2000年1月13・14日

日本共産党第5回中央委員会総会

志位書記局長の結語

 1月13、14の両日ひらかれた日本共産党第五回中央委員会総会でおこなった志位和夫書記局長の結語はつぎのとおりです。


発言と感想――「大運動」をつうじて新たな前進をとげつつある党の姿を反映

 みなさん、二日間の会議、ご苦労さまでした。討論の結語をおこないます。

 討論では、三十七人の同志が発言しました。発言は、全体として、幹部会の提起を積極的に受けとめた、たいへんに意気高いものであったと思います。

 それから、衛星通信で、全国の同志が報告を聞きました。昨日一日で、リアルタイムに聞いた方と、ビデオで後でみた方をあわせて、約一万人の同志が報告を聞きました。中央委員会に一千通をこえるたくさんの感想がよせられました。その反響を読んでみますと、四中総いらいの情勢の劇的な発展と、そのなかで存在感を増す党の役割にたいして、多くの同志が誇りと確信をもって受けとめているということが、たいへんよく伝わってまいりました。

 同時に、総選挙での躍進をめざす新鮮な決意も、たくさんよせられています。「有権者比得票目標の大幅な突破という提起に、ハッとさせられた」という声がずいぶんありました。それから、「参院選挙の二倍以上、三倍以上のとりくみに挑戦したい」ということも、たくさんの方からの感想でした。「総選挙の得票の一割の党員、五割の読者を今年中に」という提起も、たいへん多くの同志から積極的な受けとめの感想がよせられました。これら全体を、たいへんうれしく、私たちは受けとめました。

 会議での発言、そして全国の同志からの感想は、わが党が「大運動」をつうじて質的にも量的にも新たな前進をとげつつあることを、つよく感じさせるものであったと、考えるものであります。

自民党政治のゆきづまりのもとで、綱領路線を縦横無尽に具体化できる条件が

 幹部会報告で、「党の提案・行動が、まだ第一歩だが、現実政治に影響をあたえ、動かしつつある」と解明したことは、とりわけたくさんの同志から反響がよせられました。

 なぜそういう状況が展開しているのか。その根底には、九〇年代をつうじて自民党政治のゆきづまりが極限にまで達しているという状況があります。そして、そのなかで、党の綱領路線を政治の一番の熱い焦点の問題にかみあって、縦横無尽に具体化できる条件が生まれている。これがいまの情勢の特徴だと思います。

 不破委員長の中間発言では、「わが党と日本社会の関係でこの九〇年代にたいへん大きな変化がおきた」ということを指摘して、「党の政治路線と日本の社会が求めるものとが接近し、合致してきた」という指摘をおこないました。

 いま私たちが、「日本改革論」として国民に訴えている内容は、そういう九〇年代の情勢の劇的な発展と変化のもとでの綱領路線の具体化にほかなりません。

 たとえば財政問題について、私たちは、「公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円の逆立ち財政をただそう」ということをいっています。それでは、公共事業に国と地方で年間五十兆円を使う体制が、いつつくられたかといえば、九〇年代に入ってからのことなのです。

 一九九〇年の日米構造協議で、アメリカから外圧がかかり、それにこたえて、十年間で四百三十兆円を使う「公共投資基本計画」がつくられました。それがやがて六百三十兆円の「公共投資基本計画」に膨張しました。九二年からは、「景気対策」のかけ声で公共投資を積み増しするというやり方が、どんどんとられるようになりました。そういうなかで公共事業に五十兆円という異常な体制、異常な財政のゆがみがつくられたのです。

 「逆立ち財政をただそう」という私たちの主張は、そういう情勢の展開にかみあっての問題提起でした。初めてこの問題を提起したのは、一九九七年の党創立記念講演会での不破委員長の講演でした。その年の秋の第二十一回党大会の決定にも、この提起はもりこまれました。それから三年たったわけですけれども、いまでは「逆立ち財政をただそう」という私たちの主張は、国民のなかに浸透し、心をつかんで、道理ある主張として広い共感を得る状況が生まれています。

 それから、「『ルールなき資本主義』をただそう」という私たちの主張があります。「大企業の民主的規制」という経済政策は、党綱領で明りょうにのべられているもので、綱領確定いらい一貫したものです。ただそれを、「『ルールなき資本主義』をただそう」という表現で訴えるようになったのは、実はこれも九〇年代に入ってからなのです。

 九〇年代に入ってバブル経済が崩壊する、経済が長期不況に陥る、ところがそういうもとで大企業はよりひどい横暴勝手をふるい、目先の利潤追求だけを優先して、「後は野となれ山となれ」という行動をとるようになる。長時間・過密労働による「過労死」ということが問題になりました。これは国際語にもなって、「日本には資本主義のルールがないのか」ということが、国際的にも問題になりました。

