2000年 9月 22日 (金)「しんぶん赤旗」より

日本共産党第7回中央委員会総会

大会決議案についての討論の志位書記局長の結語


 大会決議案の討論についての結語をおこないます。

決議案のしめした壮大な展望、民主的政権への努力方向に、多くの共感の声がよせられた

 多くの同志が熱心な討論をされ、多くのご意見がよせられました。

 発言のなかでも、CS通信をみた全国の同志からの感想をみましても、共通して決議案にたいする圧倒的な共感と歓迎の声が寄せられています。

 私は、決議案の提案報告のなかで、こんどの決議案が全体として二つの大きな特徴をもっているということをのべましたが、この点が全体として深く受けとめられているということが特徴だと思いました。

 一つは、二十世紀から二十一世紀という歴史の大きな流れ、それから、日本の情勢については、その二十世紀の最後の十年間である九〇年代という流れのなかで私たちの社会変革の事業の到達点と展望をつかむ、このことの重要性です。多くの同志からの感想として、こんどの決議案を読んで「二十一世紀にむけて壮大な展望を得た」、「目の前が明るく開けた」、「視野が大きく広がった」、「未来ある党が日本共産党だと確信した」などという感想がたくさん語られています。

 いま一つ、二十一世紀の早い時期に民主連合政府をつくるという目標にむけての努力方向について、この三年間の実践をふまえ、教訓をふまえて、さまざまな分野で明らかにしているのが、こんどの決議案の特徴ですが、これも正面から受けとめた感想がたくさん寄せられました。

 感想のなかでは、「こんどの総選挙の結果をみて民主連合政府は当面は無理か、当分はお預けか、という気持ちでいたけれども、そんなことはない、その前途は開けているし、この試練を乗りこえるなかで、大いに切り開いていきたい」という意気高い感想がたくさん寄せられています。

 決議案が提起したいちばんのかなめが、多くの同志のみなさんの心にひびいて、全体が共感をもって受けとめられていると思います。

 この決議案は、中央委員会で採択されたなら、全党の討議によって豊かに正確に練りあげるというとりくみがつぎの仕事です。ここに全党の知恵と力を結集してとりくみたいと思います。

 決議案は、規約の改正案とともに、マスコミにもたいへんひろい反響を呼びました。この反響の内容にはさまざまでありますが、わが党の日本の政治における役割と位置がどういうものであるかということを、この反響はしめすものであったと思います。

 そのうえで、出された意見についてのべたいと思います。

憲法九条と自衛隊──憲法違反の現実を段階的に解決していくのが方針の根本

 まず、憲法九条と自衛隊の問題についてです。これは討論でも意見が出されました。また、こんどの決議案のなかでもっとも注目を集めた個所の一つでもありました。

 大事な点は、こんどの決議案で打ちだされている方針というのは、憲法九条の完全実施にむけて、憲法違反の現実を段階的に解決していくという方針であるということです。憲法九条は、あくまで将来にわたって守り抜いていく。そして、その憲法九条に一歩一歩接近させる方向で現実を改革し、憲法九条の実現のために力をつくすということが方針の根本であるということを、あらためて強調しておきたいと思います。

 わが党の方針について、防衛庁長官が「歓迎」の談話をだしたとのことです。防衛庁長官がどういうつもりで「歓迎」したのかは知りませんが、九条の完全実施にむけた自衛隊問題の段階的解決、段階的解消というのが私たちの立場であって、政府と政権与党がとっているのは、対米従属のもとで、自衛隊の軍拡をすすめ、海外派兵をすすめるという立場ですから、これはまったく対立しあった立場です。およそ対極にある立場なのであります。この根本はあらためて明瞭(めいりょう)にしておきたいと思います。

「アジアの平和的安定の情勢の成熟」──二十一世紀に十分に可能な展望

 それから、この段階的解決という場合に、第一段階、第二段階、第三段階という三つの段階をおって、国民の合意でこれを解決するということを決議案ではのべているわけですが、その第三段階についてこういう記述があります。

 「アジアの平和的安定の情勢が成熟すること、それを背景にして憲法九条の完全実施についての国民的合意が成熟することを見定めながら、自衛隊解消にむかっての本格的な措置にとりくむ」。

 ここで「アジアの平和的安定の情勢の成熟」ということをのべていますが、私たちが強調したいのは、これは独立・中立にふみだした日本が、憲法九条にもとづく平和外交を本腰をいれて展開する、その努力ともあいまって、二十一世紀に十分に可能になる展望であるということです。

 つまり日本の周辺の国・諸国ということを考えた場合、アメリカ、朝鮮半島の韓国と北朝鮮、中国、東南アジア、ロシア、この五つの国・諸国との関係が、日本の周辺の国・諸国との関係ということになります。

 アメリカとの関係では、日米安保条約を廃棄した後に、日米友好条約を結び、ほんとうの対等・平等にたった友好と平和のきずなを確かなものとすることは十分可能です。

 朝鮮半島との関係でも、いまおこっている平和の流れが大きく前進することとあいまって、日本と韓国・北朝鮮とのかたい友好の関係がすすむということは、二十一世紀の展望として、洋々と開けてくるでしょう。

 中国との関係では「日中関係の五原則」ということを私たちは提案し、そういう方向での日中両共産党の新しい友好と協力の努力も始まっているわけですけれども、こういう努力を前進させていくなかでしっかりとした友好の基礎がきずかれるでしょう。

 東南アジアでは決議案でものべたように、ASEANが中心になって平和・中立・自主という流れがとうとうと広がっています。この国々と独立・中立にふみだした日本の関係というのは、大きな友好の道が発展するでしょう。

 ロシアとの関係でも、平和条約という問題は未解決ですけれども、これも道理にたった外交の努力をはかるなかで、二十一世紀に解決の道が開かれるという展望を持つことができると思います。

 ですからそういう諸国との平和的関係が、しっかりと安定し、それが成熟していく、その関係を相互不可侵条約や中立条約などのかたちで保障していく、そういう展望は二十一世紀の私たちの展望として、十分に根拠もあれば可能性もある、そういう展望なのだということがいえると思います。

 日本が、領土問題や民族問題で絶えず紛争を抱えていて、まだ戦火がおさまっていない、そういう地域にかりに位置していたとしたら、なかなかそういう展望を二十一世紀の早い段階に持つというのは難しいということもあるかもしれないけれども、日本が世界でおかれている位置というのは、いまのべたような位置にあり、そして島国という条件もあり、そういうなかで、自衛隊問題を解決していく第三段階で、私たちがのべているような条件をクリアして、憲法九条の完全実施に本格的にとりくむ条件が開ける時期が生まれるという展望は十分に持つことができます。

「必要にせまられた場合」の、「自衛隊の活用」とはどんな場合か

 いま一つ、決議案ではつぎのようにのべています。

 「自衛隊問題の段階的解決というこの方針は、憲法九条の完全実施への接近の過程では、自衛隊が憲法違反の存在であるという認識には変わりないが、これが一定期間存在することはさけられないという立場にたつということである。その時期に、必要にせまられた場合には、存在している自衛隊を、国民の安全のために活用することは当然である」。

 私たちが、段階的解決論をとる以上、その過程で自衛隊をどう位置づけるかということにたいして回答が必要になります。この規定はその回答をのべたものです。

 ではどういう場合に「自衛隊の活用」ということが問題になるのか。このことは討論のなかでも質問として出されました。

 これについての私たちの考え方をのべますと、「急迫不正の主権侵害」がおこり、警察力だけでそれに対応できないケースがうまれた場合に、自衛隊を活用することは当然になります。そのことはこの表現のなかにふくまれています。こうしたことは現実的にはほとんど想定されないことですけれども、理論的にはそういう場合にどうするかという回答は必要になります。ですからそういう場合の理論的回答としていうならば、そういう場合に、国民の安全を守るために自衛隊を活用することは当然であるというのが私たちの立場になります。

 それから大規模災害がおこり、そのさいには消防力などでの対応が最優先されなければなりませんが、それだけでは対応できないケースがうまれた場合に、自衛隊を活用するということもまた当然です。この点では消防力の整備などが非常に遅れているという現状があります。その整備をしっかりと強める、本来の意味での防災の機能の強化というのが強調されなければなりません。それから東京でやられたように防災の名を借りて、防災をなおざりにした軍事訓練のようなことをやるというやり方に、私たちがきびしい批判的立場をとるのも当然であります。しかし、現実の問題として、さきほどいったようなケースがおこった場合に、自衛隊を活用するということを、私たちは否定するものではない。これも当然であります。「自衛隊の活用」といった場合は、大きくいえばそういう場合となるでしょう。

戦争法発動──米軍の介入戦争への参加は絶対に許さない

 この問題で、私たちがあらためてきっぱりと一線を画して、はっきりさせておかなければならない問題は、戦争法を発動して、米軍が日本の「周辺」で介入・干渉戦争を始める、その介入・干渉戦争に日本が参戦する、その結果としてその戦火が日本に及んでくる、こういうケースはおこりうる危険です。絶対におこしてはいけないけれども、いまの仕組みのなかで現実におこりうる危険です。

 こういう介入戦争にのりだした結果、その戦火が日本に及んでくるというのは、「急迫不正な主権侵害」にはあたりません。まさに不当な介入戦争への参加そのもののなかでうまれてくる事態です。

 いまの自民党政治のもとで、日本の国民の生命と安全を危険にさらす現実的な危険性はここにあります。そのことを直視して、米軍のおこなう介入・干渉戦争への参加を許さないたたかいを大いに強め、そういう無法なことが発動できないように、道理にたった外交努力を強めることがたいへん重要であるということを強調しなければなりません。以上がこの問題についての私たちの立場であります。

個々の修正、補強意見について──最大限とりいれる立場でしあげる

 つぎに、個々に大事な意見がたくさん寄せられました。たくさん項目がありまして、文書での提案もあり、口頭の発言での提案もあり、私たちは、そのすべてを一つ一つ吟味をしました。そして、私たちの基本的な立場は、みなさんからの提案は、部分的な補強、字句上の修正もふくめて、最大限とりいれる、という立場で対処したいということです。どうしても適切でないというものがなかにはあるので、それは割愛せざるをえないのですけども、最大限とりいれるという立場で、全体としてみなさんのご意見に対処することにします。

(つづいて志位書記局長は、出された修正、補強意見のうち、おもなものについて、それを基本的にとりいれるという立場からの報告をおこないました。志位氏がここで言及した問題は男女同権、日本経済の構造的変化、林業と漁業、地場産業、子どもと教育、エネルギー、憲法九条と自衛権、宗教者との共同、NPO〔非営利法人〕、新入党者への援助、十八歳選挙権などの項目についてです)

機関紙拡大の目標をどうするか──「すべての支部が毎月着実に前進」という目標をやりとげることは一大事業

 以上がおもな修正・補強内容です。

 最後に一点だけ、解明を必要とする問題が残されておりますので、その問題についてのべておきます。発言のなかで「機関紙拡大についても全党的な目標をもつ必要があるのではないか」という提起がありました。大会決議案では、党員拡大について「二〇〇五年までに五十万の党を建設する」という目標を提起しております。これにみあった目標の提起をという提案でした。

 この問題については、決議案で機関紙問題について、「すべての支部、地区、都道府県が、毎月着実に前進をかちとることを目標に読者拡大にとりくむ」ということが明記されています。これが決議案で提起されている目標なのです。

 この目標というのは、やりとげるのはたいへんな目標であります。かりにすべての支部が毎月着実に前進する、一部でも前進するということになれば、全国に二万六千の支部があるわけですから、毎月二万六千部の拡大になるわけで、年間つづければ三十万をこえる拡大ということになります。これ自体が、たいへんな目標を提起しているのだということを、決議案の内容としてぜひつかんでいただきたいと思います。

 そして決議案では、“「しんぶん赤旗」中心の党活動”という原点に立って、機関紙活動を広い視野で位置づけて、党建設の一分野というだけでなくて、あらゆる党活動を発展させる中心だと位置づけて、四つの角度から強化方向をのべています。それを全体としてやりとげていくなかで、読者拡大で持続的な前進をはかれるような党にしようではないかというのが今度の提起です。それをやりとげるというのは一大事業なのです。

 私たちは、そういう目標の提起の仕方が、いまの発展段階では一番ふさわしい目標の提起だと考えます。いま機関紙拡大で“何百何十万をいつまでに”と全党的な目標の数字を出して、それをテコにして前進をはかるという提起をするのは、全党的な提起としてはあまり適切とはいえないと思います。“「しんぶん赤旗」中心の党活動”ということを全面的にやりぬく活動のなかで、独自の拡大追求をすすめ、そして毎月前進する支部を全党のものにしていくというところに発展の方向があるのであって、それを目標にしようではないかというのが決議案の提起です。もちろん支部などで自主的に有権者比の目標をもって拡大をはかる努力が大切であることは、いうまでもありません。

 以上で、大会決議案についての討論の結語といたします。みなさんの熱心な討論と提案に、心から感謝するとともに、ひきつづく全党的な討論でこれを練りあげる努力で、中央役員のみなさんの奮闘を訴えるものです。


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権:日本共産党中央委員会 
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp