまでの国民の購買力を奪う政策から、これを増やす政策への劇的な転換となり、政治が本格的に国民の暮らしに目を向けた経済政策にのりだしはじめたという強力なメッセージとなり、景気回復に決定的な影響力をもつことになります。

 いまの消費不況は、「デフレ」をともなっていることに特徴がありますが、これは所得減からくる需要減によってもたらされています。ここから抜けだすうえでも、国民の所得をあたためることが重要です。実際、大阪信用金庫総合研究センターが中小企業を対象におこなった調査でも、「デフレ」の悪循環から抜けだすもっとも効果的な方策として、第一位に消費税減税をあげています。

 わが党はいうまでもなく、最悪の不公平な税制である消費税は廃止すべきというのが、基本的な立場です。だからこそ、「消費税をなくす会」などとも協力して、一貫してその努力をおこなってきました。三%への引き下げは、廃止への力強い一歩にもなります。

 さらにいま、塩川財務相の三年後引き上げ発言や竹中経済財政担当相の一四%への引き上げ論など、小泉政権が消費税増税を明確にしはじめています。参議院選挙では、消費税の減税か、それとも増税か、これが大きな争点になる状況になってきています。増税阻止のうえでも、消費税減税の声をひろげることの意義は大きいと思います。

四、自民党政治の枠組みをおおもとから変えるスケールの大きい「改革」提案

 次に、こんどの選挙政策の特徴についてです。表題が「自民党政治をおおもとから変える『日本改革』を提案します」となっているように、新しい世紀をむかえて、新しい日本の国づくりをどういう方向でおこなうのか、自民党政治の枠組みをどうくずして、新しい政治の枠組みをつくるのか、この「改革」方向をスケール大きくうちだしています。

 その柱が、最初にのべた五つの改革提案です。それぞれについて、簡潔にその特徴点を、のべておきます。

(1)経済改革について

 ここでの大きな特徴の第一は、医療、年金、介護で安心できる社会保障体系をつくるという、「緊急経済提言」でのべたことを具体化していることです。

 そのため、二つの改革を提起しています。

 第一は、国の社会保障への負担を増やすことです。そのための税制の民主的な改革方向をあきらかにしています。第二は、「力に応じた負担」という原則に立って、負担する力のある高額所得者や大企業の適正な負担を提起していることです。

 この二つの改革提案は、非常に重要な提起です。小泉首相らは、医療でいえば、高齢者のすべてから保険料をとる構想など、「負担する力のない人」にまで負担させるやり方を強行しようとしています。その最大の口実にしているのが、「これまでのように、負担は軽く、給付は厚くというわけにはいかない」「持続可能な社会保障制度」にする必要があるということです。しかし、「負担する力がない人」に負担をもとめるやり方が、どういう事態をつくりだすかは、いま国保でも、年金でも、未納・滞納が大問題になっていることでも明白です。「持続可能」どころか、社会保障の基盤そのものをつきくずしつつあります。これにたいして、わが党の提案こそが「持続可能」な、そして安心できる社会保障をつくる道だということです。

 第二の特徴は、公共事業で、具体的にムダなプロジェクト名をあげて、その中止を提言し、そのうえで、そのもとにある仕組みそのものをただすことを提起していることです。

 公共事業の問題では、小泉政権は、“聖域なし”といいながら、各論、具体論になると中止・削減に反対という態度です。他の野党は、国会では公共事業の削減をいうが、地方ではほとんど賛成しています。「総論でも、各論でも」「国でも、地方でも」、ムダな公共事業を削減する方向を明確にもっているのは、日本共産党だけだということも強調しておきたいと思います。

 財政再建の方向・道すじも提案しています。これは、国民の暮らしの予算を確保しながら、いずれは消費税を廃止していこうというもので、非常に攻勢的なものであることに注目してほしいと思います。

 経済改革で第三の特徴は、「逆立ち財政」を転換し、まともなルールをつくるという改革は、日本経済を本当に強いものにし、長期的視野でみれば、大企業にとっても必要な改革構想としてうちだしているということです。

 大銀行・ゼネコン応援型政治の失敗は、いまの深刻な不況の実態をみれば明瞭(めいりょう)ですが、実は、この失敗はそれだけにとどまりません。リストラ・首切りは、企業の競争力を奪い、社会保障の改悪とも結びついて、所得・消費の低迷、企業の売り上げ低下を招いています。環境破壊は、社会的コストとなって、企業自身のうえにもおおいかぶさってきます。女性に対する差別は、その力を十二分に発揮するうえでの妨げとなり、社会的損失になっています。

 国民の暮らしに軸足をおく方向への経済の転換というのは、日本経済を立て直す本道であり、日本共産党の提案とは、まさしくそういうものだということです。

(2)安保・外交の改革

 安保・外交問題でも、今年は、安保五十年の年ですが、米軍基地国家の現状を永久視し、二十一世紀も安保と基地にしばられた日本というのが、小泉内閣が描く二十一世紀の日本像です。この立場からは、二十一世紀の国の進路もアメリカまかせということになるほかありません。安保にしがみつく姿勢は、外交からも自主性というものをまったく奪い、日本ぐらい外交面で存在感のない国はないという恥ずべき事態におちいっています。“外交なき外交”というのが、自民党政治の実態です。

 ここでは、安保廃棄が実現すれば、あるいは自主外交を確立すれば、どういう可能性が生まれるのか、あかるい未来展望をさししめすことに力をいれました。

 たとえば、日米軍事同盟から抜けだせばどうなるか。四つの角度から、「日米新時代」「新世界」がひらかれるということを解明しています。(1)アメリカの戦争に巻き込まれたり動員されたりする危険性から解放される、(2)アメリカとの関係が対等・平等・友好の関係になる、(3)これまでのように、軍事一辺倒で世界から孤立する道ではなく、世界平和に積極的に貢献する外交をおこなう新しい条件が生まれる、(4)アジアに生きる国として、アジア諸国との平和・友好を力強いものにするだけでなく、ヨーロッパとの関係でも新しい転機をひらく。それこそうきうきするような展望をしめしています。

 また、安保廃棄以前でも、自主外交を確立すれば、日本がアジアの平和と友好にどれぐらい貢献できるか、日本共産党自身の野党外交の成果も踏まえて、いきいきとあきらかにしています。この点は、日本共産党自身が、野党外交として、実際に展開してきたことであり、大きな説得力をもっています。

(3)憲法

 憲法をめぐっても、首相公選論、集団的自衛権行使論など、憲法改悪のたくらみが小泉内閣になって勢いづいています。しかし、集団的自衛権の問題でも、相手の側は、せいぜい“池に落ちた子どもを助けるのは当然”という程度のことしかいえないように、まったく道理をもっていません。この問題では、集団的自衛権が日本防衛とはまったく無関係というところに、相手側の最大の弱点があります。

 日本共産党は、憲法の問題では、九条改悪に反対する広範な国民的共同をよびかけると同時に、大会でも解明した憲法九条完全実施をめざす方針をあきらかにしています。ここに、他党にはない大きな特徴があることをつかんでほしいと思います。たとえば、社民党は、自衛隊は合憲という立場です。しかし、九条を変えることには反対しており、この点では大いに共同が可能です。しかし、わが党の立場は、それにとどまらず、国民の納得と合意で段階的に九条の完全実施をめざしています。この両面をもっているのは、わが党だけです。

 同時に、憲法の平和的、民主的条項は、わが党が戦前から主張してきたことが実ったものであり、憲法を生かす政治という点では、わが党こそが、もっとも“老舗(しにせ)”であるということも大事な強調点です。

(4)日本社会の危機打開

 日本社会の危機ということでは、子どもと教育の問題、少子化問題と働く男女が家族責任をはたせる社会、食料自給問題、原発依存から環境重視の安定的なエネルギー政策への転換、文化・学術の自由で豊かな発展という五つの分野での、日本共産党の政策提案をしています。これらの提案は、日本共産党が、当面する問題はいうまでもなく、日本と国民のさきざきまで真剣に考え、その答えをもっている政党であることを知ってもらううえでも重要です。

(5)金権政治一掃し、きれいな政治の実現

 金権腐敗政治一掃は、自民党政治を変えるという以上、避けて通れない問題ですが、ここでも小泉政権のやり方は、自民党政治そのものです。機密費問題についていうと、「塩川大臣をいじめている」という声も一部にありますが、正直に語ってきた塩川財務相の口を封じて「いじめ」ているのは、小泉首相や福田官房長官の側であり、苦痛を強いているのは彼らの側です。それは、この問題が、自民党の腐敗政治をささえる根底にあったからであり、この全容の解明は自民党政治の屋台骨を揺るがすことになるからです。

 機密費問題でも、KSD汚職でも、わが党の追及は群をぬいていましたが、金の力で動く政党ではないということは、国民の声を大切にする政党であるということの最小限の前提ともいうべきことです。

 日本共産党が、企業・団体献金を拒否し、政党助成金の受け取りを拒否しているということは、本当の民主主義の政党だということであり、そういう値打ちについても、選挙戦では大いに語っていく必要があります。

 以上が、五つの「改革」提案の特徴ですが、もちろん、これはその一端にすぎません。もっと豊富な内容をもっているので、大いに読み、こんごの宣伝や論戦に生かしてほしいと思います。

 

 最後になりますが、重点政策とあわせて、各論として、十二の分野の政策も同時に発表することにしています。それは次の分野です。

 社会保障、雇用、中小企業、教育、環境、災害、食料問題、郵政事業、女性、青年、文化・芸術、NPO。

 また、それ以外にも、それこそ森羅万象、あらゆる問題でインターネットでの問い合わせやアンケートもきます。そこで、総論、各分野の政策以外の問題でも、これまであきらかにしてきた政策や立法提案など、必要なものはホームページにいれることにしたいので、これもあわせて活用してほしいと思います。


筆坂政策委員長の結語

 中央委員会総会に政策案をかけるのは、久しぶりのことなのですが、かけてよかったというのが私たちの率直な感想であります。みなさんには、前もってお渡しし、二中総以前にも多くの同志から文書で意見がよせられました。この席でも文書や討論で意見がよせられました。これらのよせられた意見というのは、すべてがもっともな意見ですので、生かすようにしたいと思います。

 もう一つ中央委員会総会にかけたことによって、政策についての報告がCSで流されたわけですが、感想をみましたら、かなりの方から「早く政策を読みたい」という感想がよせられています。

 当初の目的どおりみんなで討論して、よりよい政策を練りあげるということが、文字どおりいま実現しつつあると思います。

 大分の阿部さんから農業だけでなく、漁業、林業についても政策にいれるべきでは、という意見が出されましたが、各分野の政策では、農林漁業政策として提案しております。もう一つ、公共事業の問題で私たちも阿部さんの意見にあるような問題意識をもっていましたから、「日本共産党は、『公共事業不要』論ではありません」「必要な公共事業は大いに推進すべきです」というふうに政策にも書いたのですが、必要な生活道路やこわれた橋をなおすのはあたりまえの話ですから、必要な補強をしたいと思います。第二国土軸の問題というのは、五全総にかかわる問題だと思います。五全総については私たちはこれまでムダと浪費の仕掛けになるものだと批判してきました。それもふくめて必要な補強をしたいと思います。なお、補強する文章化については、常任幹部会におまかせいただきたいと思います。

 以上です。


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