 日本の資本主義のあまりのルール無視の体質が、そういう形で問題になるなかで、それにかみあって、私たちは「『ルールなき資本主義』をただそう」ということを訴えてきました。それが、報告でも紹介しましたけれども、いまや経済界の方々の気持ちもとらえて、広い人々の共通の認識になりつつあるわけです。

 それから報告でその重要な意義についてのべた、アジア外交の方針の発展ということも、いまの情勢にかみあった展開なのです。この間、日本の進路をめぐっては、ガイドラインがつくられ、戦争法が強行され、日米安保体制の危険な変質という事態が起こりました。ところが、これがたいへんな矛盾を国民との間でも広げるし、アジア諸国との間でも広げました。世界をみますと、ソ連が崩壊したあと、アメリカが一国覇権主義の横暴を軍事的にも経済的にもむきだしにするという状況が進みました。地球的規模での軍事干渉の体制づくりが進みました。IMF(国際通貨基金)やWTO(世界貿易機関)を使っての経済支配のくわだてを、彼らはむちゃくちゃなやり方で世界に押しつけようとしました。しかしこれも、たいへんな矛盾を全世界で広げて、ヨーロッパとの矛盾、途上国との矛盾など、あらゆるところで矛盾が噴出しています。

 そういう情勢の展開にかみあって日本の平和、アジアの平和のための道筋を具体化してきたのが、この間、わが党がとりくんできたアジア外交の発展です。これは、党大会の方針として提起され、それを実践で発展的に具体化し、その実践をふまえてさらに方針を発展させるという形で、わが党の方針が豊かにされました。

 三つの問題をのべたわけですが、九〇年代に自民党政治のゆきづまりが、一段とあらゆる分野で進んだ。わが党はそれにかみあった打開策を、どの分野でも発展させてきました。それが人々の気持ちをとらえ、まだ部分的ですが、政治を現実に動かす力として生きてきている。わが党の政策が現実に力をもつものとなっている根本には、そういう情勢の進展があるのです。

党の躍進の可能性には、歴史的な根拠がある

 この状況というのは、六〇年代から七〇年代前半にかけてのわが党の躍進の時代にもなかった状況です。

 この躍進の時期というのは、高度経済成長のもとで、大企業中心主義の矛盾が、物価問題や公害問題などの形でふきだしましたけれども、それでも経済発展の一部が、国民のたたかいとあいまって、国民生活の一定の向上にふりむけられた時期でした。国民のたたかいのなかで、大企業にも社会的責任を果たさせる必要がある、社会的なルールを守らせる必要があるということが、公害反対のたたかいなどをつうじてずいぶん社会的合意となりました。それから、革新自治体を先頭に、全国の自治体でお年寄りの医療費の無料化の流れが広がり、とうとう国の制度にもなりました。まだ自民党政治は、経済を成長させる力をもっていた。しかし矛盾も広がった。そういうなかでかちとられた躍進でした。

 ところがその後、八〇年代、九〇年代と、自民党政治のゆきづまりは、年を追うごとに深刻なものとなりました。

 七〇年代の二回の石油ショックを経て、八〇年代に入ると、経済が低成長の時代に入りました。経済の低成長のもとで、大企業が空前の利益をむさぼる一方で、国民生活のあらゆる分野に総攻撃がかけられ、経済が成長しても国民生活はよくならない、新しい形の貧困が広がるようになりました。

 私は、一九九一年の日本共産党第二回全国協議会の報告のなかで、八〇年代の十年間を総括して、「『新しい貧困』がすすんだ十年だった」ということをのべたことがあります。この時代は「民活」の名で、大企業の横暴勝手がどんどん通るようになる。「行革」の名で、福祉切り捨てがどんどん進む。こういう時期でした。

 これが九〇年代に入りますと、バブル経済の破綻(はたん)と長期不況という、さらに深刻な矛盾が加わって、よりいっそうゆきづまりがひどくなる。九〇年代は、「戦後最悪の不況の十年」となりました。こうして自民党政治のゆきづまりが、極限にくる状況のもとで、一九九〇年代の後半からの党の新しい躍進の時代がはじまったわけです。

 情勢は、そういう劇的展開をしているわけです。私たちがこんどの選挙で、「奮闘いかんでは大きな躍進をかちとることは可能」といっているのは、歴史的な根拠がある、現実的な根拠があるということをしっかりつかんで、こんどの選挙にのぞんでいきたいと思うわけであります。

総選挙での躍進――未踏の新しい領域にふみこむ挑戦

 同時にそれは、「奮闘いかん」でかちとられるものであります。総選挙での躍進の客観的可能性とともに、それを現実のものにすることは、容易ならざる課題であることを正面からつかんで、正面からこれに挑戦する構えととりくみが大事だということは、多くの同志の発言でも、のべられたことでした。

 「大変だから、難しい」ということではなくて、「大変だからこそ、それにふさわしい活動で突破しよう」という構えをみんなのものにして、いまの情勢にむかってゆく必要があると思います。

 こんどの総選挙での躍進はどういう意味あいをもっているか。九〇年代に入って、党の本格的躍進が開始されたのは、四年前の九六年の総選挙からでした。九五年の参議院選挙では前進をかちとっていますが、党の本格的躍進がはじまったといえるのは、この総選挙からでした。こんどの総選挙というのは、この本格的躍進のうえに、さらに大きな躍進をかちとれるかどうかということが問われる選挙になるわけです。まさに未踏の新しい領域にふみこむ挑戦をしようというのが、こんどの選挙であります。

 こんどの選挙では、私たちは「有権者比得票目標の大幅な突破」ということを目標にしていますが、報告でものべたように、こういう目標をかかげたのは党の選挙のなかでも初めてのことです。それはこんどの選挙で躍進するためには、従来の構えに安住するわけにはいかない。こういう決意をもって、私たちはこの目標を決めたわけです。それから、”小選挙区の壁”を突き破ろうという提起も、まさに新しい領域への挑戦であります。

“従来の延長線上でほどほどに”という惰性を突破する

 これをどうやりきるか。そのためには、”従来の延長線上でほどほどにやればいい”という惰性を突破することが、たいへん大事だと思います。

 みなさんの発言では、従来の延長線上ではない新鮮な構えと意欲をもって、どんどん新しい活動にとりくんでいるという発言が、たくさんありました。ただ、惰性というのは、躍進の過程のなかでも、さまざまな形で現れてくるものです。私たちは、自分が現状安住に陥っていないか、惰性に陥っていないかについて、たえず点検しながら、前に向かって進むということが、たいへん大事だと思うのです。

 たとえば情勢の見方の問題です。これだけの劇的な情勢が進展しているわけですが、情勢の進展に、党の側の認識がついていけずに、「そうはいっても簡単には世の中は変わらない」という見方は、やはりいろいろでてきます。党が連続的に躍進をかちとっていることから、「こんども何とかなるだろう」という気持ちも、やはりでてくるでしょう。これらは、情勢論における惰性であるわけです。客観的情勢がどんなに躍進の可能性をはらむものでも、風頼みではわれわれは前進できない。主体的奮闘があってこそ、実らせることができる。この変革の立場から情勢をしっかりつかむということは、われわれの活動を前進させるうえでの大きな土台です。

 いま一つ、党の政治的影響力の広がりと組織的地歩にギャップがあるという問題について、報告でもこれを前向きに克服していくことが選挙での躍進に不可欠だとのべました。中間発言でも、このギャップというのは、党の政治的影響力が先行的に広がっているのにたいして、組織の実力が追いついていないことからくるものであって、いつまでもこれをそのままにしては前進がないということが強調されました。

 ここでも、私たちは惰性を断ち切った奮闘が必要だと思います。「党勢が後退しても、選挙ではなんとかなる」という気持ちが、一部に残されていないか。これは、この間の選挙戦からの間違った「教訓」の引き出し方です。それでは躍進の保障がないというのが、こんどのたたかいだと思います。それから「選挙が近づくと機関紙が減っても仕方がない」というのも、報告のなかでこれまでの惰性の一つとして突破しようではないかとよびかけたことです。

 本気になって、このギャップを前向きに解決しながら、党勢の上げ潮のなかで選挙戦をたたかう――報告でのべたように、これは新しい開拓が必要な活動ですけれども、「大変だからこそ、それにふさわしい活動で突破しよう」という構えで、ここに挑戦するということを、みんなで決意しあいたいと思います。

新しい党活動の発展の道を開いた「大運動」のとりくみを継続・発展させる

 惰性を打ち破ろうということを申しましたが、「大運動」ではまさにそういう大きな一歩を、私たちはふみだしているわけです。「大運動」で、私たちは、これまでの党活動の延長線上ではない、党の新しい発展の道を開く一歩をふみだしました。

 私たちは、初めての活動方法で、この運動にとりくみました。「支部が主役」ということを、最初から最後までつらぬいていくという、党の指導と活動のあり方の大きな脱皮に全党がとりくみました。それから、大衆要求の実現にとりくみながら、支持拡大にとりくみ、党員と機関紙を増やすという、総合的に前進ができる党、一つのことだけではなく、総合的に、無理なく、自覚的な前進がはかれる党への脱皮の一歩をふみだしたと思います。

 せっかくそういう新しい発展の道にふみだしたわけですから、これを絶対に一過性のものに終わらせず、継続させ、発展させる。選挙戦にふさわしく、大量政治宣伝で広く党の姿を有権者の中に明らかにしながら、選挙戦の三つの活動として「大運動」の課題をひきつづき発展させて、飛躍をつくっていく。このことがほんとうに大事だと思います。

比例定数削減問題――反対をつらぬくが、かりに強行されてもそれをはねかえす躍進を

 それから「党の奮闘いかん」でということに関連して、いま一つ銘記したいのは、わが党が前進すればするほど、相手側からの反動的まきかえしも強まるということです。

 いま焦点になっている衆院の比例代表定数削減問題も、その一つです。このくわだてが日本共産党の躍進をおさえこむことをねらったものであることは明りょうです。

 もともと、国会議員というのは国民と国会を結ぶパイプであって、定数を減らせば減らすほどいいというのは、このパイプが細ければ細いほどいいということになるわけで、まったく道理がありません。まして、いまの制度のもとで、民意を反映する唯一の部分である比例代表制の削減というのは、二重に道理がありません。

 しかも重大なことは、いまだされている比例のみの削減案というのは、小選挙区比例代表並立制の、制度の根本を崩すことになるということです。並立制が導入された当時に、それを推進した勢力は、「この制度は、小選挙区制で民意の集約をはかる。比例代表制で民意の反映をはかる。両々あいまっていい制度になるんだ」という説明をしたものでした。「両々あいまって」論だったわけです。

 その制度のもとで、比例だけ削るとはどういうことか。それは結局、「両々あいまって」論をみずから否定して、比例代表制というものを事実上否定していく考え方につながります。事実上、単純小選挙区制がいいという考え方につながります。これはまさに、並立制の根本、選挙制度の根本を崩す大改変になるわけです。

 そういう選挙制度の大改変を、国民の審判抜きにやるということは、許されないということを、私は強調したい。どうしてもそういう制度改変がやりたいというのならば、解散・総選挙で、それもふくめて国民の審判をあおぐべき性格の問題です。

 民意に反した数あわせで政権をつくって、その政権が国民の審判を経ないで自分の都合のいいように選挙制度をつくりかえて、多数をさらに確保していこう。こんなことが許されるのだったら、およそ民主政治がなりたたなくなります。まさに永久政権、独裁政権への道を開くことになります。そういう重大な性格の問題として、私たちは、これにきっぱり反対をつらぬいて奮闘したいと思います。

 ただ、このたたかいの帰趨(きすう)というのは、予断を許しません。わが党は、野党共闘を強めて横暴を阻止するために全力をあげますが、たたかいの帰趨というのは、これはなかなか予断をもっていえません。

 ここでも、私たちが強調したいのは、選挙をたたかう構えとしては、もっとも辛い事態も想定しておくということです。私たちは国会では、この暴挙の阻止のために最大限力を尽くしますが、選挙の構えとしては一番きびしい事態も想定しておく。かりに強行されたとしても、それをはねかえす躍進をかちとるということを、全体の決意にしようではありませんか。

 有権者比得票目標の大幅な突破は、選挙制度をどう変えようとそれをはばむことができない目標ですから、これに挑戦することはいうまでもないことですけれども、私たちが目標に掲げている「すべての比例ブロックで前回を可能なかぎり上回る議席増をかちとる」という目標について、かりに比例定数削減が強行されたとしても、かならず達成すべき目標として堅持することを、この中央委員会で確認したいと思います。

歴史的な大激動の時期――それにふさわしい奮闘で躍進をかならずつかもう

 全国の同志のみなさんからの感想のなかには、「情勢の発展は考えている以上に早いと思った」という声もずいぶんありました。

 私たちは、こんどの中央委員会を準備する過程のなかで、二十一回党大会決定を読み直してみたのですが、この決定を読んでみると、あの大会で確認したことが、私たちの予想をこえる早さで現実のものになりつつあることが、少なくないことがわかります。

 報告でものべましたが、アジア外交の発展とか、修正資本主義者との共同とか、こういう一連の問題で、大会が提起した問題が、予想をこえる早さで現実のものになりつつあります。

 まさに歴史的大激動の情勢だと思います。そういう時期にふさわしい奮闘で、総選挙での躍進をかならずかちとるために力をあわせることを最後によびかけまして、討論の結語といたします。ともにがんばりましょう。


もどる

機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。


著作権:日本共産党中央委員会 
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp